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設定と装丁に惹かれて読んだら、思ってた感じとはだいぶ違ってびっくりしました。
結局ちんぷんかんぷんだったけど、一気に読んでしまった。
また読み返したいです。
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構造的に面白いし、中盤のワクワク感もいい
だけど、ちょっと作り込み過ぎな気もした
世界をでかく見せるためには必要なのかもしれないけど、物語上そこまで書く必要なくね?っていうエピソードもチラホラ
この本のテーマは運命はある程度決まってるけど、偶然と努力で変えられるよって事かな
宿命論の否定?
そのために現実の並行世界的な世界観が描かれてるけど、その中で現実世界を描いた小説が出てくる
そして、それは真実が書いてあるという描写
やっぱり宿命論の否定の否定?
どっちとも言えないなー
運命って概念は厄介だ
そんなこと考えてみるとちょっと面白い
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「歴史にイフ(もしも、~だったら)はない」というのは、よく聞くセリフだ。とはいえ、架空戦記物に限らず、この種の話は巷に溢れている。「もしも、あの時こうなっていたら」や、「ああいうことをしなかったら」という思いは、日々誰もが経験していることだからだろう。そして、そうした願望や後悔は、白昼夢に似て儚く虚しい。好むと好まざるにかかわらず、「いま、ここ」にあるという現実に拠るしかないのが、我々に与えられた唯一の選択肢であるからだ。
思考実験というものがある。科学的な実験のように薬品や装置を使わず、論理的な推論を積み重ね、その結果を見てみるという方法だ。結果がどうあれ、爆発も大気汚染も引き起こさない。至極安全な実験と言えるだろう。しかし、それを言葉や文章にすれば、読んだ人の心理や思考経路に秘かに浸み入り、現実の世界を見る時にいくばくかの影響を与えずにはいない。
もともと、我々が日々生活しているこの世界自体が、白紙のように真っさらという訳にはいかない。意識的であるか無意識の裡にであるかは問わず、支配的なイデオロギーによって染め上げられ、我々は首までそれに浸かって暮らしているのである。自分では、日々の暮らしの中で行う選択は、自分が行っていると考えているが、そういう自分を構成しているものが何であるかを問いながら日々を生きている人はまずいない。そんなことをしていたら、早晩精神がまいってしまうだろう。
つまり、自分は自分で思っているほど自分ではないのだ。世界も同じである。大昔の人々が考えた世界は、亀や象の背中に支えられていたそうだが、それは今も変わらない。亀や象の替わりに、皮膚の色もちがえば、言語も信仰も異なる無数の人間が支えているのだ。グローバリズムというのは、みんなが支えている世界を一つのものにしようという考え方である。実際の世界はそんなに堅固なものでも、はっきりした輪郭を持ったものではない。不定形で可塑性の高いものである。
第二次世界大戦は、枢軸国の敗北という結果に終わったが、ナチスの行った、ユダヤ人をはじめ、彼らが劣等と見なす人々に対する弾圧や大量虐殺は、人は果たして信じるに値する存在なのかという、人間存在についての根本的な疑義を生じさせた。たまたま、ドイツや日本が敗れたから、世界は今のような形で存在しているが、もし、ドイツ軍が勝利を続けていたら、アメリカが日本に敗れていたら、世界はどうなっていたのだろうという疑問が浮かぶのは避けようがない。
フィリップ・K・ディックの『高い城の男』は、小説という形式で、その疑問を思考実験したものである。第二次世界大戦で日本とドイツが勝利した結果、世界は二分割され、ヨーロッパではドイツが第三帝国として君臨し、日本は太平洋共栄圏の理想を実現しているという、まあ、喩えが悪いのを承知しつつ言えば、世界は『猿の惑星』状態にある。
宇宙にまで進出したドイツの次の狙いは地球の完全な支配である。日本に核攻撃を仕掛けるタンポポ計画なる陰謀をめぐってドイツの指導部内での覇権争いが起きる。最悪のシナリオを阻止するために動くドイツ人と日本人、彼らと何らかの関係を持つア���リカ人の数人を中心に、短い場面ごとに視点人物が交代する映画的なストーリー展開。
興味深いのは、小説の中に日本とドイツが負けるという筋書きの小説が登場し、ベストセラーになっていることである。その小説家は「易経」をもとにそれを書き上げたらしい。そして、日本人に限らずユダヤ系アメリカ人も、その元妻もみな筮竹代わりにコインで卦を立てる。つまり、日々の行動原理はどうやら、あの「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の八卦任せなのらしい。日本が実権を握った地域で、道教ゆかりの「易経」が流行るというのが、可笑しいが、ヒッピー・ムーブメント隆盛の頃、タオイズムに人気があったのは事実だ。作者はその洗礼を受けていたのだろう。かなり本格的な言及である。
人智では及びがたい原理というものが世界にはあり、それに従うことで世界は安定するという思想。一部の権力を握った人間の暴走がホロコーストを引き起こしたという苦い反省が、行動の決定を「八卦」という中国古来の思想に委ねるという解決法を見出させたのかもしれない。二項対立の思考法が西欧の原理で、それが災いの根源だとするなら、三項目を立てるジャンケンや三すくみの思考法も有効性を持つかもしれない。ならば、「八」卦なら、よりよいというものでもないだろうが、作家は煮詰まった西欧的思考に限界を見ていたのかも知れない。そして、それは9.11以降、ますます現実味を帯びてきているのではないだろうか。
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枢軸国が第二次大戦に勝利した世界を描いた、歴史改変SFの古典。
アメリカ人の目から見たアジア的混沌の情景が面白かった。
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ディック祭り第3弾!
