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日本の、所謂『ゴシック小説』を集めたアンソロジー。『黎明』から始まり、『戦前ミステリの達成』『「血と薔薇」の時代』……と、基本的には年代を追う構成になっている。
こういったアンソロジーではお馴染みの泉鏡花、江戸川乱歩、横溝正史以外に、詩、短歌、俳句が収録されているのは珍しい。残念ながら明るくないので、普段はどんな作風なのかは解らないのだが。
伊藤計劃と金原ひとみを『ゴシック』と考えたことは無かったので、その点は新鮮だった。尤もこの本で定義されている『ゴシック』はかなり幅広いようではあるが。
さて、読んだことがない作家を知ることが出来るのもアンソロジーを読む楽しみのひとつだが、その条件で絞ると吉田知子『大広間』が一番印象的だった。木下古栗は先日読んだ『群像』にも掲載されていたのだが、非常に濃厚ではいテンションな文体が癖になる。
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こういうアンソロジー、待っていました!
編者:高原英理、カバーデザイン:柳川貴代、表紙の人形:中川多理と、表紙だけでもうお腹いっぱいになりかけて、いやいや本番はこれから!とゆっくりと目次を見たら、「血と薔薇」時代・幻想文学領土中心に好きな作家or気になっている作家のオンパレード!私が買わずして誰が買うよ!?という普段の冷静さを失った頭で即レジへ行きました。
捜しているけれども書店に見当たらない葛原妙子、赤江瀑、久世光彦が読めて非常に嬉しい。今すぐamazonさんに頼みたい。塚本邦雄はすぐに詩集を買いました。世界に浸りながら読んでおります。
「人間の持つ暗黒面への興味」、そして「不穏」。
ブクログには折角タグ機能があるので、「自分のリテラリーゴシック」を選んでみるのも面白いでしょう。
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日本のゴシック文学(詩や短歌含む)を黎明期(北原白秋、宮沢賢治、泉鏡花)から現在(乙一、伊藤計画とか)まで、時代ごとに編まれたアンソロジー。
高原英理さんの名とこの表紙に惹かれて手を伸ばし、目次1頁目の「毒もみのすきな署長さん」と目が合い即購入。
タイトルと作者名見ただけでも興奮してくるラインナップなのです。
ゴシックとは「残酷」であるとか「崇高」なものへのこだわりとかそういう部分なんですが、中でも「残酷」の開かれ加減というのは私の中では非常に重要で、スプラッターな感じの全部見せ感は絶対にいけないのです。「残酷」に惹かれる心の様態や「崇高」にたいする偏執的な様式美がディテールにあったりとか、体の一部への異常なまでのこだわりであったりとか、つまり「そのもの」ではなく「周辺」の方向性のことなのです。
そういう私の拘りから見ると、このアンソロジーのラインナップは素晴らしいです。
ゴシック小説ってどんなの?と思ったら宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」、三島由紀夫の「月澹荘綺譚」、吉田知子の「大広間」、乙一の「GOTH」を読めば大体つかめると思います。
私がこのアンソロジーの中で特に気に入ったのは、
「月澹荘綺譚/三島由紀夫」「醜魔たち/倉橋由美子」「第九の欠落を含む十の詩編/高橋睦郎」「紫色の丘/竹内健」「ジャングリン・パパの愛撫の手/桜庭一樹」です。
ちなみに金井美恵子の「兎」は脳内再生可能なぐらい読み返している。「森のメリュジーヌ」もいいけどやっぱり「兎」が一番好きかも。
