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読むのにメタフィクションに対する意識とサイエンスやテクノロジーに関する素養が必要になる。混沌としているようで整然としていてある意味で面白いという感じかな。受賞作よりもペン、ペンよりも良い夜が個人的には面白かったかな。テーマの設定は面白い人だなと思うので相性のいい作品を読むことができれば好きそうというのが読んだ印象。面白いテーマ設定をする、できる人が少ないので貴重かなと思う。
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中編程度の作品が2本の薄い本だが、読み終わるまでにかなりの時間がかかった。瀬名英明の『デカルトの密室』を思い出したが、円城の方が余計なストーリーが織り込まれていない分、密度が濃い。
人の心理や慕情や老いへの哀しみやコミュニケーションを扱った文学とは見えない。いや、コミュニケーションの理論を扱ってはいるのだが、それは工学の分野の「情報理論」の定理、法則、仮説などなどを思考実験で小説の体をとって射影したようなものだ。機械学習の分野が急激な発展を遂げている昨今では、情報空間をどのように描写するかが文学のテーマにもなりうるということを円城は示したかったのか。
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「良い夜を待っている」は再読
かんねんてきなSFの中でも登場人物が語り手という手段である面が多く
随筆ふうな小説
そのことがらをさまざまな言いようで言い表すことを繰り返して表現するということが
小説や評論とか随筆などを含む文章表現というものなのだ
といった感じを包むような世界
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私には合わなかった。
評価が高い人もいるので、好みの問題だろう。
物語のほうが好きなので、論評みたいな本はいまいちでした。
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父のエミュレーション叔父のエミュレーションときて姪の代で本能に辿りつけるのか楽しみだなあと思いました
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『これはペンです』
文字に飲み込まれるように読んだが面白かった。言いたいことや内容はなんとなく理解することもできた。しかし誰かに説明しろと言われたら説明することはできないだろう。でも面白かったことは確かなのだ。きっと読んだ人ならこの感想が通じるはず。
小説内で感情を示す表現は少ないが、主人公は叔父のことが大事な人だということはひしひしと伝わってきた。主人公とのやり取りが、叔父にとっての愛情表現なのかもしれない。
『良い夜を待ってる』
これはペンですの続編ともとれる作品。こちらもこれはペンです同様に難しく、脳を使うのでお腹が空く作品だった。
理系の人が愛を言語化するとこんな感じになるのかなと思い、少し笑ってしまった。
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比較的読み易かった。「これはペンです」:叔父の正体はちゃんと分かったし、「良い夜を待ってる」:あらゆることを記憶し忘れないという父の主観を文章にする手法が面白かった。ボルヘス好きなんだろうなぁ
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どこかで筆者の“時間”に関するエッセイを読んで、短い文章だったけどすべてが自分の知らないことで、衝撃を受けた。
そしてこの小説。この人の頭の中はいったいどうなっているのだろう。
小説なのか、ただの文字なのか、すべてがでたらめな気さえする。
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叔父は文字だ。文字通り。文章自動生成プログラムの開発で莫大な富を得たらしい叔父から、大学生の姪に次々届く不思議な手紙。それは肉筆だけでなく、文字を刻んだ磁石やタイプボール、DNA配列として現れた―。言葉とメッセージの根源に迫る表題作と、脳内の巨大仮想都市に人生を封じこめた父の肖像「良い夜を持っている」。科学と奇想、思想と情感が織りなす魅惑の物語。
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何について述べているのか、何がどうなるのかなんともわからないままひたすらページを捲り、本も後半になった頃急にわかった!と思った次の瞬間、やっぱりよくわからんとなりました。
他人の頭の中はよくわからないことを久しぶりに思い出し、他人を無理に理解しようとするのはよくないなと再認識出来た一冊です。
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▼表題作
