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第二章 宇宙人 が面白かった。それぞれの職業人の仕事感、人生観。リツ君にはまだ理解できないこともありそうだけど、相手が子供だから、何か純粋に情熱を傾けて語ってしまう。そんな情景が描かれている。
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『それからはスープのことばかり考えて暮らした』のリツ君が、隣町にある『つむじ風食堂の夜』の食堂で大人たちの話を聞く話。
月舟町三部作のスピンオフ。
利発で透明な12歳の目で見る世界は
こんなにも不思議で美しい。
文房具屋、八百屋、イラストレーター、
コンビニ店員、あの帽子屋にあの豆腐屋、
あの果物屋、オカマさんも登場して、
本当にいろいろな職業の人が
リツ君に私見を話してくれるんだけど、
とてもいいなと思ったことが3つ。
1つ目は、誰もが仕事について
深い考察を持っていること。
仕事を通じて自分が果たしている役割を解釈して、
誇りを持っていることだ。
役割分担という発明の観点からいくと、
特にコンビニ店員さんの“コンビニは救急病院”って
意見は「ほお、たしかに」って思ったし、
役割への愛ってことでいえば、
花屋さんの“育てると贈るのサポート”って解釈は
すてきだなあと。
あと、“やりたくない仕事やってるやつもいるのよ”
ってのも、大事な意見だと思ったし、
わりと彼の存在に
救われる大人は多いんじゃないかな。
まだ12歳だけど、
リツ君も世界に対して深い考察を持っていて、
彼の“むかし”観には目が覚めるようだった。
2つ目は、身を置いて考えて掴んだ私見を
気前よくリツ君に分け与えてあげること。
嫌なこと我慢したり、たくさんの時間を消費して
心を砕いて、思考で濾過して、
やっとできた納得の結晶の欠片を
こともなげにリツ君にあげるのだ。
“アタシみたいになっちゃダメよ、って思うのに、
アタシが知ってること全部教えてあげたい”って
マリーさんが言ってたけど、
そんな懐深い大人たちがすてきだ。
3つ目は、
リツ君が分け隔てなく、意見を平等に聞くことだ。
職業に貴賎なしとは思うけど、
我々大人はともすると、
「ダンサー?食ってけんのかよ?」と軽蔑したり、
「新聞記者?すごいっすね!」って感心したり、
いらない先入観がジャマをして
平等に受け取れないかもな、と。
リツ君の
“僕は努力すれば豆腐屋さんになれる”という、
豆腐屋にも相応の苦労があって、
努力しないとなれないってことを
ちゃんとわかってるところがすてきだと思った。
ラストもいい。
お父さんが実はかっこいい職業人だったって、
僕が気づいたのは社会人になってからだったなあ。
おいしいが好きなリツ君はきっと
お父さんに一目置くようになって、
もしかしたら、
親の一個人としての能力や感情を客観視できた時、
こどもは一人の個人として自立するんじゃないかな
とか思った。
ほかにも、静かとにぎやかとか、
空気を読むことについてとか、
人生は考え方ひとつとか、
仕事の範囲にとどまらない
世界と人生の考察・哲学が散りばめられていて、
たった原稿用紙100枚の短い作品なのに、
考える種がたくさんで、
この作品だけちくまプリマー新書から出てることに
すごく納得がいった。
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ちくまプリマ文庫が思ったより読みやすく、図書館でペラペラとめくってみて借りた一冊。図書館に行かなければ、棚に並んでいなければ、借りなかったであろう一冊。面白かった。出会えて良かった。
あとがきを読んで、プリマ文庫のポリシーも知ることができ、良かった。
なのに、星2つって辛すぎですね?
すみません。
星新一なんかをよく読んでいる子にすすめたいかな。
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月舟町三部作の番外篇
おなじみつむじ風食堂の街が舞台なので懐かしい気持ちで読みました。
杉田比呂美さんのイラストが物語にとても合っています。
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12歳の僕は、路面電車に乗って隣町の食堂でごはんを食べる。
その時に大人の人たちに「お仕事は何ですか」と尋ねる。
話を聞いて、いろいろ考えることが楽しいのだ
1:路面電車
〇ごはんを分け合う食堂では、つかのま人生も分け合っているのかもしれない
2:宇宙人
〇宇宙人からしても、いろんな仕事のこと、その仕事が大好きなことを知るのは楽しいかも。
ちょっとBOSSのCMを思い出した。
3:百円玉
〇ポケットの百円玉のようにいろんな記憶を落としちゃってるのかもね。
…落としてることに気付いてないけど
〇静と動のサンドイッチ
〇吉田篤弘さんはクラフト・エヴィング商會の方だったのか!