第2次大戦でドイツと日本が勝利した世界。その世界の人々をリアルに描いているところまでがかろうじてSFと呼べるか。でも、ディックが描きたいのはそんなことではない。現実ですら苦しいことも多い世の中、じゃぁ全く逆だったらどうなのかという設定にはなっていいるけれども、明るい世界が広がっているわけでもなく、やっぱり描かれるのは「不安」。
相手の気に入らなかったら・・・偽物と見破られたら・・・そもそも本物って何・・・もう不安だらけ。その不安だらけの日々の道筋を示すために卦が用いられる。こういう小説に惹かれるってことは、自分の「今」が不安だらけだからなのだろうか。
ディックの小説を読んでも何も解決しないし、すっきり爽快感もない。でも、共感する不安な部分に気づく。それで、また読んでしまう。凄い!
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第二次大戦で日本、ドイツが勝利し、世界を分割統治している世の中。大東亜共栄圏として日本の支配下にあるアメリカ西海岸で繰り広げられる、アメリカアンティーク商、その顧客である日本の通商団代表、その通商団と取引を目的に西海岸に降り立った、と詐称するプラスチック会社セールスマン、ユダヤ人であることを隠した工芸職人、法外地区に住むその元妻、元妻のもとに迷い混んだイタリア兵士、などなど様々な登場人物が編み込むSFサスペンス。
いっぱい登場人物がいると散漫な状態でなに読んでいるかわからなくなるのが自分の常ではありますが、こちらの小説はどのエピソードもかっこよくまとまってて素敵でした。
アメリカアンティークと工芸品における日本とアメリカの愛憎入り混じる感情の描写、その部分の確かさに感嘆です。価値がないことの湾曲表現とか、日本人ほんとにこういいそう。
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もし第二次世界大戦で日本が勝利していたら―。
何かワクワクしませんか?
いやね、別に私は戦争を賛美する者ではありません。
本書は第二次世界大戦で枢軸国側が勝利し、日本とドイツがアメリカを分割統治している世界を描いたSF小説。
1962年に発表された小説ですから、私の生まれる10年以上も前。
ちなみに著者は本書でヒューゴー賞を受賞しています。
今だとフィリップ・K・ディック賞という自身の名を冠した文学賞がありますね。
有名なSF作家です。
なんて偉そうに書いていますが、実は「作家の読書道」というお気に入りサイトで、作家の星野智幸さんが勧めていたので買いました。
そしたら、面白いのなんのって。
アメリカ人が日本人の顔色を見ながら手もみしたりしているんですよ。
痛快だと感じて、ふと考えてしまいました。
敗戦国民として自分の中にも抑圧された心情があるのだと。
ドイツ人はかなり悪しざまに描かれている一方、日本人の描き方は好意的です。
著者の戦争に対する透徹した眼差しにも敬服しました。
正直に言うと登場人物が多過ぎて、アタマの悪い自分は途中、話の筋を見失ったりしました。
あと帯状疱疹で終盤は身体が痛くて集中を欠いてしまいました。
でも、面白いですよ。
ただ、主たる登場人物が易経を行動指針にしているというのが、やっぱりどうしても最後まで馴染めませんでした。
感じ方は読む人それぞれでしょうが。
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第二次世界大戦でドイツ・日本が勝った世界が舞台。「もしそうだったら」の世界は脳みそが色々刺激されて面白い。実は初めてのフィリップ・K・ディック。もっと暗くてどんよりした作風なのかと思っていたけど意外に普通。訳者あとがきに、「ディック作品にありがちなプロットの破綻がみられない、じっくり書き込まれた作品」とあるけど、破綻するのは困る。
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日独が戦勝国となった世界を舞台とし、日本人、アメリカ人、ユダヤ人の登場人物視点で物語が展開されていく作品。
作中ではSFらしい設定は皆無で、歴史的ifを元にした設定が散りばめられている。
設定や登場人物に魅力を感じた一方で、個人的には物語としての結末は弱いと感じた。
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これって面白いのか?
