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(2015/6/3読了)
どこがどうとかはっきりした面白かった理由は思いつかないのだけど、常に漂うような日々に遠い昔の自分と重ねるように、また今の自分の中で懐かしむように楽しめました。
15歳、受験を控えた中3。綺麗事で青春を書いているのではなく、等身大のどこにでもいそうな思春期を題材にしてこの長編を書きあげた津村さんはスゴイと思います。
(内容)
席替え、クラス替え、受験、引っ越し…中学三年生の人間関係は、つねに変わり続ける。大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女の、たゆたい、揺れる心を繊細な筆致で描いた、芥川賞作家、会心の力作長篇。
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津村さん独特の丹念に時の流れを追いかけていく様子が、自分をかつての学生の頃に連れ戻してくれるような感覚になった。
主人公ヒロシを軸に、ちょっとかわったヤツや不遇に耐えている同級生と関わり、そして離れていくまでの一年を追っている。学生の頃ってそれぞれにはちゃんと団体として繋がっている感覚はあったのだけれど、確かに人間関係が1年や2年という単位で流れるように変化していったなぁと思い返した。
戻りたいと思わせるのではなく、まるでその中にいるかのような感覚に陥らせてくれる青春小説。
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ヒロシは教室にひっそりといるような地味な男の子です。集団の中の立ち位置がはっきりとわかり始めるお年頃。他者と関わる楽しさと煩わしさ。言葉にならないようなもどかしい感情。大人と子供の狭間を漂う、中学3年生の1年間の物語です。
日常の細やかな描写や、とりとめない会話から、子供たちそれぞれの個性が、秘められた感情が浮かび上がってきます。わざとらしくない、ドラマを無理矢理作らない感じが好きです。淡々としているけど、決して退屈はしません。私小説っぽくない作品も良いですね。
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タイトルに反して、社会のなかで個としてどうあろうとするか、を描いているようにおもう。それぞれにそれぞれが自分であること、意志を持つこと、を。
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津村さんにしては珍しいく、いじめだったり虐待だったりと事件が起きます。男女の中学生がいとおしく、高校生版もかいて欲しい。
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何にしろ、完全な生活はない。むしろ、変なことばっかりでも、何とかやっていくやつは少ないものでやっていく。そのことをべつに誇りもせず。
(P.261)
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なんだかあまり感じるところのない本でした。中学生のどうしようもない気持ちを抱えた日常、その中での成長を日記みたいに丹念に追っていく感じだけど、今さらそんなものに感情移入したくないし、読み終わって気分が晴れるようなスカッとするものでもない。本当に題名通りで、これは中身を上手く表しているけど、物語としては中途半端感が拭えない。
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中学三年生のヒロシは、おしゃべりな母親のもとでそれなりにたくましく何事もなく育ってきた。同じクラスには、無口で背の高い矢澤、ソフトボール部の野末と大土居、絵の巧い増田など個性の強いクラスメイトがいて、だんだんと親交を深めていく。
学校という閉鎖された空間での日々は「流れるように」結果的には過ぎていくけれど、その日その日にはかなりの事件も起こっていく。いじめや家庭問題、再婚問題…そういった物事を乗り越えたりやり過ごしたりして、少しずつヒロシたちは成長していっている、のかもしれない。あくまで身の丈にあわせての行動しかできないけれど、だからこそのひたむきさややるせなさが、じわじわと胸にしみわたっていく。
力の無い子供たち。けれど、絆をはぐくみ前を向いて進んでいく子供たちの姿が、とてもきらきらしているようにも見えました。それは大人から見ると、とてもかけがえのない、手の届くなったもののように感じたのです。
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高校受験を控えた中3生の1年間を描いた物語。友人との距離のとり方や中学生のこころや情景がとても丁寧に綺麗に描かれていて、しみじみとした余韻の残る作品でした。
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中学生小説というととにかく青春が爆発してそうで敬遠してしまう向きもあるかと思うが、本書はそういう人に読んで欲しい。冴えないが実直、フワフワしているけどまぁ中学生なんてそんなもんだな、と当時をいい加減に振り返りながらしんみりできます。
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ヒロシってあの「ウエストウイング」のヒロシか!トイレ出産を目撃したりモンサンミッシェルつくったりしてたあの子か。大きくなってる〜。
割と波瀾万丈な中学生活。自分ができること、確信を持てることなんて殆どないと感じている彼らだけど、皆イキイキしている。ヒロシかっこいいです。その後もいつか読みたいな。
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久々の津村記久子。
ユルーくダラーっと、タイトル通りの漂うような日々の過ぎようを描くの、ほんまに上手い作家やなぁと思う。しかも本作では、まぁまぁユルくもダルくもない事件が起きて、ユルくもダルくもない模索をし行動もするのに、印象はなんだかユルくダルく…。
主人公の冷め具合、友人ヤザワの芯一本通ってるのにとぼけてる味、主要登場女性陣もそれぞれかなり大阪風味の出汁が効いてるエエ子たち。この子らから見たら俺なんてのはどんなおっさんなんやろ?まぁひと束何十円の類なんやろけど(笑
こんな子供たちが、人との関わり方で悩んだりする。自分のすべきことに集中したくても出来なくなるような、様々なことが起こる。大人から見たら「それ言い訳やん」と思えるようなこともあれば、大人でもどうしようもないくらいのこともある。でもそれって、大人もおんなじやねんなぁ。誰かと関わらないと生きていけないのに、関わることで寿命縮めたり、しんどい思いしたり、難儀な人間の因果。
大きな流れに逆らってもどないもならんこともある、結局漂うことしかできない。でも漂うためには、浮かんでなアカン。なら一生懸命浮かぼうやないか。沈んでしもたら漂うことも出来んくなるでって。
ところで、この作品の前日譚をまさかのチェック漏れ。「ウエストウィング」要チェック!
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すごい良かった。ドラマが起きそうで起きなさそうでそれでも起きたりする中学生の日常がとてもよく描かれてる。主人公の細かな心理描写もとても良い。自分や周囲にどう折り合いつけて思春期の少年が生活してるのかをなんでこんなにわかるんだろう?ヤザワだけが鉤括弧無しで話すのもなんとなく個性を感じて良かった。本当にタイトルの通り全ては漂ってる、って読後感。
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背は低いけれど普通の中学生ヒロシを中心とした中学生青春記。
背は高いしゆっくり話すけれど実は凄い特技がある矢沢をはじめとする級友とのやりとりが面白い。
受験生で学校・塾・家を往復する日々を眩しく描いた爽やかな一冊。
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「青春」おもいっきり「青春」では、ない。
ふわふわっと
ゆるーく
漂うような日常が広がっている
でもその世界がその時の全てで
その中で無力でも何もできなくても
精一杯生きていくしかない
そんな酸っぱさと閉塞感と。
でも皆が個性的でまっすぐ。
どうしようもならないものを受け入れながら人は成長していくのかもしれない。な。
2014年 文藝春秋