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ゴシック小説とは、18世紀後半から19世紀初頭にかけて英国で流行した、中世の古城や寺院が舞台となった神秘的で幻想的な物語のことなんだそうですが、そもそもゴシックという言葉自体、建築から音楽や文学、ファッションに至るまで、いろんな分野で多用されているため、その定義は曖昧で、比較的自由な解釈が許されているようです。で、本書は北原白秋や宮沢賢治、三島由紀夫に古井由吉などの大御所から、現在第一線で活躍中の作家まで、ジャンルも作風も異なる、日本の39名の作家とその作品を紹介したアンソロジーです。残酷さやおぞましさの中に、偏愛や美が垣間見られる作品もあれば、中にはただただ気持ち悪いなぁと、眉をしかめてしまうものもあります。考えてみれば、本書には掲載されていませんが、川端康成や谷崎潤一郎にも、ゴシック的な作品はありますネ。人間の心の奥底には、このようにダークなものを好む傾向が秘められているということなのでしょうか・・・。
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イロイロな時代の
イロイロな人の怪奇小説が一冊になって
お得な感じです。
この人もあの人も気になるな。
なんて方にはお薦めですよ。
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すごい。文学的ゴシック39編。編者の考える文学的ゴシックとは『不穏』『恐怖や残酷さへの思惟』『残酷・耽美・可憐』うん、大好き。これだけ揃えば贅沢満腹。好みなのは北原白秋「夜」横溝正史「かいやぐら物語」三島由紀夫「月澹荘綺譚」塚本邦雄「僧帽筋」中井英夫「薔薇の戒め」赤江瀑「花曝れ首」皆川博子「春の滅び」倉阪鬼一郎「老年」藤野可織「今日の心霊」中里友香「人魚の肉」川口晴美「壁」。再読でも大好き大槻ケンヂ「ステーシー異聞 再殺部隊隊長の回想」、それはずるいw枠で伊藤計劃「セカイ、蛮族、ぼく。」
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北原白秋 「夜」、泉鏡花 「絵本の春」、宮沢賢治 「毒もみのすきな署長さん」
江戸川乱歩 「残虐への郷愁」横溝正史「かいやぐら物語」小栗虫太郎「失楽園殺人事件」
三島由紀夫「月澹荘綺譚」倉橋由美子 「醜魔たち」
◎塚本邦雄「僧帽筋」 塚本邦雄 三十三首
高橋睦郎「第九の欠落を含む十の詩篇」吉岡実 「僧侶」中井英夫「薔薇の縛め」◎澁澤龍彦「幼児殺戮者」
須永朝彦 「就眠儀式」金井美恵子「兎」吉田知子「大広間」◎竹内健「紫色の丘」◎赤江瀑「花曝れ首」山尾悠子「傳説」古井由吉「眉雨」皆川博子「春の滅び」
久世光彦「人攫いの午後」乙一 「暗黒系」伊藤 「セカイ、蛮族、ほく。」◎桜庭一樹「ジャングリン・パパの愛撫の手」◎京極夏彦「逃げよう」 ◎小川洋子「老婆J] 大槻ケンヂ 「ステーシー異聞」 倉坂鬼一郎「老年」 金原ひとみ「ミンク」 木の下古栗「デーモン日暮」 藤野可織「今日の心霊」◎ 川口晴海「壁」高原英里「グレー・グレー」
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文学的ゴシックのアンソロジー、という。前半は残酷な美と背筋が伸びるような、ハッと息を呑むような鮮烈さが確かにあるのだが、時系列で収められている本書は読み進めて行くにつれ落胆を誘う。時折、どきりとするものもあるのだが現代作家のそれは先人にどこか及ばず、醜悪を見せるのみなので評価を星4つとした。ゴシック、という言葉には「野蛮」の意も含まれるそうなので驚くには当たらないのかもしれないが、私はただ飽きてしまって終わりの方は半ば根性で読み終えた。勿論駄作というわけではない。単なる比較の結果である。
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北原白秋と藤野香織を同じ本で読むとは思わなかった…。作品はもちろん、塚本邦夫、高橋睦郎、藤原月彦などと出会うきっかけになったことも含めて一生とっておきたい本です!
