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社会的影響と口コミの推進力を担保する6つの原則を事例を交えて紹介している。事例は面白いが、各原則は、それぞれ認知科学や行動経済学の表層的な実験および考察をとってきた取り留めのないものという印象。この6つの原則間の相関や相乗・相反効果について議論していないあたり、「マーケティング学」という属性の行き当たりばったり感を疑わずにはいられない。該原則の言葉を借りるなら、この分野自体がひとつのストーリーなのかもしれない(逃げの一手)。
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クチコミという捉えどころがないものに対して理論立てて説明を試みるのはすごいと思いました。
ただ、結構固い内容なので、軽い感じの書籍しか読んでこなかった私のような人にはちょっとハードルが高いかもしれません。
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マーケティングの手法、特にクチコミマーケティングの仕掛けや成功するための要因について実例を挙げて紹介している。
クチコミを生む6つの原則として
1.ソーシャル・カレンシー(Social Currency)その人が取り上げる話題は他社の目に映るその人の印象に左右される。
2.トリガー(Triggers)関連する物を思い浮かべる刺激要素
3.感情(Emoton)
4.人の目に触れる(Public)
5.実用的な価値(Practical Value)
6.物語(Stories)
その頭文字をとってSTEPPSと呼んでいる要素ごとに、実際にクチコミで広がった事例を紹介していおり、その実例は色々とおもしろかった。
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マーケティングの本。
流行ものはどんな性質をもったものなのか、分析されている。
確かに身の回りのものに当てはめてみても納得できた。
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よくあるマーケティング理論を、独自のまとめ方と研究による科学的な裏付けが具体的に書かれているため、自分の関わるビジネスへの応用が考えやすい。
〈口コミを生む原則〉
1、ソーシャルカレンシー
2、トリガー
3、感情
4、人の目に触れる
5、実用的な価値
6、物語
自身への問いをたくさんもらえて有益な一冊。
・うちに秘められた奇抜さとは何か?
・何がトリガーになるのか?
・どんな物語が構成可能か?
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■「伝染」するクチコミはこう作る
A.ソーシャル・カレンシー:取り上げる話題は、その人の印象を左右する。これを「ソーシャル・カレンシー」という。大半の人は他人からよく見られたがるため、話題に取り上げてもらうには、話し手が好印象を聞き手に与えられるようなメッセージを打ち出さなければならない。
B.トリガー:「トリガー」とは、人々が関連するものを思い浮かべるきっかけとなる刺激要素のこと。人は頭に浮かんだことから話す傾向があるため、頭に思い浮かべやすいものほど、話のネタになる機会は増える。従って、商品やアイデアは、日常の中で思い出すきっかけが多く得られるように工夫しないといけない。
C.感情:マーケティング用のメッセージでは、情報に重点が置かれがちだ。だが、多くの場合、情報だけでは不十分である。人々の行動を変えるには、特徴や事実をくどくどと繰り返すのではなく、感情に焦点を当てる必要がある。
D.人の目に触れる:私たちは他人の行動を観察し、自分の振る舞いを決める。よって、人の目につきやすくすれば、模倣しやすくなり、人気が出る可能性も高まる。
E.実用的な価値:人は他の人の役に立つことが好きだ。従って、その商品やアイデアがいかに役立つかを示せば、話を広めてもらえる。
