紙の本
銀座の高級寿司に通い続けるOLに映し出された物語。
2017/05/12 22:33
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
バブルと呼ばれた時代。土地神話に浮ついた人たち。
DCブランドを知っているだろうか。
といいつつも、わたしなんかは風の噂で聞いていた程度なのだが。
世の中は景気がよくてバイトは選び放題、しかもつまらなかったら
やめちゃえばいいという時代。貯金の金利も良く、時給も良い。
まあ庶民の受けた恩恵はそんなもの。
でも世の中には、TVや雑誌で取り上げられるような派手な
暮らしをしていた人もいたのは事実。
BMWが六本木カローラなんて呼ばれたこともあった。
本当に恥ずかしい表現だが、当時はそんな上から目線を
得意がっていた人もいたんだよね。
この物語は、そんな世の中で精一杯背伸びした独身OLと、
時代に揺らぐことのない象徴としての銀座の高級寿司職人を
対比させて紡がれている。
確かなものとは何か。
「ホンモノ」という表現はいまでも使うのだろうか。
腕があれば、確かな味があれば大丈夫。
はた目から寿司職人を見れば、一般人にはそんな風に映る。
不動産会社の成り上がりOLは、座るだけで三万円という
高級寿司に魅せられ、常連と言われるまで通い詰めるのだ。
わたしはお寿司が大好きなので、食べるシーンはなかなか
楽しめた。高級ネタを使うからだろうが、美味しんぼのような
頭でっかち感があるのは致し方なし。
OLと一緒に、いろいろなネタを賞味させてもらった。
物語は、確かなもの・信じていたものが、次々と揺らいでいく
展開である。描きたかったテーマなのだろう。
読了後、一番大事なものは、目に見えるものや技術ではなく、
いつの時代でもこころなんだなあと感じた。
語り口が抜群にうまいのでするすると読めてしまうが、星は三つ。
もう少しじっくりと煮込んだ作品が読みたいと思うのは、
ぜいたくな希望なのだろうか。腕はある作家さんだと思う。
ちょっと作品を連発しすぎていることが気がかりである。
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こんなにも駄作と佳作の両極端を生み出す作家も珍しいとおもう。デビュー作が本当によかったから残念な作品を読むとがっかりする。
これはそこまでひどくはないけど駄作より。スカスカ。ランチのアッコちゃんとか早稲女とか軽ーいものが好きな人は好きなんでしょうけど。あくまで個人的な感想ですけどね。
地方出身の青子は退職する会社の社長と最後の食事として高級鮨屋を訪れる。その店は手渡しで直にネタを客に渡すことを方針としている店だった。
青子は鮨に舌鼓し、鮨を握ってくれた無愛想な職人に、手に恋をする。流れで田舎に帰ることを口こぼした青子に職人は「今夜はあなたにとって東京最後のお鮨なんですね。残念です。もう少しすると新子がうまくなる季節なのに…」とこぼした。それから寝ても覚めても鮨のことしか考えられない毎日が続く。仕事を辞めて悔いも思い出もない東京を去ろうとしていた青子だが、この鮨をもっと食べたい、職人・一ノ瀬の握る鮨を食べたい、そして新子というものを食べたいという食いと願いが生まれ、景気の良い不動産業に転職をする。1983年から1992年のバブリーな時代を描いた物語。青子のその手をにぎりたい、という気持ちだけで成り立っていた物語です。
こういう出会いとかあってもいいし、こういう目標もあるかもしれない。それにわたしは当時のバブルを知らないからこのような感想を抱いてしまったのかもしれないし。だけど書き手が柚木さんとなると途端に胡散臭くなる。台詞回しとか背景描写がとにかくくどい。あざとい。なんてくだらないのだろと散々思っていたけれどラストほんの少しだけど恥ずかしいことに一ノ瀬と青子の胡散臭い距離と会話にじんわりしてしまった自分がいたことを認めますけどね。こういう作品書くなら胡散臭くならないように描いて欲しかったかな。
読後、残るものが何もない。つまらなかったーと思えた方がまだよかったかも。
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すごく大人な話だった。
カバー絵。私、よく見てなかったから書影だけの時は写真だと思ってた。手に取ってイラストと気が付いた。すごい素敵。やられた。
舞台はバブル期。このころ私は何をしてたかなと思いながら読んだ。確かに浮足立って贅沢だった。懐かしくて痛い。
男女の関係性もすごいな。主人公青子に絡んでゆく男たち。男女の関係になっても全然色恋じゃない。そして最後の最後が、色恋のようでもあり、ゆるぎない友情以上の「同志」みたいな繋がりで、でも別れる。
力強い、旅立ち?のような
うん。よかった。
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バブルを生きた、女子の話。
ただやっぱり、バブルをバブルと知っている人が書いているので、どこか冷めている印象をうけたかな。
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『ランチのアッコちゃん』からどうも柚木さんの書く女共が好きになれない
バブル時にこんな恩恵を受けなかったから妬ましいだけなのかもしれないが…
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期待していただけにね。
バブル時代を知らないからか、主人公の人間性があまり好きじゃないからか、この小説はあまり楽しく読めなかった。
鮨はやたら食べたくなったけど。
この本もブックオフ行きかな。
最近立て続けに微妙な本ばかり読んでる気がする。
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内容紹介
「ランチのアッコちゃん」作者最新作!
