紙の本
キング流文章術
2013/09/08 17:39
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
モダンホラーの巨匠、スティーヴン・キングによる文章術指南書。
ただし、最初の3分の1ほどは、断片的なエピソードで綴るキング自身の半生記。
最初からキングの文章術についての南が始まると期待していると、肩透かしをくらう形になる。
ただ、その中に将来、ペンで生計を立てる事になるのを感じさせるエピソードもある。
やはり、子供の頃から文才の片鱗は見せていたようだ。
キングの半生についての話が終わると、いよいよ文章術についての話になるのだが、「技」は極めてシンプル。
まず、「面白い小説を書くための、"魔法"は存在しない」ということ。
"魔法"に最も近い方法は「たくさん読み、たくさん書くこと」
その後、文体、会話、ストーリー、テンポ、推敲などの話に入っていく。
その内容は多岐にわたるが、分かりやすい。
正直、英語と日本語の文法の違いで、今一つピンとこない点もあるにはあるが、それでも言わんとしている事は理解できる。
実践できるかは別問題だが・・・。
最初の方に書いてあるが、本書での指南は、キングは、こういう方法を使っている、という事にすぎない。
要するに万人に等しく当てはまるかは分からないが、自分(キング)には有効だった方法が書いてある、ということ。
本の感想を書いていたりすると、時々、自分が分かりやすい文章を書いているか、自信が無くなる事がある。
そんな時は、文章術の本を読んだりするのだが、そこに書かれている事とキングが繰り返し言っている事には共通点があった。
それは「一つの文はシンプルに」
どうやら、誰もが同じ結論に至る「鉄則」のようだ。
それと印象に残ったものがもう一つ、「公式 二次稿=一次稿マイナス10%」
キングがひたすら小説の投稿を続けていた頃、ある編集者が書いた寸評。
これを守るようにしてから、投稿作品が掲載される事が多くなったとか。
キング自身の文章に磨きがかかってきた頃に、このアドバイスを受けたのがいい結果を生むようになった、という事らしい。
いいタイミングで、いいアドバイスを受けたという「めぐり合わせ」はあったが、それも投稿を続けていたからこそ。
"魔法"がある事は期待したいが、存在しない前提でいた方が、むしろ近道なのだろう。
紙の本
スリリング!
2015/10/01 09:38
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にゃんこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
押しも押されぬ人気作家の著者が,自らの来歴や家族,自らが創作に向ける思いを,彼が世に送り出した数々の名作と同様に,テンポよく,熱く語る。
文章作法として,副詞の使い方や迫力ある表現といった「書く」ことの基礎を,具体的な文学作品を例に,丁寧な解説がなされている。また,作品の推敲の方法や,作品を書き上げたら机の中に入れて忘れておくといった,プロの作家ならではの創作のコツを惜しげもなく披露している。そして,これらの作法のノウハウの語り口は,気のいい先輩のそれである。熱い語り口でありながら,”お説教”にありがちの,押しつけがましさは全くない。素直に,キング先輩のアドバイスに従いたくなること請け合いだ。創作を志す者には,必読の書である。
また,仮に創作に興味のない人にとっても,著者の作品のファンには,この作品を読むことを強くお勧めする。「書くこと」だけでなく,名作誕生の裏側にある創作の秘密も惜しげなく披露されている。彼のファンならば,ノンストップで引き込まれること間違いない。
この本の最後の方の章では,彼が交通事故で重傷を負ったその前後のいきさつなども詳しく書かれている。彼の生還劇も,作品同様スリリングである。悲惨な事故の中でも,作家としての彼の視線は常にクールであった。彼の「書くこと」への情熱を支えるのは,この,クールな視線なのだ。頭はクールで,心はホットでいること。著者を作家たらしめているのは,文章の書き方そのものではなく,彼の生きざまなのではないかとさえ感じた。彼が生還したことで,これからも私たちは,彼の紡ぐスリリングな物語に恐怖することができる。生還に感謝!
