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主人公佐織は普通なら主役ではなく脇役にまわる人物であろう。
戦争で疎開し、終戦時は10才頃。戦後の歴史とともに成長していく。社交的でみずから人生を切り開く風美子と出会い、親交を深めていく。受け身のまま人生を過ごす佐織とまるで対照的な風美子。その風美子がなぜ自分によくしてくれるのかわからず、不安になる佐織。ミステリーのように物語は進んでいくけれど、これは佐織の単なる思い込みでは?と感じる。風美子視点の小説のほうが多いが、あえて佐織視点で描いたんだろうと思う
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疎開先で一緒になった左織と風美子、戦後間もなく銀座で偶然にも再開する。主人公左織の視点で二人をとりまく半生の物語。
戦時中の疎開の様子や戦後の復興、高度成長期、オイルショック、バブル期、平成の幕開け、とその時代時代の世の中の変遷を追うという読み方もも出来ると思う。
自分は今50代だか子育てをする親として、仕事をしながら家族や友人、社会と関わって生きているという多少の共通点を見いだしながら読み進めた部分もある。
東京の中流階級層が多い町の戸建てに住み、はたから見たら平凡で何の苦労もない幸せそうな主婦に見えるが、人の数だけ年齢と共に様々な生き方感情歴史があるのだなぁと改めて思った。
二児目の柊平が産まれると長女百々子を平等に愛せなくる左織、疎開先での出来事を自分自身忘れていたのにもかかわらず風美子との再会によって当時の班長の凄まじいいじめを断罪したり。辛い過去を持ちながらも力強く自分の人生を切り開いてきた風美子に対する嫉妬や畏怖の念を抱いたりしながらシレッと生きているようにも見える左織だが、自分にも似たような事があるのだなと読みながら共感する部分もあった。
誰の中にもある後悔やプライドやモラルや愛、そういうものが左織の視点を通して読み取れた作品だ。
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疎開先で友達になった佐織と風美子。二人の戦後と昭和そして現在を生き抜いた物語。長編でかなり読みごたえのある作品だった。佐織視点で読んでいるせいで風美子が風変わりにも見えたが、現代の独り立ちをしている女性のさきがけのような感じがした。面白かったができれば風美子の気持ちをもっと知りたかったような読後感。
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もし、戦争後も家が残り家族がいたら、風美子はどんな人生だったろう。きっと、違う人生だったろう。
あの状況で、明るく前向きに生きられる風美子。佐織のような人生が普通であったろうこの時代に、自分でしっかりした舟を作った風美子。
佐織の視点からの作品だが、風美子が気にかかる。
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60代になった佐織は疎開中に一緒だったと名乗る風美子と縁があり親族となる。
佐織は戦中から現代の平成の時代を生き抜いてきた。
華やかな風美子の生活とは逆の、地に足をつけた地道な人生。
それなのに、もがけばもがくほど風美子へのしがらみにとりつかれ、家族も足元から崩壊していく。
ただ、ささやかな幸せな家庭がほしかっただけなのに。
私と佐織は世代は違うけれども、佐織の風美子に対する感情や家族の歯車のずれていくつらさが分かる気がする。
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昭和8年生まれの一人の女性左織と、かつて疎開先で共に過ごし、戦後運命的な出会いとなる風美子との、関わりを通して描く壮大な昭和史。
疎開先での出来事を心の傷に生きる左織と、相反するようにすべてをおのれの生きる力に変えてしまう風美子。
一方が旧習に囚われる古い型の人間とすると、その一方は新しいことを何でも取り入れる新しい型の人間。
双方とも、戦後日本人を象徴する人物設定とも言え、左織に己を見るか、風美子に己を見るか、その両方をおのれに観るか。
さらには、戦後日本という国を、そこに見るか。
読者に様々な思いを想起させ、いろいろな読み方のできる昭和叙事詩。
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1人の女性の生き様なんだけど、全て人のせいにしてる感じが嫌だった。娘と相容れないのは可哀想で、でもそういう親子関係もあるのかなと思うけどそこに踏み込まず遠慮したまま人のせい。なんだろなぁ。この生き方は嫌だ。
