紙の本
美しい言葉の羅列
2013/02/07 13:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちまこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
縦書き、横書きで斬新な作りに驚きました。左ききの私は小説は仕方がないけれど雑誌や新聞は左側、つまり裏からみます。右利き使用に作られたものの中で不自由を感じていた私にはabさんごは実にめくり易かったが、ひらがなばかりに慣れるまで少し手間取りました。幼児ながら冷静に物事をとらえる感覚は「ライ麦畑でつかまえて」を思い出せるものがありましたが、日本語の美しさ、言霊のようなものを久しぶりに読んだ気がしました。「満月たち」は一番のお気に入りです。芥川賞にふさわしい、理解しがたいけれど自分の感性で理解できる、手ごわいけれど中に入ってみることができる素晴らしい作品だと思います。文学とはこうあるべきだと再確認されられました。
紙の本
良かったです
2017/02/18 21:49
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投稿者:わらび - この投稿者のレビュー一覧を見る
買ってからなかなか読み進められず、数年積読状態だったのですが・・・
先日、ようやくまとまった時間ができて、
のろのろと読み進めてみたら…
ナニコレやばい。
明治の言文一致以後のものだけが日本語の書き言葉のありかたじゃなくて、他にもあるんだよーこういうのもあるんだよーっていう…
ストーリーもすごい魅力的だったんですが、
日本語の文体ってなんね?と思わせる、その表現力に打ちのめされました。
新作も読みたい…。
過去作をもっと出版してくれないかなあ…。
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☆2.8
ひらがなを多用してかかれていて、なじみのあることばもなじみのないような顔でそこにいるものだから、どこでくぎってよめばいいのかかんがえることにつかれる。きがつけばおんなじ行をなんかいもなぞってよんでいたりしていっこうにまえにすすまない。そのうち頭もいたくなってきたけれどなんとかよみおえた。はなしの内容はさっぱり頭にはいってこない。手法としてはすごいのだろうけど。
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毎回芥川賞は読んでます。芥川賞受賞作は好きな作品も多いのです。が、この作品は何回チャレンジしても二頁ほどで眠くなってしまう。何度も何度も試みて、頁をめくるのですが理解できず、挫折。悔しい。ブクログではじめて評価なしになりますね。いつかまたチャレンジしようとは思うけれど。
ひらがなの多用。頭のなかでまず漢字に変換する作業員からはじまります。そして固有名詞がいっさいないので難解。
なかがきという、まえがでもあとがきでもないなかがきがよかった。なんか遺書のように思えてしまったが。
この作品が読めるくらいの読解力をつけるために日々精進していこうとおもいました。
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<P48> 満月たち
あるままをさらし、たちまちうばわれた、うかつな無防備と反射的なおもいきり、なりゆきのひきうけ、あるものでしのごうとするいさぎよさあるいはおろかさを、おろかさとわかりながらいつまでもきらいにはなれない者が、おなじおろかさをくりかえしつづけたまま死んだ一代まえの者にたむける,共感と苦笑の供花のようであった
わからない。僕の言語感覚がまだまだうぶである事を思い知った。うちのめされた。
「横書き」と多用される「ひらがな」によって、刺さる表現を使わなくても感覚が鋭敏になるのがわかる。
ただ、一方で難解で散文的な内容は文学が過去に通った道であるように思うのです。芥川賞を定点観測として眺めている僕としては、文学の現在位置がこれであるとは思えないのです。この作品は、新しくて古い。
次が読みたい作家です。
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横書き、ひらがなばかり・・・
何とか読み終えました。でも、苦痛だった。
話の内容はあまり頭に入ってこず、あらすじを掴むだけにとどまって、そこから作者が何を言いたいかを読み取ることはできませんでした。
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テレビで受賞インタビューをみて
とても知的でおかっぱも素敵!
と思ったので図書館で借りてみました。
ところが。。。
ひらがなの多用が、とても読みにくいのです。
私の読解力と根気がないのでしょう!