F.物語:人々はただ情報を共有するのではなく、「物語」を伝える。従って、商品やアイデアを、人々が話したくなる物語の中に組み込むことが必要である。
G.人は実用的で便利な情報、他の人たちにも役立つニュースを伝えるのがすきなのだ。
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商品やサービスの流行にスポットを当てて、流行がどのようにして生まれるのか、そのプロセスを綴った本だ。内容はかなりボリューミーで、様々なエピソードが登場していてとても勉強になる。
ペンシルバニア大学ウォートンの教授が書いた本らしく、内容も細かく分析的で論理的に書かれている。長すぎたり細かすぎて読むのが嫌になってしまうところもあるかもしれないが、じっくり読めば間違いなく役に立つ。心理学をベースにした内容で、マーケティングや広告宣伝に携わる人などにとってはバイブルになるだろう。
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マーケティングと心理学から流行を紐解く。ウィルスの様に人から人へと広まっていく流行を分析し、様々な事例を交えて紐解いていく一冊。
特別マーケティングに興味ないの自分でも興味深く読めた。また本書でも取り上げられているチャルディーニ著「影響力の武器」を読んでいたことが本書の魅力に気が付ける一つだったと思う。またるで骨格と肉付けの様な関係だった。自分の日常にどのように活用できるかは不明だが、流れてくるCMに本書のテクニックが使用されているか気にしてみたり、日常の会話にトリガーや社会的証明なんかが入り込んでいることに気がついてみたい。
本書で取り上げられていたパンダのCM↓
https://youtube.com/watch?v=zSxaKz2dluw&feature=share
◆ソーシャルカレンシー
人に話すと自分の印象の良くなるもの(が話したいものに)
奇抜さ
インサイダー(内部者、仲間)気分にさせる
ゲーム性
・電話ボックスが入口の秘密のレストランは人に話したくなる
・黒いトイレットペーパーの奇抜性
・ガラス玉やiPhoneすら砕いてしまうミキサー動画
・映画「ブレアウィッチプロジェクト」
・特別会員制、称号やメダル、マイル
◆トリガー
関連する考えや概念などが身の回りに存在した結果、想起させられシグナルようになること
頭の中にうかぶ話のネタになるもの
・チョコバーの「マーズ」はNASAの火星(マーズ)の話題により売上増
・場所がトリガーとなり投票にも影響(学校が投票場ならば教育関係を推進する人に票が、病院が投票場ならば医療福祉を推進する人が票をより多く得られている)
・曲「フライデー」はフライデー(金曜日)に再生回数が多くなる
・ディズニーよりもチェロス(朝食にでるから)
◆感情
人は気にかかったものを共有する
畏敬の念が最も共有される
・ユナイテッド航空でギターを壊されたと訴る怒りの動画
・スーザンボイル
◆人の目に触れる
社会的証明(他の人がやっていることだから...)
・新車を買った人が近所に居ると周囲も新車を買いやすい
・「iPhoneから送信」というデフォルトメッセージは、認知度高め皆んなが使っていると暗に知らせている
・ペンやマグカップやショップバッグの粗品にロゴやメッセージを加えてトリガーの役割を
(逆効果も)
・「ドラッグを勧められたらノーと言おう」の広告が皆んなもやってるんだという誤ったメッセージに
◆実用的な価値
人は実用的な情報を有り難がり共有する
・「無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら?」=「造船の本だ」
・クーポン、セール品
・意外性、期待を超える販売促進キャンペーン
・【値引】低価格品には%、高額品には金額で割引表示した方が効果的である
◆物語
「トロイの物語」物語という入れ物
物語は情報を伝える入れ物の役割
・「三匹の子豚」には道徳的で努力は報われるというメッセージが内包されている
