紙の本
史料への取り組み方を紹介
2017/08/08 21:55
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊達稙宗が定めた「塵芥集」を題材にして、中世史料への取り組み方などを紹介する。対談のスタイルのため、気軽に読むことができた。桜井氏と清水氏の議論にはかみ合わない部分もみられたが、2人の発言には示唆に富む指摘が随所にあり、中世史研究の奥深さを垣間見ることができた。西山城をめぐる議論は、通常の論著などにはみられないような想像力が発揮されていて、楽しめた。
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名当主の肉声に耳をかたむけて
乱世の現実をリアルに実感。史料読みの楽しさを体感!
(2014年刊)
・序 戦国法の魅力
・Ⅰ 犯罪者をつかまえろ
・Ⅱ 売買トラブルはゆるさない
・Ⅲ 立法の情報ソースをさぐる
・Ⅳ 戦国大名の夢のあと
本書は、読者に史料読みの楽しさを伝えるため、二人の研究者が伊達氏の塵芥集を題材に対談した本である。話の内容に結論が無いという意味では中途半端な気もするが、経過をみせるという著者の意図は伝わった。内容が難しく斜め読みだが、中世社会の雰囲気がかいまみえたのが良かった。
塵芥集は分国法の代表的なものとしてあげられるが、その実態はよくわからないらしい。1536年に制定されているが、1542年には天文の乱が発生しており、どの様に運用されたのか実態がわからないのだという。また、長らく忘れられており、仙台藩主 伊達綱村により発見されたものだというのは意外であった。欲を言えば171条すべて条文を載せれば良かったと思う。
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素人には難解だったが、一語一語に拘って資料を解釈していく過程はスリリング。中世史には文学的センスが必須なのだなぁと、実感させてくれる。フィールドワークの必要性について、考え方が色々ある点も興味深かった。
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伊達稙宗の『塵芥集』はなんか難しそう(実際難しいのだけれど)だったけれど、この本ではすっきり分かりやすく整理されている。(とはいえ一度読んだくらいではさっぱり分からないですが)
売買契約の「年季売り」と「永代売り」「本銭返し」などのしくみは、ずっと混乱していたのでこの本のおかげで整理できて良かった。
あとは下人の「身売り」。対談では佐竹昭広氏の『下克上の文学』(1967,筑摩書房、ちくま学芸文庫で1993年にも出ているらしい)で主人から殺されそうになった下人は「新開」(土地の開墾)をこっそりしていたのが理由という分析ということが紹介されていた。直接見ていないのでそちらも読んでみたいと思う。
他にも末尾には解説された条文の一覧や、系図などもある。