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純文学って、今でも「無理想、無解決」なんかしらん?
「で?」って言いたくなる。
それが受け入れられれば、面白いかも。
田舎育ちなので、この作品に描かれた、理想化された田舎でない土地の感じはよく分かる。
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個人的には、「穴」より「いたちなく」「ゆきの宿」の方が好きです。表題作の「穴」以上に、違和というか「よくわからない気持ち悪さ」を感じました。
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「工場」が個性的で楽しめたので期待したが、それよりは大人しく芥川賞らしい作品ということか。文体や流れなど作者の色はあると思う。そして純文学らしい解決しない終わり方。納得できる人とできない人で分かれそうな作品。他の二編の方が楽しめたかな。
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蝉が鳴いている表現が多々あったが、読後感は何かひんやりとした感じだ.松浦あさひが遭遇する現実とファンタジーの世界が行き来する物語だが、夫や義父の存在感は乏しく、姑とのやりとりだけが浮き出ている.非現実の義兄の登場も奇妙だが、彼と密接に絡む義祖父の葬儀の場面がこの小説のクライマックスだと思った.
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ある日、ふとしたきっかけで日常の隣にある異界へと足を踏み入れてしまう「世にも奇妙な物語」的な小品。
…なんだけど、ちょっと違うのは、現実が異界へと変わるその境界線が非常に曖昧で、日常から非日常へとシームレスに移行していく淡々とした描写は「世にも奇妙な〜」というよりはどちらかというと村上春樹的。
「オシャレじゃない村上春樹」みたいな、そんな印象。
タイトルの「穴」の意味はさておいて、この小説の醍醐味は登場人物たちとの会話のリアルさにある。
特に、主人公が越してきた田舎町で出会うニートの義兄との会話は傑作である。
初対面の人間を前にして独特のむさくるしさで一方的に人生観をまくしたてる様は秀逸で、所謂”小説調”ではなく、現実のやりとりをそのまま文字に書き起こしたかのようなリアルな会話には「ああ、こういう人いるよね」と首肯したくなる奇妙な説得力がある。
そして、奇矯な振る舞いで人をドン引きさせる変人が、独特の口調で語る達観した人生観は、日常から乖離した「穴」からしか眼差す事の出来ない現代社会の盲点を突いていると言えるだろう。
「作中で主人公がハマる”穴”は現代人の所属欲求のメタファーであり云々」と不条理な物語にぐるぐると考察を巡らすよりも、メディアや社会規範の外側にいる人間の、決してTwitterでは語られる事の無いリアルな呟きにただ耳を傾けてほしい。
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何と言っていいのか漠然と、暗さを感じた。自分が村上春樹作品を読んだときに感じる不安、心がざわざわする感じに似てるかも…。主人公は一体何を見、体験したことになるのか整理出来ないけど、文章自体は読みやすくて引き込まれた。
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この作品もくせのある文体で、カギ括弧で括られた会話文が改行されずに一つの段落で延々と続いたりするのですが、慣れるとそれほど気にならずに読めます。女性が嫁ぐという経験が、女性ならではの視点で語られており、「ああ成る程、そりゃそう感じるんだろうな」とうなずかせる説得力がありました。
読み終えて、どう咀嚼すればいいのかイマイチわからないところがあったので、芥川賞の選考員のコメントを調べてみました。腑に落ちるまではいかなくても、成る程こういう観点からプロは見ているんだなと、なんとなく得心するものはありました。
特になるほどと思ったのは宮本輝氏のコメントで以下のとおりです。
「平凡な一主婦がなべて抱くであろう心の穴を普遍化している。」「だがそれを幻想や非日常や、マジックリアリズムの手法で描きながら、突然あらわれた穴も、得体の知れない獣も、たくさんの子供たちなども、小説の最後ですべて消えてしまうことに、私は主題からの一種の逃げを感じて推さなかった。」
同じく選考委員の村上龍氏は、
「わたしは、『穴』を推したが、複雑な構造の作品ではなかったことにまず好感をもった。」「嫁として、知らない土地に引っ越すというどこにでもあるモチーフを通して、新しく出現してきたものと、失われたものが、一見無秩序に、実は高度な技術で巧みに構築されて提示される。」
と絶賛していますが、まだそれほど読書力の伴わない私には、この作品がどのように高度な技術で巧みに構築されているのか、わかりませんでした。
表題作以外の二編は、マジックリアリズムの手法を前面に出さずに描かれていますが、やさしい味わいのある作品で、好感度アップでした。
オススメです。
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芥川賞受賞作、文芸春秋で。
さて、芥川賞ってことで・・・ん~。
純文学は分からないって感じ以前のわからなさ。
田舎の暮らし、姑との関係、義兄の存在、義祖父の死、
そして意味不明の動物、穴。すべてがどうしてもわざわざ述べられるべきことなのかどうか。初めの方は非正規社員の愚痴も並べてあったりで(その辺がいちばん納得できたけど)
夫の実家の田舎でで暮らすことで感じる日々、ホラーへと続く日常が書かれてゆくのではと一種ワクワク感でしたがとうとうホラーにもならずに。
解説書として「文学界」買ってあるので読んでみます。
「文芸春秋」諸先生方の評では手がかりがつかめなかったので。
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私は、「さようならオレンジ(岩城けい著)」が受賞すると予想していた。
ところが、この作品が受賞。私の好きな作家川上弘美が芥川賞の選評で高く評価していることを知り、益々期待が高まった。
文章にリズムがある。現実描写と感覚描写が交錯しながら語られていて、グイグイ引き込まれる。「基本的にみんな見ないんですよ、見たくないものは見ない」というセリフが象徴的だ。
登場人物の存在感も圧倒的だ。姑、お隣の世羅さん、義祖父、義兄。
ところで、表題の「穴」とは?