著者のストーリー・テリングの巧みさを味わい,私も何か創作しようか。そういうドキドキ感も味わうことができる。小説好きならば,人生に一度は読むべき本だ。
紙の本
スティーヴン・キングの人柄が見える一冊
2022/12/30 16:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yy - この投稿者のレビュー一覧を見る
スティーヴン・キングのSF小説はあまり読んだ事はなかったのですが、映画の影響でスティーヴン・キング本人には興味がありました。
彼の幼少期の体験や、現在(執筆時)の状況など、興味深い内容で面白かったです。
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鬼才の原動力
2023/06/26 06:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
70代の半ばに差し掛かっても、衰えることのない創作意欲に驚かされます。「Gwendy's Final Task」の邦訳も楽しみです。
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キングによる執筆の指南本といった感じです。ストイックだなぁと思う一方で、とても利にかなったスタイル。天才の仕事場を覗いているようでワクワクしました。
読み進めていくと創作の喜びとともに、妻タバサへの愛も見えてきます。
読者として、小説家という職業に憧れることは多々ありますが、そういう心に刺さる作品でした。
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キングは云う。何故、小説を書くのか?
「読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生を豊かにするため」
安易な自己満足的作風に陥ることなく、エンターテイメントに徹するキングの作家としての厳しい姿勢、作法は、ある種「修行」にも似ている。一読すると合理的かもしてないが、奥が深く、同時に目からウロコの言である。
「語彙をふやそうと、いたずらに言葉を飾ろうとするのは、ペットに夜会服を着せるようなものである。」
「なんらかの問題意識やテーマにもとづいて書くというのは、駄作のレシピである。」
「小説は三つの要素から成り立っている。ストーリーをA地点からB地点まで運び、最終的にZ地点まで持っていく叙述、読者にリアリティを感じさせる描写、登場人物に生命を吹き込む会話である。」
もちろんこのことは、キングがベストセラー作家のとして、その修行時代、サクセス・ストーリーの中で会得したものだろう。しかし、それが単に彼ひとりの力によるものでないことは、前半の前半生を綴ったコラージュ風の自伝部分でも、わかる。デビュー作「キャリー」に対する、妻タビサの助言は有名な逸話だが、名を成したあと、お決まりともいうべき、ドラック・アルコール依存症の泥沼からの脱出を促したのも、彼女の一言だった。キングは彼女への謝辞を忘れない。作家として成功するには、家族の支えが必要だ、とも断言している。
その上で、キングは何度も云う。何故、小説を書くのか?
「書くということは、時に信仰であり、絶望に対する抵抗であるから」
1999年に自身を襲った交通事故。文字どおり九死から一生を得た彼は、こう答えた。ここにも家族の支えがあったが、そこで見つけたものは、まさにこれ。この心境に達しなかったならば、復活は出来なかったに違いない。そして、もう一つ、次のことも云っている。
「人生は芸術の支援組織ではない。その逆である」
これは「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉と表裏一体。キングが辿り着いた、悟りとも言えるものだろう。
旧版の題名は「スティーブン・キングの小説作法」。あらためてこの新訳版を読むと、それが「スティーブン・キングの文章十戒」と思えてならない。まさに文章、小説を書くための、十の(実際に書かれているのはそれ以上だが)戒め、箴言集である。
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本当いいですよね、この本。
新訳ですが、文庫はありがたい。
創作に関していえば、作曲にも通じる所たくさんあって、好きなんです。
創作に関してキングと考えが似ているからそう思うのかな?
でもとにかく事故にあっても命があって良かった!
文字抜けなど何個かありましたが、版が進めば直るでしょう。
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スティーブン・キングの本を初めて読みました。
……素晴らしいです!
