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紀元前4千年からキリスト誕生近くまで続いたという古代メソポタミアの宗教に関する論考。
構成は、宗教一般の説明からメソポタミアの歴史、メソポタミアの宗教に関する文書資料の概要といった前提を踏まえて、資料を通して見えてくる古代メソポタミアの人々の宗教的な感情、その具象表現、そして宗教的な振る舞いについて紹介している。
興味深く感じたのは、唯一神ならぬ単一神という考え方。
単一神とは、複数の神々を認めながらも、特定の場面ではただひとつの神と結びつき、さらにその神々に序列をつけるという考え方。
人間界を模して神々の社会も想像されたという。
単一神の話とも繋がるが、「宗教一般と諸宗教」の章で書かれている「原始宗教」と「歴史宗教」の区別は、とても頷ける。
原始宗教が、「それを育んだ固有の文化の一側面にほかならない」(p. 8)のに対して、ある時ある場所で、それを断ち切り、放棄することを迫る人間が出てくる。
その人は開祖となり、聖なる書物が編まれ、教義や務めが定められる(ついでに狂信が生まれる)。
これが歴史宗教であり、私たちがよく知っている宗教だ。
宗教性についてはとても大切だと思いつつ、人間が想像し創造したに過ぎない特定の宗教のみを認めることに違和感を感じ続けている私としては、それは歴史宗教的なるものに対しての違和感なのだとあらためて気づかされた。