紙の本
アジフライがおいしそう、佐和の視点から物語の読み直しが求められる。
2023/09/15 17:21
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投稿者:天使のくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語は中学校でスタートする。主人公の春日高男は、ボードレールの詩集「悪の華」を愛読する中学生だ。クラスメイトの佐伯奈々子のことが気になっている。ある日、誰もいない教室で彼女が置き忘れた体操着を見つけ、これを盗む。モラルに対して自分の欲望を正当化する「悪」の行為を、だが、同じクラスの仲村佐和に見つかってしまう。
仲村さんはクラスの中でも浮いた存在。勉強する気もなく、教室を、学校を、自分の住む町を軽蔑している。教師のことを「くそむし」と思っている。
その仲村佐和は、春日高男の姿を見て、自分と同類の人間を発見したと感じる。そこから、彼女は、体操着の窃盗をねたにして春日高男に変態的な行為を要求する。同時に、仲村佐和は群馬県の桐生市とおぼしき町を心底嫌っている。父親との二人暮らしだが、父親への愛情はない。早く町を出て行きたいと思っており、そのために春日高男を連れて行こうとする。殺風景な部屋に住む仲村佐和は、ネガティブな綾波レイといった感じすらする。
1巻から7巻まで続く中学校編は、佐伯奈々子を巻き込み、破滅に向かって突き進んでいく。春日高男は、地獄に道連れしてくれる仲村佐和から離れることができない。最後、町を出ようとしてもどこにも行けないこと悟った仲村佐和は、祭りの舞台で春日高男とともに焼身自殺を試み、失敗する。火をつける直前に、仲村佐和は春日高男を押し倒し、自分一人で死のうとするが、それを父親に防がれる。この事件を契機に、それぞれが町を離れていく。
埼玉県のどこかとおぼしき町で、高校編がスタートする。春日高男は事件以来、すっかりぬけがらのようになっている。それでも、「悪の華」が好きな文学青年であることは変わっていない。物語は、文学少女で小説をこっそりと執筆している常盤文と出会い、再び動き出す。
こうした中、春日高男は町で佐伯奈々子を見かけ、彼女が普通の女子高生としてどうにか自分を取り戻していることを知る。そして、祖父の葬儀で故郷に帰ったとき、佐伯奈々子の友人だった木下亜衣から仲村佐和の居場所を知る。千葉県で母親が営業する食堂を手伝っているという。
一方、常盤文は小説を書き上げる。最初の読者は春日高男になるはずだった。だが、春日高男は読めないという。春日高男にとって、仲村佐和との関係は決着がついていなかった。春日高男は常盤文に全てを話す。祭りでの焼身自殺未遂で、なぜ彼女が自分だけを生かそうとしたのか。その答えを求めて、常盤文とともに千葉県に向かう。
春日高男と常盤文は仲村佐和がいるとおぼしき食堂に入り、アジフライ定食を注文する。最初に出てきた仲村佐和の母親は、「彼女をそっとしておいて欲しい」という。けれども、料理を運んできた仲村佐和に対し、自分であることを打ち明ける。定食に手をつけようとしない二人に対し、仲村佐和は「おいしいよ」と、食べるようにうながす。母親との平穏な生活の中で、彼女はそう言えるだけの余裕を取り戻していた。
このあと、三人は浜辺で会うことになるが、このときの、もう眼鏡をかけていない仲村佐和の表情は、心を打つ。
欲望によって抱えてしまった心の闇・黒歴史を、結局はずっと抱えて生きて行かなきゃいけない。その闇は、遠くで生きている仲村佐和としか共有できないものだけれども。そして、仲村佐和の抱える闇を、春日高男は抱えきることができない、変態ではなく「ふつうにんげん」でしかないとも悟る。けれども、物語は、仲村佐和の視点から読みなおすことを強要する。仲村佐和にも幸せになって欲しいと願わずにはいられない。
電子書籍
難しい
2023/05/31 14:04
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投稿者:なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物全員少しずつ壊れていく
ていうか最初から壊れてるのかもしれないけど
分からない部分が多くて理解したさに何回も読んでしまうかな
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最終巻。
初めて惡の華を買った時は「なんで買っちゃったんだ……」と頭を抱えました。思春期のエグイ部分をとにかくはぎとり、痛い痛すぎるの連続。恥ずかしいですが、わたしにもあった若い頃の破壊衝動を思い出させられ「もうイヤ……読むけど……」というかんじでした。
高校生編に入ってどんどん普通になっていく物語を読みながら、そこに生じる空っぽの感覚に「もういいかな」という後悔がありました。
しかし、9巻を読んで自分の過ちに気づきました。中学生編で終わらなかった意味、高校生編に続いた意味。涙が出ました。
大抵の人は後悔しているであろう痛い過去を赦してくれる。それでいいんだよ、と背中を押してくれる大切なマンガになりました。
普通である愛おしさ、苦しさ。同時に自分の中にある暗い気持ち。それでも幸せを掴みたいと思う気持ち。
最終巻を読んで、穏やかな涙が出ました。集めた意味があったと心から思います。ありがとう。
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最初から間違えていた。ハメられた。こんなに腑に落ちる最終話、ただただ読んできてよかったぜ!っておもたです。
仲村さんのボキャブラリーの幼さが切なくて。最終話にむけて時間軸の逆走で、仲村さんという少女に、突如説得力がでてくる。生身の人間らしい葛藤をかかえた少女の姿。
最終巻よんで、全巻通して読み直したくなるマンガってそう多くないけど、これは間違いないく、それ。仲村さんと春日の関係、11巻を読む前と後でミカタがかわる。
にしても、常盤さんのにんげん力がハンパない。
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ただただ、面白かった。良い終わり方の見本みたいな感じ、ですかね。穏やかに、そしてすうっと入ってくる心地よさ。
初期巻から考えると、こういう終わり方になるとは、思わなかった。
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青春とは疾風怒濤、吹き荒ぶ風と、猛り狂う波と、
そして海辺での殴り合いだ。
それはもう、お決まりのパターンなのだ。
青年期を「疾風怒涛」と表現したのはアメリカの心理学者G.S.ホールであるが、彼が提唱した学説に「心理的反復説」というものがある。
個人の発達は生物としての人類が辿った進化の歴史に似た発達段階を繰り返す、というもので、
要するに文化や時代は違えど結局人は、過去の人が繰り返してきた同じパターンの反復でしか成長していけないんだよ、ということである。
結局みんなふつうに生きて、ふつうにセックスして、ふつうに死んでいくんだよ。
それしかできないんだよ。
それのどこがいけないの?
