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各々の知識人・言論人の信者集めのために宗教化する若者論から脱却し、科学的な若者論を展開せよと主張。過去40年の若者論を検証しており、小此木啓吾からイケダハヤトまで論じた本は中々ないのでは?という印象。政治・経済・労働・消費・心理・現代思想・サブカル等々論者の得意フィールドに関連付けられて、無根拠にいいように語られる若者論・世代論の不毛さに警鐘を鳴らしている。
得体の知れない若者を仮想敵としていいように記号化する事により安心できるのであれば、自分探しの中高年向けの宗教としての役割は果たしているとも言える訳で、その点においては一概に否定はできないと思う。が、それが実際の政策に反映されるとなると確かに問題であり、宗教的若者論と科学的若者論は共存させつつ、分けて考える必要があるのだろう。
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様々な世代論の変遷を辿りつつ解説し、世代論から脱却しようという本。
世代論には科学的な根拠がない調査法などから導き出していて、経済社会問題の解決にはつながらないという論旨。
僕自身はそういった胡散臭さも含めて世代論の良さだと思っているので、頭の一部に根拠の希薄さを意識しながら世代論に接していけたらと思う。
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近頃の若者はけしからん!というのは、古代遺跡にも書かれているフレーズのようです。人生の先輩である中高齢者は、若者の話す言葉や行動様式が自分と異なるので、理解できないのでしょうね。理解しようとする前に、理解できないので文句を言う、というのが昔からの流れのようで現代も続いているようです。
私も若い時に、よく言われていた言葉なので自分ではなるべく使わないで、彼等の気持ちになって考えてみるようには心掛けていますが、なかなか難しいものかもしれません。
さて、この本は、この20年以上に渉って、若者がどのように捉えられてきたかを、この本の著者である後藤氏が解説しています。彼も現代の若者を否定・非難するだけでは不毛である、彼等を良く見るべきというメッセージを残しているように思いました。
以下は気になったポイントです。
・様々な立場の論客が、思い思いに若年層の「劣化」を語る言説は、1990年代終わりころから常態化している(p36)
・1960年代終わりころからの若者研究は、労働などの分野から心理的なものに移行した。日本における若者というものが上の世代とは文化的に切り離された存在であるという認識を生み出した(p49)
・1960年代後半の東京の若者文化は、60年代に流入してきた若者層によって担われた(p70)
・1984年には「新語・流行語大賞」が始まった、そのひとつに、マル金・マルビがあった(p95)
・1980年代の消費社会論が述べていたような表層的な議論で、客観的な検証も行われずに論者の立ち位置や社会的な思想が重視されていた議論が展開され、若者論は現実の若年層の姿から遊離していくことになる(p139)
・ニートとはイギリスから輸入された概念であるが、イギリスでは16-18歳の若年層を指す言葉であったが、日本では適用範囲が15-34歳になった(p170)
・日本を除く主要国は、現地通貨ベースで、平均でおよそ3%以上の名目GDP成長(経済成長)をしている(p218)
・現在の中高年世代が高い給与を得ているのは、日本型雇用の下での年功賃金の考え方があり、若いころには低い程度に抑え、それを長く勤務することで取り戻していく、子供に教育投資をする等の考え方がある(p223)
・不当に高い給料をもらっている中高年の給料を下げて、その分だけ若い世代を雇えば雇用が復活すると言う議論は、「再配分の主体」が誰かということが明示されていないので、疑問がある(p223)
・若者論については、その議論がどのような根拠に基づいているかであり、本書によって現代も若者論の成立に目を向けて欲しい(p256)
2013年12月15日作成
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印象で語られがちな若者論について、その背景、歴史を紐解いていく。
著者の言う「統計学的な事実」「データ」もまた、意図的なところを含むんじゃないの?という思いもありつつも、忘れてはいけない視点、警鐘となる一冊。
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若者論はここ四十年ほどで段階を追って変化してきているというが、僕に実感できるのは、分析よりもアジテーションに目的が変わってきている、というあたりか。だって、若者がすばらしいです、なんて言ったところで本は売れないものなあ。ついでにいうと、本は若者じゃない人のほうが恐らく読むであろうから。
ところで、僕がここ数年で読んだ本の中にも「僕ら」「僕たち」系タイトルがついているものが何冊かあった。誰を指しているのかわからない僕ら。一方で、「君たち系」本も存在するが、こっちは全然読んでいない。「君」がついているタイトルを読書記録から漁ったら、さくらももこの「永沢君」が出てきた。ああいい気分だ。ゴメンよ感想になってなくて。
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第1章を読みきらないうちにもう「あ、これは合わない」と感じ、読むのを止めようかと思いました。
でもタイトルに惹かれて手に取ったので何とか読み進めました。
データや統計のことをかなり言うなと思いましたが、一番言いたいことの一つなのですね。最も言いたいことはもちろん、従来の若者論に対するアンチテーゼなんでしょうけれど。
確かにどんな意見を述べるにせよ、論拠として客観的なデータや統計は重要です。
そこも含めて、そうだなと思う箇所も所々ありますが、私はこの本を読了してもこの方の考え方に賛成しかねます。
「自分を肯定するために他人や社会の事象をいいように取り扱い、時としてそれに対する反目を何食わぬ顔で行う従来の論客たち」を想起させる同世代もいると言うようなことを書かれていますが、著者自身はそうではないと言いきるような態度に大変疑問を感じました。
また、著者がそのような論客と決めている人々についても、決して好きな人ばかりではありませんが、私には著者の言うようには感じられません。
私が若者ではないからでしょうか(笑)
まぁ「この若いもんが!!」みたいな決めつけが許せなくてたまらないのでしょうね。その気持ちはわかる気がします。
プロフィールによれば、著者はこれから30代ですか。
これから若者でなくなる立場からの著者の若者論は、年齢を経て変化するのかしないのか気になりますね。
少しですけれど。
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東北大学大学院工学研究科
都市・建築学専攻の修士
わたしよりもよっつ上の方です
科学的分析、既存の議論に対する綿密な論証はここちいい。
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最近、若者による理解できないような事件増えてない?