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好:小栗虫太郎「失楽園殺人事件」/倉橋由美子「醜魔たち」/塚本邦雄「僧帽筋」/中井英夫「薔薇の縛め」/吉岡実「僧侶」/金井美恵子「兎」/山尾悠子「傳説」/皆川博子「春の滅び」/乙一「暗黒系 Goth」/小川洋子「老婆J」/中里友香「人魚の肉」/高原英里「グレー・グレー」
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ゴシック小説アンソロジー。ホラー・幻想味の強い作品が多くて、総合的にかなり好みです。
もともとお気に入りの作品もありました。皆川博子「春の滅び」、倉阪鬼一郎「老年」、乙一「暗黒系 Goth」、藤野可織「今日の心霊」は読んだことがあったけれど、やっぱり好きだなあ、と。
未読だったものでは三島由紀夫「月澹荘綺譚」が素晴らしいなあ。えげつないのに美しくって、そしてラストの一文にはぞくりとさせられます。でも浮かぶ情景は、やはりどこか美しいような。
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残酷で、崇高。
野蛮で、哀切。
──今見いだされる不穏の文学。
(本書オビより)
高原英理さんの代表的著作『ゴシックハート』と『ゴシックスピリット』。これら理論書の次に読むのは、まさしく実践書である本書!! 高原さんが上記の著作の中で紹介していた作家さんを始め、40人近い作家たちの「文学的な」ゴシック小説を堪能できます。
しかし、ここで大事なのは、本書で紹介されている作品は飽くまで「文学的ゴシック」であって、所謂ウォルポールの『オトラント城』に始まる「ゴシック小説」などではないこと。そのため、『フランケンシュタイン』や『ヴァセック』などは一先ず置いた、高原さんのゴシックハートに響く作品のアンソロジーなのです。『ゴシックスピリット』の感想にも書きましたが、ゴシックは初めからゴシックであったわけではなくて、沢山の作品の中にどうゴシックを見出していくかもまた、ゴシックハートとゴシックスピリットを持つ者の特権なのです。
ゴシックを目指した作品ではなく、ゴシックの見い出せる作品。個人的にはこのような作品たちは押し付けがましくなく、リラックスして(?)読めた印象です。とはいえ、なるほど「文学的ゴシック」にふさわしい残酷で、けれども美しい作品ばかり! 江戸川乱歩や三島由紀夫の作品や、乙一や小林洋子などの比較的近年の作品もあり、読んだことある作品もちらほらありましたが、未読の作品も取っ付きやすく、すぐにその世界観にのめり込み、爽快なまでの読了感に襲われる…!!
一日一話とコツコツ読み進めていきましたが、飽きることなく読めました。ゴシックハートを持つものとして、やはり捨て置けない一冊です。
《収録作品と個人的な評価》
Ⅰ:黎明
「夜」:北原白秋
「絵本の春」:泉鏡花
「毒もみのすきな署長さん」:宮沢賢治
Ⅱ:戦前ミステリの達成
「残虐への郷愁」:江戸川乱歩
「かいやぐら物語」:横溝正史
「失楽園殺人事件」:小栗虫太郎
Ⅲ:「血と薔薇」の時代
◎「月澹荘綺譚」:三島由紀夫
「醜魔たち」:倉橋由美子
「僧帽筋」:塚本邦雄
「塚本邦雄三十三首」:塚本邦雄
◎「第九の欠落を含む十の詩篇」:高橋睦郎
「僧侶」:吉岡実
「薔薇の縛め」:中井英夫
「幼児殺戮者」:澁澤龍彦
Ⅳ:幻想文学の領土から
「就眠儀式」:須永朝彦
◎「兎」:金井美恵子
「葛原妙子三十三首」:葛原妙子
「高柳重信十一句」:高柳重信
「大広間」:吉田知子
◎「紫色の丘」:竹内健
「花曝れ首」:赤江瀑
「藤原月彦三十三句」:藤原月彦
