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人生は、駐機場で離陸を待っているようなもの…その言葉が、胸に染み入る。
友を、妻を、そして昔の彼女を亡くしたサトーが、彼らは先に離陸していった…とつらくやるせない気持ちの折り合いをつけていく過程。登場人物が皆、魅力的で夫々に感情移入しながら静かに物語に誘われていくのが心地よい。
それにしても、スパイとかタイムスリップとかの仕掛けは必要?
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途中、村上春樹みたいと思ってしまって後悔しもっと絲山秋子を予習してから読むべきだったかもと反省したけど、読後すぐの感想は、反省する必要なかったかも私は過程だけでは嫌だからなぁ、だった。朝日の書評よみかえして成る程ねぇと持ち直した気持ちはあるけれど。
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謎の暗号文書に導かれて「女優」を探すうち、主人公は幾つもの大切な命を失っていく-。人生を襲う不意打ちの死と向き合い、透徹した目で寄る辺なき生を見つめた長篇小説。『文學界』掲載を書籍化。
ダムの現場を希望した国交省の土木技術者。突然、彼女(のう)から別れを告げられた。冬の山ごもり、黒人フランス人(イルベール)がやってきて、彼女の行方を探していた。フランスで彼女の娘を預かっている。「母の病気で帰国」と言い残し、1週刊の約束で預かった。五島の母親はすでに死亡。
彼女の悪い知り合いは獄中。
ダム勤務から突然、フランスのユネスコに出向。
盲の妹が東京の大学から三重大に進路変更。
フランスで知り合ったフランス人と結婚
元カノの写真が1940代の本に掲載。
暗号はローマ字の逆なので日本人がからんでいる
元カノの息子ブツゾウは、黒人フランス人と父の故郷の島へ旅行
妻の友人フランス人が刺されて死ぬ。
犯人はブツゾウの実父
フランス駐在を終了し、フランス人妻と霞ヶ関へ。
熊本に転勤。妻が妊娠。フランスに一時帰国。脳卒中で急死。
黒人フランス人は癌で死ぬ。
元カノが熊本の居酒屋にいた。見失うが病院で発見。
記憶喪失。何も反応しない。妹の茜の点字に反応。
はい いいえ わからない
で質問に答える
10才になったブツゾウが日本にくる。
途中でいなくなると実母の故郷、五島にいた
実母の点字を見ると、ブツゾウがドミノだ!
母が故郷の祖母又母から点字の手紙がきていた。
フランスにいる間に東北大震災
ダムで一緒だった若者が失踪。
旅先の福島で働いていた
福岡で会う
国交省は退職し、フェリー会社に就職
盲の妹、茜は30才
自分も再婚はしていない
元カノは、フランスで暗号をつくったタケイ氏の寺へ
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妻の死を「離陸」と思う佐藤。
確かにかりそめの体から、本質である魂の離陸だと納得する。
彼の身近な人が次々と離陸していくのだが
絲山さんの筆に乗るとなぜか淡々と感じられ、
生死がテーマなのに静かな印象の話。
結局乃緒に関する謎は解けないままだったが、
それはそれでいいと思う。
他人のことを全部解ろうなんておこがましいから。
人生の儚さに耐えきれずに、人は子供に命を繋ぐのだろうか。
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飛行機の離陸は好きだけど、着陸は怖い。死を離陸と捉えると、恐れずにすむのかな。最近、自分の死はさほど恐れていないけど、大切な人の死はものすごく怖い。
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セロニアス・モンク…いや、オーネット・コールマン。
「まだ何となく、ジャズの尻尾を引きずっているような、オーネット・コールマンの初期のアルバム」っていうのが結構好きなんです。
そういうような…実に不思議な長編小説(笑)。
でも決して、不快ではありませんでした。
なかなか微妙に絶妙なトコロに落とし込まれて、読書の愉しみのひとつだなあ、と。
僕にとっては、ですが。
絲山秋子さんという人は、全く知りませんでした。本屋さんで、伊坂幸太郎さんが薦めている、という情報だけで衝動的に。
伊坂幸太郎さんの小説が好きだ、ということなんですけど、未知の作家の、できれば日本の現在進行形の小説家の本を読みたいな、という欲望もあって。
ま、でも。
伊坂幸太郎さんが薦めている、ということを宣伝にしなくてはならない訳だから、
エンターテイメントな小説ではないんだろうな、という漠として予感はありました。
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主人公の一人称小説。舞台は2000年代から近未来までの時間、場所は主に日本とフランスです。
主人公の佐藤弘さん(だったとおもう)は、20代らしき国交省の国家公務員の男性で、ダム関係の仕事をしているところから始まります。
学歴的にはエリートなんでしょうが、全くもって政治的なヒトではなく、敢えて言えば村上春樹さんの小説に出てくるような、自意識の高い草食系な感じ。
ダム、治水が好きなんですね。感覚的に。群馬の田舎のダムの仕事を愉しんでいます。
そこに、謎の黒人の大男が訪ねてきます。
「あなたの昔の恋人が行方不明で探している」。
で、ここから、長い長い年月に渡って、
●失踪した彼女の消息を探す、というよりぼんやり考えている主人公と、徐々に入ってくる情報。そして彼女の残した子供と、その子の父親代わり的な黒人大男との交流。
●そういうことと関係なく、視覚障碍者の妹や、フランスで出会った恋人や、職場の友人との、主人公の交流。
