裏を表に、表を裏に
2016/04/22 15:42
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投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る
志賀櫻「タックスヘイブン」に負けず劣らず、面白い。GoogleなどのIT企業が使う「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ」という節税(脱税?)スキームがあるという。多国籍企業が実質的には数%しか納税していない、と事実には驚き、あきれる。だが、こうしたタックスヘイブンを作り、拡大してきたのはイギリス、アメリカを初めとする先進国だった。テロの資金源を隠すのに使われ、世界的な金融危機を引きおこしているのに気付き、慌てて規制強化に乗り出した。今後は仮想通貨がマネーロンダリングに使われるという。人間の欲望は果てしない。
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ニュースでちらっと聞くだけだったあのニュースこのニュースにアングラマネーが関わっていることに驚き。
先に読んだタックスヘイブン書籍とはまた少し立場を異にしたものだったから、読んで良かった。
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タックスヘイブン(租税回避地)やシャドーバンキング(影の銀行)を使った、いわゆる脱税や資産隠し、麻薬や売春や賭博によって生まれ蓄えられたいわゆるアングラマネーの実態を解明。
アメリカ・イギリス・スイス・イタリアの状況を詳細に解説、その事実は驚愕に値する。
一部の大企業・特権階級・マフィアの実態が明らかにされている。
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タックスヘイブン関連の書籍は色々読んできましたが、本書は関連する歴史、政治、人物などが手際よくまとまられており非常に参考になりました。
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既読感があった。昨秋読んだ、ニコラス・ジャクソン著タックスヘイブンの闇と内容はかなりかぶっているように思える。だからこの世界の大枠を知りたいなら両方を読む必要はないと思う。
本書は、タックスヘイブンと裏経済、アメリカ系、イギリス系、最近のタックスヘイブン絡みの事件、と続き、最後にイタリアに詳しく触れている。イタリアといえば、混乱政治、マフィア、バチカンだが、それらを彩るなじみのない名前がたくさん出てきて、それらが複雑怪奇に絡み合い、まるで映画を見ているかフィクションを読んでいるかのようだ。
しかし、最後はビットコインまで出てくるので、彼岸の世界と思いきや結構身近の問題なのかもしれないと、急に現実に引き戻されるのだ。
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藤井厳喜「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」幻冬舎文庫
よく調べられている。歴史的なところを含めて客観的に。一朝一夕には書き上げられない。残念なのは索引がないところ。これがあればよく使える参考書になる。純粋に読み物として面白い。必ずしも利用者側を悪と見ていない。
自分は、タックスヘイブンは、国家間の競争に他ならないのであって、これを締め上げるために多数国家で協力しようなどというのは、談合、カルテルにほかならないと思っている。
p23.イタリア当局筋の話として、この2人は神奈川県と福岡県に住む60歳代と50歳代の男とされており、その内の1名は日本の財務省の職員であったという説も流布されている。
p42.2010年、ゼネラル・エレクトリック(GE)は140億ドルの利益を上げながら、アメリカで法人税を一切、払わなかった。この事実が大きな衝撃をアメリカ人に与えている。
p44.2008年の米国会計検査院報告によれば、タックスヘイブンを利用している83社の内、74社が、政府から多額の仕事を受注、ないし資金援助を受けていた。
p44.単に税金ばかりではなく、アメリカ大企業は、メディケアや社会保障など連邦政府に納める巨額の社会福祉費用の支払いを、タックスヘイブンを利用して回避できる。
p55.ブッシュ・ジュニア政権は、この海外利益の本国送還を「最後のチャンス」とする約束で、優遇措置を行ったのだが、その後も米大企業はダブルアイリッシュなどの移転価格操作をやめた様子はない。
