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本書は子どもの将来の成功の決定要因を科学的根拠を元に学際的に論じている本である。かねてより、経済学者のジェームズ・ヘックマンをはじめとした科学者が幼児教育の重要性、具体的には認知能力(学力、IQなど)より非認知能力(忍耐強さなど)が備わった子どもの方が将来高収入を得たりする確率が高いという議論を実証的にしてきたが、本書では身近な例を用いながら分かりやすく、教育経済学や認知科学、神経科学などを元に学際的に説明している。さらに、先述したような非認知能力の重要性のみならず、+αな内容までも網羅されており、ある意味「かゆいところに手が届く」内容となっており、とても満足できるものである。
この本での内容は、主にアメリカにおけるものである。従って、もし日本にこのような内容を応用するのであれば、もちろん共通して説明できる内容もあるが、行動経済学と同様に社会やカルチャーの違いから日本の子ども向けに科学的に実証分析を重ねた上で“変形”させる必要がある。もっとも、日本は未だに精神論的な非合理的教育が未だに存在しているように思えるので、このような科学的なアプローチをもっと大いに浸透させて行く事が期待される。
そこで、少なくとも日本では従来の教育社会学の膨大な理論研究が存在しているが、それらを道しるべとしてそれらの理論を参考にしながら実証していったら、まさに理論と実証の両輪が相まって効率的な社会科学的研究となりうり、同時に社会貢献も甚大であると思う。いずれにしても、今後の日本での応用がとても楽しみな分野であると言える。
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NYでも幼稚園受験は大変だそうで。
「頭がいい子」が決してその後の人生で「成功」するわけではない。
じゃあ、どういう子が「成功」するのか、そんな子に育てるために、有効な手立てはあるのか、あるとすれば何なのか。
という問いに、自身も3歳の子どもを持つジャーナリストが挑み、この書籍ではいくつかの重要なヒントが私たちに示されています。
高等修了同等資格取得者と、高校の卒業者を比較すると、知力は同等だが、大学の卒業率、年収、失業率、離婚率、ドラッグ使用率で差が出る
そうした差を生んでいるのは、認知的スキルとは異なる、非認知的スキル。たとえば好奇心、自制心(学校に残る)、社会性
非認知的スキルは伸ばすことができる
子供時代の逆境、によるストレスが、発達段階の体や脳にダメージを与える。「実行機能」(緑の文字で書かれたred、を読んで何色で書かれていたか答える)に関わる
幼少期のストレスに絶大な解毒剤となるのは、母ラットの行う「なめたり毛づくろいをしたり」といった、愛着行動
→人間の場合は親へのプログラムが有効
マシュマロテストにおける動機づけ
目に見えるインセンティブがなくとも知能検査に真剣に取り組める資質そのものが価値を持っている
気質の分析 ビッグファイブ
協調性
外向性
情緒不安定性
未知のものごとに対する開放性
勤勉性
ナレッジ イズ パワー プログラムで策定された気質のリスト
やり抜く力
自制心
意欲
社会的知性
感謝の気持ち
オプティミズム
好奇心
人が目標を設定するときに用いる戦略は三つある
空想、思案、この二つの組み合わせ
(チェスは特に何か生み出していない、不毛な活動ではないか、という筆者に対して、プレーヤーから)
チェスのゲームはわたしたちの存在の自由を賛美するものである。
わたしたちが自分の行動を通して自分自身をつくる機会に恵まれていることがよくわかる。
全体を通して、アメリカの教育政策がトライアンドエラーを繰り返していること。
非営利団体の活動ぶりが印象的。
(さわ)
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面白くて一日で読み終わった。
三流の子育て層向け啓発本みたいなタイトルだけど、内容はしっかりとした本。
教育や保育や子育てや子どもに関わる人は全員読んだ方がいい。
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久々に興奮しながら読んだ本。性格は直せるし、頑張れる子は自制心、やりぬく力、好奇心、誠実さから生まれる。小さい頃に子供が困った時、即時的に対応できたかどうかも大事だそう。何と無くわかる。後半のアメリカの低所得層と進学、頑張り切れる子の問題は、日本でもすでに問題となっている。できることを頑張りたい。
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かつて「日本には一つだけ埋蔵された資源があります。それは、勤勉性です」と吉田茂が打ったように、究極は勤勉性。IQが高くても低くても、やっぱり勤勉性。
