紙の本
水害の国、日本人の心得
2014/07/20 10:03
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、3年前に紀伊半島を襲った台風12号の豪雨災害を振り返り、読者に追体験をしてもらうことで、今後の防災に活かしたいという内容でした。
第1章と第2章は奈良県十津川村と和歌山県那智勝浦町の悲劇を、渾身の筆力で活写しています。深夜の豪雨に何が起きつつあるのか分からない不安感と恐怖。翌朝、状況が判明した時の驚愕と混乱。当てにならない役人。立ち上がる人々。復興への長い道のり。とにかく迫力のあるルポでした。そして、そこには、いくつもの教訓がありました。
「避難指示・勧告の発令はその場所に危険があることを示すが、発令がなかったことは必ずしもその場所が安全であることを示すものではない(105ページ)」
「役場の混乱を非常に感じたのは、会議で『誰かが被災現場に行かなければならない』という話をしても、それがなかなか実行に移されない(109ページ)」
「役場に頼んでもできん、できんと言うばかりやから、自分たちでやるしかない(119ページ)」
昨年の伊豆大島での悲劇もそうでしたが、いざという時、役所(公務員)は全くあてになりません。自分の身は自分で守らなければいけないと強く思いました。
毎年、全国各地で起きている水害。今年も既に、長野県の梨子沢で、台風8号による土石流に巻き込まれ犠牲者が発生しました。しかし、同じような事が、自分の身に降りかかると思っている人は少ないのではないでしょうか。第3章では、過去の水害を振り返り、首都圏を始めとした都市部の危険性を問うています。本書を読んで、防災意識を高めておく必要があると思います。少なくともハザードマップを確認しておくだけでも違うでしょう。
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結果的に国が行う復興は、旧に復すこと、復旧の発想でしかない。以前に田んぼだったとこrは、田んぼに戻し、海岸線だった場所には防潮堤を築く。しかし人口減少社会において、農地に戻すことにどれほどのリアリティがあるのか。東北の新しいイメージがないことが最大の問題。
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なるほど・・・。
北海道の「新十津川市」というのは、122年ほど前、十津川を襲った災害で新開拓を決心した村民の移住先だったんですね。
日本は災害が多い。しかし、場所によることも確か。
100年に一度と言われても…なかなか実感を持って防災にあたれないのが人情かと。
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2011年9月に発生した奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町の豪雨災害の詳細なレポート、そして、その事例を踏まえ今の東京の水害に対する脆弱さを指摘している。
被災地に共通していえることは、ここ何十年かは大丈夫だったという近視眼的な、根拠の無い安心感。
土地の古老といっても、記憶があるのはせいぜい70年から80年ぐらいのもの。しかし、たとえば那智谷の地形は、専門家からみれば典型的な谷底平野であり、長い年月をかけて川が谷底を暴れ、谷を削ることに寄って平野が形成されてきた地域であるらしい。
そこが危険な場所だという認識に、欠けていたのではないかという指摘。
そして、やはり被害が発生した地域では、本気での防災体制が確立されていなかったという指摘。
形式的には、防災体制図は完備され、法律的基準は満たされていると国に報告はなされている。しかし、実際に避難を始めるタイミング、そしてそれを伝える手段、さらに実行する能力について、本当に備えがあったといえるのだろうか?
