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タイトルだけ見て、生物学者による学術的な犬の行動分析のようなものを予想していたのだが、違っていた。
著者は生物学者ではなく心理学者で、自分の専門領域の理論を活用しつつ、犬の行動の研究も長年行ってきた愛犬家。71の犬の行動に関する疑問にそれぞれ答えるというコラム風のスタイルでまとめられたもので、想像していたほど学術色は強くなかった。
心理学や比較行動学による分析もそれなりに行われているが、それぞれの疑問に対する回答もせいぜい3,4ページとコンパクトで平易な表現に終始しており、どちらかと言ったら犬に関する雑学のような雰囲気。
初めから順に読まなくても、開いたところを逐次読むというスタイルでも大丈夫なので、犬の行動に興味はあるけど、あんまり難しいのはちょっと、とか、長々とした学術分析は遠慮したいという場合にもってこいでは。
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<子犬の瞳は空の色---犬に関する疑問に答える、71の豆知識 >
犬と暮らしていると、いろんな発見がある。
うちの2頭目となった子犬はちょっと怖がりだけれど、周囲に興味を持ち始めた。あちこちの匂いを嗅ぎ、ボールを追いかけ、影に向かってジャンピング!
あんなこんなの仕草を見ていると楽しい。
一方で、犬を見ているとあれこれ疑問もわく。
1頭目の犬は片足をちょっとだけあげておしっこするけど、2頭目は腰を下げてする。どちらも雌犬だ。それって何か意味がある・・・? ずっと青いままだった2頭目の眼は、ようやく黒っぽくなってきた。子犬は眼が青いものらしいけれど、青い眼が黒くなるのってなぜ・・・?
そんな風に日々「犬って不思議」と思っている、犬のオーナーさんにはもちろん、そうでない動物好き人にも楽しく読めそうなのが、こちらの1冊。
著者は心理学者・動物行動学者でもあり、犬のトレーナーでもある。
認知心理学の著書も多いが、犬に関する著書もまた多い。
本書では、犬に関して人が日頃感じがちな疑問71を大まかに6つの章に分け、それぞれ短いコラムとしてまとめている。
日本語の副題はキャッチーな話題を特に選っているようで、いささかキワモノのなのかと思ったが、中味は常識的で読みやすく、犬についての現時点での研究成果がよくまとめられている。これもまた、「犬学」の一端と言えそうだ(参考:『犬が私たちをパートナーに選んだわけ』)。
71がそれぞれ短く完結しているのもよい。自分の知りたい項目だけ拾い読みするのも楽しいし、細切れ時間に読むにもよい。
犬を飼っていて生じるあれこれの「困った」に対して、即効性はないけれども、その原因を探る一助ともなりそうだ。
何より、著者の犬に対する愛や、犬との暮らしを楽しんでいる様子が感じられて温かい。
いくつか項目を挙げてみる。
・犬は本当にうつ病になるか?
・犬が遠吠えするのは、誰かの死が近い、という意味か?
・犬は鏡に映った自分がわかるか?
・犬の性格は遺伝的に決まるのか?
・犬はなぜ吠えるのか? やめさせることはできるのか?
・他の動物と比較して、犬はどのくらい賢いか?
・犬は汗をかくか?
・なぜ子犬の目は初めは青いのか?
(順不同)
「うつ病」に関しては、ヒトと似た症状を示す犬はいるようである。そして実際、ヒト用の抗うつ剤を投与してみたところ、症状の緩和が見られた例はあるようだ(ここで、抗うつ剤を犬にも使ってしまうところがアメリカ的な発想と思うが)。そうなるとこれは「うつ」と呼んでもよいのかも知れない。現代の犬もなかなか大変である。
遠吠えと不吉な予言の話は世界各地の民俗学的伝承にも触れていてなかなか興味深い。このあたり、複数分野にわたるバックグラウンドを持つ著者の広い視点を感じさせる。
犬はなぜ吠えるかについて。野生のイヌというのはほとんど吠えないのだそうである。ヒトは犬と共存するにあたって、番犬として利用するために、よく吠えるものを選び出してきた。だから犬が吠えるのは、ある意味、当���のことなのだ。この項だけでなく、他の項でも、経験に裏付けられた、トレーニングに関する助言もためになる。
さて、子犬の眼はなぜ青いのか。
その答えは冒頭のひと言の通り、「空の色」と同じ原理である。
子犬は誕生時、成熟しきっているわけではない。
眼には虹彩(瞳)と呼ばれる部分がある。光の量を調節する、「絞り」に当たる部分である。中央の瞳孔の大きさを変えて、目に届く光の量を加減するのが虹彩の役割だが、瞳孔以外のところから光が入るのを遮断するため、虹彩には色素がある。だがこの色素が発達するには時間が掛かる。
そこで生じるのが、子犬の眼の「青」である。これは色素によるものではない。「レイリー散乱」と呼ばれる物理的現象だ。光線が光を反射するものにぶつかった際、短い波長の光(=青く見える)の方がより激しく分散し、散り散りになって、全体が青く見えるのである。空が青いのも同じ原理だ。色素が発展するにつれて、多くの子犬の瞳の色は変わっていく。
巻末には参考文献が添えられ、索引もある。国際畜犬連盟に公認された犬種名も収録。
資料としても読み物としても優れた1冊。
*いや、実を言うと、本書で一番驚いたのは、犬種名のところで、柴を初めとする日本犬が「アジア原産スピッツ」と分類されていたことでしょうか(--;)。そうか、キミたちゃスピッツなのかい・・・。
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びっくりするくらいいい本だった。犬との付き合いは長く、何を考えているか顔見ればわかるくらいに思っていたが、この本を読んでああそうそう、と思うところと同じくらい、そうだったのか、とびっくりすることが多かった。ほかのことではばっちり言うことを聞くのに、わんわん吠えるのだけは止められなかった理由がはじめてわかった。そうだったのか! びっくりすると同時に、笑ってしまった。どうして気づかなかったんだろう。犬も叱られて困っただろうな。
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下記URLより閲覧ください
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000026114?6
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「犬は嫉妬する?」「犬も鬱病になる?」といった犬の精神生活と社会生活に関する71の疑問に答える。50年間、犬の行動について学び研究している心理学者が、犬の不思議な行動や知的活動を、人間と比較しながら解き明かす。