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美しい素材、美しい文章、音楽と人生の味わい
2015/03/26 17:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者はイギリス人で、かなり多作な人らしいが日本では知られてなかっただろう。
それが昨年、正編続編と成す2冊のユニークな本で登場した。
ユニークというのはわざわざ翻訳者が原作の題を変えて強調しているように、
ヴァイオリン職人の老人が謎解きに挑むというものだ。
しかも主人公ほか主要人物はイタリア人で、舞台もだいたいイタリアである。
正編に当たるこの本では、
腕の良いヴァイオリン職人のジャンニが、語り手=主人公として登場、
同業の親友が殺され、若い刑事もヴァイオリンの演奏仲間で、
またどうも幻の名器にまつわる事件のようだということで、
その知識もあって、刑事を手伝って謎解きに乗り出す、という話になっている。
ヴァイオリン、しかも製作、さらには偽造やらという面を含むわけで、
クラシック音楽やヴァイオリンの曲や、
ヴァイオリンそのものに興味がある人には堪えられない素材かもしれない。
私のようにとくにヴァイオリンに詳しくない場合でも、
ストラディバリウスなどという名器があって、何やら興味深い、ときにはミステリアスな歴史があることはどこかで聞いている。
そういう背景の奥深さをうまく利用したミステリーである。
一般人が読むにはときに知識がついていかないと思う場面もあるが、
苦になる程でもないし、当然のようにすばらし演奏の描写などもあって楽しめる。
ミステリーとしては、殺人をめぐる真実だけでなく、
消えた歴史的なヴァイオリンの謎をも解き明かそうという二重構造になっているのもいい。
しかし、そうしたユニークな設定はもちろん評価すべきとしても、
またミステリーとしての質も悪くないにしても、
私が一番魅力的と感じたのは文章と登場人物だった。
とても味のある主人公が語る形だから、それらは渾然一体と言ってもいい。
ジャンニだけでなく、友人である若い相棒の刑事のほか、
何人もの愛すべき、あるいは興味深い人物が出てくる。
その辺は、質のいいイギリスの小説にしばしば見られるもので、
イギリスの作家の良さが出ていると言うべきだろうか。
ミステリーというと殺人事件を扱ったものが圧倒的に多いだろうし、この作品も例外ではないが、
そこにありがちな生々しさとか血生臭さはここではあまり感じられない。
それもやはりジャンニの人柄とそれを映した作者の筆の功績で、
殺人のおぞましさの代わりに、人生の滋味のようなものがにじみ出ているのがとてもいい。
文章だけでも楽しめる物語ではないかと思った。
そしてそれも翻訳の良さがあってのことである。
おそらく元の文章もいいのだろうが、この翻訳はいい。
注の付け方にもクラシック音楽へのこだわりが感じられるようで、その点もいいと思った。
いいです
2015/03/23 20:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:パウロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のヴァイオリン職人ジョヴァンニが友人、家族、過去と現在の職人や演奏家たちにそそぐ暖かい視線、音楽への愛に心があたたまる。遊びにきた孫たちに、母親(自分の娘)の禁止事項をやぶって泥んこで遊ばせたり、被害者の孫の若いヴァイオリニストをはげましたり。個人的には、ストラディヴァリの暮らしと仕事ぶりについてのくだりが印象的だった(P162)。過去の大職人に対する敬意にあふれ、一人称であることが効いている。もちろん第二作もすぐ読むしかないでしょう。
イタリアに行きたい
2017/12/21 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:xyz - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物お覚えるのに最後まで確認しっぱなしですが、その多くの関係者が必ずどこかで絡み合っています。
落ち着いた主人公の穏やかな語り口が快く、引き込まれていきます。
ヴァイオリンに縁のない自分も読後には色々と調べてしまいました。
作者の作品が2冊しかないのがとても残念です。
ヴァイオリンの奥深さ
2020/04/28 04:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kobugi - この投稿者のレビュー一覧を見る
繊細な楽器だとは知っていたが、来歴や作りなど、ヴァイオリンについて知ることができた。贋作が生まれる背景も斯くや、と納得。シリーズ化されているので、続けて読みたい。