そして、ちくまプリマー新書の装丁はクラフト・エヴィング商會さんだったのか
〇シリーズの他のお話も読みたいなあ
〇マリーさんの「何だろう?アタシみたいになっちゃダメよって思うのに、アタシが知ってること、全部教えてあげたいみたいな_この複雑な感じ。」
…職業はちがうけど、わかる。仕事は好きなんだけどね。
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この人の本はいつも雰囲気が良くて、出てくる人たちが厳しくも温かで、読み終わったあとなんとも言えない心地よさになごむ。とんでもない事件が起こるわけではないから何ヵ月かすると街のことと出てくる人の事以外は忘れてたりするんだけど、それがまたよくて、何回読み返しても楽しい。
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どちらを先に読むべきか迷ったのだが、
あとがきに「レインコートを着た犬」を執筆中とあったので、読む順番は本書が先で良かったのかと思う。
ちくまプリマー新書の表紙の絵は、全てクラフト・エヴィング商會が描いている。
そんな縁もあって、200冊目(本書)を吉田篤弘さんが書くことになったようだ。
月舟町シリーズの最後に読む予定の「物語のあるところ ――月舟町ダイアローグ」もちくまプリマー新書で、なんと400冊目だった。
となると、300冊目も気になりますよね。これも吉田篤弘さんで「雲と鉛筆」という作品でした。
100冊目も無視できず調べたら、これは、赤木かん子さんの「今こそ読みたい児童文学100」でした。
月舟町三部作の「つむじ風食堂の夜」と「それからはスープ…」の登場人物が総出演の本作品は、リツ君が大人たちに仕事のことを聞く話。
文房具屋も肉屋もどの人も自分の仕事に誇りを持っていて、自慢するようにリツ君に仕事の話をする。
大昔は何でも一人でやっていた。
家や家具を作り、食器や服も作り、魚を獲り、鳥や獣を捕まえて、料理もして…
生きていくためには、やらざるを得なかったのだ。
だが、人がたくさん集まって来ると、役割分担することを思いついた。
魚を獲る人、パンを焼く人、服を作る人、畑で野菜をつくる人。
やることは沢山あるから、きっと自分に合っていることが見つかるはずだ。
何かをやるのなら、自分が好きで得意なことがいい。
いや、自分の好きな事だけして暮らしていけるなんて世の中そんなに甘くない。
いろんな意見があり、いろんなヒントがある。
この本を読んだ子供たちは、大人たちの会話の中から自分に合っていそうなことを探し出すのだろう。
途中から始まった物語は、途中で終わるのがちょうどいい---。でこの物語は終わる。
吉田篤弘さんの作品はいつでも日常の一コマみたいな様子を切り取っている感じだ。
喜怒哀楽を感じることなく、プツリと終わる。
読んでいる間にいろいろと考え、なにか1つでも記憶に残ったらそれでいいのでしょう。
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『月船町シリーズ』スピンオフ。
前に出てきたリツ君が大人達にあなたの職業は何ですか?と問いかける。
商店街の大人達は皆誇りを持って働いている。
そんな風に働けるのは本当に望ましいことだなって思った。もちろんそんな人ばかりじゃない!と反論する人もいるのがいい。
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「ベストセラー小説『つむじ風食堂の夜』番外篇。食堂のテーブルで12歳の少年リツ君に町の大人たちが「仕事」の話をする。リツ君は何を思い、何を考えるか…。」
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作とデザインの仕事を行っている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞
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「それからはスープのことばかり考えて暮らした」のリツくんが主人公。
自分は既に大人だと思っていて、「むかし」のことなんかを考えながら、一人で食堂で食事を取るリツくん。クールだなぁ。町の人たちが次々に自分の仕事について語り、それについてリツくんが考えるところが好き。最後のお父さんの場面では、なるほどそう来るのかと嬉しくなった。
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「月舟町三部作」番外編。
大人の人たちは、それぞれ違うことを言うけれど、12歳のリツ君は、大人の話を聞くのが好きだ。
路面電車に乗って隣町へ出かけ、十字路の角にある食堂〈つむじ風食堂〉で会った大人のひとに、「仕事は何ですか」と聞くことにしている。
本の中で、仕事についてあれやこれやとみんなの声が渦巻いています。
親切な、月船町の商店街の人たちの話に耳を傾け、将来のこと、仕事のことを考えているリツくんが、とても微笑ましいです。
ちくまプリマー新書は、「子どもたちにひとつだけ何かを伝える」というテーマが基本なのだけれど、最後にリツ君のお父さんの〈トロワ〉というサンドイッチ屋さんの話で締めくくられていて、月船町ファンにとって、ほんとうに喜ばしい内容でした。
