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この本の目的は、子どもを育てるときに、経済資本を活かす方法もあるし、文化資本を活かす方法もあるし、社会関係資本(人間関係)を活かす方法もありますよ、という多様な道を提示すること。
別の言い方をすれば、たとえば経済資本がじゅうぶんでないのに、それを活かすことで効果を発揮するような方法で対応しようとするのは適切ではないとも言えます。
たとえば、教員数がじゅうぶん確保できない状況であるにもかからわず、少人数にすると効果があがるという考え方に倣って人出がかかるような方法を実行しようとすると、教員の負担が増加した割には成果がでないということもあります。そのような場合は、子どもの多さを活かして社会関係資本を豊かにすることで学力を高める方法を適用したほうがよいということです。
このうち、社会関係資本による学力への影響が「つながり格差」と呼ばれています。
その社会関係資本について、経済学者・稲葉陽二先生が3段階に分けて論じていたものを、著名な研究者の社会関係資本の捉え方と結びつけて示してくださっていた部分が勉強になりました。
ロバート・パットナム流「社会的関係資本」
→ 公共財(社会や地域が全体として有する)レベル
ジェームズ・コールマン流「社会的関係資本」
→ クラブ財(特定のグループや組織の中に存在する)レベル
ピエール・ブルデュー流「社会的関係資本」
→ 私的財(家庭・親族などに存在する)レベル
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ものすごくくだらない教育分析。
総じて教育学者の研究はことごとくつまらないが、なにが駄目かというと、データの分析、ブルデューの社会資本だのなんだの、すでに有名どころの欧米の研究を引用して、ぐだぐだ体裁整えているだけだから。論文のために研究している感じ。
筆者の子どもの頃はうんぬんかんぬんの私事に触れ過ぎ。しかもそれが結論にはまったく関係ない。エッセイじゃないんだから。
東大卒の研究者がこれなんだから、日本の学校問題が片付くわけないな。尾木ママみたいな学校現場を知っていて、子どもの気持ちを分かってあげる人が教育語ったほうがいい。
要旨は、昔は教育には都市と地方の格差があった。ところが2007年の全国学力テストでは秋田、福井などの地方が上位、沖縄も意外に高い。大阪が最下位に近い。その理由は「離婚率」「持ち家率」「不登校率」にあった、というもの。要するに、人間関係の縛りがきついど田舎のほうが学力が高いよ、というもの。
これに反論するデータは、最近発表された大学進学率。地方よりも都会のほうが圧倒的に高い。都会はバカな高校生が進学しているのか? 小中と高校生の学力では違いがあるのか?
あと、この手の教育理論はまず自分が塾なり学校なりつくって実践してみてくれ、と思う。象牙の塔で理屈だけ言ってもしかたないでしょ。
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全国学力テストの結果を元にした分析結果や欧米の学者の引用などが多く、教育社会学の概要がつかめるが、著者の経験談等、主張に偏りがある気がした。
関西出身の学者さんのようなので、大阪のテーマが多い。
研究半ばと言った学者さんの現状報告書のようなもの。
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「データや根拠にもとづかない主張はしない」という持論のもとに書かれた本。
学力格差という社会問題が個人的に気になっていたので、読みました。 海外の事例や、日本の地域の例、スクールバスに例えた学説などなど、わかりやかったです。納得できる部分も多かったです。 「経済資本がない子供でも社会関係資本が充実すれば学力は向上する」ということには、希望を持てました。
著者は他にも、いろいろ教育問題について執筆されているようなので、読んでみたいと思いました。
余談ですが、フランスの教育現場や、イギリスの教育現場(の歴史)も知ることができたのも面白かったです。
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全国の小中学校で学力向上の取組が行われている。学力格差を生むのは貧富の差ではなく、家庭・地域・学校のそれぞれのつながりの差であると筆者は言う。トップクラスの秋田や福井は、指導方法の工夫も行われているが、一番は家庭や地域が落ち着いているからだ。ということは、学力向上の近道は、家庭や地域のつながりを強くすること、つながりを復活させないといけないのか。
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筆者の重視する「つながり」は大事だと思う。「つながり」の「質」に言及していたが,もっと分析があっても良いかなと感じた。後半は,学校を中心に「つながり」が論じられていたと思うが,家庭や地域の「つながり」についてももっと言及してほしかった。
最終章でイギリスを中心に外国の教育政策が説明されていた。「しんどい層」の学力向上に取り組む点が各国に共通している点だという。イギリスはニューレイバー政権のときに学力格差を縮小できた。他方で,日本はその点ではとりたてて何もしていない。しかし,日本はPISA2012で結果がV字回復し,学力格差も縮小した。この点を著者はどう考えているのか知りたい。詳細な分析による単著を待ちたい。。。
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まずは「格差」の「個人差」との違い、集団における是正を必要とされる差であると明示される。 1964年の学力調査と2007年のそれにおいて、躍進した秋田県と凋落した大阪府の衝撃も。
多変量解析によって遺伝形質、家庭背景、学校過程、社会構造と絞り込んでゆく。格差の要因は個々ではなく、さまざまな「つながり」ではないか。
1960年代以降のイギリスの例では、競争的な新自由主義の導入による、想定外の格差の是正が示される。
2012年の国際調査(PISA)に、凋落傾向にあった日本の読解力、数学、科学リテラシーのレベルと格差縮小のV字回復が見られたらしい。しかし、地域固有の問題など、さらなる改善への著者の挑戦は続くのである。
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学力格差を生むのは貧富の格差ではなく、家庭、地域、学校での、子どもたちと周囲との「つながり」の格差。それまで学力向上に課題のあった2県を例に、コミュニティ内のつながり方、先生の関わり方を紹介。「いなか」の関わり方が子どもたちの学力形成にポジティブに作用する。
経済資源、社会関係資本、文化資本、のなかで学力にもっとも作用するのは社会関係資本。お金で解決できない部分。地域での関わり方は「しんどい層」にアプローチしている。また秋田ではしつけも含めた学習のよう。
学力は今二極化し、ふたこぶ