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紙の本
連作短編集を結ぶ要素の面白さ、「初もの」と、謎の屋台の親父
2011/04/26 13:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は江戸、ほかの作品でもお馴染みの岡引、茂七親分の捕物帖。
ストーリーテラーとしての宮部みゆきの天分については、いまさら言うまでもあるまい。だがそれだけではない洒落っけがある。かくして共通のモチーフによる連作短編集が生まれる。たとえば『本所深川ふしぎ草紙』は「深川七不思議」がテーマだった。ここではひとつひとつ犯罪事件を扱いながら、どの話も「初もの」に引っ掛けてある。食の楽しみが読む楽しみにまた気持ちのいい奥行きを与えているのだ。古くは池波正太郎の得意技だろうし、今でも北方謙三やら鈴木英治やら、これをやる作家は少なくないが、宮部さんも並の力量ではない。この売れっ子作家の中では、この作品はマイナーな方かもしれないが、すっかり気に入ってしまった。
個々の話を結ぶものとして、まず茂七親分がいて、「初もの」があるわけだが、私がとくに気に入ったのは屋台の親父である。人間が何とも興味深い。この男自体が謎だから、その謎を巡るサスペンスが全体を貫く糸にもなって、作品を締めているわけで、その点は『深川』にもない面白さの要素だろう。他にはやはり共通のキャラクターとしての「日道さま」もいい。
「屋台の親父」をめぐる物語とは何なのか、その点は作者も後書きで謝っているように未完だから、「必ず書く」という続きが楽しみなのだが、いつまでも書いてくれないので恨めしい思いで眺めている。
紙の本
江戸の町人の暮らしと旬の香り。
2010/04/08 04:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういうお話、大好きです。お武家さんのような、格式高い人が中心に描かれると読み進めていても遠い存在のような気がして、なかなか物語に入り込めないんだけれど…中心には、裕福ではない町人がいるので旬の鰹を買うのもなかなか大変だという暮らしぶりは、身近に感じる。現代に暮らす私達には、冷蔵庫もあるしスーパーマーケットでは旬の食材が安く売られているので買うのが大変、というのは松茸や元々高値の魚介類くらいではないだろうか。けれど、江戸に暮らす町人は、商いをしつつも日々を行き抜くのがやっとで(大きなお店を覗いて)そういう暮らしぶりには共感できることも多く、面白い。
本書の中で、季節は巡る。その描写も細かく、工夫が施されているので分かり易く、季節感がリアルに伝わってくる。衣替えや、旬の白魚、柿、鰹の登場。短編集から成り立っている一冊だけれど、登場人物は通じるものがあるので飽きずにささっと読めてしまう。
特に興味を持ったのは、美味しい料理を提供する稲荷寿司屋の親父だ。そういう屋台、実際にあったら行ってみたいと思う。なんせ、稲荷寿司だけでなく、寒い夜にはすいとん汁や蕪汁、鰹や鮭なんかの旬の食材も巧く調理して出すのだ。しまいには、お酒の担ぎ売りと組んで、お酒も出すしお菓子まで出してしまう、天晴れな稲荷寿司屋だ。その親父は、不思議な人なので岡っ引きの親分にそれとなく助言したり、事件の解決の糸口を不意に垂らしたりするのがまた面白い。
事件も、色恋が深く関わっていたり、表沙汰にはされたくない家の事情が絡んでいたり、心痛むところも多々あるけれど全体的にきちんと解決したり、良い方向へと向かっていったりするので良かった。
宮部みゆきさんの時代小説は、だからクセになる人も多いのでしょう。細部もきちんと描写されているので、なるほど、と納得することも多いし想像力が大いに刺激される。私なんか、語彙力まで養っています。月代なんて、読み方も意味もしらなかったけれど、宮部みゆきさんの時代小説で知ることができたくらいです。これからも読みたい宮部みゆきさんの時代小説はいくらでもあるので、楽しみ。
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うまそうな捕物帖
2006/12/11 12:04
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本所深川一帯を取り仕切る「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七親分とその子分たちが活躍する捕物帖六作が収められた短編集です。
他の宮部作品のように、登場人物たちが活き活きと描かれていることに加え、ミステリとしてよくできているトリッキーなものから人情話まで揃っていて、とても楽しく読めました。
さらに加えて、一作ごとに様々な食べ物が出てくるのですが、これがなんともおいしそう。捕物帖にうまそうな食べ物ときたら、有名時代小説家の影響を受けているのか、オマージュか、ともとれますが、何にしろ、この料理の数々が本作の楽しさに彩りを添えています。
この食べ物を出すのが、正体不明の屋台の親父。なかなかの料理の腕を持ち、もとは武家だったようで、地元のやくざの親分にも顔が効き、さすがの茂七親分もなかなか正体がつかめない。この謎の屋台の親父のことを、一作ごとに少しずつ少しずつ小出しにしていく思わせぶり加減は、さすがは宮部みゆき!もう、気になって気になって。早く続きが読みたいですねぇ。
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続編が読みたい。
2018/01/21 17:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nako - この投稿者のレビュー一覧を見る
稲荷寿司の屋台の親父の正体が気になります。茂七親分の捕物も面白いし、是非続編が読みたいです。宮部先生、早く書いてください!
紙の本
素朴な味わい
2001/09/18 16:20
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投稿者:はなきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
出てくる屋台の料理が素朴なんだけれど、とっても美味しそうでした。下町の情緒溢れる感じが心地よく、宮部みゆきさんの時代小説もなんだかいいなあ、と思います。人情味溢れる人々が存在して、話の中で起きる事件は悲しいものもあるのに、ほのぼのとした読後感を味わえました。続きを楽しみにしたいですね。
紙の本
食は人をひきつける
2001/05/27 07:36
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投稿者:まちゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸の人情の魅力と、あざやかに切り込まれる謎、そして何より「いなりずし屋」の季節ごとの食!!読めば読むほど食べたくなって、「やっぱ和食だねぇ」と江戸っ子口調で独り言。こんなにおいしそうな小説は初めてです。
紙の本
続きが読みたい
2000/12/18 15:22
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投稿者:大鳥啓介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきの作品は基本的にどれを読んでも面白い。とくに現代ミステリーものは人気があるらしい。ただ現代ミステリーものの中には‘ちょっと現実離れしすぎてるなぁ’と感じる作品もあった。それに長編が多いので短気な僕には向かない気がしていた。
ところがこの人の書く時代小説はおもしろい。僕はこっちのほうが好きだ。6つの短編からなり、続き物になっている。ちょうど鬼平犯科帳を想像するとわかりやすい。そこに読む人を飽きさせない軽い謎解きと、余韻を残す人情話。それらが絶妙に絡み合って、短編ながら十分な満足感を得ることができる。
ただ残念なのは、話は大きな謎を残したまま終わってしまっていること。はやく親父の正体を知りたいもんだなあ。