p58.さて、デラウェア州で登記した企業は、この10年間で推定95億ドルの節税に成功している。しかしデラウェア州は、2011年には、この州に法人登記しているだけの企業からの税金や手数料で8億6,000万ドルの収入を得ているのだ。
p62.ワイオミング州もまた、企業に有利な法体系を備えている。ワイオミング州には、企業に情報開示を命ずるような法律が存在しないのである。そもそもこの州では、完全な匿名法人の登記が可能である。
p76.今やイギリスの主要産業として残っているのは、金融サービス用だけであると言っても過言ではない。
p81.表向きは、エルフ・システムが死んだことになっているが、未だに形を変えて生き延びているようである。フランスのミッテラン社会党政権も、このエルフ・システムを解体できなかった。フランスの対外援助担当大臣ジャン・マリー・ボッケルは、2008年1月、エルフ・システムに関して「腐敗した過去との決別には、時間がかかっている」と発言し、その直後に解任されている。2007年に、ニコラ・サルコジがフランス大統領に就任した直後に、最初に電話をした外国首脳は、オマール・ボンゴだったと言われている。
p84.現在、タックス・ジャスティス・ネットワークは、タックスヘイブンとアングラマネーに関する世界的な権威ある情報源の1つとなっている。
p91. シティ・オブ・ロンドンは、中世の自由都市の伝統を継ぐ政治的自治体である。グレーター・ロンドンから独立してるばかりではなく、実は、連合王国と呼ばれる、現在のイギリス国家とは別の政体を保持し続けているのである。
p93. シティ・オブ・ロンドン���誕生は、ローマ時代である。ローマ人が西暦50年頃にこの地にロンディニウム(Londinium)
という城壁都市を築いた。この要塞都市は、ローマ人がこの地域(ブリタニア南部)を支配する軍事拠点であった。
p94.ウィリアム征服王にしても、マグナ・カルタにしても、シティ・オブ・ロンドンがそれ以前から歴史的に保持していた自治権を再確認したまでである。その意味で、シティ・オブ・ロンドンの自治権は、国王の発行するチャーター(設立許可書)によって、生まれたものではない。
p94.シティ・オブ・ロンドンにはそもそもチャーターが存在しない。チャーターがないのだから、シティのイギリス国家との関係はいわば対等であり、少なくとも相互関係は曖昧なものにとどまる。これはタックスヘイブンとしてのシティの最大の強みである。
p99.現在もシティは、ロシア経済と深くリンクしている。規制の厳しいニューヨーク上場を嫌うロシア企業は、大体、シティで(IPO)を行っている。ユーロ・ドル市場の誕生は、純然たる違法行為から始まっている。
p100. 1945年8月、日本が降伏することにより、第二次世界大戦は終了する。イギリスは戦勝国ではあったが、これ以降、一挙に没落の坂を転がり落ちることになる。植民地は徐々に独立し、大英帝国は完全に崩壊するのである(ちなみに、大英帝国を崩壊させた最大の原因は、東アジアのイギリス領植民地を解放してしまった大日本帝国である)。
p106.このノンドミサイル(非永住者)のステイタスは、もともとはイギリスの植民地出身者を差別するために作られた法律区分であった。
p106.差別の構造であったものが、今は脱税の構造に転換してしまったのだ。なんとも皮肉なことではあるが、これもまた、大英帝国が残した遺産の1つと言えなくもない。イギリス社会の偽善や欺瞞がこんなところにもよく表れている。
p116.マカオは全チャイナから、多くの富裕層を集めているが、このカジノ自体が、マネーロンダリングの中心地となっている。マカオのカジノで儲けたことにすれば、不正蓄財したダーティーマネーのマネロンが、容易にできるからである。
p119.LIBORの不正操作問題は、英国中央銀行を含むシティ全体が関与していた共謀事件なのである。
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アングラマネーとタックスヘイブン(租税回避地)の本。Googleやアップルが利用しているダブル・アイリッシュ & ダッチ・サンドイッチのスキームを知りたくて読んだが、よくわからんやった。
但し、Googleの利益から払われた法人税は2.4%。米国のGEは、2010年に140億ドルもの利益を上げながらアメリカに納めた法人税はゼロというショッキングな事実を書いている。
2001年9.11でテロ被害を受けたアメリカはテロ資金根絶のためアングラ・マネー取締に乗り出したが、この結果2006年春頃からタックスヘブンからアメリカの金融市場に流れていた資金が急激に枯渇し、それがサププライム・ローン崩壊の引き金となった。換言すると金融ブームの原動力となった住宅バブルを支えていたのは海外のタックス・ヘブンから流入している極めて出処の怪しい金であったという記載には驚いた。
