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歴史小説を書いている父親に、子供でも読める本を、と願った娘。
それが『この世界』の始まりになった。
話は、これが真実、という感じに淡々と進んで行きます。
そのせいなのか、わくわくする、という感じもなく
思い描いてみると白い世界で人が動いている、という感じ。
いきいきとはするのですが、地の文が淡々としているせいか
ものすごく浮き彫りにされたように思えます。
『外』からやってきた子供を匿った『銀』に、それを知って
子供の特権を振りかざす『キツツキ』は、何となく
仕事を取り上げたのが分かる感じです。
肩書きに踊らされている状態。
まだ後に起こる事が想像できていない、というのも。
結局うやむやに終わったかのようですが
これは想像力が足りないせいでしょうか?
そして『お父さん』はどうなったのでしょう?
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弟25回ファンタジーノベル大賞・大賞受賞作品。
装丁に惹かれ手に取り、クリスマスに合わせて読みました。
冒頭から作品世界へとぐいぐい引き込んでくれる。
まるでエンデを読んだときのようなあの気持ちを想起させられる。
ちょっとお堅い文章の綴り方が独特ですね。
物語全体にどこか硬質な空気を纏い、ファンタジックなだけでなく温もりと冷たさの同居した作品。
この温と冷の抑揚の付け方がなかなか好みです。
あのラストはぞっとしたのですが深読みし過ぎでしょうか?
嫌いな閉じ方ではありませんが。
余談になりますが、これがファンタジーノベル大賞最後の大賞作品ということで非常に寂しいです。
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自ら創造した町に迷い込む親娘のファンタジー小説。
前半は王道的なファンタジーの展開で文章も文学的で大作的予感を持ちました。
後半からは保守的な社会批判が根底に流れているような感じになりました。
主要登場人物が絞られている分、読みやすく、展開もわかりやすかったです。
自ら創造した町が独自の歴史と変化をしている点も親娘への説明を通じて理解しやすかったです。
ラストは保守の町からの解放される感じではじけたところは好感が持てますが、肝心の登場人物が一人置き去りになっているような気がします。
全体としてもミステリーやリーガル小説的雰囲気もあり、ちょっとのサスペンスとアドベンチャーを効かせて、いい仕上がりの作品だと思います。
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可愛いお話かと思いきやって感じやった。
なかなかしっかりしたお話やった。
最後がさわやかでよかったよー。
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お父さんと子供の関係が根底から好きになれなかったので、この嘘くさい世界が本当につまらなかった。天秤座の星の名前のついたズベンエスカマリこの子が嫌いだ。
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第25回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。この文学賞受賞作品は当たり外れが少ないので読み逃さないようにしているのですが、本作に限っては登場人物に魅力が乏しくストーリー展開も不自然で外れとしか言いようがありません。
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つらい時、いつも傍らにあった物語。もし、本当にその中で暮らせるなら――。クリスマスイブの夜、最愛の娘が家出した。どこに?六年前、父親が贈った童話の中に。娘を探すため、父は小説世界へと入り込む。しかしそこは、自らが作り上げた世界と何かが決定的に違っていた・・・。人は、どうして物語を読むのだろうか? その答えがほんの少し見えてくる、残酷で愛に満ちたファンタスティックな冒険譚。
設定は面白いです。ファンタジー大賞作品ということで期待も大きく、わくわくしながら終盤まで読めました。自分の居場所が分からなくて迷子のような気持ちになるのはこの年頃にはよくあるよねえ・・・あの痛々しくてどうしようもない感情がまさかの報われて(?)しまった形の物語。「戻ってきた」と感じる娘と影の父。キツツキの子も生意気だけど憎めない。暗い過去を持つ銀色と娘が共鳴したような感じなのは分かるにしても、両方お父さんはないだろう娘さんよ~。ラストが尻切れトンボすぎてかなりがっくり。結局この登場人物たちはみんなどうなったの?影のパパはどこ行った??途中まで良かったのにもったいなさすぎる。
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登場人物の女の子は作中作にのめり込んでしまい、それがこの物語の発端であり核心部なんだけど、俺はこの作品にそこまでのめり込めなかっったのが残念。
なんだか殻が固いと言うか、おっ入り込めたなと思ったらすぐリズムを狂わされるというか、調子っぱずれのメロディーを横で聞かされると言う感じの違和感が所々に見受けられて…、キャラ設定も物語世界も消化できない部分が多いし。
ただラスト1行は、落とし方として秀逸、しっかり決まった落語のサゲにも似た終わり方は良かった。だからこそ、このサゲに持ってくるまでの話をもうちょっとしっかり作って欲しかったなぁ
