紙の本
その読書量に圧倒されます
2016/01/09 18:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安波茶40 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは評論の部類に入るのだろうか。あるいはエッセイか。
いずれにしても、中学から大学まで夢中になって読んだ作者のひとり。
社会人になってから、なんとなく遠ざかっていたけれど、今読んでも、この人の文章や発想はすごい。
日本SFの黎明期から現在まで、ずっと現役で最前線で活動しているだけあって、各項目の小説作法についての助言は自信満々。
この語り口が苦手な人は、つらいかも知れないが、昔からの読者としては、「おお筒井節、衰えてないなあ」とうれしく読了。
「序言」で、遺言のつもりで書いたというように、結構書きたい放題な印象もあるが、実作を目指す人にはたくさんのヒントがある。この本読んでいると、何だか自分も小説を書けるような気がしてくるのだった。
「色気」「破綻」「実験」「異化」などの各章で事例として挙げられている小説が読みたくなる。そんなブックガイドとしての性格も持った本。楽しく読み、かつ勉強にもなった。
紙の本
小説を書く作法を教示してくれる書です!
2018/11/30 11:31
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、小説家として人気のある筒井康隆氏の作品です。同書は、「凄み」のある表現とはどんな表現だろう、ということなどを考えながら、小説で表現される独自の作法について詳細に語られた内容となっています。特に、これまでになかった新しい21世紀の時代の作法なども紹介されており、非常に面白い中身となっています。
紙の本
創作の極意と掟
2015/08/30 22:39
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投稿者:Carmilla - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルだけで判断すると「作品を書く上での注意事を集めた書籍」と思う向きもいるかもしれないが、実際は筒井康隆が、これまでの著作で得た知見や文壇の裏話、古今東西の名作についての知見を記した、評論というかエッセーに近いものである。当ブログでも紹介した「小説講座 売れる作家の全技術 」とはまた違うもので、著者も本書の中で「これは単なるエッセーだ」といっている。
「序言」を含めて、本書は全31テーマで構成されているが、一読して思ったのは、著者は膨大な量の小説を読破しているんだな、ということ。「売れる作家」でも大沢在昌は
「自分は高校までに1,000冊を読破した」
と語っているが、筒井はこれだけの大家になるまで、どのくらいの書籍を漁ったのだろうかと思うと、なんだか空恐ろしくなってくる。裏を返せば、これだけの大家になるためには、古今東西の名作を読破する必要がある。つまり、高校の日本史・世界史の歴史に出てくる「名作」といわれる作品を読破するのは必要最低条件であり、さらに文学史上に多大な影響を与えた作品についての詳細を把握する必要がある、ということである。
今まで意識していなかった項目が並び、その文例をあげて開設しているという点では、異色のHow To本というべきだろう。ただしこの手の本は、一度通読しただけで理解することはなかなか難しい。「ああそうか」と思えるまで、何度も繰り返して読み込まないと、理解するのは難しいのではないかと思う。作家を目指す人はもちろん、本を読み解きたいと思っている人は是非読んで損はないと思う。同時に、筒井康隆の文学観がいろんなところで垣間見えて、興味深い一冊になっている。
電子書籍
ウルトラおじいちゃん
2015/08/22 22:26
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投稿者:邪馬台国 - この投稿者のレビュー一覧を見る
電子書籍で購入しましたが、紙書籍の方も装丁が良くて捨てがたいです。筒井さんの手広さと歳を感じさせない物腰の軟らかさとユーモラスな雰囲気は憧れます。
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凝りもせずに下手くそな小説を書いている者ですが、参考になればと購入しました。
参考になればどころじゃない、創作の実践に役立つ情報がてんこ盛りでした。
座右の書にしたいくらい。
いや、します。絶対に。
まず、冒頭部分の次の行に打ちのめされました。
「小説を書くとは、もはや無頼の世界に踏み込むことであり、良識を拒否することでもある」
作家の覚悟を示したものでしょう。
まったく痺れます。
小説家はまったき単独者でなければいけません。
良識も疑ってかからねばなりません。
疑ってかからねばなりません、というか、自分の場合はそもそも良識を疑うようなひねくれた人間だから、小説を書いているわけです。
本書は小説作法について書かれた本で、広義には「文章読本」というジャンルに属するものと言えます。
私もこの種の本は過去7冊くらい読みました。
どれも役に立ったと記憶(錯覚?)していますが、本書はそうしたジャンルの本の中でひときわ異彩を放っていると言えましょう。
単に創作の具体的な手法を指南しているわけではないからです。
だって第1の項目に挙げているのが、「凄味」ですよ。それから「色気」「揺蕩」と続きます。
さすが筒井先生、一筋縄ではいきません。
もちろん、創作の手法についても豊富な事例を引きながら教えてくれています。
小説を書く者なら誰でも一度は頭を抱える「視点」の問題とか、文体、会話、展開などについても解説しており、どれも参考になります。
私は気に入った記述のあるページの隅っこを折る癖がありますが、ほとんど全ページ折ってしまいました(笑)。
小説って本当に面白い。
