投稿元:
レビューを見る
葉月貴夫は、産まれた時から人並外れた美貌を有していた。それ故に不幸に遭い、幼い頃変質者に生殖器を切り取られてしまう。
子を成すことはおろか、様々な欲望を抱くこともない貴夫は、己の美貌に群がる周囲の人々のリビドーを冷ややかに見つめつつ人生を送る。
興趣をそそる読書だった。……なんて、普段使わない表現をしてみる。
物語は俗っぽさを排した表現で語られ、貴夫の視点が主であるから、貴夫周辺の人々のありふれた欲望の発露は、それがどんなにあからさまでも淡々と感じられる。
官能も耽美も求めず、日本語の美しさを楽しめる。欲を美食にのみ求めた貴夫のように。……なんてのは、個人的私感で、官能を感じる人もいるかもしれないが。
陰茎を表す日本語がこんなに多彩で純粋に驚く。
それにしても、別に言葉を尽くして褒めちぎっているわけでもないのに食べ物の美味しそうなこと。
投稿元:
レビューを見る
葉月貴夫の神々しい美貌を想像しながら読む古い言葉遣いの文章は読み応えがあった。しかし、集中しないと難しい…ながら読みができない。
森 茉莉『甘い蜜の部屋』を何故か思い出した。登場人物と文章が美しい。むつかしい。
投稿元:
レビューを見る
ひっさしぶりに読んだ御大の本。初めて読んだのが農協さん月に行くでドン引きしたのはいい思い出。
幼少期に性器を切り取られた絶世の美少年がリビドーに端を発する感情を知識としてのみ持って生きていく話。
あの時代特有のお金持ちの厳しいお父さん、おっとりしてしっかりしたお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに慈しまれ。あとから生まれた弟に忌避されながらもアガペーと美食を求める話。
でも多分テーマは破滅だと思うんだよな、人として為すべきことの一つである生殖を奪われた彼が、いかに心を満たしながら静かに終末を待つにはどうするかっていうのが強いんじゃないか。
震災の話も妙に生々しく、主人公につきまとう男の「文学的醜悪さ」は実に御大らしいものなんだと思う。なんだろう、未だ血の滴る生肉に蠅が群がるような、生理的な嫌悪感を引き出す技巧は他を圧倒する。
古めかしい枕詞のオンパレードだけどページページに注釈をつけてくださったのはとてもありがたかった。
日本語って美しいなと思った本。
またこの古めかしい言葉が彼にはよく似合う。時代に取り残されるべくして取り残された、あるいははみ出していることが当たり前であることの象徴でもあるのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
昔(約40年前)から筒井さんは私に取ってはちょっと不思議なSF作家で、時々「これは!」って作品に逢えるけど、多くは「これ何?」ってものが多く、時には★1つにしてしまいたいような作品も多かった。
この「聖痕」。最初の方は、ほらまた筒井節だって、思ってた。大体話の発端そのものからグロい! まあ、それが私の中では筒井節なので違和感はなかったけど。
ところが中盤辺りから、これが結構登場人物達に引き込まれてしまいました。ある意味、不覚^_^
結論としては、私の好きな「時をかける少女」や七瀬シリーズほどの面白さはないが、結構読みきってしまうと印象に残る作品になったような気がします。
投稿元:
レビューを見る
話は面白いんだけど、、、
なんでそんなに常用外の言葉を使うんだ・・・
すらすらと読めないので、イライラしました。
途中からは流し読みしたけど。
投稿元:
レビューを見る
常用外の単語や枕詞などが多用されているものの見開き2ページ毎に註が付けられているため読みにくさは感じず、むしろ日本語の美しい響きにうっとりしながら夢中で読み進めた。読み終わって、これはエンタメ小説だなと感じた。エンタメ系というと軽薄で軟派なイメージがあるけどそうじゃなく、限りなくいい意味でのエンターテインメントだと思った。美食、美人(作中によると美人とは美しい男性を指す言葉だそう)、美女、官能、そして俗っぽい現代の世相なども映し、日本語の美と贅を尽したゴージャスな一冊。