黒田夏子さんの世界観っていうのが
とっても不思議なものだというのはわかりました。
高年齢で小説を書いてらっしゃることをとても尊敬いたします。
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やはり最初に目を引くのは、横書きであることと、平仮名を多用したユニークな表現方法。テンポよくは進まないが、うねうねと流れる水のような印象を受ける文体は好み。
同時収録の3篇も、流石に今読むと多少の古さは感じるものの面白かった。
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全文横書き、かつひらがなが多いというのが特徴ですが、
その並びを実際に見てみて、小学生の作文みたいだなと思いました。
まだ漢字を習っていない子どもはどうしてもひらがなばかりの文章になってしまう。
失礼な表現ですが、それに近いものに見えてしまいました。
けれど、読んでみると全くそれとは別ものなことがよくわかります。
ここは漢字にしないと意味が取れなくなってしまう、
ここはこの漢字を当てないと表現したいことが伝えきれなくなってしまう、
そういう吟味がなされた上での漢字/ひらがなの表記の選択をされているので、
とても知的な印象がありました。
その上、カタカナは一切なし。
カタカナになりそうな単語はきっと日本的な言葉に全て置き換えてしまったんでしょうね。
たぶんこれでカタカナがどこかにあったら一気に世界がぶちこわしになるだろうと思います。
確かに、読みにくい。
漢字を中心にひらがな、カタカナが使われている文章ばかり読むことに慣れているから、
どうしたってそれは否定できない部分だと思います。
けれど、よく造り込まれた作品だな、と思うと引き込まれます。
作品は女の子と父親の二人の生活を順番に見せていきます。
家政婦さんが出てくるので、ある程度上流の家庭なんだろうと思います。
いくつかの場面が描かれていて、その場面が連なることで作品として成り立っている感じ。
長編小説でもなければ、短編小説でもない。
そういう印象がありました。
わかりにくいので、別のものにたとえるとするならば、
印象派の画家モネの『睡蓮』に近いようなイメージ。
あの作品もいくつか並べられて飾られていて、一枚のキャンバスでも絵としては完成している。
けれど、並べられたことでようやく表現したい世界が見える、そういう作品だと思います。
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「abさんご」は、早稲田文学掲載のをちらりとみて、とっつきづらそうだと思ったのだけれど、これは期待よりずっと面白い小説だった。言葉、というより、文章ってこんな風に柔らかくて面白いものなんだと大きな刺激を受けた。確かにやや、読みづらさはあるかもしれないが、その読みざわりがかえってこの小説に素晴らしい効果を与えていると思う。
「毬」「タミエの花」「虹」のタミエ三編も、かなり面白いものだった。作者の根幹にある何かが透けて見えそうな。妙、としか言いようがないのが「タミエの花」の胸苦しさだろうか。あるいは、「虹」のハッとする心地。なかがきは、まるで、舞台が開けてふっと日常に戻るライトのようにさえ思った。前回に比べてとてもよい芥川賞作品と、作家だ。
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文章がほぼひらがななのでせっかちな私には辛い小説でした。
読んでる瞬間から内容がこぼれ落ち結局自分が何を読んだのかすら分からずじまい。
時間をかけじっくりと向き合うと素晴らしい小説なのかもしれませんがそこまで私は出来ませんでした……
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じわりじわりと描かれ出されてゆく蜜月の崩壊に、まるでこの文体に酔っ払ってしまったような感覚で読了でした。
稚拙な印象にしたい為の平仮名多用ではなく、あわあわとした記憶のなかの風景を書き出す為の平仮名多用なのかなと。大変好み。
併録のデビュー作の終わり方がまた良かった。確かな下地を感じました。
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75歳で芥川賞を受賞した黒田夏子さん。
ひらがな使いや両開き本になったことなどが取り上げられ話題になり
私も、その独特のひらがなで紡ぎだす情景を感じてみたくて読んでみた。
<abさんご>
ひらがなで、まわりくどく、くねくねといったりきたりしている感じがして
最初はとにかく読みにくい。
しかし20ページを超えたころから、その独特の表現にも慣れ
まるで方程式が解けたように読みやすくなってくる。
そうなると、昭和の自分が体験したような、TVや映画で見たような
なんだか懐かしいような情景が浮かんでくる。
その柔らかい風景などが、独特な言い回しやひらがな文字から
やさしく伝わってくる。
でも、それは登場人物の心の闇を隠す手段だったのではないか・・・?
思春期の、純粋でもあり残酷でもある心の。。。
読了後の感想をひとことで言うならば、ある人の(黒田さんの?)
人生の日記を読まされた感じ。
<毬><タミエの花><虹>
この3作は、黒田さんが20代のころに書いたものだとか。
読み始めてすぐに、「ああ、やっぱり黒田さんってこういう人なんだ」
って、思った。
「こういう」っていうところを表現するのは難しいのだが、20代だろうが
70代だろうが、一貫して変わっていないのだなっていうこと。
情景はどれも綺麗だったり懐かしくやさしく伝わってくる。
でも、やっぱり少女の心の闇が見え隠れする。
誰にもきっと似たようなことはあるよなと思いつつ、少々嫌悪感。
そして、ラストがとどめをさす。なんとなく予感はしていたけれど。。。
正直、後味が悪い。
著者が伝えたいことと私が受け取ったことに相違があるのかもしれない。
読んでみてよかったとは思うので、まだ読んでいない人には一度読んでみることをお勧めする。
ただ、私は、こういう作品はあまり好きではない。
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著者の黒田夏子さんは、1937年生まれです。25歳の時、「毬」で第63回読売短編小説賞を受賞し、75歳で『abさんご』により、第24回早稲田文学新人賞、第148回芥川賞のダブル受賞を果たしました。
さて、『abさんご』ですけれど、本の扉には、「記憶の断片で織りなされた、夢のように美しい世界」とあります。
蚊は「かゆみをもたらす小虫」、点滴は「血管にしずくをしたたらせつづける装置」等、ほとんどがこのような具合で表現され、ひらがなを多用し、固有名詞が徹底的に排除されている、実験的な作品です。
芸術性、純度の高い作品だと思います。これぞ純文学って感じ。25歳から75歳まで、本人の「なかがき」によりますと‘半世紀,ということになりますけれど、書ける環境になかったのか、それだけの歳月を経なければ書き得なかった作品なのか、執念を感じる冬でした。
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自分の読書力で挑むには攻略の難しい一冊だった。
ストーリーはシンプルだが、その世界観を描くには、丁寧に少しずつ読んではまた戻ってを繰り返す必要があった。
この集中力を要する作業は悪くなかった。
これほど言葉と向き合ったことは無かった。
全篇が横書きではなく、最後のページから読んでいく縦書きの篇と、その間に『まえがき』、『あとがき』ならぬ『なかがき』がある作り。
寝かせて、将来また読んでみたい。
それも踏まえて、☆評価は付けないでおこう。