・破いてしまった冬物コートを直ぐに無料で交換してくれたカスタマーの対応、それが物語として流���されていく
・パンダのCM
印象の良い内容の話(ソーシャルカレンシー)をたくさん備え、話題(トリガー)になるものが存在し、感情をかき立てる効果を持ち、人目に触れやすく、実用的な価値がある物語。
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その1:ソーシャル・カレンシー(Social Currency)
ある商品やアイデアについて語っているとき、その人はどんなふうに見えるだろうか?ほとんどの人は、バカよりも利口、貧乏人よりも金持ち、オタクっぽい変わり者よりも流行に敏な人に見られたがる。着ている服や乗っている車と同じく、取り上げる話題は、他者の目に映るその人の印象を左右する。これをソーシャル・カレンシーと言う。かっこいいもの、たとえばiPhoneを粉々にできるミキサーを知っている人は、情報通の切れ者に見える。だか話題に取り上げてもらうためには、話し手がこうした好ましい印象を聞き手に与えられるようなメッセージを打ち出さなければならない。また、商品やアイデアの中に秘められた奇抜さを見つけ出すこと、人々をインサイダー気分にさせることも必要だ。そして、ゲーム・メカニクスを活用して達成感が得られるきっかけを作ったり、他人に自慢できるわかりやすいステータスシンボルを提供したりすることも大事である。
原則その2:トリガー(Triggers)
どんな思いつきから、人は商品やアイデアについて語るのだろうか?トリガーとは、人々関連するものを思い浮かべるきっかけとなる刺激要素だ。ピーナッツバターと聞けば、アメリカ人は一緒にパンにぬるジャムを思い浮かべる。「犬」という単語は「猫」という単語を連想させる。フィラデルフィアの住民なら、チーズステーキを見てバークレー・プライムの一〇○ドルの商品を思い出すかもしれない。人は頭に思い浮かんだことから話す傾向があるため、人々が頭に思い浮かべることが多い商品やアイデアほど、話のネタになる機会は増える。商品やアイデアは、日常の中で思い出すきっかけが多く得られるように工夫しなければならない。また、身の回りにあるよく知られた刺激要素との間に新しいつながりを作り、新たなトリガーを生み出す必要もある。頭の中に思い浮かぶことは、話題になることへとつながるのだ。
原則その3:感情(Emotion)
人は気にかかったものを共有する。では、人に何かを感じとってもらえるメッセージやアイデアを生み出すにはどうすればよいのか?もともと伝染性のあるコンテンツは、だいたいの場合、何らかの感情を呼び起こす。iPhoneを粉々にするミキサーに驚く。増税があるかもしれないと知って腹を立てる。感情をかき立てる話やコンテンツはよく共有される。したがって、能書きをくどくどと語るよりも、感情に焦点を当てる必要がある。だが後述するように、共有を後押しする感情がある一方、共有を消極化させてしまう感情もある。つまり、焦点を当てるべき感情を選別しなければならない。大事なのは火をおこすことだ。場合によっては、負の感情も火をおこすのに役立つ。
原則その4:人の目に触れる(Public)
ほかの人が自社の商品を使っていたり、自分たちが望んでいる行動をしていたりするところは、目に見えるだろうか?「サルは見たとおりにまねをする」、つまりサルまねという言葉は、ただたんに人間の模倣癖を指摘しているのではない。目に見えなければ何かを模倣することは難しい、ということをも意味しているのだ。目につきやすくすれば、模倣���やすくなり、人気が出る可能性も高まる。だから、商品やアイデアを広めたければ、より目に触れやすくする必要がある。さらに商品やアイデアそのものに宣伝させ、また買ったあとや利用したあとでもわかる「行動の残滓」を生み出すよう、工夫をする必要がある。
原則その5:実用的な価値(Practical Value)
