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子爵夫人づきのメイドが35年間、レイディ・アスターという貴婦人に仕えた実話である。とても面白い。第二次世界大戦前後のイギリスの様子もよくわかるし、女性どうしの絆やネットワークなども面白くよんだ。階級社会というと、暗黒社会のように思ってしまうが、そうではなく、貴族というのは一種の家族会社のようなもので、数々の雇用をうみだし、道徳的にも手本にならなければならなかった。現代のように言いたい放題の適当な人間ばかりではなかったのである。使用人にたいしても、一生めんどうを見るという立場であった。それにしても、レイディー・アスターは面白い人物だ。女性初の下院議員という肩書きはともかく、とにかくエキセントリックである。ローズがパワハラに対して腹をきめて、立ち向かうようになってからは、ほんとうに分かちがたい絆で結ばれるようになる。
ご自分の「ために」ではなく、ご自分と「いっしょに」と言ってくださった奥さまへの慕わしさがこみあげてきました。そういう言い方をされると、わたしがただの雇い人ではなく、奥さまの相棒であるように感じられたからです。奥さまはさらにつづけて、奥さまに我慢できる女はわたしだけだし、わたしに我慢できる女は奥さまだけなのだとおっしゃいまいした。
(第二次世界大戦のプリマスの爆撃のなか、避難した地下室で、252ページ)
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古き良き(?)英国の思い出。ほんとに階級制度厳しいんだなー、イギリス(´・_・`) 奉仕精神強かったらメイドや執事って天職かも。それで相手が何かしてあげたくなるようなタイプだったら完ぺきだな。でもこの奥様、意地が悪いのは嫌だわー(¬_¬) 歯型つけたチョコ「あげる」なんて、今の時代なら訴えられるぞ。
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二代目アスター子爵夫人、イギリスで初の女性議員でもあったナンシー・アスターのレディスメイドを勤めた女性が語る思い出の数々。
メイドになる前の幼少期の思い出も楽しかった。お父さんが密猟したキジを近所の人が拾ってしまう話とか、貴族家庭の洗濯を専任で引き受けているお母さんの話とか(何種類ものアイロンを駆使して仕上げ、紙に包んで送り返す)
広く世間を見たいという作者の将来のため母親が手配したのはフランス語の教師と針子の修行、他の生徒より二年長い学校生活。
それで貴族の夫人ではなく子女のメイドからはじめて夫人づきになり、引退するまでの35年間勤めたのがレディ・アスターのメイド。政界でも社交界でも有名だったあるじの思い出が半分、貴族家庭の生活についての昔語りが半分。
主従のやりとりが非常に面白いのはたしかなんだけど、一般的な貴族家庭についての当時のあたりまえも大変興味深かった。
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http://honz.jp/articles/-/40792
名古屋市図書館に予約をかけた。なんと93人待ち(@_@) 2015/3/6
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ヴィクトリア朝の暮らしの資料として借りたつもりが、序盤のあたりで著者はヴィクトリア朝の様式を古くさいと評する時代の生まれだったと気付いたので資料にはならなかった。けれど職業婦人の自伝としてすごく面白い。
癖のある女主人の仕打ちに追い詰められて限界を迎えそうになった著者が、あるときはっと開眼し主人に反論するようになってからの丁々発止のやりとりがなんとも小気味よい。女主人とお付きのメイド、身分差こそあれ頼りになる相棒みたいな信頼関係を築いていき、時にみなぎるパワーに圧倒され時に弱る姿を深い愛情をもって家族のように支え――という35年の日々。
正直アスター夫人はとんでもないモラハラ上司だと思うし、ほとんど休みをとれず睡眠すらも削って仕えるその働きぶりはとても真似できるものではないけれど、ただただすごいの一言。自分の仕事ぶりに自信を持っている著者の語り口調もなんとも頼もしかった。
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イギリス初の女性庶民院議員ナンシー・アスターの使用人の回想録。使用人として身を立てながら、昇給がさほどないことに不満を抱いていた著者は、給料の高さに釣られて反感をもっていたアスター家に仕えることにした。当初は主人である夫人の怒りを買って意気消沈した彼女だったが、ある時自身の仕事が全く文句のつけようのない水準のものであることを自覚し、「それ以降、わたしはやられたらやり返すようになったのです。最初は戦いだったのものは、しだいに角がとれてきて、ある種のゲームめいたものになりました。ゲームは三十五年にわたって続き、勝負は最後までつかずじまいでした。」ここから、主人の要望にはできるだけ答えつつも、おかしいと思うことには率直に意見を述べ、主人から「おだまり、ローズ」の定型句を頂戴しつつも、なおも舌戦を手を変え品を変え続けていく、世にも可笑しな主従関係が誕生したのだった。現在でも議論の種となるナンシーの政治的立場についてはさほど触れるところがないが、様々なエピソードを通じて夫人の人物像を面白おかしく描いている。
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…いつだったか、リー氏が言っていました。「レディ・アスターは信心深いご婦人ではないね。いつだって永遠に見つかるはずのない導きの光を探している」と。とはいえ、クリスチャン・サイエンスは奥様のような方には好都合な宗教でした。絶対的な教義がなく、ご自分の欠点や行動を正当化するために、勝手に教えをねじ曲げることができたからです。 ――P.322