が、パラレルに?描かれて行きます。
主人公はユネスコの勤務でパリで暮らしてフランス娘と恋愛結婚したり、転勤で九州熊本の八代で幸せに新婚生活したりします。
そして…
親友みたいになったフランス人の男性は殺され、親友みたいになった黒人の大男は病死し、最愛の妻も急病死します。
そして…
一方で、売れない女優だった、「失踪した元恋人」。
イスラエルの映画に出演しているのが分かる。1940年代のフランスでスパイ的な活動をしていた東洋人が彼女そっくりだというコトが分かる。
最後には八代で、「点字以外意思を疎通できない、半記憶喪失の状態」で発見されて、入院して、静かに病死する。
その女性は、全然経年しても、老けない(笑)。
どうやら彼女は、何かしらタイムスリップして1940年代と2000年代を行き来したらしい…。
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こうやって書くと無茶苦茶です(笑)。
そして、そういう無茶苦茶が、小説の狙いとして必然的である手がかりは、判りやすくはありません。(僕はさっぱり、理解、と言う意味ではできませんでした)
まあでも、面白かったんです。かなり。
主人公の内向的な男性が、静かに暮らし、仕事で転勤して、孤独に苦しんだりします。
でもそこで友人ができて、楽しい時間が来たりします。
出会い、恋。友人。そして、タイムスリップ?みたいな事柄については、多くの読者と同じように、「なんのこっちゃ?」という反応をします。
そして、結婚、家族との関係、新婚生活、ちょっとした確執や和解。
みたいな「生活感」や「感情のゆらぎ」がすごく良く書けています。
これは結構、極上です。
そして、「黒人の大男」と「1940年代の元恋人」はどうやら何かしら政府機関のスパイ的なことをしていたり、していたんだろうな、という感じがします。
でも、全然、グレアム・グリーン的な本格?スパイ小説、冒険小説の味わいには、なりません(笑)。
そして…主人公と親しい人々は、何人か死んでいきます(外国籍の人ばかりが死んでいきます)。
そして主人公はそれが「離陸していく感じ」だと感じます。
遅かれ早かれ死ぬんですけど。誰でも。
この小説で死んでいく人は、劇の中では皆、不意打ちに予想できなかった死に方をします(少なくとも主人公から見て)。
そしてそれらの死に遭遇して、壊れかかっちゃう主人公と、その再生が、上質のベルベットのように滑らかに描かれます。
それはすごく、まぎれもなく小説的快感だと、僕は思いました。
…なんだけど。
それで何でスパイでタイムスリップなんだっけ?
という不可解さは、僕は残りました。
ところが。
それは不可解さが残るんですけど、別段不愉快じゃない(笑)。
そんな不可解さも含めて、世界観としてちゃんと読めちゃうっていうか…まあ、面白かったんです(笑)。
そういう意味では、なんていうか、確実に読者を選ぶ小説ではあります。
「納得いく」という次元で、好みのストライクゾーンを構える読み手には、ぜんぜん勧めません(笑)。
ここンところ、難しいんですけど、「小説」と「物語」っていうのは一体だけどベツ物だったりすると思っていまして。
更に言うと「物語」とか「あらすじ」というか「プロット」とか「筋立て」とか、そう呼ばれるものは「小説」の一部でしか無いと思うので。
そういう意味では、「現実味のある物語」「エンターテイメントな話の運び」という枠組みに対して、この小説はとっても自由だなあ、と思います。
そういう枠組みは、基本的に僕は大好きだし尊重するんです。ジャズはやっぱりジャズらしいジャズの方が嬉しかったりします。
ソニー・クラークとかジャッキー・マクリーンとかソニー・ロリンズとか。僕は音楽理論とかはサッパリですが、「ああ、ジャズだなあ」という枠組みや踏み台があるから、味わい深く、精一杯跳ねる。
それは心地いいです。
けれど、そこから軽く自由にズラして途方にくれちゃうようなのも、悪くないんですね。
オーネット・コールマンとか。アルバート・アイラーとか。
(ただそれも、僕の場合は、「ジャズらしいジャズ」をかなり聴いてから��か、良さを感じられなかったんですけど。その辺はまあ、個人的な傾向があるんでしょうが)
完全に好みというか、許容範囲というかは勿論あると思うんです。
もっと枠組みから破壊的に自由になっちゃう、「わけ判らん」というレベルの音楽とかブンガクとかは、ちょっと僕も辛いんですけど。
この小説は、普通の小説のように(それも極上の小説のように)滑らかに素敵な、飾らない日本語文章で読めるんです。
奇を衒うような前衛小説でもないんです。
でも軽やかに、タイムスリップとかスパイとか出て来ちゃう(笑)。
そこンところ、「意味付け」としてはどう回収していいか、荒野に置いてけぼりです(笑)。
でもきっと、書き手の側に必然性がないと、こうは書けない。そういう肩の力の抜けた語り口。
そんなフシキ感が、どれだけ語っても上手く言えないけど…好ましい小説でした。
絲山さんっていうのは、ざざっと調べると、短編の純文学系…川端康成賞とか、そういうキャリアの小説家さんなんですね。
でも、アリだな、と。自分の中でメモっておきます。
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「離陸」というタイトルはなかなか示唆に富んでいると思った。結局、女優ってなんだったのだろう。過去を探すのにドキドキして読んだのに、最後まで謎のままに死んでしまって、読者として不完全燃焼だ。そしてなにより突然の死、あっけなく消えていく親しい人々、それにいつどのようにして折り合いをつけるのか、考えさせられた。そして、表紙のマーク・ロスコが雰囲気にぴったり!
