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紙の本
和田誠さんの得意分野なので安心できます
2021/02/13 08:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
和田誠さんはイラストレーターですから、様々なジャンルのイラストを描いています。
それは装丁とか絵本とか多岐に渡っていますが、なんといっても映画関係のイラストは和田さんがもっとも得意とする分野ではなかったでしょうか。
2014年に刊行されたこの画集は、「シネマ」と銘打っているように和田さんの得意な分野に関係したイラストだけを集めたものです。
和田さんと映画といえば、何といっても映画のワンシーンのイラストと名セリフを集めた『お楽しみはこれからだ』シリーズが有名ですが、この画集にはほとんど文章がありません。
和田さんの色刷りのイラストと映画のデータが並んでいるだけ。
ただ巻頭に「自分史の中の映画」と題された、ちょっと長めのエッセイ(誠少年がどのように映画に染まっていったかが綴られています。特に和田さんがノーギャラで描いたという伝説となった日活名画座のポスターの話は、何度聞いてもいい話です)と、それぞれの作品のまとめのような文章があるだけです。
なので、じっくり和田さんのイラストを楽しめます。
題材になっているのは、映画の名場面や監督、俳優だけでなく、原作を書いた文学者たちも描かれていて、ドストエフスキーやサルトル、もちろんアガサ・クリスティーもいたりします。
中でも、桜色の背景で描かれたチェーホフは圧巻の一枚になっています。
こういう画集を開くと、なんだか和田さんがまだそこにいるような、そんな気がします。
(和田誠さんは2019年10月に亡くなっています)
紙の本
映画に関する油彩画を中心とした和田さんの画集
2020/02/22 13:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2019年10月に亡くなられた和田さんは、単にイラストレーターというだけでなくデザイナーとしても装丁家としても、さらにエッセイストでもあり、作詞作曲もしたり、映画監督もしたし、ショーの演出を手掛けたりと多彩な方であった。
でも、私の中では和田さんといえば似顔絵を得意とするイラストレーターであり、映画について博識な方であったという印象が強い。
なので、和田さんの著作は非常に多いけれど、この『シネマ画集』は特に和田さんらしい1冊だと思う。
ここに収められている絵のほとんどは、和田さんが長年表参道にある画廊で開かれた個展で発表されたもののうち、映画に関するものだという。映画原作者であったり、映画監督のポートレートだったり、舞台から映画化された作品や映画のラストシーンを取り上げていたり、アカデミー賞を受賞した作品の絵だったり、もう映画を様々な切り口で見せてくれている。それぞれは1枚きりの絵なのだけれど、それを見ているだけで実際の映画を見たくなるんのだから不思議というか、そこが和田さんの絵のなせる業なのだろう。
上にも書いたようにここに収められている絵は個展用に描かれたものが多いので、普段目にする印刷されることを前提にされている絵とは異なり油彩なのだが、それもまた独特の雰囲気を出していて、とても「画集」らしくなっているように思う。
でも、そこに「BOUNUS TRACKS」と名付けておまけをつけて、「週刊文春」の表紙絵の中で映画に関係したものを載せてしまうのが、これもまた和田さんらしいなあと思う。
そんな和田さんの新作を、もう見ることは叶わなくなったので、こうした画集でずっと楽しみたいと思う。
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