物語は永遠に続く繰り返しとして、幕を降ろした。
これは永遠に終わらない春日青年の思春期の記録であり、
永遠に繰り返される人類の歴史の一部なのだ。
…とまで言ったら、言い過ぎか。
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この物語はボク自身だ。
ボク自身の救いの物語なのかもしれない。
あとがきにもありましたが、
この作品が世の中に出てくれて
読むことができてすごくうれしいです。
何回でも読みたくなるので、絶対に売りません。
押見修造さんに感謝申し上げたい。
この作品を書いてくれて本当にありがとう。
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どんな壮絶な終わり方をするのかな、と思っていたらとても「普通」な終わり方でした。でもそれが良かったです。
心と体が男女それぞれで成長していく思春期、そこから生まれる嫌悪感や得体のしれないドロドロした感情とどう向き合うかを描いた漫画なのかなと思いました。
今までよくわからなかった登場人物達の台詞も、最終巻を読んだ後なら理解できます。
悪の華は誰の前にも現れていつか散っていくもの。それが普通。
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素晴らしかった。その一言に尽きる。
読後感はきっと人それぞれなんだろう。それこそが素晴らしい作品の本来の評価なんだと思う。
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もっと劇的な最終回を期待していたが、中村さん以外はそれぞれ普通の幸せを手に入れて行ったようである。結局は思春期の不安定な精神世界だけが面白かっただけで、第二部はそれを収束させただけのようだ。ただ中村さんだけはさらに冥府魔道をいくのだろうか、しかし物語はリフレインすることで終わってしまった。ちょっと期待はずれ。
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1巻2巻の頃は個人的にはそこそこ面白いフェチマンガといった程度の印象で、表紙とタイトルでなんとなく買って読んでいたのだけれど、もういつからか発売が待ち遠しい漫画になっていました。そしてもう少し続くと思っていたので完結が寂しいです。高校編もう一波乱あると思った。終わり方としては、盛り上がりには欠けるけど下手に話を盛り上げてチープな作品になるよりは、これはこれで良かった。
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完結したー!少し淋しい。
読み終えた時、最初から読み返さなきゃと感じた。
終わり方としては、嫌いではないけど、まだもう一波乱を期待していなかったと言えば嘘になる。
少し間を置いて、一気読みし直そう。
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完結巻が出たということで『悪の華』と『おやすみプンプン』を比較しながら一気読みしてみた。どちらもファム・ファタールに出会った少年が悲劇的な恋愛を通して成長するという 同じ物語を描いてるんだけど、作者の資質これだけ読書感が変わるのが面白い。
僕は個人的に『あの人には、あの人の人生があり、自分の思い込みとは関係なしに、勝手に成長したり救済されていたりする』という現実を描いた『悪の華』の結論の方が自分には合っているな…と感じました。
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押見さんの作品を読んでいると主人公の自意識の強さに胸がドキリとすることがあります。まるで昔の自分を見ているようです。
本を読んでいる自分がかっこいい、周りはみんな馬鹿だ。こんなことを思っていた時期が僕にもありました。それが本当にくだらないことで、空っぽの人間が強がっているだけなんだと、押見さんはきっと当時の僕と同じ気持ちを持っていたんだろうな。これからも応援しています
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正直はじめは物足りなさを感じてしまったけど、納得の終わり方でした。
「ふつうにんげん」になっていくんだけど、過去の青臭さはいつまでも個人の中で反復し続けるのだなと思いました。戻りたい、戻りたくない、やり直したいとかどれも叶わないけど一生付き合っていくのかでしょうか。そうだと嫌な気もするけどやっぱり素敵だと思います。