思い込みで落ち込む落とし「穴」・・・外からなんか見えるもんか!
見たくないものを見せてくれる覗き「穴」・・・ほら、見える! 見える!
様々な解釈を可能にする謎の「穴」蔵・・・書いた本人も分かっていないはず!
芥川賞選考委員の小川洋子が興味深いことを『文藝春秋(3月号)』書いている。「生物の中で唯一言語を持ってしまった人間は、見返りに何を失ったのか? (中略) 作家は、その失われた何かを求めるため、言葉で小説を書かなければならない」
『文学界(3月号)』では、川上弘美と小山田浩子が対談している。その中で「純文学は<松村>を<村松>と間違って読み続けていたとしても面白いような気がするので、そういうものが書けたらいいんですけど」という小山田の発言が印象に残った。
人生を生き延びる上で、やっぱり小説はなくてはならないものだと確信させてくれる小説であった。小山田さんには、これからも、ずっと、ぼちぼち、書いていってほしい。
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淡々としてて飽きそうな物語をスラスラと読ませるのがすごい。テンポの良さと、主人公の物の見方への共感が良いんだと思う。
あまり幻想的というかマジックリアリズム的な物語とは思わなくて(結果的にそうなってるのかもしれないけど)、極めて日常的な流れだと思う。上手いのは、「日常」というものを「逸脱」から語るのではなく、日常的なものの内側から脱構築しているようなところだと思う。じわりじわりと、感じさせて、考えさせるものがある。土地とか家族とか顔とか。それが良い。
それと文藝春秋掲載の選評では小難しいことかかれてたけど、結局、アレコレ全体の構造に思いをめぐらさなくとも、軽く読みたい人や読む理由のない人に読ませる、というのが一番重要だと思う。読み始めは「パッとしない物語」と思ってたけど読み進んだし、結構面白かった。
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表題作「穴」よりも、「いたちなく」や「ゆきの宿」のほうが好きだった。色んな人の解釈を読んでみたい。芥川賞作品はやはりむずかしい。
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ズボン、ヒューン、ならばアリスの穴だが、この作品ではドスッ、シーン、肩から下が埋まってしまう。
リンチを思い出す草地や土の描写を経て、現実が変異するが、それはもとからそうだっただけのこと。
「工場」の着地は変身だが、「穴」の着地は変態(もしくは成長)。
まずは義兄の存在感だが、
この作者はどこかしら子供を作るということにしこりを感じているらしい(実際はいるけど)。
そこに共感。
だからこそ、(「ディスカス忌」に続く)「いたちなく」「ゆきの宿」の夫婦にも肩入れしてしまう。
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日常と非日常の境目が不思議な感覚でやってくる。
読み終わった後に更に想像を膨らませてしまう。
個人的には次の作品の方が好みでした。
いたちなく・ゆきの宿は続き物でドキッとするような場面がありつつ二組の夫婦のやり取りに入り込んでいきました。
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不思議なお話。
穴って何だろう?
夫の携帯電話が妙に気になったけれども、特別意味はなかったみたい。
私には、『いたちなく』の方がおもしろかった。
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導入から中盤くらいまではぐいぐい引き込まれた。特に専業主婦の焦燥には物凄く共感した。焦燥の背景にある蝉の声や、土手の描写も序盤は丁寧で、黒い獣や、義実家、世羅さん、その地域の、微妙に普通から歪んだ違和感の正体が気になってずんずん読んでいったが、中盤から終盤は完全に尻すぼみな感じがした。結局のところ芥川賞受賞作にエンタメ性を求めてはいけないんだろうな。