紙の本
船長の孤独
2020/11/11 13:49
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
乗組員を守るために自ら人質になった、リチャード・フィリップスの苦悩が伝わってきます。船上を舞台にしたひとり芝居のようでもあり、水面下で進行していく交渉もスリリングでした。
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ソマリア海賊に襲われ、誘拐され、救出された船長の自伝の実話。
興味本意で買ったけど、中身は様々な教えの詰まった素晴らしいものでした。
船長というリーダーシップを求められる仕事からよいリーダーとは何かかたってますし、語ってますし、海賊に襲われたあとは精神を強く保つ大切さを語っています。
学ぶところの多い良い本でした。
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素晴らしい。
最後の数ページにぐっときた。解説もなくすーっつとフェードアウト。この色んな思いの表現の術を知らない。
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「えっ、今さら?船管に勤めてたこともあるのに?」と言うお叱りは覚悟。でも未読だったので読まないと、と言うことで香港→セブで読み切り。商船の船長(商船に限らないかも知れないが)に必要なのは統べる力、を再認識させてくれる。ウチの中国やフィリピンの船機長が同じ目に遭ったらどうなるんだろうか…。実は映画の方もまだ観ておりません。はよ観んと。そして、海運関係で未読未見の皆様、お早めに、をお勧めします。(ただし、ストーリー全体は偏ってる、という事実はお忘れ無く)
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外務省のHPによると2003年以降の世界全体の海賊事案発生件数は200〜450件の間で推移しており、そのうちシージャックの発生は10〜20件程度だったのが2008年から2011年までは50件ほどのシージャックが発生した。この間増えたのはほぼソマリア沖、アデン湾のもので海賊事案全体の半数、そしてシージャックの8割ほどを占めていた。国際的な取り組みにより2012年以降は海賊の発生を抑えており、2014年の場合9月までの累計で事案が10件、シージャックは0となっている。現在海自の護衛官2隻が派遣され1隻はアデン湾を往復しての護衛を行い、もう1隻は割り当てられた海域の警戒活動を行っている。ほかにP−3C哨戒機も2機派遣されており不審な船舶の情報提供を行っておりこの活動は同海域における警戒活動の6割を占めている。現在では最も海賊事案発生が多いのはマラッカ海峡を中心とする東南アジアであり、ついでギニア湾、ソマリア沖という順だ。
2009年3月30日リチャード・フィリップスは船長としてオマーン南岸の港町サラーラに停泊中のマースク・アラバマにキャプテンとして乗り込んだ。インド洋に面するサラーラからアデン湾の奥、紅海に入る手前のジブチを経由しそこからソマリアをぐるっと回ってケニアのモンバサまで3ヶ月間がリチャードの仕事場となる。この航路はいつも天気がよく、停泊する港も興味深い場所ばかりでお気に入りの航路だった。このときもこのルートの仕事が回ってきて運がいいと思った。1092TEU(20フィートコンテナ換算で1092本)の積載量のマースク・アラバマは全長155m、全幅25m、最高時速18ノットのよくあるコンテナ船だ。17トンの積み荷の内5tは国連世界食糧計画によるルワンダ、コンゴ、ウガンダ向けの支援物質で全てケニアのモンバサかタンザニアのダルエスサラームを経由して陸路で運ばれる。最近ではルワンダは復興し経済成長率がアフリカの中でも高くなっている様だが、90年代にはソマリアもルワンダも激しい内戦が繰り返されたところだ。ソマリアの海賊は元漁師が貧困のために海賊化したと言う話もあるが2008年以降は成功率の高さに眼を付けた組織的な海賊が主流となっている。高速モーターボートに機関銃と対戦者ロケットRPGを装備と言えばソマリア内戦での「ブラック・ホーク・ダウン」が思い起こされる。ソマリアは現在でもまともに政府は機能しておらず、国内にプントランドやソマリランドという国家らしきものもできている。ここらの話は高野秀行の「謎の独立国家ソマリランド」に描かれている。
学生時代はどちらかと言えば悪ガキでタクシーの運転手をしているときに一番チップの払いのいいのが船乗りだったと言うのがリチャードが船乗りになったきっかけだった。海事学校で規律を叩き込まれ、そしてリチャードは口うるさく手強いボスになった。ある甲板長がリチャードに最高の賛辞を贈ったことがある。「あんたは面倒くさい上司だけど、おれにはあんたが言うことが言われる前にわかるんだよ」
マースク・アラバマでのリチャードの最初の仕事はビールを求めて先を急ぐ船員を捕まえきちんと船の様子を聞いておくことだ。次いで乗船して初めの数時間船内を点検して回ると船中の扉と言う扉が開きっぱなしで侵入柵に��鍵がかかっていない。セキュリティが少し緩んでいた。4月2日リチャードは1等航海士のシェーンに「今日は抜き打ちで海賊対策訓練をやろう」と言った。たいていの航海士なら「ええっ、船長、それ、やらないといけませんか?」と言うところだがシェーンは違う「抜き打ち訓練ですか、いいですねえ」
5日にジブチについて6日に出航し海賊の影が見えたのがこの日だった。そして8日ついに海賊のボートにおいつかれ放水もむなしくはしごを用意した海賊4人が乗り込んできた。リチャードと二人の船員が人質になるが、シェーンや機関長のマイクは訓練通りに船内に隠れ船の機関と運行は渡さない。他の乗組員の捜索に行く中で一人の乗組員はうまく隠れ、続いて海賊のリーダーを逆に仲間が捕えた。そしてここからがリチャードの粘り強い戦いが始まりだった。ここからが物語のクライマックスだ。
