紙の本
誰にも起こり得た日常の 狂気の噴出
2015/04/04 22:13
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投稿者:wayway - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなりクールなトーンで進む物語である。
少し陰鬱な影も漂っている感じがする。
しかしながら、その当時(親の世代も、子の世代も含めて)を
知っている世代でもあるせいか、すんなりとその時代のもつ独特の空気
なりも入ってくるので、昭和から平成へと移る時代において、何
かを失ってしまった日本という国ならではの物語なのだという感じがした。
このまま繁栄し続けると信じて疑いもしなかった日本という国の、
とある一片の話であるようで、実はそうではなく誰にも起こり得た日常の
狂気の噴出であったともいえるような物語だと思う。
実際の、殺人事件を2つ絡ませているだけに、妙にリアルな感じが
して、そこに目が行ってしまうが、著者の紡ぎだすこの物語におけるその
当時の醸し出す空気にあらためて息苦しくなりもし、圧倒されもする。
何とも言えぬ読後感を、著者作品ではいつも持たせてもらうのだが、
本作品でもやはり、それは変わらなかった。
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リアル…。いたたまれないほど。「桃尻娘」とか「ふしぎとぼくらは…」もそう感じた。この先、何回も読み直すことになるだろうと予感。
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雅美はかつて東北であった事件を下敷きにしているのか...。そこに来るとは思いがけず、読後感は怖かった。また、深く考えさせられた。
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千尋と雅美、二人とも全然考えない子供なんだよねえ。だから親の価値観そのまま受け入れちゃって。その場の環境に流されて。
無気力な女の子の転落物語。
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昭和の終わりや平成の始まり、バブル期のことが書かれていてあまりピンときませんでした。幼いころから寂しい思いの積み重ねでどこか間違えてしまったのかな。忙しいことを理由に娘にあまり構わない親たち。んー、よくわからない話でした。幼いときに娘が少し不憫でした。
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【何故、どこで、どう間違ってしまったのか】北国で、それぞれに屈託を持つ母親に育てられた雅美とちひろ。無意識のうちに家族への憎悪を身に宿した彼女らの陰惨な獣の如き人生。
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二つの事件を題材に、戦後日本の歩みと、親子二つの世代にわたる四人の女性たちの人生をえがいた作品です。
同級生だった栗下正子(くりもと・まさこ)と畔崎直子(くろさき・なおこ)は、戦後の経済成長期に少女時代を送り、それぞれの人生を送ります。やがて二人は結婚し、事務用品のレンタルとリースを営む大川孝輔(おおかわ・こうすけ)と結婚した直子は、娘の大川ちひろを生み、他方運送会社を営む田村義男(たむら・よしお)と結婚した正子は、娘の田村雅美を育てます。二人の娘たちはバブルの崩壊する日本社会のなかで自分自身の居場所を見いだすことができず、運命に流されていくことになります。
もちろん本書は小説なのですが、著者の戦後日本の歴史の見方、あるいは、現代の日本における女性たちの問題についての著者の考えが、本作の下敷きになっており、前者にかんしては「貧乏は正しい!」シリーズ(全5巻、小学館文庫)、後者にかんしては『貞女への道』(河出文庫、ちくま文庫)などに通じるものがあるように思います。著者の考えが四人の人物に具体化されていておもしろく読むことができましたが、小説としてはこうした読み方はあまり適切ではないのかもしれません。また、著者の思想を示すことに重点が置かれていて、すこし図式的な印象もありますが、あつかわれているテーマ自体は興味深いものだと感じました。