紙の本
オカルティズム
2020/11/09 15:57
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投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在、UFOについて、未確認飛行物体という言葉が廃れてきて、何らかの「現象」として考察するようになっていますが、ユングなどの先行研究が知られているにもかかわらず、日本ではあまり広まってない考えのようです。
そんな後進国日本で、本書は堂々たる研究書として、世界に恥じないものと思います。
何かについて、考えるって大事なことです。
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奇跡的に復刊されたUFO本の名著。「人はなぜ円盤を見るのか」という疑問に取り組んだ復刊部分の真摯で軽やかな姿勢が好感が持てる。西洋オカルティズムや日猶同祖論、柳田國男・南方熊楠の山人論争などの他界に魅せられた人々に、民俗学的視点で切り込むエッセイや論考もスリリングで興味深い。懐疑派、否定派、肯定派を問わず、全ての人にお薦めしたい一冊。
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「本書は空飛ぶ円盤の本である」。しかし「円盤に乗っているのは灰色の宇宙人で、アルファ・ケンタリウスからやってきた可能性が強い」と言っている本ではない。「宇宙人は僕たちを誘拐しているばかりか、人間にまぎれこんで暮らしている」と言う本でもない。その一方で、「円盤なんてのは無知蒙昧な人々の作り上げたたわごとだから、相手にしないように」と言う本でも決してない。では、どんな本なのか。
「空飛ぶ円盤の世界は魑魅魍魎の跋扈する伏魔殿である。訪れたひとは数多いが、無事に戻ってくることはめったにない」。そこで、無事に戻ってきた(?)著者に耳を傾けることになるのだが、UFOのなんたるかを解き明かしていくうちに、日本人が第三世界の住人であることまでもがハッキリと見えてくる、これはスゴイ本だ!
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人はなぜUFOや宇宙人を見るのか。
著者は実際の報告事例を丁寧に解きほぐし、アブダクション、黒衣の男、UFOカルトなど現代社会に怪しくうごめくオカルト事例を分析してゆく。
妖精伝説などとの類似性を引きつつ、その時代のオカルト的言説が生まれ、伝播してゆく背景が明快に解き明かされていく過程は爽快。
しかし一方、事例から余計な言説の尾鰭が剥ぎ取られていくことで、そこにはどうしても既知の概念では説明できない何かが残る…そう、我々の知らない「何か」が空を飛んでいるのでは?
というのが著者の見解。なんだこれは。
泥沼のようなジャンルに果敢に挑み、デタラメと切って捨てられるような資料にも誠実に向き合った一人の男の記録として評価したい。
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UFOが大好きです。子供のころは現象そのものを不思議がってましたが、いい歳になってからは(当たり前ですが)なんでこんなものを見てしまうんだろう?という、社会的・文化的コンテクストの在り様のほうが興味の中心です。
そんな僕にはピープルズ著「人類はなぜUFOと遭遇するのか」が究極の一冊ですが(絶版なのが惜しい)、日本人にも面白い人がいました。UFO関連事象を真っ向から捉え、妖精譚や現代ストレス、レイシズムなどと関連付ける第1部はしびれるほど面白い。一方でオカルト方面に一気に舵を切る第2部以降には最後までのめり込めず、流し読みで終了。他にも面白いUFO社会学な本、ないかなあ
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UFO関係では知らぬものがない伝説の本。砕けた口調の読みやすい本でありながら、科学的なスタンスをちゃんと保ち、巻末にちゃんとUFO本の書誌を用意しているという意味でできがいい本。最初にUFOと妖精などの小さい人々、怪物などの目撃談を交互に提示し両者の区別がつかず、発光現象、拉致などのポイントが共通していることから、体験者の文化的フィルターで妖精に見えたり宇宙人に見えたりしているだけに過ぎない可能性を提示する。
続いてMIBや宇宙人の東洋人的特徴に見られる人種差別観などが紹介され、アメリカをやわらか目の民俗学的、社会心理学的な視点で論じた内容になっている。
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稲生平太郎、本名・横山茂雄。
作家で、英文学者、奈良女子大教授。
「何かが空を飛んでいる」
非常に興味深い本でした。
これ、UFO研究本。
でも、矢追ディレクターのようなUFO研究ではありません。
著者にとって、UFOが実在するかどうかなんてあまり興味なし。
UFO映像の9割は説明がつくと書いているように、ほとんどを否定。
そういう本ではなく、
UFO現象について、文化人類学や民俗学、宗教学、心理学、社会学ほかの視点から考察している優れた本です。
・UFOに乗っている小人は、妖精伝承。
・UFOの中で受けた身体検査やインプラント(何かを埋め込まれた)という体験は、実生活で受けた虐待体験を退行催眠によって思い出したもの。
・人はわけの分からない世界に立ったとき、陰謀理論に頼りがち。世界は操られている、などの感覚・・・・これ、マスコミが政治と結びついて国民を操っている、みたいな理屈に似てますなあ(北原の感想)
・「ラエリアン・ムーヴメント」が言う救済者は、天才、エリートたちによる世界統治の思想と結びつく。
・欧米で語られる地球の救世主や創造主とされる宇宙人は、多くの場合、金髪碧眼。レイシズムと結びついている。
・UFO現象の一つに、「MIB」がある。men in black.
