情趣の感じられる、とてもいい作品。
2015/09/28 16:01
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの話もそれぞれよかったが、特に蕪村の恋の話と、応挙の恋の話、それに綾足の『西山物語』にからむ話がよかった。
アプローチとしておもしろかったのは、蕪村の句をどうアレンジして小説に活かすかというところ。アレンジというとと誇張になるかもしれないが、架空の事情の中に句を織り混ぜたり、心情を想像して託したりする。それは、現代小説に江戸時代のものを取り入れるひとつの在り方であり、可能性だと思った。
例えば、「牡丹散って打ち重なりぬ二三片」。応挙と、彼が恋をほの寄せた女性とその夫。それぞれの恋が絵画的に表わされている。句の解釈というよりは想像の領域だし、そんな風にひとつの情景として固定するべきものでもないとは思う。けれど、小説としてはこれでいい、というより、これがいい、と感じさせられた。蕪村の俳句は絵画的とよく言われるが、その特徴をよく活かした作品だった。
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蕪村とその周辺の人々の大人の恋、というより老いの恋を描く短編集。
特に男の晩年の恋を、俳句や絵に託して作品を描く新しい試みに挑戦している。
文体は藤沢周平を彷彿させ、淡々とした感じで良い作品でした。
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与謝蕪村、本人や門人の淡い恋が語られる。いい年をした大人だって恋をするんだよと言われている気がする。その人なりに歳を重ねた恋の仕方があると。
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与謝蕪村の周辺の人を主人公としたラブストーリーの短編集。さわやかだったり、ほろ苦かったり、道なき恋で悲しかったり、様々。長編のほうが好きだけど、作者の得意とする文人や絵師の物語なので、まずは短編から葉室作品に入りたいという人にはいいかも。
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全1巻。
与謝蕪村というか、
与謝蕪村周辺の文学サロンの恋模様を
連作短編集のかたちで描いた作品。
歌を効果的に使用する手法を得意とする著者にとって、
俳人・与謝蕪村周辺を描く今作は、
面目躍如な感がある。
が。
これは読む人や、
読むタイミングを選ぶ本だと思った。
特に盛り上がりもなく、
淡々と、淡く静かに描写しているだけなので、
ぐっと引きつける部分もなく、
特に歌の知識がない自分みたいな人間には
ただ上辺をなぞるような読み方しか出来なかった。
与謝蕪村が題材なため、
いつもより、より歌が前面に出てきており、
結果、文学チックな装いだし。
歌に興味が有る人、文学的な恋が好きな人
あとは多分隠居した老人とか以外、
あまりお勧めしない。
小説・与謝蕪村ではない。
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蕪村と応挙が親しく付き合っていたとは知りませんでした。
60歳を過ぎて若い芸妓に恋する蕪村が愛おしい。
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【老境を迎えた与謝蕪村、最後の恋の行く末は】京に暮らし、俳人として名も定まり、よき友人や弟子たちに囲まれ、悠々自適に生きる蕪村に訪れた恋情。新たな蕪村像を描いた意欲作。
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憎からぬ思いを抱く芸妓を弟子にし、亡き愛妻を彷彿とさせる女に横恋慕する。本書における与謝蕪村先生は何とも人間臭く、他の登場人物も俗物的で親近感を覚える。そんな人々が繰り広げる豊かな人間ドラマが蕪村の句と結びついて味わい深い。
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葉室麟なのでそれなりレベルの作品であろうと期待して読んだとは言え、予想してたよりこれはかなり収穫モンの短編集だった。
まさかの良質な恋愛小説。そういや作者には「いのちなりけり」という傑作があったのを忘れていた。油断したぁ(いや、まぁ構えて読む必要はないにせよ)
下手なヤツが書くとつまらない連続ドラマの小説版にたいになる大人の恋、それが葉室燐の手にかかると儚く侘しくも凛とした綺麗な小説になるんだから、小説ってのは罪作りなものだなぁ
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蕪村は主人公というより、語り手だったのだろうか。
情熱的な恋であっても、どこか雨の中に佇んでいるような、わびしさや寂しさが滲んでいるようだった。
いくつもの恋の、人の心の、ままならなさが、最初から最後まで蕪村の恋を表していたような気がする。
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蕪村が主役のお話。
やっぱりキャラが立っているし、口調もお上品な町人っぽい感じで、何より俳句がたくさんで渋い魅力満載でした。
色んな恋が描かれているけれど決して恋が中心とは言い切れなくて、俳句がいいスパイスになっている。
月渓さんも円山応挙もお梅もいい味だしてる。
葉室さんのおかげで初めて時代小説にこんなにはまっています。
心の機微が本当にすてきに描かれていると思います。
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かみしめるぅ。
ゆっくりとしか、読み進めなかったん、ですが。
味わえましてぇ。
そ、して。
コレはいい‼︎今後、何度でも手にとりそうな気配。
散りばめられている俳句。
蕪村、応挙。呉春。
また、見方がかわりまするぅ。
船毎に 蕎麦呼ぶ月の 出汐哉
花守は 野守に劣る けふの月
白梅に あくる夜ばかりと なりにけり
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久々の葉室作品、恋物語は初読み。蕪村当人と弟子たち・友人を絡め、一人一人の恋情、心模様。侘・寂の美世界に散りばめられる、切なさと楔の俳句。やっぱり渋い♪。
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時代を代表する芸術家与謝蕪村。 自身の最後の恋も含めた、周囲の人々の様々な恋の形を描ききった、珠玉の短編連作もの。特に、 蕪村の弟子月渓が絵師として大成し、呉春と名乗るまでを描いた「月渓の恋」。恋する人が、家族を救うために 女衒に売り飛ばされる。面影を胸に秘めながらようやく添い遂げられ至福の時を過ごす。が、突然訪れた彼女の死。蕪村の哀歓を感じる言葉に馳せ、月渓のとった行動とは。。読みどころは、友人でもある文化人 円山応挙、上田秋成等の日々の触れあいを俳句を通して想像力逞しく繊細に描く事で、遠い存在である彼らを読者に身近な存在として浮き彫りにした事であろうか。 そして、辞世の句” 白梅にあくる夜ばかりとなりにけり ”を紐解くために書かれた作品かもしれないな~。静謐なる文体にて最後の最後までじっくり堪能。 心静かなる時を過ごす事ができますよ~。最近読んだ中でもダントツキラキラの5☆。
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京を舞台にした与謝蕪村の老いらくの恋と、蕪村の娘や弟子達の無器用なまでの恋模様をしっとりと描いた連作短編。
相手を一途に愛おしく想う様が妖しく美しく描かれてあり、読んでいるこちらも心がザワザワしてくる。
そしてそれをそっと見守る蕪村の温かな眼差しに泣ける。
短編に添えられる蕪村の俳句や絵が内容にピタリと合っていて、これまた泣ける。
蕪村の周りの恋は切ないのに粋に思えるから不思議だ。
円山応挙が恋する気持ちを「せつのうて哀しいのやけど、なにやらあたりが生き生きと見えましてなあ」と言っていた。
恋とは正にこれである!