役に立ちそうなコンテンツを作るにはどうすればよいか?人は他人の役に立つのが好きだ。したがって、その商品やアイデアがいかに時間の節約や、健康増進、倹約に役立つかを示せば、話を広めてもらえるだろう。ただし、世の中には情報があふれているため、メッセージが際立つように工夫しなければならない。どうすればお買い得感を強く打ち出せるか理解し、金銭面であれ何であれ、驚異的な価値にスポットライトを当て、ほかの人に伝えたくなるように専門的な知識とノウハウを凝縮させることが必要だ。
原則その6:物語(Stories)
アイデアをどのような話に包み込むことができるだろうか?人々はただ情報を共有するのではなく、物語を伝える。物語は、ギリシャ神話に出てくるトロイの木馬のように、道徳や教訓といったものを運ぶ容れ物である。情報はどうでもよさそうな話の裏側で伝達される。だから、独自のトロイの木馬を建造すること、つまり商品やアイデアを、人々が話したくなる物語の中に組み込むことが必要である。とはいえ、ただすばらしい話を伝えるのではなく、価値のあるバイラル性を持たせなければならない。人々がそれに触れずにはストーリーを語れないほどに、伝えたいメッセージをうまく筋書きの中に溶け込ませる必要がある。
1章 ソーシャルカレンシー
■ゲーム・メカニクス
ゲーム・メカニクスは、良い成果をあげた者を優れた存在であるように見せることで、ソーシャル・カレンシーを生み出す手助けをする。人は、自分が成し遂げたことを自慢したがる。
…
ゲーム・メカニクスを活用するには、人々が自分の成果を公の場で示せるよう仕向ける必要もある。もちろん、自分の言葉でその成果を伝えられる人もいるが、形があって目に見えるシンボルで他人に示せるなら、そのほうがずっと効果的だ。位置情報に基づくSNS〈フォースクエア〉では、ユーザーは自分の携帯端末を使って、現在地のバーやレストランなどを通知(チェックイン)できる。このチェックイン機能は友達づくりに役立つだけではない。フォースクエアは、チェックインの履歴に応じてユーザーに特別なバッジを授与する。六日間の期間中に他のユーザーよりも多く同じ場所でチェックインした者には、その場所の「メイヤー」という肩書きが与えられる。異なる五つの空港でチェックインすると、「ジェットセッター」という飛行機の図柄のバッジを獲得できる。獲得したバッジは、フォースクエアの各ユーザーのアカウントに表示される。さらにユーザーは、ソーシャル・カレンシーをもたらすこのバッジを、フェイスブックの自分のページに目立つように表示することもできる。
デルタ航空のプラチナメダリオン会員の友人と同様に、フォースクエアのユーザーは見せびらかすために、あるいは純粋に誇らしいがために、自分が獲得したバッジをフェイスブックに載せる。だが、それは同時にフォースクエア��いうブランドを広める行為でもあるのだ。
■希少価値と限定価値
希少価値とは、どれだけ利用可能かという点にかかわるものだ。希少なものは、需要が多い一方で生産が限られている、あるいは手に入れられる時間や場所の制約がある、といった理由ら入手しにくい。隠れ家バーのプリーズ・ドント・テルは四五席しかなく、それ以上の客は入店できない。ルーララの商品は二四時間しか、物によってはたった三〇分しか、購入できる時間がない。
限定価値もどれだけ利用可能かいう点にかかわるが、その意味合いは希少価値と異なる。限定的なものは、特定の基準を満たした者しか利用できない。ダイヤモンドがちりばめられた二万ドルのロレックスの腕時計や、アメリカ領ヴァージン諸島セントクロイ島での映画スターとの交流などを思い浮かべがちだが、富や名声にかかわるものとは限らない。知識、つまり特定の情報を知っていることや、知っている人とつながりを持っていることも、限定価値の要素となる。
…
希少価値と限定価値は、人々をインサイダー気分にさせることで、クチコミを促す。誰もが持っているわけではないものを手に入れると、人は自分が特別な存在で、高い地位にあるかのように感じる。そして、その商品やサービスに愛着を抱くだけでなく、ほかの人に教えるのだ。なぜか?他人に教えれば、自分の印象が良くなるからだ。インサイダー情報を持っていることは、ソーシャル・カレンシーなのである。何時間も並んで最新のハイテク機器をようやく手に入れた人が最初にするのは、他人に見せびらかすことだ。「このオレを、それからオレがゲットしてきたものを見てくれ!」と。