キャプテンの責務とは何か?リチャードのモットーは「われわれはみな船のためにここにいる。われわれのために船があるわけではない。」だが実は続きがある。「ただ、船長は乗組員のためにここにいる」だからリチャードは仕事となったら面倒くさいと言われようととことんやる。おそらく見習うべきなのは海賊に襲われるまでのところなのだろう。
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2009年4月、ソマリア沖でアメリカ船籍の貨物船(まーすく・アラバマ号)が海賊にシージャックされた。フィリップス船長は乗組員を救うため単身人質となり、救命艇で海賊に連れ去られる。やがて米海軍特殊部隊SEALsが現場海域に到着。人質交渉が進展せず緊張状態が続く中、船長は見張りの隙をついて脱出を図るが……。全米を震撼させたソマリア沖人質事件の真実を、フィリップス船長自信が克明に綴った衝撃の記憶。
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●海事大学は私に”規律”を教えてくれたー当時の私に一番必要だったものだろう。そして真面目に生きることの重要さも学んだ。船上ではその場ですべえを解決する必要があり、ふざけてなどいられない。意味のない仕事などなく、すべての仕事が重要な価値を持つ。
●人は怒鳴り散らされると逆に従う気が失せるだけだという事を私自身、身に染みてわかっていたからだ。完璧をめざしたところで、やろうとしてもできない者は必ずいる。歩くことより、とにかく這ってでもまえに進むことをめざすべきだ。そうすれば、いずれ走ることも考えられるようになる
●船長がひとつのことだけにーたとえば乗組員がビールを一本か二本飲んだかどうかなどということだけにー固執するようになると、あっという間に乗組員の信頼を失う。
●怒鳴ることにエネルギーを費やすべきではない。
●この船長は船会社の顔色ばかり窺っていて、船が沈むことより本社の人間の不興を買うことを恐れていた
●もしかしたら、優秀な船長よりひどい船長から学んだ方が多かったかもしれない。
●ただひたすら乗組員をレーザービームのように集中させていた。恐怖をいっさい顔に出さないことで。~。とても無口な人だったが、彼がそばにいるだけでなんとか切る抜けられると信じられた。そんな船長だった。
●不言実行。その言葉を聞くと、私はいつもジミー船長を思い出す。海で命を落としそうな時でさえ、ゲイリー・クーパーのようにクールにブリッジに立っていた彼の姿を。
●私は船長として仕事をしているときも、乗組員がひどく奇妙なことをしたとしても誤りを正すようなことはしなかった。なぜそんなふうにしたのかをまず聞いた。他人の動機、彼らが世界をどのように見ているかに興味を持つことで、のちに直面する危機を予期することが出来た。
●私達はみな自分の忍耐力を過小評価して、恐怖心から失敗してしまう。
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"2009年にソマリア沖で海賊に襲撃された船の船長の物語。大型の貨物船の船長が、海賊から乗組員を守り、自らが人質となって過ごした数日間を赤裸々に語られる。その時、家族がどんな思いで過ごしたのかも知ることができる。
生と死のはざまでは、本当に強い精神力が無いと心が折れてしまう。
そんなギリギリの状況が語られる。
そして、海軍特殊部隊SEALsが人質を奪還して日常生活に戻れる旅は感動に満ち溢れている。
映画化されたのも当然だろう。映画は見ていないが、必ず見てみたいと思っている。"
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旅客や乗組員等、船内にいる人すべての避難が済むまで船長は船舶を
去ってはならない。
でも、ティレニア海で座礁・転覆したコスタ・コンコルディア号は
さっさと船外に逃げ出して塩害警備隊から「船に戻れ。船にはまだ
人がいる」と叱責された。
コスタ・コンコルディア号のように座礁も転覆もしなかったが、船に
乗組員全員を残したまま、船を離れた船長がいた。
アメリカ船籍の貨物船マークス・アラバマ号は、ソマリア沖を航行中に
海賊に拿捕された。リチャード・フィリップス船長は船と乗組員を守る
為に、自ら海賊たちと共に救命艇に乗り込み、貨物船を離れた。
2009年4月に発生したソマリア海賊によるシー・ジャック事件の中心
にいたフィリップス船長の手記が本書である。拿捕される数日前から
アメリカ海軍特殊部隊による船長救出作戦の成功後まで、自身の航海
や家族に対する思いや、船乗りとしての体験等を織り交ぜながら綴ら
れている。
救命艇で貨物船を離れ、海賊たちに命を脅かされながらも彼らを冷静
に観察している場面もいいが、なんといっても手に汗握るのは海賊たち
に乗りこまれた貨物船内で、以前に行った海賊対策訓練を確実に実践し、
まんまと海賊たちの裏をかき、乗組員たちを守る場面だ。
救命艇からの脱出の失敗、死の恐怖と対峙した時の心情も正直に記さ
れており、その臨場感が強烈に伝わって来る。
船と運命を共にすることで責務を果たす船長もいれば、船から離れる
ことで責務を果たす船長もいる。それが、船と乗組員を守る為であれ
ば、船長がいる場所が責務を果たす場所になるのだろう。
本書は「キャプテン・フィリップス」のタイトルで映画化もされている。
私はまだ観ていないのだが、原作を読んで俄然興味を惹かれた。そのうち
に映画も観てみよう。