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「覇権」の反義語は「従属」だ。「日本は××国に従属している=属国だ」という言説には刺激的な響きがあるし、強い反感も招く。しかし現在、こと通貨経済においては日本はおろか、世界中の殆どの国はアメリカの属国なのだと言われたらどうだろう。
貿易通商において「ドル」という特定の通貨を基準にせざるを得ず、獲得したドルを次の取引に備え一定限度手元に置き、これを米国債等に投資することでアメリカの巨額の経常赤字をファイナンスする。まことに甲斐甲斐しい属国ぶりというほかないが、著者はここで陰鬱なアジアの将来像を提示する。このまま何もしなければ、アメリカに代わってアジアでの通貨の覇権を握るのは中国であり、その時人民元に円をペッグするわけには行かない日本は極めて困難な状況に追い込まれる、と。
そのような苦境を回避するには一刻も早く(人民元が国際性を獲得する前に)日本主導でアジア共通通貨体制を構築すべきなのだが、残念ながら通貨危機を生々しく記憶するはずのアジア諸国にも、最もインセンティヴを有するはずの日本にもその危機感はない。以前、日韓関係悪化を機に両国間のスワップ協定が延長されなかったことがあるが、そのような近視眼的な意地の張り合いを理由に通貨・金融協力の枠を狭めることが将来いかに自分の首を絞めることになるか、きちんと認識する必要があると思う。