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初めて読んだ作家さんで、最初は文体にとまどいを覚えたけど、なんとか読み終えることが出来ました。クリスマスの時期にオススメな1冊です。
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クリスマスイブの夜、愛娘カマリが忽然と姿を消した。
カマリは小説家である父親が贈った、童話の世界に入り込んでしまったのだ。娘を探すため父もまた、物語の中へ足を踏み入れる事に―。
父が娘の為に書いたのは、サンタクロースや金と銀の角を持つトナカイ達、そしてキツツキの子が出てくるクリスマスの可愛らしい物語。
そしてカマリは実際に、童話の世界で彼らに出会う。
トナカイやキツツキの子、という「称号」を持つ、贈り物を届ける配達員である「人間」の彼らに。
小さな娘に向けて書いた物語だから難しい設定うんぬんはなく、ただ楽しい話として書かれた童話。
けれどきちんと描かなかった事で物語の住人達にいたる所にしわ寄せが来て、歪みが生じてしまう。
カマリが小さい頃から読み、愛したその物語は、実際に足を踏み入れてみると予想もしなかった違いに気付く。
戦争や宗教、決して綺麗なだけで終わらない歴史を刻んできた世界。
でも確かに、描いた物語の中に生きる人達がもしも存在するのなら、簡単に書いた設定の帳尻合わせをするのはさぞ骨の折れる作業だろうなと思う。
優しい金色配達員、いつも周り(主にキツツキの子)に振り回されている銀色配達員。
そしてキツツキの子である特別配達員・ギイ。彼の生意気さといったらもう。その大人を小ばかにしたような口ぶりが、いっそ清々しい。彼のその頭の切れる悪ガキっぷりとは裏腹に、自分を異分子だと言って涙を流す、弱々しく繊細な一面には思わずハッとさせられる。
そんな中、不憫なのは「影」となってしまったカマリの父親。
娘を愛し育て、その行方を必死に探したのに、報われず。その世界で銀色をあっさり父と慕うようになってしまうカマリ。
娘を失い、影として漂う彼は結局最後どうなったんだろう。
読み終わった後も、なんとなくほろ苦さが残る。
つまるところラストシーンを見るかぎり、赤いスノーウェアを着たカマリが、サンタクロースになったという解釈で良いのかな。だからこそ銀色も初めて彼女に会った時に「おかえり」と咄嗟に声をかけたのかも。
カマリは物語の読み手であり、また同時にその物語の主人公でもあったという事かな。
「君を守るのは僕じゃない。忘れないで。君の信じるものだけが、君を守る」
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作中作の使い方や文章は好きなのだけど、常識への挑戦だと無理やり自分を納得させながら読むのは少ししんどかった
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タイトルからホンワカした物語を想像してましたが全然違っていました^^;
内容だけでなく色々と思うところはありますが、ともあれ自分にとっては間違いなく「ファンタジー」だし、全体としては好きな作品ですね。
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父親の書いた童話の世界に入り込んでしまった10歳の少女が、予想外に変化してしまったその世界で様々な経験をしていくファンタジー。
最近興味をもった作家で立て続けに読んでいるのだが、本作はデビュー作ということもあって全体的に描ききれていなく、かなり青い。
ただ、登場人物はみな生き生きとして魅力的で、ところどころ『ジュンのための6つの小曲』に通じるきらめきを感じる。何より、ふわふわした安易なファンタジーではないところがいい。章ごとの長いタイトルからは、村上春樹が思い起こされた。
追記
本作品ではないが、芥川賞に初ノミネートされたとのこと。『リリース』から遡って読み始めた作家だが、今後も追い続けたい。
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クリスマスだからファンタジーもいいかなと思って手に取ったのは、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
クリスマスイブの夜に家出した愛娘が向かった先は、六年前のクリスマスに父親が彼女のために作って贈った童話の中。そして、娘を探すために父親もその中へと入ってゆく。「届ける」をキーワードに、親子それぞれが逡巡しながらスピード感をもって展開する物語は、かわいらしくもあり、酷でもあり。
この親子が物語の中に入って行ったように、たまにはファンタジーの世界に入りこんで現実から離れてみるのも悪くない。
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時節柄ピッタリ、と思い借りてみた。
『無限の玄』で2018年の三島由紀夫賞を受賞した作家の日本ファンタジーノベル大賞受賞デビュー作ということで、期待値を上げ過ぎてたかも知れない。今一つ物語にも入り込めず、登場人物にも感情移入できないまま読み終えてしまった。
父親が書いた物語の世界に入り込んでしまった娘、娘を探してその世界に影となって迷い込んでしまう父親、父親が書いた物語と大きく異なっているその世界の謎、といったブッキッシュな世界観はすごく好みではあるのだが。
「どっちも前例のないことで、どっちも突拍子もないことで、どっちもおんなじように話したのに、それでもそっちは真実で、こっちは嘘になるんだな」歴史と物語、事実と虚構をめぐるキツツキの子が洩らす慨嘆を描き切るにはちょっと色々不足している感、とは厳し過ぎ?クリスマスなんだし、もっと慈愛があった方がいい?