面白さがサッパリ分からず半分くらいで読むのを挫折した。
どいつもこいつも「私達観してます。世の中って馬鹿らしいですね」ていうような奴らで登場人物に共感できない。まあそれは登場人物がほぼ外国人だからかもしれないけど。占いに頼りまくってる奴がいるのも萎える。
もしかしたら、後半には面白くなっていたのかもしれないけど、続きは気にならない。
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まさに、今欲している言葉が山ほど出てきた。
この本で重要なのは「第二次大戦でドイツと日本が勝っていたとしたら、その時のアメリカは…」という設定自体ではなくて。
・狂気と正気。
・闇の中に生じる光の種子と、その芽吹きによって生じる闇とによって繰り返される、消滅を免れる世界というもの。
・主観的歴史にまつわる、<仏教の文化>と<キリスト教の原罪>という考えについて。
・そして、全ての道が何らかの悪に通じているとしても、一歩一歩選択することでしか結末を左右出来はしないのだということ。
真逆のようで一対のそれらの上で混乱をきたして選択を放棄しようとした私が、今確かに、読むべき本だったのだ。
すごい本だった。
(たとえ、登場人物の日本人がハリウッド風の謎日本人と謎中国人のハイブリッド的だとしても。)
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もしも第二次世界大戦の勝敗が逆だったら?
ドイツ人が好き勝手やっていたり、アメリカ人が卑屈な感じであったり、
それぞれのキャラクターが面白いです。
登場人物が多い、私自身が世界史に疎い&易経がちんぷんかんぷんなこともあって、
正直ストーリーはあまり頭の中に入って来ませんでした。
同時進行で大風呂敷を広げていますが、その結末が弱いように感じます。
歴史IFの物語の中に、さらなるIFとして
第二次世界大戦の勝敗が逆だったら?(つまり正史通り、だけど微妙に違う)
という小説が流行っている設定は面白いですね。
来年あたりに映画化されるみたいなので、
それを見ればもう少し理解出来るかな?
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純粋にSFというジャンルで括って読むと、あるいはディックの他の作品の先入観があると、オチの弱さと、小道具として世界観をかき回さないことにいささか違和感を感じるかも?
ただこの作品に関してはそのような設定はどちらかといえばストーリー全体の中で脇役に徹していて、複数の登場人物にスポットを当てる群像劇のような形式にもかかわらず、群像劇というのは軽率あるいは失礼なほどにその人物たちのエピソードを掘り下げていて、最後にはそれらのエピソードに何かしらきっちり蹴りをつけて全体を一編の小説として完成させている。
特にチルダンと梶浦のやりとりは、ディック十八番の「真と贋」とでもいうような二項対立のぶつかり合いで面白かった。
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枢軸が勝った世界で、枢軸側が負けた時の小説が書かれて絶賛されているという、面白い設定。日本とドイツが幅をきかせて、アメリカ側が卑屈になっている世界観と、多岐にわたる登場人物が魅力的だった。
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SFの古典的名作。
第2次世界大戦の勝利国が枢軸国側だったら?というIFの世界。
設定がSFなだけで中身は純文学の様。多彩な登場人物がドイツの首相の突然の死去に右往左往する様が描かれる。
陰謀あり、黒幕あり、政争あり、と世界情勢は混沌としている。世界を日独伊が仕切っており(何故か伊の影は薄いが)英米が日独の顔色を窺いながら卑屈に生きている。
同時進行的に話は進行するが最後に収束するわけでもなくクライマックスがあるわけでもない。
色んな事件はあるが結局「世は全てこともなし」、無常観だけが残る。後味は悪くない。