紙の本
時代に振り回される
2017/05/31 15:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pope - この投稿者のレビュー一覧を見る
チヨ自体はとても優秀な腕を持った結城紬の職人なのに、夫や息子に振り回されて・・・
結婚しない方が幸せだったのではと思わされる。
夫や息子は戦争経験してっていう言い訳も立つかもしれないが、孫にいたってはもう血としかいえない。
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悪い意味で極上の読後感。とてもやるせない気持ちになります。
大の男達を腑抜けにしてしまう戦争(一人は安保闘争ですが)の恐ろしさや、
彼らが生きる活力を再び取り戻すきっかけとなった埋蔵金伝説が返って彼らの命を奪うことの皮肉、
そして、結城紬の名織り手として名高く妻としても母としても強く気丈であった主人公チヨが第四章(最終章)で晒す老醜。
決してつまらないわけではありませんが、読んだ後は「なんだこれ!」の言葉しか出てきませんでした。
物語の中で語られる結城紬の歴史や模様のことはとても興味深く面白いです
タイトルの川になじみ深い場所に住んでいる人にとっては、出てくる地名を地図で確認するのも楽しいかもしれません。私がそうでした。
それにしても、チヨの息子の嫁はこの後どうするんでしょうね・・・。
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日露戦争から学園闘争までの時代を、鬼怒川の畔結城で機を織り続けた女性の一代記。終わり方があまりにあんまりだったけど後書きで原題が「鬼怒川」で無かったのを知り納得。
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いやはや救いがあるのか無いのか混然としているけれども、流石は流行作家だった方でしょうか、すらすらと読ませてくれて面白かった。
何だか2023年の現在がこの本の筋をなぞっているような気もして、歴史は繰り返すのか?ある意味正念場を迎えているかもなぁとこの小説を読みつつ思ったりもして。
有吉佐和子、今はあんまり読まれないんだろうか?それなら惜しいなぁ。
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有吉佐和子氏の初期の作品『紀ノ川』『香華』は、女性物との印象で、
若かったわたしはそのような作品と思われるものは、同時代的には読み継がなかったのです。
でも、近ごろ読みだした未読作品群の中の『鬼怒川』は、女の一代記といえばいえるのだが、
それだけではない作家のメッセージが、物語の中ににじみ出ているのに気が付かされた。
「時は明治時代、絹の里・結城の機織りは女性の仕事、優秀な腕持つ女性が有利な結婚ができる。
家が貧しい16歳のチヨはその美貌と機織りの腕で、ワンランク上の家に嫁いだ。
夫は日露戦争の生き残り勇士。
けれども、その戦争体験は彼を精神的に痛めつけて無気力にしてしまっていた。
働こうとしない夫は土地に伝わるの夢を見はじめて、家を顧みない。
チヨの苦労。
そして時代は移って、太平洋戦争から復員した息子、学生運動で警察に逮捕された男の孫も、
絹の里に戻ってくると、同じように無気力になり、同じように黄金埋蔵伝説に取りつかれる
という幸せではないチヨの生き行く道。」
というと、やっぱり同じかあ、となるのだが、
戦争の不条理を言いながら、男脳女脳のどうしようもない違いや、
かえって、その違いのおもしろさを描いているのではないかと思う。
わたしは男女の区別が苛立たしいと思って幾星霜。
しかし、違いこそ人間の生きるエネルギーになっているのだ。