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海底に石像を沈めたら。これ以上はない静謐な美術館のようで気持ちがいい。その静けさの中で、石像はより雄弁になるような気がする。はたまた、時が経つにつれ、藻や珊瑚が付着して石像の様相は変化していく。魚が泳ぎ、生物が住み、いつしか石像はそれ自体海底の景色になっていく。アルチンボルトの絵画のように藻がかさなっていく石像の顔。時々開いてドキドキしたい写真集。
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図書館で目にとまり、一瞬で心を奪われた。
モデルとなる人々から直接型をとってつくられた等身大の彫像たちは、海の底に届く光を浴びて立つと、無音の世界で永遠の眠りについているようで、いやでも、自分の死や人類の終わりについて想像させられる。
この死と滅亡の感覚は、セメントの彫像たちに藻が生え、珊瑚が密生していく姿を見ることで、いっそう強まっていく。色とりどりの珊瑚が密生してしだいに輪郭も不確かになっていく彫像たちは、まるでポンペイ火山の噴火や原爆の閃光によって、一瞬で生ける人形に変えられてしまった人々のようにも見える。そのグロテスクさと美しさ。
なおも写真を眺め続けているうちに、自然の一部に還っていける死の幸せということを想う。もし、これほど自然をいためつけてきた私たち人類の死体がこんなふうに自然に喰われていくとしたら、それは個々の存在にとっては悲劇でも、幸福な関係といえるのかもしれない。
いろんな想像を誘われ、プロジェクトの説明も興味深く読める一冊。写真の一部はここからも見られる。
http://www.underwatersculpture.com/
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時の経過とともに彫刻の良さがかわっている。また海美術館だと展示方法はずっと同じだけど、海の中だと日や時間によって演出が自然と変わるのが神秘的でよかった。
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ネットで本書を知って借りてみた。海底にある偶然の産物ではなく、展示作品でした。人工物×自然という組み合わせが不思議な感じだけれど、廃墟とかにちょっと感覚が似ているのかも。サンゴなどが育った後はちょっと見た目が気持ち悪い。それが「自然」なのは分かるけれど...。設置直後と時間が経った後の様子(同じ作品)は連続して掲載した方が(あるいは並べた方が)時間の経過が伝わりやすかったのではないかと思う。
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『秘密の地下世界』(ナショナルジオグラフィック)で紹介されていて読みたくなった『海底美術館』(ジェイソン・デカイレス・テイラー)。
昔から古代の遺物に興味があって、本やマンガ、写真集、映画などを見てきたけれど、
本書に載っているものは現代に造られたものでありながらその雰囲気を纏っているのだから面白い。
神秘的なものとして捉え、美しさと畏れを同時に感じてくる。
その感覚で本書を見たり読んだりしていたけれど、これらが造られた背景には天然のサンゴ礁保護という自然環境保護という明確な目標があって驚いた。
というのも人間の活動によってサンゴ礁に大きなダメージを与えているらしく、彼はそれを人工サンゴ礁を作ってダイバー達をそちらに誘導し防ごうとしている。
興味から造られたただの作品ではなかった。
そういうものだとわかったあと、サンゴやそこに住む生物の関係性や
作者が海底公園を造るまでにいろんなプロセスを経ていた事を知る事ができたので本当に楽しい1冊でした。
何事もいきなりビッグなものにはなりづらい。
本人も意図しない無意識下でスキルが少しずつ蓄積されていった結果として出来上がる事の方が多いという事をも改めて知る事ができたものでもありました。