国家とグローバル企業の戦いは、今後とも続いていくのだろう。
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いやぁ〜、こんなことが起きていたとは。
世界史的にも面白い。イギリスのシティとスイスの大きな闇を知らなかったのは私の怠慢。グローバル化した社会で色の付いてないお金は黒く染まって白くなる。
UBS社員が国外に出れないとはね…
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税金払え! 貧乏人は節税のすべも知らずにお上の言う通りなす術もなく納付しています。早く総背番号導入しましょう。まいりました。
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アングラマネーとタックスヘイブン(租税回避地)について説明した本。なかなか詳しい。大企業や一流の金融機関の名前も普通に登場する。アメリカ、バミューダ、ロンドンのシティ、香港、マカオ、スイス、リヒテンシュタイン、ケイマン諸島、キプロス、カタール、イタリア。西側各国の大金持ちや企業だけでなく、ロシアマネーにチャイナマネー、そしてアラブのお金も加わり、そこで動く資金は膨大である。
例えば、グーグル。同社の利益から払われた法人税はたったの2.4%のみ。堂々と行われているその手口は本書の中で図付きで解説されているが、アイルランド、バミューダ、オランダを通じた巧妙なもの。やはり米国を代表する大企業のゼネラル・エレクトリックにいたっては、2010年に140億ドルもの利益を上げながらアメリカに納めた法人税は何とゼロ。アップルもこれらを真似て節税に励み批判を浴びている。このようなやり方が広まったこともあり、アメリカの税収に占める法人税の割合は、1950年代は23.2%だったのに、2010年にはたったの7.2%になってしまったという。
アメリカは国内にもタックスヘイブンを抱える。人口91万人の小さなデラウェア州には、全米上場企業の半数、フォーチューン500のうちの2/3、全部で94万以上の企業登記が集中している。ネバタ州やマイアミも有名。そもそも、アメリカは出て行くお金には厳しいが、入ってくるお金には比較的寛容。海外に溜まった利益を本国に送還した場合はわずか5%の法人税率しか課さないという期限つき特例を打ち出したこともある。
金融の聖地であるシティと大英帝国時代の旧植民地を結んだイギリスのハブ&スポーク型ネットワークも凄い。マグナ・カルタ以前からの歴史的な背景がある上に、金融を産業の中心にする国家戦略がそれに加わり、金融自由化が拍車をかけ、悪徳会計士と甘い会計監査たちが後押し。オフショアとオンショアの区別も無くなり、いろいろなマネーが集中するようになる。金融分野の競争力確保のため、アメリカもIBFによってこれに追随する。最近、シティはチャイナマネーの取り込みに必死で、香港ドルの発券銀行でもある2大銀行(HSBCとスタンチャート)を香港に抱えている強みを活かしてもいるという。
プライベートバンキングの長い歴史を持つスイスには秋風が吹いている。国際的な圧力の高まりでアメリカ富裕層の預金者名簿の提出を余儀なくされ、さらにLIBOR不正など次々不祥事が発覚したUBSは苦境に陥っている。ただし、カタールを中心とするアラブ世界に逃げ道を確保したりもしている。
地下経済が占める比率がGDPの35%と先進国の中で突出しているイタリア。マフィア経済に、近年は中国系移民の富が加わり、さらにローマ法王直轄で外部からはうかがい知ることができないバチカン銀行の存在も大きいようだ。
2001年の9.11のテロと2008年の金融危機をきっかけとして、テロ資金を含むアングラマネーの取り締まりや金融業界に対する締め付けは強くなり、透明性確保や規制のためにG20などを通じて国際的な合意形成や協力も行われるようになってきた。最近はネットを使った新たな方法も台頭しているが、アングラマ��ーやタックスヘイブンへの締め付けが厳しくなる流れは当面続くだろうということだ。前半ではかつて本人確認がゆるかった時代に郵便貯金の口座が様々な用途で利用されたことにも触れている。世界経済を考えるとき、アングラマネーとタックスヘイブンの存在は無視できないものであることを実感した。
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2013年の本。著者は、国際政治学者・未来学者を名乗る方である。
曰く・・・