例えば、そんな理由で人を殺しちゃうの!?とか・・・
多いよね?
いやいや、そんなん過去にもありましたよ・・・
20歳未満の凶悪事件の数だって統計的にかなり減ってるんです・・・
でも増えてるような印象を持つ・・・
最近の若者といえば・・・
異常、よく分からない、情けない、根性がない、非常識・・・
等々、何かしらの負のイメージが多い・・・
バッシングばっかじゃない?
最近の若者はよぉ・・・
という愚痴・・・
この愚痴、大昔からあるようですが・・・
若者を語る『若者論』が愚痴の域を超えて、社会を良くない方に動かしてないか?
というのが本書の問題意識・・・
1990年代以降、現代の若年層は、自らの主張を押し通すためのお手軽なツールとして扱われ、容易にバッシングされる存在になっている・・・
政治家や学者、文化人、果ては芸能人なんかまで、いろんな人たちが、若者の劣化、堕落を前提に、その『原因』を述べたり、それを解決するための手段を語ったりしている・・・
でもでも・・・
その多くは、客観的なデータや、信頼性の高い調査や研究を参照することのない、非科学的なものです・・・
と、著者は指摘する・・・
保守系の論客に戦後民主主義によって堕落した、とされたり・・・
ゲーム脳など、若者が異常になっているという認識を前提とした多くのニセ科学言説が出てきたり・・・
いろいろと問題がある調査なのに、ゆとり教育のせいで、学力低下、様々な能力や生活態度も劣化した、とされたり・・・
携帯やネットなど情報化社会のせいで、やっぱり異常さが主張されたり・・・
新型うつのように、実は昔からあることなのに、新型~にされたり・・・
現代の若者が置かれている状況を客観的に分析したり、自分の言説の有用性や正当性について省察しようとしないで、『若者が劣化している、おかしくなってる』という認識に基づいて、それぞれが各自、様々なことを述べている・・・
と・・・
こういう流れは90代以降顕著だけれども、その源流は60年代や70年代まで遡れる・・・
それを遡って検証するってのがこの本の眼目・・・
なぜ若者論がこうなってしまったのか・・・
その流れを振り返り、辿っていくことによって、若者論に社会や、経済、福祉などの視点を取り戻すことを目指す・・・
例えば若年層が就職できない、『ニート』が増えているとして、それは経済環境や労働環境のせいではない・・・
今の若者が気合や根性がないからだ、とか・・・
コミュニケーション能力が劣っているからだ、とか・・・
若者の心のあり方が問題なのだ、とか・・・
さも若者の側にほとんどの原因があるように決め付け・・・
若者に対しての経済環境や労働環境などを改善するような経済政策や法の整備などを後回しにされてしまう・・・
本当は上の世代の方々と同じように経済環境や労働環境のせいで苦しんでいるのにもかかわらず!!
あ��つらは違うんだ、と決め付けて同じように扱ってくれない!!
若者だって同じように苦しんでいるんだ!!
もっと客観的に、きちんとデータに基づいて、若年層にも目を向けるべきだ!!手を差し伸べるべきだ!!
という本・・・
若者について言説を発信している側にも問題ありますが、受け手のボクたちだって問題ありで・・・
若者に対しての著名人の言説って、一見してそれっぽいですし、決め付けてるからわかりやすいですし、頭に入ってきやすいですもんね・・・
マスコミが取り上げると目につく機会も多くて、何となくイメージ付けられて・・・
本当は若者全体がそうというわけではないのに、周りに一部でもそういう人がいれば、ああ、やっぱり若者ってああいう感じ(否定的なものが多い)だよね、ってなっちゃう・・・
気をつけないとドンドン勝手なイメージができてきて、勝手にラベルが貼られちゃって、そうとしか見れなくなっちゃう・・・
日本がダメになってきているのは若者が劣化してきたからだ・・・
って、誰かのせいにした方が心安らぎますもんね・・・
若者を悪役にすれば、上の世代はスッキリしますもんね・・・
よく分からない若者について、パッと見、分析しているように見えて、それっぽいことを解説している方々の意見を鵜呑みにすると何だか分かったような気になりますもんね・・・
意外に!裏づけとなるデータがないにもかかわらず!!
きちんと裏づけとなるデータがあって、意見を述べているのか、そうでないのか・・・
データがすべてではないですが、裏付けとなるデータがなければそれはそれでちょっとね…
注意しないといけませんね・・・
それを気づかせてくれた1コ下の著者に感謝・・・
この本はオススメ・・・
もちろん、若者も実際劣化(変化?)しているところもあるんでしょうけどもね…