勤勉性、やり抜く力(Grit)など、子供の中に眠る資質を確信し、そこにターゲットを絞って引っ張り出してあげるためには、大人こそ、そこに価値を置いていなければならないと痛感させられた一冊。
日本のヤンキー漫画も真っ青なシカゴのギャングだらけの学校や、十代の出産が祖母の代からであるなどの家庭環境を徹底的に調査し、そこから抜け出した子ども達には何があったのかなど、事実ベースに徹底した良書と言える。
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最近読んだ教育系の本の中で最も実りを得た本であると感じた。初等、中等、高等どの領域の教育分野に携わっている人にも本書を読むことを強くおすすめする。
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これからの子育ての参考になればと思い、本書を手にとってみた。
なるほど、知能教育が全てではなく、やり抜く力、性格の教育が大事だということなんですね。
確かに続けられるっていうことは、一つの才能だと思うので、何か腑に落ちたところもありました。
本書では具体的な事例としての最新の教育研究事例も紹介されており、わかりやすい事例が多かったです。
子供を育てて行く上では、粘り強さ、自制心、好奇心、誠実さ、物事をやり抜く力、レジリエンス(回復力、抵抗力などを含む弾力性、負の要素を跳ね返す力)、失敗を恐れない勇気、楽観主義、勤勉性、感謝の気持ちなどなど、教えるべきことはたくさんあるようです。
とにかく、出来ることからコツコツとですね。。
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教育論。知能指数や早期教育などによるアドバンテージはあまりない(バーンアウトするケースも多い)。それよりは性格的な強みを身につけた方が後々伸びるという内容。
米国とはシステム、社会格差の問題などが大きく異なってはいるが、うなずける内容も多い。生まれにより受けられる教育はある程度決まるし、社会に出た後での失敗に対する許容度も異なる(富裕層の子弟であれば、20代の間ぐらいであれば就職、仕事上のミスなどを家族がカバーする)ため、特に貧困層における教育をどう改善していくかが重要な問題なのだ。
カリキュラムの内容や持って生まれた知能などよりもやりぬく力、自制心、好奇心、オプティミズムといった能力の方が重要。
・我々の身体はストレスに反応するようにできているが、それは本来、野獣に遭遇した場合などのようにごく短時間のストレスに対するものである。現代社会のように慢性的なストレスに対応する生理システムではない。貧困がよくないのは、貧困そのものよりも、慢性的なストレスにさらされることである
・セリグマンによると、ペシミストには3つのp(不快なできごとをPermanent, Personal, Pervasive なもの)という解釈をおこないがちである。
・IQ79の子どもたちに、正解したらチョコレートをあげる、という条件で知能テストを行うと97になる。これは、この子どもたちが潜在的にはIQ97に相当する能力を有していると考えられるが、実際に社会に出て達成できることはIQ79にふさわしいものに過ぎない。インセンティブがないとできない(勤勉性がない)と成功しないということを示している。
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教育関係者にはぜひ読んで欲しい一冊。
教育に関わった経験のある人なら誰でも考えたことがあると思う。
「どうしたらもっと教育の効果を高められるんだろう?」
「自分が行っている教育は果たして効果があるんだろうか?」
「今、目の前にいる子どもの役に、本当に立てているんだろうか?」
そして、
「上手くいく子と行かない子の違いは何なのか?うまくいかない子にできることは何なのか?」
こうした問に本気で答えようと試みるアメリカの教育理論と最先端の実践例を紹介した本。
何年か現場で関わってくる中で、感じていたことが書かれまくっていました。
子どもが将来自分の人生を切り開いていくための核となるものはなんなのか。
それは、「やり抜く力」「自制心」「好奇心」「誠実さ」といった非認知的スキル(知識などの認知的スキルに対しての)である。
そしてこれらは持って生まれるものではなく、親と子のコミュニケーションの中から育つものである。
最新理論とは言っても、教育という分野の特性上、確たる正解のあるものではないけれど、自分の実感としては非常に納得感のある本でした。
中でも個人的には「レジリエンス」というキーワードがとても大切だと感じた。
レジリエンスとは、回復力・抵抗力などを含む弾力性。困難な状況やそれによるストレスなど負の要素を跳ね返す力。