ここで得られる教訓とは?人は金銭の見返りがなくても意欲的になる、ということだ。企業経営者の多くは、従業員のやる気を引き出すには金銭的なインセンティブが必要だと考えている。人を動かすために、プレゼントやその他の特典を用意することもある。しかし、そのような考え方はまちがっている。一〇〇万ドル払うから友人に宣伝してほしいと頼まれれば、多くの人は応じるだろう。金色のランボルギーニがもらえると言われれば、どんなことでもするだろう。だが、多くの金銭的インセンティブと同じく、金色のランボルギーニを提供するには大きなコストがかかる。
さらに、人に何かをしてもらうためにカネを払ったとたん、払われた側の内発的動機づけはかき消されてしまう。
人はお気に入りの企業や商品について話すのが好きなのであり、毎日、何百万もの人が無償で自発的にそうしている。だが、カネを払うから他の顧客に宣伝してほしいと言われたとたんに、無償でそうする気持ちはいっさいなくなってしまう。商品やサービスがどれだけ気に入っているかによって、その話を人に伝えるかどうかが決まる、ということはなくなり、受け取る代金に応じて、クチコミの質や量が変わってしまうのだ。
2章 トリガー
こうした話題を持ち出すのは、身近な出来事として、まだ頭の中に存在しているからだ。ドライブインでブルドーザーを見かければ、工事の件を思い出す。運動好きの友人にばったり会えば、昨夜の大一番のことが思い浮かぶ。トリガーがクチコミを後押しするのである。
バズエージェント社のデータへと話を戻そう。「なぜ一部の商品だけがよく話題になるのか?」という疑問への答えとして、トリガーが挙げられるだろう。私たちの研究では、思い起こすきっかけが頻繁にある商品は、ほかの商品より一五%も多いクチコミを生み出す、という結果が出た。ジップロックのフリーザーバッグやスキンケア用の保湿クリームのような平凡な商品でも、消費者が頻繁に気にとめることで数多くのクチコミをもたらす。保湿クリームを使う人の多くは、少なくとも一日一回は塗るだろう。またジップロックのフリーザーバッグは、食後に残り物を入れて保存するのによく使われる。こうした日常使いの商品は、ほかのものよりも想起されやすいため、話のネタとしてもよく取り上げられるのだ。
さらに、想起しやすい商品は即時型のクチコミを多く生み出すだけでなく、持続型のクチコミも多く生み出すことがわかった。
この点で、ジップロックのフリーザーバッグは、海賊のような扮装をして講義に向かう私の対極にある。海賊姿の学者はおもしろいが、それは今日限りのことであって、明日にはもういない。一方、ジップロックのフリーザーバッグは陳腐とも言えるが、頻繁に頭に思い浮かべるものであるため、毎週のように話のネタになる。想起させるきっかけとなることで、トリガーはその場でのクチコミを生み出すだけでなく、ずっと続くクチコミをも生み出す。頭の中に思い浮かぶということは、すなわち話のネタになることなのだ。
とはいえ、重要なのは頻度だけではない。結びつきの強さとバランスをとる必要もある。きっかけとなる要素と結びつくものが多ければ多いほど、それぞれの結びつきは弱まってしまう。これは、水で満たした紙コップの底にあけた穴に似ている。穴が一つだけなら、水は勢いよく流れ出るだろう。だが穴の数が増えるほど、それぞれの穴から流れ出る水の圧力は低下する。あけた穴の数が多すぎれば、水はそれぞれの穴からポタポタしたたり落ちる程度になってしまうだろう。
第3章 感情
■畏敬
心理学者のダッチャー・ケルトナーとジョナサン・ハイトによると、畏敬とは、偉大な知恵や美、荘厳さ、力に触れたときにわき起こる驚嘆の念である。自分を超越したものに対峙して体験する感情だ。畏敬はその人の枠組みを広げ、自己超越を促す。また称賛の念やひらめきをもたらす。そして、美術や音楽の傑作から宗教改革まで、息をのむような自然景観から人間の勇気と発見の産物まで、あらゆるものによって呼び起こされうる。