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サトーサトーと一緒に色々な所に行って、様々な人達と会って、人生の一部を過ごした感じになりました。これぞ読書の醍醐味です。
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読み初めたときは「こっちの方が桜木紫乃さんぽいな」と思った。
そして少し読み進めてみると「いや、これは村上春樹さんだ」と思った。
2/3を読んだ時点で私の印象の絲山さんは少しも無かった。むしろ村上春樹さんを読んでいる錯覚にさえ陥った。
村上さんの書く《ぼく》に『離陸』の《ぼく》は非常に似ていると思う。
知的で女性にもてる(本人はそう思っていないのに)感じとか、社会との距離感とか考え方とか、女性への接し方とか、すべてが《「やれやれ」というあの村上節のぼく》に似ていると思った。
文章の感じもトーンも村上さんにそっくりだった。
私は村上春樹さんが好きで中学生からずっと読んで来た。村上さんの作品の中に出て来るような、静かで知的で孤独な人間に憧れてきた。
本当に『離陸』の2/3は村上春樹さんの作品みたいでちょっと驚いた。そして村上春樹好きとしては面白くてグングンと読めた。
ところが残り1/3になって、全体が散漫になる。無理矢理終らせようとする気配がある。
2/3が面白かっただけにとても残念に感じた。
うまく言えないけれど、どんどんと陳腐になっていくような感じがした。
何となく勿体無いなぁと思った。
だから全体の感想がとても難しい。
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なんていうか…本当にいい小説だったなぁ。
悲しいことも多かったけれど、
登場人物はみんな生き生きしていて、魅力があって、
会ったみたいだった。
それぞれに人生があって、
運命に従って精一杯生きるしかない。
心がしゃきっとした。
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なんだかとても不思議な感じ。ストーリーはよく呑み込めなかった。けれど、ぐっとくるところがある。茜さんの強さが印象に残る。
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サトーサトーの佐藤弘、乃緒、ブツゾウ、フランスのイルベール。
目が見えない妹の茜。
伊坂幸太郎さんの「絲山秋子の書く女スパイ物が読みたい〜それが“離陸”」みたいな記事を何処かで読み、手に取る。
淡々と進んでいくのにとんでもなくて。
そして、サトーサトーがかなり近い知り合いのような気になって。
物足りなさと丁度良さを
いい感じの折り合いさ加減で全てを飲み込ませて貰って。
あとがきを読み、
絲山さんの色々な出会いやら努力やら幸運やら蓄積やらを想像し勝手に泣かされて。
カッコいいよ絲山さん!
あたしが☆何個とか決める時、
「何様?」
っていつも思って悩むのだけれど・・・そしてそして、☆4個か5個で悩む時は更に「何様?」っていう感覚が強いのだけれど。
結果に納得したくはないのだけれど、
こんなに揺さぶられて近くに感じられたら☆5個だよな。
長編さんちゅなのだ。
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謎の暗号文書に導かれて「女優」を探すうち、主人公は幾つもの大切な命を失っていく-。人生を襲う不意打ちの死と向き合い、透徹した目で寄る辺なき生を見つめた長篇小説。『文學界』掲載を書籍化。
一気に読み終えた。
最後が少し消化不良。
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真冬の奥利根湖からパリ、パレスチナ、唐津…
身近な人との別れの場面が多いのに、読み終わって何とも言えない爽やかな気持ちになりました。
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なぜか翻訳小説の様な不思議なトーン。
フランスと日本が舞台。人はみな、駐機場で離陸を待っているというのは、なるほどいい表現だと思った。けれど、悲しい別れが多い。
乃緒が不思議すぎる。そして謎が謎のまま。