筒井康隆はロートレック荘以来で恥ずかしながら普段筒井氏がどんな文章を書くのか知りません…が、こういった作品をもっと読みたいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
最後の長編ですか。
ありがたく、読ませていただきました。
インタビュー(http://bit.ly/1bxMC9f)。
投稿元:
レビューを見る
正直読み難かったです。枕詞の多いこと、多いこと。百人一首が浮かびました^^:
日本語の表現の豊かさに感服しましたが、話の筋を追うのには邪魔のような気もしました。
難解な言葉と注釈と「」の無い会話と語り手が入れ替わり立ち替わりで、読むのに時間がかかり、疲れた~。
私ってこんなに言葉を知らなかったのね、と反省。
内容云々より、読み切ったことに満足してしまいました(苦笑)
投稿元:
レビューを見る
幼くして男根、陰嚢を切り取られた男の一代記。悲劇的な話になるのかと思いきや、幸福といえる人生を掴み取っていく。うまく行き過ぎの感は否めないが、三大欲の一つを完全に失うことでもう一つに秀でるということはあるかもしれない。言葉遊びと食の造詣、次を楽しみにして読み進めてしまう。御大筒井康隆の力量発揮。
投稿元:
レビューを見る
読み終えても何度も何度も読み返してしまいます。帯を見て敬遠している人もいるかもしれませんが、読まないのはもったいない。話の筋、登場人物の名前、地名、文体まで、この本の全頁一字一句全てが絢爛豪華に織り上げられた暗号です。読んだ後、語り合いたくなるのですが、議論沸騰すること間違いなし。作者がニヤリとしているのが目に浮かびます。
投稿元:
レビューを見る
冒頭のショッキングな出来事から学生時代くらいまでは登場人物それぞれに成る程なぁとかそういうもんかなぁと納得いく部分も多少はあったから難しい言葉の言い回しや難しい漢字にも耐えて読み進められたけど…。結婚、就職辺りから怪しい雰囲気になってきて結局この終わり方なに?
途中まで気付かなかった時代背景も現代やん!現代!最初は戦後間も無くぐらいかと思ってたよ。
登場人物にしろ時代背景にしろ無理矢理すぎて白けてしまった。
投稿元:
レビューを見る
冒頭の生々しい描写を電車の中で読んでいたら気分が悪くなって大変でした。
そして料理の描写を読んでいたらお腹が減って大変でした(笑)
色々と読み手が大変になる、忙しい小説です。
筒井さんの、あくまで美を基本に据えて英雄的人物を描き出そうとする姿勢は『美藝公』の頃から変わりませんね。あっちは社会でこっちはもっと精神的なものかもしれないですけど。
に、しても「悦痴」という当て字は素晴らしい(笑)。
投稿元:
レビューを見る
幼児期に大事なところを切り取られた美少年の半生記。
大御所は衰えも知らず実験的な小説を送り出してくれてうれしいです。
物語的な仕掛けはないと思いますが、言葉遊びをしまくっています。
古語(廃語や死語)を駆使して、古典調な文章だったり、現代文だったり、セリフも視点も一段落でごちゃまぜですが、なぜか物語として読めてしまいます。
だんだん、見開き左側の単語説明がだんだん多くなるのですが、辞書を引きながら書いたんでは、と思えるような同じ頭文字の出だしの単語が続くときがあります。
枕詞も使い方はともかく掛言葉は正しい感じだったと思います。
ともかく、面白かったけど、疲れました。
投稿元:
レビューを見る
物凄い設定で、衝撃的で悲惨なオープニングから始まる主人公の人生が、最後にハッピーエンドになるとは予想外だった。
印象深い…
投稿元:
レビューを見る
たまきんをちょん切られた主人公の筒井文学ってことでかなりハチャメチャなものを想像して読み始めたけど、予想に反してなんとも静謐で美しい小説でした。そして静かに読み終えて一息つくと、いやこれすごかったな、と。