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お嫁さんが見かけた義祖父は実在。
謎の小動物と義兄と穴は・・・
新しい環境の退屈な日常での無意識のまま、意識が錯乱して見えた幻覚なのか?
村上春樹のねじまき鳥的なミステリアスな要素からなるが、しつこいまでの描写は独自なもの。
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第150回芥川賞受賞作。これ、わたしほんとうにすきです。近年の芥川賞受賞作では赤染晶子「乙女の密告」以来の私的ヒット。本書に含まれる三つの短編はどれも、再生産という人間、生命の根本に対する違和を仄暗く端正な文章で綴っていくもの。日常にふと生じる裂け目といい、これぞ純文学というかんじでぞくぞくさせられました。小川洋子が進まなかった、優れたひとつの道に、小山田浩子はいるのではないでしょうか。結局のところは再生産の問題ではないか、というのが最近わたしの考えていたことで、その意味で小山田さんの小説はとても興味深い。ほんとうにすきだなあ。既刊の「工場」も買います。今後も追いかけたい作家さんです。
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芥川賞ということで読んでみた。
夫の仕事の都合で田舎に越してきた妻の特殊な体験?を描いた話。
明かされる隠された家庭環境
変な動物と穴
描き出される不思議体験
どれも物語の仕掛けとしていまいちだと思った。
芥川賞受賞する女性作家が描く女性ってなぜ
仕事にやりがいを感じてない価値観の持ち主が多いのだろう。
自分の周りの女性が持つ雰囲気といつもギャップを感じる。
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地元広島出身、そして在住の作家の芥川賞受賞作ということで、読んでみた。
何か、安部公房をゆるゆるにしたような感じ。リアルな世界と幻想の世界がシームレスで繋がっているようなといえば伝わるだろうか。
ただ、登場人物がみんなもやの向こうの人々という感じがする。
そしてはっきりしないまま物語が終わってしまったという、後味が悪いというほどではないが、すっきりしない感じ。
「穴」とは?「獣」の正体は?「義兄」は実在の人物?
う〜む、全く謎だ。
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芥川賞を受賞ということで読んでみることに。
初めて読むけど、文章は結構読みやすい。
でも、読んでてちょっと眠くなっちゃうんだよね…。
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第150回芥川賞受賞作品。
読み始めて、とてもなじめる作品だと感じた。ごく自然な日常のなかに、人間の秘めた感情というか、そういうものが「穴」だったり、「謎の動物」だったりで表現されている。
同時に収録されている2作品も、口に出しては出てこない人の中に隠れた感情を、巧みに表現している。
芥川賞を受賞したことで、初めて小山田浩子さんという作家を知ることになったが、今後も追っていきたい作家のひとりになった。
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共働きで派遣社員として忙しく働いていた女性が
ご主人の実家の横に引っ越してきて
田舎なので、仕事もなく、やることも限られてきて
そうしう生活に膿んでいく様子がリアルなのに
”穴”にまつわることが、幻想的で不思議な感覚
唐突に話が終わってしまった感覚だけれども
その後、あの女性はあの田舎で
名前ではなく、お嫁さんとして生きているのか・・・と
静かな余韻を残してくれた小説でした
小山田浩子さんの「工場」は
書評家の豊崎由美さんがとても褒めていたのですが
文庫本になったら、是非、読んでみたいな
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第150回芥川賞受賞作「穴」/小山田浩子 著 を読みました。
小山田さんが書く、皮膚感覚を重視した濃密な文章は私が好きなものの一つです。
たとえば以下の箇所はかなり良い感じです。
> 私は働かねばならない。そうでなくても、何かをせねばならない。
>そうでなくても、何かをせねばならない、 体は日に日に重くなっていた。
>体重はむしろ軽くなっていた。にもかかわらず、筋肉や節々や、体の細胞一つ
> 一つがもったりと粘り、私が何かしようとするのを億劫がらせていた。
>いや、そんなまるで私のせいじゃない体のせいだというような言い訳はよすがいい。
>私は怠惰になっていて、それは丸ごと私自身から発生したものだ、今に夫が姑か
>義父母か誰かに、このなまけものと断罪されるだろう。されて当然だ、しかし、
>誰かが私に本当にそんなふうに言ってくれるのだろうか。
ダメな自分と、怠惰な自分を戒めてくれる存在を期待するという、
「べ、べつにあんたのことなんて(略」的なアンビバレンツな感情を表現がよいです。
物語のなかでもこのような表現が随所にみられて、油断ができないです。
