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プロローグの文章で、誰もが忘れることのできない「あの日」の物語と分かる。幸せな人も不幸な人も、富を得た人も貧しい人も、毎日が楽しい人も寂しい人も、平等に訪れた「あの日」。
ラストまで読みきった後に、もう一度プロローグを開くと、礼司と結子の非日常的な日々が思い返される。それぞれが流した涙は、人の為に流れたものであることに、二人の美しさを感じる。
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最初は森絵都らしくない話でしたが、物語が進むにつれて、特にラストは期待通りの展開にしてくれました。構成が上手く、最初に戻って手紙を読み、じんときました。読んでよかったと思える作品。
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「傑作青春小説」という帯はいかがなものか。
『私は寧ろ「この男」とでもしたい』という作中の文はよくわかる。それぞれの人にそれぞれの人生を用意する作家の上手さを味わう。礼司と結子の潔癖さと怠惰さと釜ケ崎の関係が、どんどん先へ読ませるのだが、冒頭の手紙が頭を離れない。誰もが知るある日付に向かっていく構成が、あらゆる場面を傷めていく。
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序章から阪神大震災あたりの話とわかっていても最終章のあっさりとした終わり方に震えた。
このラストの後に阪神大震災とオウム事件が起こるのを読み手は知っているので、このあっさりとした終わり方と序章が色んな意味を持っていることに気づくとさらに震えた。
とても引き込まれて読み進めたのに、ラストでポーンと投げ出されたような感覚。礼二たちが幸せになっていてほしいとつい願ってしまう。
手紙の相手は大輔なのだろうか
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「他人同士のままかてええやん。家族に負けん何かがあれば…なんや強力な楔みたいなもんがあれば…たとえば、絶対無敵の性欲やとか」
「その男が遺したもんは、あるたけわしがもらうことになっとる。看取る代わりに、遺品はもらう。男と男の約束や。路上で売って次の病人の介護に使うんじゃ。死んでく人間のためや。おのれの遺品が誰かのためになる思うたら、人間、なんぼか安心して死んでける」
「あんたはいつもなんやかんやと考えすぎやないの。うちのことも、東京のことも、ぐだぐだ言わんで一度、試すだけ試してみたらええんちゃう」
森絵都らしくないストーリー。まぁまぁってところかなぁ。と思ったけど、プロローグに戻ったら震えた。
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わたしも読み終わってから、プロローグに戻ってみました。そして改めて「この女」、「この男」について感じるものがありました。
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「新境地」という言葉が適切かどうか分からないが、確かにこれまでの森さんの作風とはちょっと違う。
大阪の日雇い労働者の街・釜ヶ崎で暮らしていた礼司は、大学生の大輔から執筆を頼まれる。資産家である依頼主の妻・結子の半生を300万円で小説にしてくれという。我が儘で自由奔放な結子の語る内容はデタラメで、周りにはきな臭い影もちらほら。そんな中、礼司は振り回されつつも結子との距離を縮め、彼女の謎を探っていく。
結子の過去以外にも様々な謎が散りばめられており、広い意味でミステリー作品と呼んでもいいかもしれない。謎の一つが語り手の礼司自身の境遇だ。なぜこれほどの青年がドヤ街でくすぶっていたのか? その答えと礼司の心境の変化が物語終盤の読みどころだが、このあたりの描写はさすがにうまい。
タイトルは『この女』だが、いつの間にか結子は引き立て役になった感がある。本作は紛れもなく礼司による、礼司のための救いの物語だ。読了して再び冒頭を読み返した今、そう思う。
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【ベストセラー『カラフル』に続く冒険恋愛小説】日雇い労働者の青年と、ミステリアスな資産家の妻。二人の人生が交錯するとき、思いがけない事件が起こる。新境地を切り開いた傑作!
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森絵都さんすごい!こんなタイプの物語も書けるなんて!安定してて好き!