あとがきの、吉田篤弘さんの子どもの頃の話もとてもよかったです。
物語は、まだまだ途中で、路面電車は今も走り続けているようです。
仕事のことを語るのは難しくて、尽きることがないのだなと思います。
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「月舟町三部作」のスピンオフ小説でありながら「新書」に数えられている本です。サンドイッチ店〈トロワ〉の一人息子・リツ君が、つむじ風食堂のお客さんに仕事について話してもらい、自らの将来そして好きなことを考える、というストーリーがあの温もりある文で語られます。
美味しいものをちょっと用意して読みましょうよ。子どもや若者は自分の未来図を描く手掛かりに、大人はちょっと立ち止まって「初心に帰る」きっかけにすることができると思います。
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「月舟町三部作」の番外編。
著者、吉田篤弘さんの描く文章、世界観はなぜかほっとする。
目まぐるしく過ぎていく日々に沈んでいった、生きるのに必要ない無駄な思考、空想を拾い上げてくれるからかもしれない。
番外編である本作は、三部作とは少しテイストが違い「仕事」が1つのテーマになっていて、ティーン向けなのも頷ける。
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「少しだけ大人になった僕へ」
本作は篤弘さん作品を既読の方はご存知、月舟町と桜川を舞台に起こったささやかな物語です。
少し大人になったリツ君が、つむじ風食堂にて出会う人たちと仕事や人生について話し合ったり、いろいろなことを教えてもらったりします。
ここからは少し個人的な話になります。
私は最近人生の境目にいる気がしていて、どこかぐるぐると同じところを行ったり来たりしている日々に悶々としていました。
再来月から社会人になるし、仲の良い連中ともじきに会えなくなる。
学校もないし、あるのはバイトだけ。
就職先はの人は人当たりがいい人ばかりで、同期の面々も話しやすいやつらばかり。でもどこか漠然と、このままでいいのかなと。
仕事大丈夫かなぁ、今のうちに旅行とか行ったほうがいいかな。そう言えばアパートはどうしよう。でも引っ越すお金もないし、でもバイトで残りの学生の残り時間を使うのはちょっと。もっと去年学生らしいことすればなぁ。何してたんだ今までの自分。
とかこんな下らないことなんですが、でも今の私にとっては大事なことな気がしてならないのです。
そんな時、たまたま手に取ったこの可愛らしい本。
不思議と篤弘さんの本は、自分が助けを求めるときにそっと寄り添ってくれます。
強烈なメッセージとか教訓ではないれど、心にそっと入り込む言葉たち。
きっと救われた人は少なくないはずです。
本著はこども向けのものかもしれないけれど、篤弘さん曰く、
「子供に語りかけるということは、語りかける前に自分自身を見なおすことであり、子供に語るべきことは大人もまた傾聴すべきことで、大事なのは、子供とか大人とかではなく、初心に戻ること、「最初の思い」に戻ることなのかもしれません」
おーい少し幼い自分、あの頃は何を考えてたんだい?
少し昔のことを思い出す時間を取ってみてみようと思いました。
大人も子供も、少し昔に戻る気持ちでぜひご一読を。
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小一時間で読める本。
今、2章まで読んだ。
吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」に似てる。12歳の主人公「リツ君」がコペル君に重なる。コペル君は受動的に世の中を学ぶのに対し、リツ君の方が少し自発的。かな。
子供にとって、いろんな大人と出会い、話し、大人の世界を知っていく事も大切だなぁと感じる。友達との交流はもちろん大切。それと共に世代間交流。
大人にも大切。
リツ君の質問に考えさせられる大人をみると、子供の質問を真剣に考えることで見えてくる世界ってあるよなぁって思った。
読了。
やっぱりイイね。吉田篤弘さんの文章、好きだ。空気感。世界感。セリフ。etc……
あとがきで、吉田氏は路面電車の運転士になると決めて、小3から小4までは、妄想の世界でバスの運転士をしていたと書いてあった。結構な長いスパンで妄想世界に入り浸る少年だった模様。
なんか、小学校の中学年ってそういう時期なのかもなぁ。
図書館で借りてきたのだけれども、ティーンのコーナーに分類されていた。ちくまプリマー新書がそういうティーン向けの本を作ってるみたいです。
「子供たちにひとつだけ伝えるとしたら、あなたはなにを伝えますか」をテーマにしてるらしく…。
いいコンセプトだなぁ。
59ページの宅配便の仕事をしているシマオカさんのセリフ
「私ね、配達しながらよく考えるんです。ひとがひとを思うということ、それより素晴らしいものってないと思うんですよ。ありますか?一度、考えてみてください。たぶん、ないと思うんです。」
刺さりました。
宅配便は思いを届ける仕事。みたいです。いいですね〜
ここから2章の後半は、いろんな仕事のいろんな大人が、自分の仕事の良さを語ってくれます。
全ての仕事が尊いし、その仕事の楽しさ、やりがいを理解している大人は、とっても魅力的です。
静かに優しい気持ちで前向きになれる。名著です。