1+1=2という計算させるのにもプログラムを作らねばならなかった時期だけはようやく脱し、まだみんなハンドアセンブリでマシン語使うかBASICインタプリタを使っていて、かろうじて半角カタカナは使えるマシンが出始めたがひらがなや漢字など全角文字はグラフィックで描かないかぎり存在しなかったパソコン(パソコンという語も生まれたばかりでずっとマイコンと呼ばれていた)草創期、俳句の自動生成プログラムを作ったことがありそれは季語データベース(とりあえず五文字か七文字になるようにしておいたもの)と、五文字語、七文字語のデータベースを作っていき、それらをランダムに組み合わせるだけだったのだが、たまにはけっこうおもろい俳句ができデータベースを増やすにつれバリエーションも増えていったのでデータベースを外部に持たせ(当時は磁気テープが主流でフロッピーディスクですら高額で入手困難だったが)量的な問題をクリアした上で洗練させていけばいつか質量ともに既存及び未来の俳人全てを凌駕していけそうな気もしてた。最終的には俳句採点プログラムを作ろうとか思ってた。ちなみにぼくは俳句に興味がないわけではないのでけっこう読んではいるがちゃんと作ったことはほとんどなくこれまで作った総量で千句ていどかと思う。でもまあ特に囲碁将棋が強くない人でも強いプログラムを作ることは可能なもんやからなんとかなるやろうと。ちなみに試しに作った五目並べプログラムはぼくより強かった。ともあれ次は語句の関係性を考慮できるようにして無駄な句を減らしつつ思いがけなさの面白味は残すようにしたいとか思ってた頃、パソコンが世の中で仕事の道具になり始め玩具としておもろなくなっていったので途中やめになった。なんかその頃を思い出した。
《否定とその否定の否定。叔父の時間はそんな単純なやりかたで駆動されている。》p.28
《自分が切り貼りをしていると承知しながら、全く別の内容を書こうとする輩が一定の割合ででてくるからだ》p.60。学生のときこういうのやったことあるなあ。99%あちこちからの引用で、引用元とは全く異なる内容の論文にした。ぼく的には面白かったけど、誰も評価してくれなかった・・・単にレベルがいまいちやっただけかもしらへんけど。
この本、何が書かれてあるのか一度目で全て理解しながら読んだ人がいたらすごいもんやなあと思う。あるいは眠くならずに読めた人も。
ときおり何も考えず意味もなくほぼ自動筆記したらこんな文章になったような気もする。
作家なら一度はこういう文章を書いておきたいもんやないかなあと思う。
たまに読み返したらなんとなく刺激受けるんやないかなあと思う。電子書籍の形でもいいので持っておきたい一冊。
ある意味メタやけどメタっぽいしらける感じはなくそこはかとなく面白く感じさせるのはえらい力量やなあと思った。
▼良い夜を持っている
記憶の中に都市を構築した父の話。確実ではないが「これはペンです」の叔父の父ということだろう。姪にとっては祖父ってことになる。
記憶は改竄できるものだから、もし完全な記憶力を持っている人間がいるならその人はタイムトラベラーかもしれない。
自分のなかで増殖し続ける迷宮都市をさまよいつづける父の肖像。
無限に入れ子になっていくエミュレータとしての架空の都市群?
ぼくの卒論は大雑把に言えば「文学における記憶というもの」だったのでこの作品を面白がる素地はあった。
卒論の形式は注につぐ注の塊で互いが互いの注であり続け本文量は全体の一割もなかった。発想をきっちり伝えるためにはそうするしかなかった苦肉の策だったが提出した夜、教授から「面白かったよ」とわざわざ電話がかかってきた。
昔のMacにおまけでついてきてたハイパーカードというアプリの機能ロックを外したものに出合ったときこれがあったらもっとうまく構築できたなあとか思った。
【一行目】
叔父は文字だ。文字通り。(これはペンですp.9)
目覚めると、今日もわたしだ。(良い夜を持っているp.119)
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文学的滋味ももちろんあれど、どちらかと言うと理詰めで書く作家であり、SF小説としても一風変わった雰囲気をもつ円城塔の作品。「学術論文的」と形容するのはいささか安直な気もしますが、オリジナルの概念なり定義なり固有名詞なりを提示し、それらを一定のロジックに従い展開し繋ぎ合わせ、小説のような思考実験のような、何かそういったテキストに変換していく様は学者然とした趣もさもありなんでしょうか。読者に理解と混乱の閾値をふらふらさせつつ、そこに何となく物語みたいなものを浮かび上がらせるスタイルは相変わらずと言うか、こんな無茶な作風で芥川賞作家に上り詰めるのだからこの人も底が知れないなと思わされます。
表題作「これはペンです」は居場所どころか実存も不明な「叔父」から媒体を問わず送られてくる手紙を解読するお話。語り手である「姪」はいちおう大学生で、教授との小難しくも洒脱な会話や論文執筆・出版のプロセスなど「理系の大学生活」の一端も描写されており、みなさまが入学後の生活をイメージする一助になるかもしれません。
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姿の見えない叔父との手紙とメールのやり取り。
あらゆる方法で文字を書き手紙を送ってくる叔父。そんな叔父の姿を見極めようと試行錯誤する姪のお話…なのかな?
『良い夜を持っている』はこの叔父のあらゆることを忘れない、超記憶保持者の父親の話。
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「これはペンです」 5
始
叔父は文字だ。文字通り。
終
たとえそれが、あなたの目には文字なのだとしか映らなくても。
「良い夜を持っている」 4
始
目覚めると、今日もわたしだ。
終
いつから握っていたのだろうか、丸く赤いビー玉が夜の中へ走り出る。
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表題作は“叔父は文学だ。文字通り。”の書き出しで、抗う間もなく円城塔ワールドに放り込まれる。大学生の姪が、叔父と不思議な手紙のやり取りをしているのだが、途中、この叔父は本当に存在しているのかと疑いたくなった。同時収録の『良い夜を待っている』は、息子が語る父の人生。記憶の宮殿ならぬ記憶の巨大都市。読んでいると、記憶能力以上に、忘却能力の偉大さを思い知らされた。(再読本)