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読み応えありました。特に何かが起こるわけではないですが(戦時中の疎開はそれだけで十分な出来事ではありますが)、淡々とした文章で濃密な人生が綴られています。左織は確かに古臭いなぁと若干イライラしますが、この年代の女性らしいとも感じます。誇れるかどうかはわかりませんが、決して恥ずべき人生ではないと思います。
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何ら特殊でも特別でもない、どこにでもいそうなある初老の女性が、1990年代に設定された現在から過去を振り返りつつ、その半生を浮き彫りにしていく、というパッケージング。
昭和という時代性を強く映し出しながら、淡々とした筆致で大きなうねりを描いている。
思い通りの人生を歩んでいける人なんていない。
皆、自分の力ではどうにもならない巨大な流れに呑まれながらも、与えられた生を懸命に全うしている。
そしてそれと同時に、どこにでもいそうな市井の人間ひとりひとりが、何物にも代えられない唯一無二の日々を送っている。
そんなことを改めて感じさせてくれる、ピュアな文学作品だ。
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「激動の戦後を生き抜いたすべての日本人に贈る感動大作!」とあるが、戦争を体験していない世代にとっても心にズンと響く物語。近年のカクタさんの長編はどうなってしまったのかと思うほどすごい。その卓越した筆力にはただただ圧倒されるばかり。
「『本の雑誌』が選ぶ 2014年ベスト10(ノンジャンル)の第1位 獲得」だそう。
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終戦から10年、主人公・左織(さおり)は22歳の時、銀座で女に声をかけられる。風美子(ふみこ)と名乗る女は、左織と疎開先が一緒だったという。
物語は左織と風美子が20代から60代までの人生で、戦時中子供だった2人は疎開、そこでいじめや飢え、死別などの辛い経験をする。
2人は性格が全く違い、左織は堅実派、それに比べ風美子は 欲しいものは何でも手に入れ、負けず嫌いで派手。ひょんなことから風美子はやがて左織の「家族」となり、その存在の大きさに左織が不安を覚えたり、家族の歯車が合わなくなったり。
左織を母の姿に重ね、娘の百子は小さい頃の私の姿に重ねて読める所もあった。
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長編ですごいです。主人公は子供時代に疎開した過去をもつ女のひとですが、誰でも過去にとらわれたり、過去の記憶と覚えていない過去の話に戸惑ったりいろんな思いを抱えていると思う。
押し付けているつもりはなくても、押し付けられたと感じたり、自分と違う考えに反発したり、、、
それが誰かによると考えてしまったり、誰かの言葉の一言で疑心暗鬼になったり、、、
小さな小舟に乗っているかのように人生は旅であり、あらゆることに飲み込まれ進んでいくのだろうか。。。。
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角田さんはどうしてこんな小説が書けるんだろう。
心がぎゅーっと絞られるように辛く泣いて泣いて、でも最後には救ってくれる。
私も忘れられない記憶があって、でも忘れていることの方が多くて、その空白の時間に自分が何かひどいことをしたんじゃないかと怖くてたまらなくなることがある。
親や友達に好かれたい褒められたいと思い行動するのは、その不安とバランスをとろうとしているのかな。
角田さんの本を読むと、本の感想じゃなくなって人生を振り返ってしまう。
それにしても、ここ何年か、作風変わってきたよなあ。前から好きだったけど、最近のは特に好き。
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思ってたよりみんな、高評価だなぁとびっくりした。
この本は、母親かそれ以上の年齢にならないと良さがわからないんじゃないかと思って読んだ。
でも、やっぱ角田さんの文がすごいんだろうな。お婆ちゃんの気持ちだって、共感できちゃうもんな。
人生後悔して死にたいなと思った。
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小さいころに親から言われた言葉は残るようなあと。
親本人は何にも考えてないし、覚えてすらいないんだろうけど。