私の人生で読んだ良書ベスト5に入ります。
ウィットに富んで、素軽く、チャーミングで真摯。書く者に時には厳しくエールを送り。。。
内容は自叙伝に絡めた文章教室でしょうか。
書く人でなくても楽しく読めるような気もしますが、書く気のない方はお断りのよう? です。
作者曰わく「他のことをした方が良い 車を洗うとか」
失礼ながら作品は一度も読んでいないし、映画も観ていません(ミザリーの映画のCMを若いときに見てしまってからキングの名前を聞くだけで怖くてダメです)
でも、こんなに素晴らしい作家の小説を読んでいなかった自分を恥じてしまいそうです。
今日これから書店に行って買います。できれば怖くないのを……( ̄。 ̄;)
でも今映画もあって旬だし、例としてひきあいにだされているので「キャリー」がいいのかな。
今、この本付箋貼りまくり、線引きまくりの書き込みしまくりです。
学生時代の参考書だって落書き以外はこんな真面目に書き込んでませんでした(^^;)
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ミステリー・ホラーの巨匠スティーブン・キングによる半生記的な文章読本。若き日のキングが送った苦闘の青春時代。小説家という生き方から、非常に具体的な小説技法まで、活き活きとした筆致で描かれている。面白すぎる。
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キングが好きだ、と言うと微妙な顔をされることが多い。しかし、そういう顔をする人ほどキングの本を読んだことがないのだ。読んでみなさい。
あまりに恐ろしい小説もいくつもあるけど、どの小説にも根底には人間への深い愛が流れている。キングは、善の持つ力を強く信じる人なのだ。
そのキングによる『小説作法』を10年ほど前に図書館で借りて読み、夢中で読んだ。折りにふれ、再読したい気持ちはあったがなかなか再会しなかった・・・ところに新訳が文庫本で出たと言う。即購入。
私は作家になるつもりは毛頭ないが、それでもこの本は面白い。
読むこと、書くことが好きな人なら必読書。
よくいろんな小説の帯に「キングが絶賛!」とあるけど、この人どんな本でも絶賛しちゃうねえと思っていたが、あにはからんや、本書では、実名を挙げて、数々の悪書・悪文をこき下ろしてもいる。しかし、そこにもやはり愛が感じられるんだなあ。
キングは読み始めると文字通り寝食忘れるはめになるので、大好きなのに極力避けている・・・という、妙なファンである。しかも一冊読むとすぐに違うのを読みたくなるという恐ろしい魔力を秘めている。
頭の中でなんとはなしに反芻する小説がいくつかあるが、私の場合は、その一冊がキングの『骨の袋』である。『キャリー』でも『シャイニング』でも『スタンドバイミー』でもなく。なぜかは自分もわからない。
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あとがきで役者が達意の文章と表しているが
まさにその通り。
テクニックとしては基本の域を出ないが、
一貫して「正直に」、「誠実に」、「知っていることを」
書くという姿勢が、言葉に深みを持たせている。
プロットに縛られることなく、
自分が登場人物について知っていることを誠実に書く。
そうでなければストーリーを書く楽しみは得られないと説く。
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S・キングが自身の書くことについて半生などを交えつつ語った本。
作家は自分の仕事について、通常多くを語らないところ、この本はとても親切だ。
なぜだかよくわからないが、私も何かしら書けるような気持ちになってきた。
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物語ることへの向き合い方を、ちらりと覗かせてくれる。誰にでも学べる文章作法と、誰にもわからない物語の受胎と、これまでの人生と、ひっくるめてエンターテインメントにできるのは、やはりさすが。
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面白かった。
スティーブン・キングはホラー作家だけど、ホラーは怖いから、ホラー以外のものばっかり読んできた。これもその内の一つ。
この人結構ユーモアもある人なんだなーということが分かって良かったです。
"Elements of Style"は私も読んだし、キング氏が推薦文(?)書いてるのも知ってたけど、ここまで絶賛してるとは知らなかった。
翻訳者は以前は何とか真理子っていう女の人だったけど、今回のこの本は違う人だった。変わったのかな?真理子さんの翻訳は結構好きだったので、ちょっと残念です。
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書くことを勉強すれば、読む力もつくのかもしれない。もっと本が読みたくなる本。交通事故の話はことさら笑わせようと書いたんだろうか。すごく面白かったし、妙に感動した。