911以降、アメリカは国際テロリストの資金源となっているアングラマネーの取り締まりを強化する。国際的コンセンサスを得た規制強化は奏効し、2006年ごろからオフショアのタックスヘイブンからアメリカの金融市場へ流入していた資金の流れが急速に枯渇する。これがアメリカの住宅バブル崩壊の引き金を引き、更にリーマン・ショックにつながった。もともと、金融ブームの原動力となっていた住宅バブルを支えていたのは、海外のタックスヘイブンから流入してくる出処の怪しいマネーだった。すべてが違法資金というわけではないが、節税資金も含めた全体的には黒に近い灰色資金。
世界経済の年間総生産は約70兆ドルだが、その4分の1はタックスヘイブンに吸収される。タックスヘイブンに存在する預金の総額は32兆ドルといわれる。世界のシャドーバンキングの規模は約67兆ドルといわれる。中央銀行やIMFなどがコントロールできない闇の資金の流れが世界経済を揺さぶる。それゆえに、各国はその規制強化に必死になる。
タックスヘイブンとは、税率が非常に低く、企業活動への規制も緩く、外国政府に対して企業や銀行の情報提供を拒否し(不透明)、非居住者の資金を大量に流入させているところ、と定義できる。タックスヘイブンの根幹は守秘法域であること。タックスヘイブン=守秘法域と定義する人もいるくらい。
アメリカはFACTAとよばれる法規制を施行し、アメリカの納税者の有する5万ドル以上の海外資産についてIRS(内国歳入庁)への報告をするよう外国金融機関に義務付けた。アメリカの個人や法人はこれにより原理的には外国金融機関を使った脱税ができなくなる。
アメリカの会社がフィリピンのバナナを日本に売る場合、フィリピンの子会社Aがバナナをタックスヘイブンの子会社Bに低価格で販売する。そして、子会社Bは高値で日本の子会社Cに売る。そうすれば、税金の安い子会社Bに利益を蓄積できる。タックスヘイブンに蓄積した膨大な資金をアメリカに持ち込むと課税される。ブッシュ・ジュニア政権は、オフショアに蓄積した利益を本国に送還した場合、法人税率を大幅に優遇するという政策を行なう。このチャンスで3600億ドルもの資金がアメリカに戻ってくる。アングラマネーを洗い出すための政策であり、この巨額資金は景気浮揚効果をもたらした。
ロンドンの中にあるシティは、ロンドン市からもイギリス政府からも独立した自治体。バチカンのような独立国ではないが、自由都市の伝統のもと、国家から独立した法体系を維持している。イギリスのタックスヘイブン・ネットワークは、シティが中核にあり、第2層として本土近海に存在する王室属領があり、第3層としてケイマン島などのイギリス海外領土があり、第4層と���てシンガポールやバハマ、香港など独立国ではあるがシティと深い関係にある小国がある。イギリス系のタックスヘイブンのグループ全体で、全世界の銀行資産の3分の1以上を占有している。
シティ・オブ・ロンドンにはロードメイヤーとよばれる独自の市長がおり、イギリス国会で作られる法律は一部適用されるものの、法律の多くがシティを完全または部分的に除外している。シティはイギリス国内のオフショアであり、税金も独自に徴収する。
シティの人口は昼間は35万人だが、居住者は1万1000人にすぎない。シティの議会であるコモン・カウンシルに選ばれる議員の80%は企業の代表者であり住民の代表者はたった20%。シティは完全な企業都市であり、金融産業によって支配される自治体。
サウジアラビアの王族の一人がロンドンに居住し、永住地をイギリスの海外領土として届け出て、すべての所得をイギリス国外で計上するとする。彼はイギリスに住んでいながらイギリスではほとんど税金を払う必要がなくなる。イギリスにはこんな人が6万人くらい住んでいる。
イギリスはHSBC(香港上海銀行)とスタンダードチャータード銀行を擁しているが、この2つの銀行は香港ドルの発券銀行でもある。
中国共産党の幹部は、違法ビジネスなどで蓄積したアングラマネーを香港にもちこみ、そこから海外の銀行口座に送金する。マカオもマネーロンダリングの中心地。マカオのカジノは、賭博で儲かった人に証明書を発行する。この証明書を買ってしまえば、ダーティーマネーをクリーンマネーにできる。その資金をマカオから香港に移し、そこから海外に逃避させる。
バチカンもマネーロンダリングを行なうのに最適な場所。マフィアはバチカン銀行にお金をもちこめば、イタリアの警察はその出所を追えなくなる。バチカン銀行から別の口座に資金を移転すれば、マネーロンダリングは完了する。バチカン銀行は宗教事業のための銀行だが、マフィアはバチカン内部の人間になんらかの報酬を与えることでバチカン銀行を利用する。
イタリアの犯罪組織は、シチリア州のマフィア(コーザノストラ)、カラブリア州のンドランゲータ、カンパーニャ州のカモッラ、ブーリア州のサクラ・コローナ・ウニータの4つがメイン。いずれも南イタリア。南イタリアは貧しく、外国の侵略を多く受けてきたため地元住民は外国の支配者に対抗するために自衛組織を作る伝統がある。政府は常に外来のもので権力者は信用ならない、という感情がマフィアを形成する。シチリア人はみずからをイタリア人とは思っていないし、シチリアでは今でもイタリア語を自由に話せない人が26%もいる。