畏敬は複雑な感情で、多くの場合、驚き、意外性、あるいは神秘的な感覚をともなう。かのアルバート・アインシュタインも、こんな言葉を残している。「我々が体験しうる最も美しいものとは神秘だ。これがすべての真の芸術と科学を生み出す源となる。神秘的な感情と無縁になり、不思議に思って立ち止まったり、畏敬の念にとらわれたりしなくなった者は、死んだも同然だ」
…
畏敬の念を呼び起こす記事が「最もメールされた」記事リストに入る確率は、平均よりも三〇%高かった。グレイディーの咳の記事や、ゴリラが人間のように愛するものの死を嘆き悲しむ可能性について書かれた記事のように、ソーシャル・カレンシー��実用的な価値もあまりないとみなされていた記事が、読者に畏敬の念を起こさせることにより、「最もメールされた」記事リストに入ったのだ。
第4章 人の目に触れる
■ほかの人がやっているのだから…
だいたいの人は、長年かけて培ってきた経験則に従うのではないか。つまり、満員のレストランを探すのである。混んでいるのはきっとおいしい店、と思うわけだ。ガラガラの店なら、おそらく素通りするだろう。
これは、もっと広範囲におよぶ現象のほんの一例にすぎない。人は周りにいる人のまねをしたがる。友人と同じスタイルの服を着る、ほかの人が食べているのと同じ料理を注文する、みんながそうしていると思ったら、ホテルで毎日タオルを取り替えてもらうのを控える、というように。また、配偶者が投票に行くと自分も投票に行く、友人が禁煙すると自分も禁煙する、友人が太ると自分も太る、といった傾向も見られる。どのブランドのコーヒーを買うかといっ些細な選択でも、税金を納税期間中にきちんと払うかといった重要な決断でも、人はほかの人と同じ道を選ぶ傾向がある。テレビ番組で、録音されたサクラの笑い声が使われるのも同じ理由からだ。人は他人の笑い声を耳にすると、つられて笑ってしまうことが多いのである。
人が他人のまねをする理由の一つは、他人の選択が情報を提供してくれる点にある。私たち日常生活で下している決断の多くは、少しばかり情報に恵まれているとはいえ、なじみのない町でレストランを選ぶ場合とさほど変わらない。サラダ用のフォークはどれだっけ?旅行に持っていくにはどんな本がいい?正解など知らないし、何となく答えがわかっていたとしても確信はできないのだ。
だから、そうした不確かさを払拭するために、私たちは他人の行動を観察し、自分の振る舞を決めるのである。ほかの人がやっているのなら、それはきっと正しいに違いない、と思うのだ。ほかの人は、自分の知らないこともたぶん知っている。同じテーブルの人が小さいフォークでルッコラを食べているようだから、自分もそうしよう。ジョン・グリシャムの新作サスペンスがよく売れているらしいから、旅行用にそれを買おう。
心理学者は、こうした傾向を「社会的証明」の原理と呼ぶ。
だが前述したように、サルまねという言葉は、ただ人間が他人の行動をなぞる傾向が強いと言っているのではない。他人の行動が見えなければ、そのまねはできない。だから、商品やアイデアを流行らせるには、それらをもっと周りの目に触れやすくする必要がある。アップルはノートパソコンのロゴマークをひっくり返しただけで、これを実現した。モーベンバー基金は口ひげをうまく活用することで、大きな注目と、男性特有のガンの研究のための寄付金を集めるのに成功した。
したがって、ホットメールやアップルのように、自らを宣伝する商品を開発しなければならない。ルルレモンやリブストロング・リストバンドのように、人々が商品を使い終わった、あるいはアイデアを利用したあとでも認識できる行動の残滓を生み出さなければならない。目に見えないものを見えやすくする必要があるのだ。人の目に触れるように作られたものは、人気を呼ぶために作られたも同然なのである。
5章 実用的な価値
