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表題作の感想。長らく復刊されなかった、作者最大の駄作との自己評価ですが、やはり山風先生の自己評価程あてにならないものは無い。一般水準からすればかなりレベルの高い、かつ山田風太郎作品の中でもなかなかの個性を放つ怪作でありました。
現代(といっても発表された当時ですが)を生きる忍者の血を引く一般青年と、ひょんなことから彼の師匠役をやることとなってしまったこれまた普通の老人が、秘伝の巻物からひとつひとつ再現させた忍法の力で、世の中にちょっとした悪戯を仕掛けてゆくという、山風版『ドラえもん』みたいな感じでした。
ここで蘇る忍法というのが、作者らしいエロ&ナンセンスな代物(流石にグロは無い)ばかり。「あらゆる印刷物を白紙に変える」とか「男を妊娠させる」とか、一体何の役に立つのやらわからぬ忍法を使って仕掛ける悪戯は、キレイゴトに隠れた人間性を暴き出し、世の中を混乱させてゆく。
ここで描かれる人間観というのが、本当に作者らしいというか、悪趣味不謹慎、露悪的ながらも「それがまた人間」という、後年のエッセイなどからも見られる、実に作者らしい視点。普段の「時代もの」で無い分、ひとつフィルタが外れて、それが顕著に出てきている感がありました。
あと、基本ギャグ小説なんですが、実にナンセンス。あと、作中発現した忍法の副作用で、登場人物の人格などが多いに変質してしまい、それを引き継ぎながら続けていくので、どんどんカオスなことになっていくのも面白い。あとはラストのサゲが実に酷いので、ある意味一見の価値あり。
値段も高いし、万人に大手を振ってオススメできる作品ではないかもしれませんが、「山風の駄作に駄作なし」の感を大いに強くすることになった作品でありました。
併録されている短編は、ショートショート程のものが殆どですが、なかなかピリッとした読み応えでした。
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山風の長編・短編はほぼ読破して、最後に残された幻の長編。この本を手にするのが宿願だったのですが、ハードコアな山風ヲタの自分でさえ最後まで読み切ることができなかったつまらなさよ…。著者の自己評価Pも納得。
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風太郎忍法帳を現代に置き換えるとどうなるか?
伊賀忍者の末裔たる主人公が相伝の巻物を元に現代の忍者として…。
いや、著者が再刊を許可しなかっただけのことはある(笑)。
本来忍法帳は殿様の指示に従って敵陣と丁々発止戦うものだが現代においては殿も居なければ敵も居ない状況で社会の理不尽に向かって忍術を駆使する訳だけれど、はてさて。
日下さんの改題にあるように同時収録されたユーモア小説の系譜として読めばそれなりのことはある。
忍法帳だってユーモア時代劇だもんね。
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再びありがとう戎光祥出版!山風自らが出版禁止にしたとはいえ、読めるならファンにとってこんなに嬉しいことはない!しかももう、このナンセンスがたまらない。「忍法、睾丸裏返し!」とか使ってみたい(笑)
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著者自身の最悪の自己評価(?)である表題作は、現代版の忍法帖。ユーモア色が強くハチャメチャなのがぶっとんでて面白いものの、展開が珍しく雑なのが残念。単行本未収録の7短編はどれも皮肉強めの味付け。