政治家はシチリア・マフィアに補助金や公共事業などを与えることでマフィア系企業を優遇し、マフィアは政治献金や対抗馬への選挙妨害などで政治家に利益を与える。ギブアンドテイクの関係がある。
コーザノストラはアングラマネーをバチカン銀行に入金する。表面上は、個人からカトリック系慈善団体への寄付。カトリック教会は世界中で宗教施設を運営するため建設・修復に資金が必要。そこで、アングラマネーを持ち込んだ人物に関係する建設会社に仕事を発注する。こうしてアングラマネーは洗浄されて建設業者に収入と��て戻ってくる。
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世界各国の税収が極端に減少する現代経済社会。
税金は表の経済にしか、課税し、徴収するしかない。
しかしながら、タックスヘイブン(租税回避地)やシャドーバンキング(影の銀行)を使った、いわゆる脱税や資産隠し、麻薬や売春や賭博によって生まれ蓄えられた金をアングラマネーと呼称している。
闇に流れ、動く金は想像を絶する額に達している。
もはや中央銀行やIMFも制御できない闇資金の還流が世界経済を揺さぶっている。
その歴史と仕組みなどについて、詳細に述べられた著作である。
アメリカ、イギリスのタックスヘイブンの歴史、仕組み、イタリアのアングラマネー、特にバチカンのアングラマネーとマフィアとの歴史的な展開、最後に、ドイツ経済も、実は、アングラマネーの世界にどっぷりつかっている。
財政赤字などに悩まされているアメリカという一応世界経済の中心国が、上記のような闇の世界に立ち向かおうとしている現在、おひざ元のアメリカ自体も大いなる矛盾を抱えているが、ここは、世界の良識を信じ、少しでも、表の経済が立ち行くような方向に向いてほしいものである。
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読了した本がたまっています・・・
付箋部分を抜粋します
・脱税が多くなりすぎてしまえば、確かに世の中がおかしくなるが、グレーゾーンがなくなってしまえば
世の中は官僚主義となり、社会からは活力が喪失してしまう(p14)
・いわば世界経済のど真ん中に、タックスヘイブンというコントロール不可能な巨大なブラックホールが
存在しているのである(p32)
・企業利益は増大しても、本国アメリカにおける雇用を増やそうとしないのが、コーポレートランドの
もう1つの特徴である(p43)
・ケイマン諸島に本部を置く会社に勤めるアメリカ人は、解雇された時に失業保険やその他のいかなる
手当ても受ける権利がない(p44)
・脱税は一見、殺人よりも軽い罪と見られがちである。しかし、公的権力から見れば必ずしもそうではない。
国家の運営を支えているのは税金である(p70)
・日本でも、アメリカのような巨額の報奨金を伴う内部告発法を制定したらどうだろうか。もっとも、日本人の
倫理観にそぐわないかもしれないが・・・(p145)
・貧困が、犯罪組織の温床となることは、世界的な傾向であるが、これはイタリアについても真実である(p167)
・しかし国家や国際機関が提供する「安全」をはじめとする様々な公共サービスは、税金なしでは成り立たない。
税金を回避する人々が増えれば、文明社会は成立しなくなる(p254)
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個人から多国籍企業、果ては国家まで、タックスヘイブンを利用した、アングラマネーの影響は計り知れない。本書はその大きな流れを掴むのに参考になる。タックスヘイブンといえば、ケイマン諸島と思っていたが、アメリカ、イギリス、ドイツ、バチカンとその流れは底知れない。実体経済に影響を与えるに至り、ようやく各国政府も取り締まりに乗り出したという。どこまでも奥深いものだと思った。
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オフショアやアングラマネーを通して経済を読む本。
詳しく解説されているのは、デラウェア州・ネバダ州・マイアミなどの企業優遇措置をとるアメリカの都市、イギリスの中心部に位置するシティ、スイス・リヒテンシュタインのプライベートバンク、イタリアのマフィアとバチカンのつながり、など。また、ロシアとイギリス・キプロスとの関係や、中国とイタリアとの関係についても言及されていて、国際間の裏経済のつながりがある点も面白かった。