この力を持てているかどうかは本当に大切だと思う。
これは今後教育だけでなく、大人の世界でも重要なキーワードになるんじゃないかな。
不安定な社会の中では、予測しきれないストレスにさらされることは多いので、個人としてそれに立ち向かえることが大切だし、チームマネジメントにおいてもメンバーの、チームのレジリエンスを高められるように努めることは重要になっていくと思う。
さて、この教育理論を社会全体で取り入れていくには、どうしたらいいか。
まず、幼少期の経験が絶対的に大切になってくるのは間違いないので、教育以前の家庭の支援、子育て支援のプログラムにもこうした視点を取り入れていく必要があるのかな。
そして、学校教育。この本をぜひ教育関係者に読んで欲しくなるすごい点は、取り上げられている現場が、初等教育・中等教育・高等教育と幅広くカバーしていること。
性格の強みを作る一番の環境は幼少期の親子の愛着関係にあるとしながらも、そこからもれた子もフォローすることのできる教師の可能性を提示している。
このプログラムを実行すれば絶対という万能の解決策はやっぱり、ない。たぶんこの先もない。
現場に有能な教師が必要、というのはあまりにありふれているかもしれないけれど、それでもこの本が提示する道はとても地道でとても実践的。
この本からはアメリカの教育の現場の変化、進化がものすごくダイナミックなことが伝わってきます。翻って日本はどうだろう。
自民党政権も教育には熱心です。道徳教育の大切さを
説いたりとか。この本で言う非認知的スキルとは言���てみれば「性格」のことなんだけど、単なる倫理観とは違う。倫理が大切でないのではなくて、文化的な倫理観を超えて大切な核があるということ。
そして、それを現場重視で実行していくということ。
日本はまだまだだけど、ちょうど放課後教室の拡充を政府が検討し始めているところのようだし、色々な大人が関わって実践を積み重ねていく余地が増えていくと良いなと思います。
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幸せや成功の定義は難しいが、幸せになるためには、育った環境が影響を与えることは疑いようがない。
では、それらの経験はどのように影響するのか?
そんなテーマを具体的な事例をもとに解説された本書。
事例は豊富に書かれているが、その分析は踏み込みが甘いようにも感じる。
しかし、示唆に富む実験・調査も多い。
どんな生徒が高校をきちんと卒業するかという調査で、知能検査は学力テスト以上に、幼少期の親のケアに関するデータの方が精度が高い、らしい。
「適切なケア」が必要らしいが、それってどんな?きっと個人差もあるよね?など疑問も浮かぶ
パーソナリティ心理学者の共通認識では、気質の分析に最も有効な方法は、気質を五つの要素(協調性、外向性、情緒不安定性、未知の物事に対する開放性、勤勉性)に沿って考えること、らしい。
これは、外的な要因で変えうるのだろうか?外的な働きかけを、対象者がそう捉えず、内的な要因と勘違いさせることでは変化・修正は可能かもしれない。
セリグマンは、「自制心が強すぎて不都合なことは何一つなく、強ければ強い方がいい」と言う。自制心だけでは限界があるとしつつ。
その自制心がどのように発生したかも重要では?誰かに強制されて備わった自制心なのか(それは自制心と呼べるのか?)、自分で少しずつ積み上げてきた自制心なのか?
〈人生の満足度・達成度に関わる強み〉
・やり抜く力
・自制心
・意欲
・社会的知性
・感謝の気持ち
・オプティミズム
・好奇心
若者の気質を育てる最良の方法は、本当に失敗する可能性のあることをやらせること。リスクの高い場所での努力は、低い場所より大きな挫折を経験する可能性が高い。しかし、独創的な本物の成功を達成する可能性も高い。やり抜く力や自制心は失敗を通してしか手に入らない。
科学的な理論の妥当性を調べる唯一の方法は、それが間違っていると証明すること(反証)。人は、その理論に反する証拠を探そうとはせずに、どうしても自分が正しいことを証明するデータを探してしまう。それを「確証バイアス」という。これを乗り越える力が重要な要素。
子どもが育つにつれて、愛情やハグ以上に、その子にそのときに見合った逆境が必要。転んでも一人で立ち上がるという逆境が。
子供にすべてを与えたい、子供をすべての害悪から守りたいという衝動と、本当に成功者になってほしいなら、まず失敗させることが必要という知識との葛藤が生じる。失敗をなんとかすることを学ばせる必要がある。
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知識・知能指数よりも、性格の育成に焦点を当てている。NY Timesのジャーナリストが執筆したアメリカ最新の教育理論として話題になっていたが、内容は昔から日本の育児バイブル(佐々木正美著:『子どもへのまなざし』)で言われていたことをラットの実験や実際の教育現場でのサンプリングをトラックして実証研究したり、成功の定義を明確にすることで、ロジカルに纏めたイメージ。タイトルも直球だし(ちょっと三流啓発系ぽくて好かんけど)。
