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ある意味ブラックユーモアともいえるピリリ感の効いたこの作品は、
高村さんの新境地とでもいえばいいのだろうか。
とにかく主人公の四人のお年寄りがものすごい。
限界集落とでもいべき山奥のひなびた村に住む老人四人組の正体は、
元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さん。
すでにまーちさんがこの作品のレポを書かれているので、
詳しいあらすじはカットするが、、
爺さん、婆さんのやること、考えることが、
私たちの常識からややかけ離れているようで、
はらはらしながらも、目が離せなくなる作品だった。
四人組は毎日毎日、のんびりとした生活をおくりながら、
村のため、自分たちのため、
一生懸命に行動するのだが、どれもこれも
一筋縄でいかず、事件につながっていくのが面白い。
山の動物が人間に化けたり、キャベツが歩きだし、
最終的に、四人組は閻魔大王から
「地獄めぐりツアー」に招待されて出掛けてしまったのだ。
タイトルは「四人組がいた」!
見事に過去形になっていて、
このあたりも、りっぱな大人のファンタジーだ。
表紙にはまるで石に描いたような老人の顔が4つ。
頑固ジジイと梅干しババアそのものの面構えに、思わず笑ってしまった。
硬質の切れのいい文章はそのままで
今までの作品とはちょっと風向きが違っているが、
この高村さんの文体だからこそ、
老人四人組の諸行もいっそう、生き生きとしてくるのだろう。
どこかにいるかもしれない、いや、絶対いるよな、こんな四人と、
なぜか微笑ましく思える作品だった。
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タイトルと作者名を見て、でもこの表紙だから重くはないのかな? と読み始めてみたら、ユーモアというよりホラー。更に読み進めるとファンタジーに。
キャベツやダチョウの話では文章のテンポの良さに噴き出してしまい、待合室で読んでなくて良かったとホッとし。
指名手配犯はその後どうなったのかなど、さまざまな謎が回収されないままぶん投げられて終わる。
私は菊地秀行氏作品が大好きなので平気だけれど、合わない方も多いのは納得した。
個人的には好きな作風です。
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奇々怪々の作品である。高村薫の新作小説をずっと待ち続けているファンは多い。私もそうである。なのに、私は図書館の片隅にこの本を見つけるまでの4年間、その存在を知らなかった。何度か新作をチェックしたと思うのだが、何故かその時Webに載らなかったとしか思えない。世の中も話題にしていなかったので、私の情報収集が劣っているというわけでもなさそうだ。
この作品は、何か秘術が使われて、あまり世間に出回らないようになっているのではないか。何故ならば、この12篇の連作短編集は、まるで存在そのものが「在るのに無い」という性格を持たされているからである。則ち、12編とも題名の上に「四人組」を冠していて一見典型的な農村の、元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんという暇を持て余した四人組老人たちを主人公とした日常を描いているのかと思いきや、実はこの四人組がとんでもないものたちだったという構造があるのかと思いきや、実は農村自体がファンタジー構造に組み込まれていると分かる後半部分でだいたいこんなんだと思った途端、最後は筒井康隆の如く日本の地方問題が批判的に描かれハチャメチャになって絶望的カオスに進んで終わりと思いきや、なんと神仏含めて世界は凡そ事も無しと進み「正体」が一向に現れないのである。色即是空。空即無、無即空也。
私はこの題名を見た時に「やった!レディ・ジョーカーの元作「日吉町クラブ」の単行本化か!」と密かに思ったのものである。が、紐解いて、あまりものギャップに、声が出なかった(読書中そもそも声は出さないが)。まあ、高村薫小説世界の王道たる「太陽を曳く馬」も「冷血」も「土の記」も、まだ未読の私に「何をか言われんや」とは思う。
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人の世と動物の世、彼岸と此岸、夢と現の間にいる老人4人。筆者らしい辛口が痛快で肩の凝らないファンタジー。民話のような味わいもある初期の作品のほうが好みである。
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山里の人と獣の物語。
・四人組、怪しむ
・四人組、夢を見る
・四人組、豚に逢う
・四人組、村史を語る
・四人組、跳ねる
・四人組、虎になる
・四人組、大いに学習する
・四人組、タニシと遊ぶ
・四人組、後塵を拝す
・四人組、危うし!
・四人組、伝説になる
・四人組、失せる
元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母の4人がいつも集まるのは郵便局兼集会所。
そこで繰り広げられる話は、もののけの話から、超常現象、ネット、オタと幅広いが、みんな金にがめつい。
狸扮するAKB48ならぬTNB48を応援しに上京したり、ネットで嘘の風潮を流したり、あの世からの使者がやってきたり。
隔離された人里で思いもよらぬ騒動が繰り広げられる文学。
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合田シリーズしか知らない状態でこの本を読み始めたので本当に高村さん?と大変驚きました。山村で郵便局兼集会所に毎日集まって茶飲み話をする元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さんの4人。彼らを軸にお話は進みますが裏の山にいる狸のような四足たちと普通にお話をしたりどこか浮世離れしています。でも彼らは実は自在にインターネットを操ったり決して時代に遅れていることはなく、むしろ強烈に現代社会を皮肉ります。高村ファンがこれを受け入れられるかどうか不安なほどですが、私はこのユーモアファンタジーを十分楽しみました。
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あの高村薫さんがユーモア小説を書いたというので、ついつい読んでみた。
市町村合併でお役御免となった元村長以下、元助役、郵便局長、キクエ小母さんのジジババ4人組が、山あいの寒村にある集会所でヒマをかこちつつ、悪だくみを巡らせ、さまざまな事件を引き起こしたり巻き込まれたりする。
高齢社会や限界集落といった日本の地方が抱える問題や、ネット、メディアやアイドル、宗教や金儲けといった現代社会の文化がいかにも著者らしい筆致(特にチョイ役の刑事や僧侶のせりふ回しが堂に入っていたりする)で描かれるのだが、ほどなく超常現象や妖怪のたぐい、毛ものなどが入り乱れて来て、どったんばったん、ぎっちょんがっちゃんといった大騒ぎになってくる。
しかし騒ぎの割にはみんな目は笑っていない感じで、またオチも難解で、なんとも不思議で居心地のよくない小説であった。ユーモア小説? 笑えねえよ! みたいな。
8つの短編にわかれていて(オール讀物に順に発表された)、「危うし!」という一編は気に入った。
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高村薫作、何かの書評で面白い、と読んだので、手に取ったが、イマイチどころか、どこで読むのをやめようか、というものだった。軽いのを書きたかったのか?時間潰しにはなるが、後に何も残らない、元気なジジババの話。