ある日、黒いスーツを着た男たちがやってきて、意味不明のことを言ったり、○○を返せと言ったり。そして、すっと消えていく。時に何か証拠の品も残していく。著者は、これに関しては分析に手間取っている。
いやあ、実に面白い。もっとじっくり読みたい。
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11月12日
「影の水脈」
「他界に魅せられし人々~『妖精の誘惑』のためのノート
稲生平太郎著
国書刊行会
8月に読んだ「定本 何かが空を飛んでいる」に収められた著作を読みました。
「何かが空を飛んでいる」は、復刊で、単独ではなく、一緒に上記2作を収めています。本文424ページのうち、「何かが空・・」は150ページほど。この2作の方がかなり長かった。8月に読まなかったので、また借りて読み切りました。
作者は作家にして奈良女子大教授。「何かが・・」では、UFOの研究ではなく、UFO現象を整理し、人類学や宗教学、民俗学などの視点から解釈をしている。UFOを信じているUFO研究家ではない。
今回呼んだのは、2作品とも、オカルティズムやスピリチュアリズムについて、歴史上の有名文化人(作家、学者)を取り上げながら、オカルティズムの“思想史”的考察を行っている。本人は、「エッセイ」だとしている。
「影の水脈」は外国人、「他界に魅せられし人々」では日本人、柳田國男、南方熊楠などを取り上げている。
「影」では、火星(宇宙)からのメッセージや、地底世界、ヒスイが割れた時に現れる像など、広範囲にわたって取り上げている。
「他界」では、日本の先住民族に関するもの、山人に関するもの、さらには四谷怪談なんかも出てくる。
今回は「何かが空・・」とは違い、本題から外れる部分も多く、また、文体も懲りすぎて、伝わる内容が文字量に比して少ないように感じた。
しかし、「何かが空・・」同様、稲生氏の“おたく”的視点、研究には惹かれるところが多い。
(メモ)
西洋近代オカルティズムは、1848年3月末、ニューヨーク州ハイズヴィルにある小さな農家で始まった。一家の12歳の娘が指を鳴らすと、叩音(ラップ)がそれに合わせて鳴った。3歳上の姉も面白いから加わった。母親が、半信半疑で娘の年齢を尋ねると、叩音がその回数で当てた。母親は娘二人を別々の離れたところに預けたが、それぞれの先でもこのラップ現象は起きた。この現象を一目見ようと人々が押し寄せた。(159-160)
柳田國男は、「明治の今も諸州の山中には我々日本人とまったく人種が異なり、山に生まれて死す人間が住んでいる」と山人について語った。南方熊楠はそれを受け入れなかった。その論争が続くが、柳田は少しずつ態度を変えながらも、最後まで山人の否定はしなかった。(370~)
ジョージ・ローレンス・ゴムの研究によれば、イギリスは先住民として非アーリア系民族がいて、後に到来して征服者となるアーリア諸民族、すなわち、ケルト、ローマ、サクソンがいるが、それぞれの文化が残存し、層として複雑に重なりあって変化発展してきた。(384)
四谷怪談は、実際に起こった事件をもとに鶴屋南北が書いた。そのもとの話を最も忠実に伝えているものの一つが「四谷雑談」と思われる。坪内逍遙鑑選「近世実録全書」に収められている。
それによると、お岩さんは器量も性格も悪く、男子の居なかった田宮家を継ぐために浪人の伊右衛門に婿入りさせたが、お岩がいやになった伊右衛門は紹介された妾と婚礼をするためお岩の毒殺をはかるが、死んだとは記録されず、行方不明になる。30年後に現れ、2男1女を含めた伊右衛門の一家に復讐。伊右衛門は最後、長持ちの中で鼠に食い殺されるところまでいく。お岩の怨霊は、伊右衛門個人にではなく、田宮の家そのものに取り憑き、あくまで自分がその主としての主張をした、とのこと。(415-417)