80年代。都内のOL・青子は、偶然入った鮨店で衝撃を受けた。そのお店「すし静」では、職人が握った鮨を掌から貰い受けて食べる。
青子は、その味に次第にのめり込み、決して安くはないお店に自分が稼いだお金で通い続けたい、と一念発起する。
お店の職人・一ノ瀬への秘めた思いも抱きながら、転職先を不動産会社に決めた青子だったが、到来したバブルの時代の波に翻弄されていく。一ノ瀬との恋は成就するのか?
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バブルからの10年間の社会背景を軸に綴られているのは、その時代を振り返るようで面白かった。
青子が25歳で初めて食べた高級寿司と寿司職人・一ノ瀬にその後10年にわたり、こだわり続けるのはちょっとうざい。女はしたたかで強いなと思った。
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とても、よかった。
舞台ががバブル期ということで、あまり入っていけないかも…と思いながらも手に取ったけど、
ラストは泣きながら読み終えた。
手と、その手が握る鮨しか知らない誰かのことを、
それしか知らないからこそ思い続けてしまうその気持ちが、
痛いけれど、知りすぎた人を思うよりもリアルだと思った。
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バブル時代を背景に地方から東京に出てきた女性のお話。銀座の老舗寿司屋で働く男の握る手に魅せられる主人公。彼との間に生まれる友情や同じ時代を生きる戦士のような関係が切ないながら粋だなと感じた。代理店の軽薄な描写に苦笑い。確実に寿司が食べたくなる。
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短編連作。片想い。鮨。東京。不動産業。バブル。ユーミン。東京の行く末を見届ける、想い人の味を姿を見守る。心に決めちゃうと長くなるよ。最後に饒舌になっちゃうのが蛇足にも思えて…。柚木さんの作品にしては主人公の友人に毒がない気もする。ただ、いまの自分にドンピシャだったのが、ぐおおお…。
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お鮨は得意ではない、むしろ好きではないけど、無性に鮨食いてえ!!となりました。
一ノ瀬さん、ステキ…わたしも手に触れたい。なんて思ったけど、ずっと硬派キャラでいて欲しかった…
最後、ちょっとガッカリ。
それでもやっぱり今は柚木麻子さんの読み物が好きだ。
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私自身も バブル時代に OLしていたので、時代背景が 分かり過ぎるくらいでした(^o^;)
最後のシーン、ドキドキしてしまいました…青子さん、田舎に帰ってしまうのかな…
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ランチのアッコちゃんが好きだったので、本屋で並んでるのを見て即購入して読んだ1冊。章題が寿司ネタでツボでした。
バブル時代、田舎に帰ろうとしていたOLの主人公。だけど、「すし静」での体験が忘れられず、東京に残る。仕事をし、ごほうびに高級寿司屋「すし静」に通いつめる。寿司屋の大将、常連客、仕事仲間、恋人、友人…主人公の濃い10年間が収められている。
バブル後に生まれ、OLでもなく、高級な寿司屋に行ったことはないけれど、なんだかわかる。自分のやるべき事をがむしゃらにやったはずなのに、結果人を傷つけてしまう。自分がぼろぼろになっている。そばにいてくれた人を必要だと自覚したときには、もう遅い。そして、プライドは捨てられない。
なんだか感情のテストのようなのだ。この痛みはわかる?これはどう感じる?と一つ一つ引き出しを開けられるかんじ。
きちんと考えて選択して生きている。なのに、思い描く未来と違っている気がしてしまう。でも、それでいいのだと。そう思える自分を生きよう。
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「その手をにぎりたい」の意味は、読んでみてしっくりくる。
バブルとOLと寿司屋さんで、こんな小説ができるなんて!