「傳説」:山尾悠子
「眉雨」:古井由吉
「春の滅び」:皆川博子
「人攫いの午後」:久世光彦
Ⅴ:文学的ゴシックの現在
「暗黒系 goth」:乙一
「セカイ、蛮族、ぼく。」:伊藤計劃
◎「ジャングリン・パパの愛撫の手」:桜庭一樹
「逃げよう」:京極夏彦
「老婆J」:小川洋子
「ステーシー異聞 再殺部隊隊長の回想」:大槻ケンヂ
「老年」:倉阪鬼一郎
「ミンク」:金原ひとみ
「デーモン日暮」:木下古栗
「今日の心霊」:藤野可織
◎「人魚の肉」:中里友香
「壁」:川口晴美
「グレー・グレー」:高原英理
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ゴシックに関する多数の著書を持つ高原英理氏が提唱する「リテラリーゴシック」をテーマにしたアンソロジー。聞きなれないテーマですが、リテラリーゴシック宣言と解説、そして収録作品を読めば肌で感じられ納得できます。本テーマだからこそ実現できる、成立する作家の並びだと思います。時代ごとに変化を楽しめるのも良いです。とにかく本書に収録されている作品の濃密さは凄いです。誰にでも好かれる作品群ではないですが、こういう毒を持った作品は必要です。シリーズ物や長編小説に触れることが多かったので、個人的に短編の面白さを再認識できたことも収穫でした。
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以前から読みたいと思ってたのになんかスルーしてた…。やっとこさ手に取りました。
・宮沢賢治の「毒もみのすきな署長さん」、宮沢賢治はときどきギョッとするほど怖かったりヘンテコな話を書くよな…。これは犯罪小説の子ども向けって感じだ…。
・乱歩の随筆「残虐への郷愁」、なんか分かる…と思ってしまったあなたもきっと人外の存在。これを収録する高原英理氏とも性癖が同じなんだろうなあ。大蘇芳年の無残絵のチョイスとか、乱歩ェって思うけど、なんか分かるよな。
・横溝正史「かいやぐら物語」、横溝がこんな…耽美な小説も書いてたんだな…。腐乱死体を隠そうとする作業とか…残酷で物悲しい感じはいつもの横溝だって感じだけども…。
・澁澤龍彦「幼児殺戮者」、ジル・ド・レェの伝記を澁澤龍彦流に繙く文章。かの悪徳騎士ジル・ド・レェの見方がめちゃめちゃに変わります。ううん、「異端の肖像」も早く読みたいなあ。
・須永朝彦「就眠儀式」、め…めちゃめちゃ好きだった…。吸血鬼ものとしては恐怖は一切ないんだけども…まさに耽美…妖艶…。チェンバロの音色と共に現れ、夜な夜な一人きり、しりとりに耽る金髪碧眼の美青年…。彼と出会った男は、そして…。す、凄過ぎる…。
・赤江瀑「花曝れ首」、陰間二人とならず者の男の三角関係…それに引きずられるように、婚約者の男に同性の恋人がいるのであろう事実を突きつけられてしまったヒロインは…。マジでこの陰鬱なトーンとすがすがしいほどの男色ぶりがマジで赤江瀑だな…なった。赤江瀑、マジで短編でも小説としてカロリーが鬼高くていつもびっくりする。でもそろそろ他の読みたいな…。これが…読む麻薬…。
・藤原月彦三十三句、あまりにも耽美俳句で衝撃…。こ、これがJUNE掲載の本気…。
・久世光彦の随筆「人攫いの午後」、だからなのかどっか同性愛ってか少年愛じみた随筆が収録されてるぞ…。高原氏の、久世光彦のこういった随筆への解釈が完全に一致でなんかわろた…。
・小川洋子先生の「老婆J」ってゴシック…ゴシック…???????????
・倉阪鬼一郎先生の「老年」、これめっちゃいいよね…。初出が異形コレクションだから、まじで今回のアンソロに収録されるのは納得。心中を図る吸血鬼老夫婦。この時点でもう心臓フルボッコすぎる。