…どこかの男が戦争に勝ったのはロシアのおかげだとかなんとか叫びはじめると、今度はその男に噛みつきました。「ロシアがそんなにいいところなら、なんであっちにいかないんです? ちゃっかり自由の恩恵を受けておきながら自分の国をけなすあんたみたいな人には用はありませんよ」 ――P.333
手塚治虫のブラックジャックに『ある老婆の思い出』というエピソードがある。序盤は、それをひっきりなしに思い出させられながら読んでいた。
中盤から思うところがでてきはじめたが、ウィットに富んだただならぬ知性が生み出したこの著作に敬意を払い、明かさないことにする。
一点。当時のアメリカ南部にあって黒人の使用人がどう扱われていたかを主観で語る場面があるが、それによって主にアメリカ人による人種差別の根っこにあるものが理解できたような気がした。まさか、同じ人類であると認めていないとは思わなかった。
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タイトルに目を惹かれて手に取った。読み始めてみれば、『ダウントン・アビー』そのままの世界が活字になって展開されてくる。というか、ドラマがこの本を参考にしているのでは?と思えてくる。個性的で一筋縄ではいかない貴婦人との丁々発止のやり取りは、ドラマ以上の面白さ。
時代は大戦間から戦後までの長きにわたり、その間に出会う人たちも又錚々たる面々。T.E.ロレンスにバーナード・ショー。チャーチルにマハトマ・ガンジーとの出会いや、プロヒューモ事件の背景になったりと、イギリス現代史と切り離せない人物や事件が出てきて、誠に「事実は小説より奇なり」
「旅行がしてみたい」と言う作者の夢を叶えるためにとった手段が主人付きメイドになること。そのためにはフランス語と婦人服の仕立てを習い戦略的にキャリアを積んだ彼女の生き方は見習うべき点が多い。そして職についた後も、敬意を持って仕事を評価してくれる場所で働くと言う哲学は見事。
折々の行事や仕事仲間、自身の政治感、宗教観まで話題は幅広く、馴染みのない世界への興味が尽きない。英国流(?)生真面目さと皮肉がないまぜになった文章は、翻訳のおかげで存分に楽しめる。
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イギリスのお屋敷もの、大好物です。
トップに君臨するのはもちろん
カズオ・イシグロの『日の名残り』。
こちらも楽しませて貰いました。
しかしこの分野では
日本ではいつも同じ方が
著者だったり監修だったり解説されてますよね。
人材不足なのかなぁ…
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19世紀のイギリス貴族の事情が事細かに描かれている。ローズと雇い主の丁々発止のやり取りが面白い。仕事に向き合う姿勢もいい。
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20世紀の英国でメイドを勤めた女性の回顧録。彼女が仕えたレディアスターは、英国で2人目に庶民院議員になった女性。気まぐれで型破り。でも、人との関係を大事にしていて、それは使用人に対しても言えること。この本の中では、子爵夫人だけでなく、子爵、執事、その他の使用人がそれぞれの役割に従って家を運営していく一つの部族として描かれている。個性的で面白い面々なのだが、なんと言っても子爵夫人と著者のやりとりが面白い。著者は1964年にレディアスターが死ぬまで侍女をを勤めたのだが、メイドという職業がそんなに最近まで存在したことにびっくりした。彼女が勤めている間に、二つの世界大戦があり、政治家としての活動もある中で、王家や他の貴族、著名人、外国(特にレディアスターの出身地のアメリカ)からの来客をもてなす忙しい生活をしていて、それを円滑に進める使用人たちの働きが書かれていて、貴族社会を覗き見る面白さもあった。
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面白かった!!
エネルギッシュで破天荒な女主人に仕えるお付きメイドの回顧録。主人も主人なら、メイドもメイドで、お互いをやりこめようと侃侃諤諤の舌戦を繰り広げていたみたい。ローズの仕事や人生について書かれた本書だけど、彼女が35年お付きメイドをやっていたのもあって内容の大部分は主人であるレディ・アスターのことになっている。上流階級の暮らしやレディ・アスターがいかに型にはまらない女性だったかを鋭い感性で観察し、覚えていたローズの、ウィットに富んだ歯に衣着せぬ語彙は痛快だし、ローズとレディ・アスターの信頼、相棒感は、時に笑いあり時に涙ありで…。
メイドの視点を細かに描写してるから二〇世紀の西洋貴族の知識としても役に立ちそう。
⚫︎あらすじ
大富豪のアスター子爵夫人は才色兼備な社交界の花形で英国初の女性下院議員、おまけにとってもエキセントリック! 型破りな貴婦人に仕えた型破りなメイドの、笑いと涙の35年間。
笑いと感動で描く、お屋敷の内側
著者は一八九九年イギリス生まれ。庶民の若い女性の常で、学校を卒業後はメイド奉公に出ることになるが、当時の庶民には不可能ともいえる、旅行がしてみたいという夢をいだいていた。娘の賢さを知る母親は、メイドとしては格上の「お屋敷の女主人付きメイド」になれば、お供をして旅行ができると教える。ローズは「女主人付き」の下位ポストである「令嬢付き」メイドとしてキャリアをスタートし、キャリアアップの結果アスター家へやってくる。
ナンシー・アスター(夫はアメリカの大富豪アスター一族出身でプリマス市長)は才色兼備な社交界の花形。イギリス初の女性下院議員になり、内外の王族・文人・政治家と交流が深い一方、エキセントリックな性格でメイドが居つかない女主人であった。ローズは雇用主にも臆せず物を言う性格を気に入られ、子爵夫人が亡くなるまで三十五年間も生活を共にする。そして、雇い主と使用人を超えた特別な信頼関係のなか、第二次大戦中の大空襲や政界を揺るがしたソ連のスパイ事件など、お屋敷のピンチを切り抜けていく。
「古き良きイギリス」最後の時代のお屋敷を映画のようにドラマチックに描いた、使用人もの回想録の決定版。
(白泉社HPより引用)