本書で論じる伝染性の6原則のうち最も実践しやすいのは、この実用的な価値かもしれない。もともと多くのソーシャル・カレンシーを備えている商品やアイデアもある。だが、平凡なミキサーの動画をソーシャル・カレンシーのあるものにするには、それなりの労力と創造性が必要である。トリガーとの結びつきを作ったり、感情をかき立てたりするのにも、工夫が要る。だが、実用的な価値を見出すことは難しくない。考えられうる商品やアイデアのほとんどすべてには何らかの役に立つ要素がある。時間の節約や倹約方法、幸せになるためのヒント、健康増進の秘訣などはどれも「使える情報」だ。したがって、まず自分たちの商品やアイデアになぜ人が引きつけられているのかを考えれば、実用的な価値とは何かという根本的な感覚をつかめるだろう。
それよりも難しいのは、抜きん出た存在感を示すことだ。おいしいレストランや便利なウェブサイトはたくさんある。数ある中で、自分たちの商品やアイデアを目立つようにしなければならない。そのためには、驚異的な価値にスポットライトを当てることや、一〇〇の法則を使うことが必要だ。またバンガードのように、専門的な知識とノウハウを凝縮させ、その情報とともに自分たちの名前も知ってもらえるようにしなければならない。そして、人々が「使える情報」として話題にせずにはいられないほどに、自分たちの商品やアイデアが役に立つことをアピールするのである。
第6章 物語
クチコミを生み出そうとする際に、多くの人が失念している重要な点が一つある。話題にしてもらうことにこだわるあまり、人々が何について話しているかという一番大切な部分を見失っているのだ。
だから、売り込みたい商品やアイデアと無関係なコンテンツを作ってしまうという問題が生じるのだ。人々がコンテンツについて語ることと、そのコンテンツを作った企業や団体や個人について語ることとの間には、大きな違いがある。
バイラル性は、ブランドや商品にとってのメリットが物語と一体化したときに最大の真価を発揮する。そうしたメリットがエピソードに深く絡み合っている場合、人はそこに触れずに話を進めるわけにはいかなくなる。
むすびに
■STEPPS
ソーシャル・カレンシー:人は自分の印象が良くなるものを共有する
トリガー:頭の中に思い浮かぶことは、すなわち話題になること
感情:人は気にかかったものを共有する
人の目に触れる:人の目に触れるように作られたものは、人気を呼ぶために作られたも同然
実用的な価値:使える情報は話題になる
物語:どうでもよさような話の裏側で情報は伝達される
■着眼点
●ソーシャル・カレンシー
・自分たちの商品やアイデアについて語ることで、その人の印象は良くなるか?
・内に秘められた奇抜さを見つけ出せるか?
・ゲーム・メカニクスを活用しているか?
・人々を部内者のような気分にさせられるか?
●トリガー
・背景を考慮しているか?
・自分たちの商品やアイデアのことを人々が思い起こすきっかけとなるものは何か?
・いかにして商品やアイデアの生息環境を開拓���、より頻繁に思い浮かぶものにすることができるか?
●感情
・感情に焦点を当てているか?
・自分たちの商品やアイデアについて語ることは、感情をかき立てるか?
・いかにして火をおこすことができるか?
●人の目に触れる
・自分たちの商品やアイデアは自らを宣伝しているか?
・人々は、それを利用している他人の姿を目にすることができるか?
・できない場合、いかにして目に見えないものを目に見えやすくすることができるか?
・利用したあとでも認識できる「行動の残滓」を生み出すことはできるか?
●実用的な価値
・自分たちの商品やアイデアについて語ることは、他人を手助けするのに役立つか?
・いかにして、驚異的な価値にスポットライトを当てたり、知識と専門性を凝縮させたりして、他人に伝えたくなる便利な情報にできるか?
●物語
・自分たちにとっての「トロイの木馬」は何か?
・自分たちの商品やアイデアは、人々が共有したくなる、より大きな物語やエピソードの中に組み込まれているか?
・その物語やエピソードはただバイラル性を持っているだけでなく、価値のあるものか?