最初はちょっと変わった恋愛小説かなと思って手に取りましたが、それこそヒロインの結子と小説の書き手である礼司の回顧録だったり途中ハードボイルドだったり、予想もしてない展開目白押しでした。
最後も読者の想像に任されていて、語りすぎない所も良いなと思いました。
また、最初は「結子って変なやつー!」としか思えなかったのに、物語が進むにつれて「いい女やん!」とエセ関西弁で思ってしまう。やっぱり森絵都先生好きだな。
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主人公が頼まれてある女の人生を小説にする話。
物語が進むにつれて様々な一面をみせる結子から目が離せなかった。主人公とのやりとりも面白く、2人の不思議な関係性がさらに小説を盛り上げていた。
大きな転換点があるわけではなかったが予想のできない展開やセリフ、個々の印象深いキャラクターなど読み応えのある作品であった。
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前向きで清々しい物語。
プロローグから察するに、幸せな結末ではなかったのかも知れないけど、ラストは確かな決意と、幸せがそこにはあったと感じることが出来る。
前を向いて歩いて行こうと思わせてくれた。
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自分の女房の人生を小説に書いて欲しいという奇妙な以来を受けた主人公の礼司。彼は実家を離れ大阪のあいりん地区、釜ヶ崎のドヤ街で肉体労働に明け暮れていたのですが、依頼者から大金を前払いされ、その小説を書くことを引き受けてしまったのでした。時は阪神淡路大震災が起こる直前のことでした。
小説のモデルとなるホテル経営者二谷の妻、二谷結子は波瀾万丈の人生を送ってきたようですが、初対面で猥雑な化粧を施した彼女に圧倒され、その破天荒な行動に振り回されていきます。彼女は自らの生い立ちを語らないどころか、話の中身は嘘で二転三転するため小説は 筆が進みません。それでも手を尽くして彼女の周囲を探るうちに、この小説を依頼した二谷の裏の意図が見えてきたのでした。
日々、結子の言動に触れるうちに彼女の生い立ちや内面が垣間見えるようになり、彼女も礼司には心を開いていきます。そして礼司も今まで皆に隠していたことを彼女に告白します。小説を書きながら自分の人生とも折り合いをつけることができた礼司ですが、現実も進行していく中で結末をどうしめくくるのか、この後、結子の意外な想いが明かされます。
まだ記憶に新しい阪神淡路大震災やオウム真理教のサリン事件などがあった1995年という特異な年を背景にしたお話は、冒頭にこの小説の顛末が載っているだけに余韻が残ります。
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プロローグ読まず、読後、阪神淡路大震災後のストーリーを勝手に思い浮かべてた。生きてくことって、辛いこととか大変なことを自分で何とかして乗り越えることなんだなあ。
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*釜ヶ崎のドヤ街に暮らす僕に、奇妙な依頼が舞いこんだ。金持ちの奥さんの話を小説に書けば、三百万円もらえるというのだ。ところが彼女は勝手気侭で、身の上話もデタラメばかり…。彼女はなぜ、過去を語らないのか。そもそもなぜ、こんな仕事を頼んでくるのか。渦巻く謎に揉まれながら、僕は少しずつ彼女の真実を知っていく。新境地を切り開いた冒険恋愛小説の傑作!*
だそうですが。まずは関西弁がかなり見苦しく読みにくく、嘘つきで気儘な結子にイライラ。
主人公の礼二も魅力に乏しく、結局「釜」のベガス構想による土地売買問題のすったもんだに巻き込まれ、最後は震災で行方不明になっちゃった話。
後半、礼二が左右不認と識字障害のせいで家を出て「釜」に入ったという経緯は意表をついたけど、残念ながら物語自体にはあまり活かされてしてなかったし。
なんだかなあ。
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絵都さんは「女子供」向けのイメージが強いが実はそうではなく性別に捉われず硬軟自在に人間を真正面から描くことの出来る実力派。
だがそれにしても今回の舞台は釜のドヤ、そのディープさに西村さんの本?と表紙を見直すことも暫しの異質な作品。
設定は1995年でワーキングプア問題にカルトをも絡ませ更に震災前夜のハッピーエンドと盛り沢山、シンプルに礼二と結子のラブストーリーにしたほうが良かったのではと思わないでもないのだが面白くて夢中になれたからそれでいいのだろう。
いつも「前を向いて!」のメッセージをくれる絵都さんに惚れてまいそうです