この物語の冒頭で不思議の国のアリスの挿話があり、タイトルの穴はそのモチーフの一つですね。
> ま、皆さんはそんなものに興味がないんだろう。見えてないのかもしれない。
> 大体いちいちその辺んを歩いている動物だの飛んでいる蝉だのお落っこちているアイスの
> かすだのひきこもりの男だのを見ますか。見ないでしょう。基本的にみんな見ないんですよ。
> 見たくないものは見ない。お嫁さんだって見てないものはたくさんある
引きこもりの義兄のなにか予感めいた発言ですが。見えないものというのはあっち側の世間、
見えるものというのはこっち側の世間を暗示したものでしょうか。冒頭で穴に落ちる主人公はアリスとお同じですね。
まあ、この穴に落ちるのは主人公だけではないのですけど。
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文藝春秋で読んだ。選評と併せて読んだので、島田雅彦の「語り手の他人との接触の仕方が皮膚感化」という世界に、ぐいぐいと引き込まれ、それが山田詠美さんのいう「奇譚めいてくる」。私という人間の形どりさえもあやふやな危うい
ものにしている。
村上春樹の井戸とはまた違う穴というしかけ。はまってしまう。
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不思議な魅力のあるお話でした。
しみじみと不安を感じたり、なんとなく幸せも感じたり。
もう一度読もうとは思わないけど、読んでよかったと思える本でした。
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色々面白いところはあるのだが、どこが一番面白いかって、旦那さんの描写。スマホをちゃかちゃかといじるその描写の迫り方がもう、なんていうか、秀逸すぎてそれだけで満足してしまった。あるかもしれない日常とそのゆらぎはわたしが小説を読む意味と直結している。きちんとした力を持つとても素敵な物語だとおもった。
一つ感じたのは、いくら芥川賞の力があるとはいえ、キャッチーさなどがなければ話題にならないのか。中身ではないのだな、現代においては小説は外形がそんなに大事なのだな、という。地味だけれども、一瞬で人目を惹くようなキャッチーはないけれども、しっかりとした芯のある小説が読まれず沢山の書物の中に埋れていくというのはかなしいことだ。
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芥川賞は、難解で読みにくいことが多い。
でも、これは比較的読みやすいほうだった。
日常と非日常が交ざりあって、掴めそうで掴めないもやもや感に包まれてる。
短編もよかった。
どれも、暗く重い空気なんだけど、嫌いじゃない。
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ファンタジーっぽく紹介されていたので不思議な話なんだなーと思って読んだけど、わたしにとってはホラーだった。何から何まで現実味がなくて、義母も義父も義祖父も義兄も夫もお隣さんもみんな怖い。穴も怖い。子供たちも怖い。振り返ったら目の前2センチくらいのところに顔がありそうな不気味さ。近すぎるよ、っていう。
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終始不穏な空気が漂う。うっすら、ところによって濃く……怖かった。
主人公が田舎に越してからの奇妙なあれこれは現実か幻か。
黒い謎の獣、水を撒く義祖父、いるはずのない義兄、川原の穴の数々。
お日さまの下、川原で遊んでいる子どもたちでさえ不穏。
虚実や結末がはっきりと描かれていないので、いろんな読み方と感想があると思うのだけれど、私はいくつかの事実(義母のうっかり不足金や義祖父の深夜の徘徊)はあるものの、不穏なそれらは主人公にとっての田舎の生活そのものが形を取ったものだったのではないかと思う。
ラストで自転車を漕ぐ彼女の姿は「そこ」で根付き始めている。そんな彼女はこれからはもう黒い獣の姿を見ることはないのではないだろうか。
収録された他2篇も不穏な空気を纏っているのは同じ。
二組の夫婦を描いた2篇は続きもののようになっていて、1本目はわかりやすく怖いのだけど、どちらかというとつい深読みしそうになる「はじまったばかり」の2本目のほうが怖かった。
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夫の転勤に付き添い、夫の実家の隣に住み始めた主人公。
県内での引越しに関わらず、まったく違う環境、不思議な獣に穴、呆けた義祖父、義母に似ている姑、携帯ばかりの夫、掘っ建て小屋に住む義兄。
穴はなにを表していたのか。子供たちや老婆老爺は。姑に似るとは。
「~滅私奉公ですよ、嫁だの、母親なんて。そんなまでして、親父やおふくろがやろうとしていることは、ただ一つ、僕という子孫をどうにかして次の世代に生きて残そうとしているわけです。それが僕は気味が悪いんです。」
穴は以前新潮で読んだので今回はほか2編。
妻と不妊に悩む主人公。年賀状のやり取りからシシ鍋を食べに行くことになった、いたちに困っていた斉木、洋子夫妻。『いたちなく』『ゆきの宿』