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江戸幕府の経済戦略
2020/05/15 20:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
松平定信といえば田沼意次と違い経済音痴という固定概念があったがそんなことはないと常識を覆してくれました
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≪目次≫
第1章 お江戸の富の再分配
第2章 改革者たち
第3章 お江戸の小判ゲーム
終章 日本を救った米相場
≪内容≫
松平定信の寛政の改革をベースに、江戸後期の日本経済をちょっと噛み砕いて紹介した本(あまりうまくいっているとは思わないが…)。
お話のポイントは二つ。江戸時代の後半は、武士が威張ることはなかったよ。幕府・武士・商人が各々お互いを理解して、三者痛み分け(もしくは三すくみ)状態で、経済的にやりくりし合っていた。ということ。この話を寛政の改革期の「棄捐令」を題材にドキュメンタリー風に紹介してます。
第3章は経済に疎い私にはややわかりにくかった。終章は、幕府が風前の灯のときに、トレーダー(相場師)は幕府公認の貨幣よりも米に目がいったが、その不安定さから1868年には米ではなく貨幣に戻ったために、明治政府は最悪の経済状態で政権を引き継がなかったよ、ということを語ってくれた。
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江戸時代の金融政策を面白く解説した本。
江戸時代の歴史研究はかなり進展していて、僕が子供の頃のイメージとは180度違った実像が語られている。この本も、そういう流れに沿った一冊で、江戸時代の金融政策という、「そんなのあったの?」みたいなところから、現代に通じる諸問題に、幕府の人々がどう対処したかが楽しく読めるようになっている。
天保の改革を主導した松平定信たちが、現代的な「チーム」として生き生きと描かれている前半が特に面白かった。天保の改革といえば、派手な生活を締め付ける……みたいな側面だけで語られているけれども、ちゃんと政策を立案して実行に移し、結果を出すために苦心しているんだなぁと、昔のことだけれど親近感を覚えてしまった。政策の失敗の理由をゲーム理論で解説するという試みも面白い。
後半は、題名にあるように小判の流通についての話になるのだけれども、正直なところ散漫な感じがぬぐえなかった。これは前半が面白すぎたという側面もあるのだと思う。
江戸時代の「名と実」を使い分けて、金を巡らせようと努力する人々の姿は、今も昔も変わらない。さらに言えば、昔の人々でさえここまで努力しているのに、今の我々は……と思う部分も多々あった。
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「市場にいかに貨幣を流通させるか、幕府(公儀)・武家・商人達の興奮のドラマ」という惹句にある通り、旧来の支配ー被支配の階級史観的な見方ではなく、集団間の均衡というゲーム論的な視点から江戸時代の経済政策を捉え直そうとした野心的かつ魅力的な内容。
江戸時代は投資がない(ないとは言い過ぎで少ない)社会。その中で商人にお金をはき出させるための「棄捐令」あるいは改鋳政策。まさに金は天下の回りもの。金が回らなくなると武士も商人も困ってしまう。一見難しそうな資料を読み下し、軽妙な語り口で一気に読ませる工夫も豊富で飽きない。お薦めの一書である。
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2013/3/30
面白かった。
悪名高い江戸の棄捐令や、金貨の改鋳などに、経済合理性とゲーム理論で別の面からの光を当てる。
芝居めいてちょっと臭いところはあるが、読み易く、心地良い。
2018/11/6
再読。
これ、この視点で映画にしてもおもしろいんじゃないのかな。
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明治維新の評価は過大すぎる。士農工商の身分制度を廃し、無能な幕閣が弱腰外交とその場限りの政治を繰り返していた状況を天皇を中心に近代的に改革した、という認識ははたして正しいのか。この本で分析される「棄捐令(借金棒引き)」「会所(公的ファンド)設立」「貨幣改鋳」という政策は、教科書的には民心を離反させた愚策の代表格として紹介されるが、筆者の分析では決してそうではない。特にチーム(松平)定信のプロジェクトの立案経緯の詳細な解説は、彼ら幕閣がむしろ有能な熱血チームであったことを窺わせる。ちょっと目から鱗。
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江戸幕府の経済政策について、噛み砕いて書かれている本。寛政の改革については秀逸。
歴史ものについてはめずらしく、数字データや統計グラフが多い
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2013/12/10:読了
おもしろかった。
昔は、銀行が無かったので、お金が商人(金持ち)に止まってしまう。
お金の量が減ると、経済が縮小する。
小判や金・銀貨幣を、改鋳すると宣言することで、商人が手持ちの
お金を使う(土地や新規ビジネス)ように仕向けることで、結果的に
改鋳により経済が拡大する。
棄捐令も同じ仕組み。
武士の借金がかさむと、経済が回らなくなる。
商人とのバランスを取りながら、商人・武士も貸借をいったん
クリアして、新たな経済が回るようにするためのもの。
借金が多すぎれば、結果としてお金が循環しない。
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ちょいとくだけすぎでしょう、と感じるところが多いし、ゲーム理論もそれほど応用されているとは思わない。が、面白い本である。まあ、これくらいのページ数ではこんなとこでしょう、納得しました。
内容的には、大変真面目な研究で、近世日本経済史、政治史、に関心のある方、政治・行政に関心ある方、また、江戸幕藩体制下の社会に関心ある方にお勧めです!
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歴史学者がゲーム理論に出会った結果、享保、寛政、天保の三大改革がおよそ50年に一度行われた借金棒引き令を、こんなにも面白く見ることができる本が生まれた。貨幣を改鋳する幕府。幕府が利益を得んがための施策と誤解されていたが、小判の退蔵をさせないため崇高な思いがあったことに感動すら覚える。金銀について「この世上の宝を、一己の私として占用し、こっそり隠し置くなんて心得違い」の一文に賛同。金は天下の回りものなのだ。もっとも銀行業のなかった江戸の話ではあるが……
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活字化された史料から近世の経済や金融の記事をつまんできて、主に寛政年間の経済政策立案過程や、元文から文政までの貨幣改鋳についてまとめた本。
定信政権が棄捐令、物価引き下げ令、七分積金、町会所設立といった政策をどのように作り上げていったかを追っているところは割と面白い。教科書だと単語を覚えるだけで終わるけど、それぞれの政策が絡み合っていたことがわかって興味深い。
ただ全体的に納得できないところが多い。借金帳消は50年に一度、世の中のリセットとしての貨幣改鋳、貨幣改鋳の目的は出目の獲得にあらず、均衡関係にあった公儀・武家・商人、などなど議論を単純化しすぎている。「金銀不融通」「国恩」といった言葉の理解や、幕府が紙幣を発行しなかった理由など、違和感を覚えるところも多々ある。
文章そのものも砕けすぎていて、読みづらいを飛び越して不愉快。全体通して軽薄に見えるし、むしろ内容の信頼性を損なう。こういった書き方は勘弁してほしかった。
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この本はおもしろい。50年に一度の借金棒引きの意味。
幕府の役人も武士だけでなく、町人の生活安定のためにいろんな施策を実施していたのだな。
ただ、やはり、武士だけだと、頭でっかちなので、町年寄のアドバイスとか、実際の経済分析から新施策を考案したり。