心の底からそう感じさせる一冊。
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p.248「妄想」
妄想が軽蔑されるのは、多くの人が自身の妄想を顧みて自分で恥ずかしくなるからだ。最初に述べたさまざまな想像とこの妄想の異なるところは、たいてい人に言えば笑われてしまうような「くだらない」「馬鹿馬鹿しい」「いじましい」「子供っぽい」「けち臭い」「いやらしい」そしてある時には「おぞましい」「忌まわしい」内容だからであろう。だがいい小説を書きたいと願う者にとって妄想は必ずしもそうではない。妄想が頭に浮かんだ時たいていの人はこれを否定的に考える。そして忘却の彼方へ置去りにしようとする。これはつまり「こんなことはいい大人の考えることではない」「社会人がこんなことを考えては恥ずかしい」「自分はもっと高尚な人間なのだ」「人に言えないようなことを考えてはいけない」などの自戒によるものだが、文士はそのような束縛からは無縁である筈なのであり、子供っぽさも必要だし反社会性も必要、低劣さも必要、恥をかくことだって必要なのである。だからこそ、脳内に浮かんだ妄想を捨て去ろうとせず、この妄想の正体は何か何処までも追及し、この妄想の根源まで行き着きたいと追求し、もっと面白いことが考えられる筈だととことん追究するべきなのだ。
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店頭で著者サイン入り本を見かけて購入。長らく本棚に置いてあったけど、もっと早く読むべきだった。時々、読み返そう。
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作家を目指す人向けに書かれた本という体だけれど、筒井康隆ワールドがどうやって作られているのかが分かる本。
小説の読み方も変わるかもしれない。
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エッセイだから、小説を書こう・楽しく読もうと思って読むなら、本人も何度も引用していた、『小説の技巧』のほうが参考になると思う。
けれど、さらっと楽しく読むならこっちかも。
というか、筒井康隆さんの本って父がたくさん持っていたけれど、私は一度も読んだことがない…。
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作家歴60年のプロの作家に向けた遺言?いくつもの項目で語られ、関連する作品や作家が引き合いにだされるので、未読の本や作家が気になりました。展開の章では、島田雅彦「未確認飛行物体」が芥川賞の選に漏れたときの大江健三郎氏との選考過程でのやりとりなどが綴られ興味深かったです。反復の章では、自身のダンシング・ヴァニティが語られます。
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手を伸ばして届くところにこの本を置いておこうと思っています。守り本尊って感じで。
――町田康(52歳男・作家)
さっそく、行き詰っていた短篇の突破口が見えました。
――伊坂幸太郎(42歳男・作家)
これは作家としての遺言である――。『文学部唯野教授』実践篇。
まえがきからして、所謂巷の「小説作法」読本と異なることが書かれている。
作家としての遺言であり、エッセイでもある。気軽に読んで、と。
どの項目においても、関連する書籍や文章が紹介されており著者の見識の幅広さがうかがえる。
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唸ったり頷いたり呻いたりしながら読んでました。物書きをする人ももちろんですが、小説好きの人と筒井御大のファンの人はとても面白く読めそうです。小説ってすごい……、文章だけでこんなにも色んな表現を試した人がたくさんいたんだ……、と無知に打ちのめされながらも圧倒されました。読みたい本がまたたくさん増えてしまった。もっと色々読んで勉強せねばなぁ。
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筒井康隆の自称エッセイ集。さまざまなキーワードから小説の書き方についてゆるーく書いてある体だけれど、読み方指南としても読めた。さまざまな方向からの示唆に富んでいて、なるほどこういう読み方もあるかと膝を打つことも多々ありました。
序言ののっけから「この文章は謂わば筆者の、作家としての遺言である」という言葉が頭にこびりついてしまったため、気軽に楽しむというより、一字一句を記憶に焼きつけるような読み方におのずとなってしまった。御大には多大なる影響を受けているので、そういう読み方になってしまった。けれども、この作品にも伺える旺盛なる実験精神のもと、これからもいくつもの作品を生み出してほしいと願っている。
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著者が遺言と称する小説作法指南ではあるが、物事の着想・表現などにもとても刺激的なヒントになりそうな一冊、筒井康隆氏79歳まだまだ元気です。
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さすが筒井康隆、ぶっ飛んでしまうような凄い本である。
目次を見ると
凄味、色気、揺蕩、破綻、会話、語尾、異化、羅列などなど
31項目続く
序言では「この文章は謂わば筆者の、作家としての遺言である。」という言葉から始まる。
対象は「プロの作家になろうとしている人、そしてプロの作家すべて」という。
電話の話し言葉だけの小説
モノが延々と羅列されているだけの小説
作品の破綻にもいろいろあるのだ。ストーリーの破綻。首尾結構の破綻。中断。結末の破綻。
ヘミングウェイをはじめ、大江健三郎、丸谷才一・・・古今東西の小説、小説家を例に引いて解説している。
目からうろこ状態になる。へえ、小説ってのはこういうものだったんだと。