その為、男性でも読みやすいテイスト。
自身をコントロールする力、内的動機付けができる力、未知のものへの好奇心・開放性、強い責任感が成人後も就学してからも役立つスキルだというのは教育関係者やビジネスマンにも受け入れやすいのでは。
日本の育児現場がモラルや情操教育から知識・知能指数重視の早期教育に寄っているのに対して、改めて子供の人格教育が注目が浴びているアメリカの方が前進しているともいえるかもしれない。
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何かに打ち込んだ人間が評価されるのは、「困難に打ち勝つ」という気質より、「困難であるという難易度の認識よりも、前にすすむための方策を考えることに意識を向けられる」というある種の自信と楽天性に対してなのかもしれない。
よって、子供には成功へのレールを引くのではなく、「困難と失敗をなんとかする能力」をつけてやる必要がある。
そのために、自分への根拠のない安心感と楽天的な思考、地道に行為を続ける(努力とは言わない。楽しんでやる必要があるから)力をみにつける必要がある。
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アメリカの教育に関しては賛否両論がある。エリート教育については素晴らしい効果を発揮するものの、そのひとにぎり以外の多数への配慮は弱い。格差があるのが当たり前の社会をそのまま映した教育システムだと。本書を読むとこうしたステレオタイプを打ち消すような弱者教育の現状をかいま見させてくれる。
人生の成功者となるために必要なのは学力・スキルだけではないらしい。それらを確立するためには望ましい性格・気質が必要だというのだ。学習をやりぬく力、ストレスに打ち勝つ力などが実はとても重要なのである。ところが、教育現場ではこのことへの理解がなかった。理解していても方法論がなかった。性格や気質は幼年期の家庭環境によって形成され、出来上がった性格はもう一生変わらないのだというのが常識だからだ。
ところが、本書のレポートによるとこの性格は後天的に変えることができるのだという。たとえ放蕩な数年を送ったあとでも、適切な教育理念と実践があれば、追いつくこと逆転することも可能だというのだ。
そのためには、教える側がまず学習における性格の大切さを認識するとともに、生徒にもそれを認識させることが必要なのだというのだ。確かにこれは間違いではあるまい。
我が国では伝統的に心の教育はなされてきていた。例えば剣術において重視するのは、太刀の持ち方や筋肉の動かし方だけではない。どのように敵に対するのか、何を考えるのか(あるいは考えないのか)、相手を倒したあとの心のあり方など詳細な教育がなされていた。ところが、そうしたことは無用の精神論として、より実践的な技能やスキル、数値化できる成果などに偏重した教育が次第に多数を占めるようになった。
精神論の大切さをかつてアメリカの知識人の何人かは日本から学んだというが、今度は我が国がアメリカの知恵を借りる時なのかもしれない。
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よく分からず。
第5章(と第4章)だけ呼んでも良かったかもしれない。
もっと早くに読んでいたら、読み方も違っていたかもしれないが。
訳者の人は、どう思って訳したのだろうか。
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教育の本というより、貧困層を救うための社会学の本かな。後半は斜め読みした。
子供が逆境をはねのけて成功を収めるには、知識よりも、性格が大事。諦めず、粘り強く、やり抜く力。
以下、気になったところを抜粋。
ストレス自体でなく、ストレスに対応するプロセスが重要。
母親が子供に特別な関心を寄せていれば、ストレス対応システムを壊すような負荷が低くなる。
つまり、子供がジェンガをやってる間に手伝ったり気遣いするというごく普通の親のかかわりが子供の将来に大きく影響する。
将来の年収に影響するのは、内なるモチベーションを持っているかどうか。良い結果、成功を収めるのには何よりもモチベーション。
ステレオタイプの脅威
知能は改善できる!!
気持ちが揺らいでいる時、強くストレスのかかった時に気持ちが混乱して我を忘れそうになっているとき、物事を大きな絵で見るように促す。メタ認知。
気持ちを落ち着かせ、自分の衝動を吟味し、生産的な解決方法を考える。
子供には適度な逆境が必要、失敗を乗り越える術を学ぶ必要がある。