この二つの指摘は、決して本書で取り上げられた地域にのみ適用される特殊な事例ではない。むしろ、日本全国、私や貴方が現に住んで、働く、その土地でも指摘されるべき弱点なのではないだろうか。
そして、本書の第三章は、具体的事例をあげて、現在の東京の脆弱性を指摘している。たとえば、荒川右岸鉄道橋、たとえば中央区付近の地下鉄等々。
あまりに人が集まりすぎているから、有効的な対策がとられていない、さらにみんないるからという根拠の無い安心感が、さらに危険性を増幅させる。
私も昨年、本年と豪雨被災地の支援に現地に赴いたが、いずれの地も、雨が降っていなければ なんでこの場所が?という一見穏やかそうな場所。地球温暖化が理由なのかどうかはわからないけど、いままで大丈夫だった場所が、同じ理由のままこれからも大丈夫なんてことを信じるべきではない。
まず、自分の意識を点検し、改めるべきところは改める。そして、家族にそれを広げ、地域に広げ。さらに自治体、国まで真剣に国民の安全を考えるようにすること。それが、自分を含めひとりひとりの命を守ることに直結していると強く感じた。
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今、地方行政に関わる全ての人が読むべき本だと思う。もちろん国政に関わる人々も。
2011年に奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町で起きた豪雨災害の詳細レポートとその考察を中核に据えて、今後日本人が豪雨災害に関して何を考えていかなければならないのかをまとめた力作。
読んでいて一番思ったのは、国や地方自治体は「起こるかもしれない」を真剣に考える必要があるということ。その時だけ担当を決めて、マニュアルを作り、事前に予告して行う避難訓練なんかに意味はないのです。
鳥取県の片山元知事(この方、図書館政策で有名ですが、防災に関する取組も素晴らしいです)は、県知事任期中に「防災のことだけを考える人」を役職として設けて、鳥取県の防災対策を見直させました。その結果机上の空論になっていた多くのルールを見直すことができ、鳥取県西部地震の際に県は迅速な対応を取ることができたと言います。国が都道府県、市町村にこういう人を置くこと(もちろん形だけでなく)を義務付けてしまえばいいのにと思う。
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○2011年の紀伊半島豪雨災害について、その関係者等の話しをまとめたドキュメント作品。
○本書中にもあるように、当時は、東日本大震災のあった年であり、印象は強く残っていなかったのだが、本書を読んで、むしろ強烈なインパクトを受けた。
○十津川村の歴史など、山と暮らす文化についても、興味深かった。
○本書の最後に、首都圏等における水害の予測・危機についても触れているが、最近の気象状況を見ていると、まさに人ごとではない問題と感じた。
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第1、2章はH23年和歌山での土砂災害のルポタージュが中心。「まえがき」こそ命からがら助かった住民の方の話だったが、そのあとの本編は住民目線の話はあまりなく、むしろ行政側(首長、防衛省、国交省)や建設業者による対応こそ、中心的に描かれている。行政の対応等に光をあてられていること自体は有意義。
惜しむらくは、そのように目線ごと(プレーヤーごと)にわけて描かれていればそれぞれの活躍ぶりがよく伝わっただろうということ。
様々な話を一緒くたにして書いたり、途中に学識者(静岡大・牛山教授)の話をまぜこぜにして書いたりしているため、情報が頭に入ってこない。
その点、『ドキュメント 御嶽山大噴火』や『前へ!—無名戦士たちの記録』のように、主人公やテーマをわけて書いてほしかった。
ただそんなことがどうでもよいくらいに、締めくくりにあたるはずの第3章はひどかった。「やっつけ」である。せっかくここまで和歌山での土砂災害を取材して記述してきたのに、急に、
土砂災害ではなく大河川の災害の話になり、
山間部ではなく首都圏の話になり、
極めつけは、もはやドキュメントでもなんでもなく、ジャーナリズム?になる(というか、既存の内閣府防災の報告書の紹介と、高橋裕先生の少しのコメント、そして消防団員の手記の長い引用、等・・・)。
最終的には筆者の個人的な感想が締めになっており、学生の出来の悪いレポートを読むよう。
あぁ残念。このテーマはきちんと誰かに書いてほしかった、と悔しい思いさえ抱きたくなる。
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高野山十津川旅行シリーズ。非常に良い。十津川の豪雨を昭和と平成の両方について記述してある。最終章の大都市への記述はとってつけた感がある。
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2014年の本です。
2011年の台風12号の被害を受けた奈良県の十津川村と和歌山県の那智勝浦町のドキュメントです。
迫力ある筆致で災害の凄まじさが描かれています。
その中で必死に地域を復興しようと頑張る人たちの姿が印象的です。