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活字というより絵画鑑賞のような視覚的な作品に思えたのは作者の夢の短編集だからか。そして夢だけに非現実でシュール。中でも「空飛ぶ男」が好き。作者のようなこんな感性の男が近くにいたら絶対近づく。でも相手にされず、そして現実的に本人を理解できず、結局、彼の作品だけを愛しそう。(考え過ぎ)
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驚く程読み心地がいい作品。
例えるならスポンジやパンが、水を吸収していく様な感覚に等しくさらりと読める。
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何度も読み返している、もしかしたら一番好きかも知れない作品。
非現実的でありながら素晴らしいリアリティ。語り口にいつの間にかのみ込まれ、どこかであるんじゃないかと思えるところがさすが安部公房さん。
何だかいろんなものを許されているような気分になり、読む度に安心できます。特に『アリスのカメラ』が大好き。
安部公房作品としては、とても読みやすい本。
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随筆みたいな文と小説の超短編。ショートショートとでも言えるのか?
それにしても安部公房の作品はどいつもこいつも難しい。次は中3の時に挫折した「砂の女」
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安部公房をすすめるときは、まずこれをすすめる。
短い作品たちの中に、見事に公房ワールドが展開されている作品。
淡々とした不気味さ、隠されていない狂気に脳内がゾクっとして、それが物足りない人はぜひ長編を読んでほしい。
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夢。
奇妙なお話の数々。
私も夢の力は信じている方で、「夢は人に話さないと正夢になる」という話を聞いてからというもの、誰かが不幸になる夢を見る度に慌てて人に話してまわっていたりする。
夢と現実の境界線はどこなのか考えると恐ろしくなったり、「夢は現実ではない」なんて未だに割り切れない私には、この奇妙な、不気味な話が何故だか怖くて、面白くて。
自分の夢も面白いけど、人の夢の話も面白いね。
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失敗した。読む順を間違えた。
この作品は阿部さんの見た不可思議な夢を題材にたエッセイだ。夢を題材にしているというと漱石の「夢十夜」を思い浮かべるが、夢十夜が夢を題材にした短編小説なのに比べ、こちらは、夢を題材に考察を交えながら過去の作品がどんな発想から生まれたかを書く「創作ノート」的エッセイだった。
問題は、私が阿部さんの作品を「砂の女」しか読んだことがない、ということ。
裏話は表を知らないと楽しめない。
もう少し阿部さんの作品を読んで、またいつか読み返したいと思う。
ただ作品として普通に面白いものも多く、「自己犠牲」、「鞄」など世にも奇妙な系短編は楽しかった。
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創作ノート的題材がこれほど作品として秀逸なことに驚き。
読み終わった作品を含め、もう一度安部公房という人の著作を改めて読み直したいという気になった。
冒頭の短編での睡眠への導入方法を試してみたけど中々眠れなかった。
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安部公房の随筆&短編集。何度読んでも眉間にしわが寄る、様々な解釈が可能な文章が魅力。一生読み続けられる本。
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良質な短編を読もうと思って知人に借りて読みました。
本文の目次です。
装丁とか
全体の感想
気になった文章
最後に
装丁とか
例によって例の如く表紙からして不気味です。
題名のフォントも歪ですし。ホント阿部公房らしいというか何というか。
ですが、本書は一字一字が大きく、スペースも十分に取られているので非常に読みやすいのが嬉しい。
昭和59年発行ですが、編集者のこだわりがあるのでしょう。それが何かは分かりませんが読みやすいのは嬉しいのです。
また、途中にカラーで写真が載っています。文庫で、しかもエッセイでこういうことをするのは珍しい気がするのですがどうでしょう。ちなみに写っているのは良く分からないけど不気味な何か。やっぱり良く分かりません。
全体の感想
さて、内容ですが、本作は他の作品のゴリゴリに不気味な感じではなくどちらかというとエッセイ的な要素が強い作品でした。
夢のことを良くノートに取っておくこととかその夢の話とか。
ただ、そこはそれ。氏の作品ですので、どこがエッセイでどこが作りものなのか。それとも全て創作なのか。その境界線が曖昧で、夢の中に入り込む様な出来となっております。
そうです。阿部公房の作品は基本的に悪い夢の中に入り込んだような気分になる話ばかりなのです。
(以前読んだときの感想はブログを始めていなかった2年以上前なので載せてません。ブクログにあるのでそちらをどうぞ→wakkyの本棚)
今回はその夢がそこまで悪い夢じゃなかった感じ。
気になった文章
阿部公房の文章は不気味なくせに引き込まれるので文章がうまいのだろうなと思うのですが、今回はその文章や言葉で気になったところを挙げていきます。
・おそらく睡りの中で、まず恐怖の生理がつくられ、その生理が夢のスクリーンにあの月を投影したに違いない。だが、恐怖の極限のイメージが、なぜ笑う月なのか~
p.19より
(夢分析。整理が先に作られているから恐怖のイメージを見ると言うのは確かにそうなのかもしれない。)
・白昼の意識は、しばしば夢の論理以上に、独断と偏見にみちている。
p.30より
(全く謎の「タブ」というものについての考察。白昼夢だけどw 間違った前提の元に進められる論理は不気味なのです。)
・藤野君のこと(これは短編の題名です)
(この話はつまるところ聞き間違いの話なのですが、聞き間違いで「北海道ではアムダという人間そっくりの生き物を狩って肉を食べたり川を靴やカバンにしたりする」という。どうやったらそんな聞き間違いをするんだw やはり不気味な話を書く人は頭の中が平時から不気味モードなんでしょうか。)
・世界一のカメラ生産国である日本は、同時にカメラの購買力においても世界一を誇っている。…日本人のフィルム使用料は信じ難く低いのである。
p.71より
(バブル期に「カメラを首にかけた出っ歯の日本人」というステレオタイプが流行っていた様に思うけれど、買うだけ買ってあれは取っていなかったのか 笑 謎の行動です。)
・この体験は書くという行為の持つ意味を、あらためて考えさせてくれるものだった。夢を書くのに適したスタイルで書けない夢は、夢としての価値もない。…見なかった夢を―それがいかに発明にみちた着想であろうと―作品を発酵させる発想の種子だと錯覚したとたん、取返しのきかない衰弱がはじまるのである。
p.101より
(夢を書くのに適したスタイルなんてものがあるのか。考えたことがありませんでした。以前夢を題材に小説を書いたこともあるのでこれは考えてみたいのです。ちなみにその小説はこちら→夢の話)
・自己犠牲(これは短編の名前です。)
(この話は、極限状況で喜んで自分の肉を食ってくれと言い合うという三人の話。喜劇、なのか…?)
・当然だろう、弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている。
p.145より
(阿部公房はこういう本当かどうかは分からないけれど、さも当たり前のことのように不条理な論理を書くのがうまいのです。それが前提となって話が進むからこそ怖いのですが。)
最後に
どうも阿部公房の作品は、どこが不気味か分からないから怖いのであって、分からないということは感想が書きにくいということで。
すいません。今回はあまり感想になっていなかったですね。
ただカバー裏に「意識化でつづっている創作ノート」と書いてあるのは本当のことだと思うので、阿部公房作品が好きな人は読んでみると阿部公房作品誕生の秘密が垣間見れて面白いかもです。
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『笑う月』は、安部公房の短編集である。
筆者自身の見た夢を記述した小説であり、彼の正確な描写力と表現力は圧巻である。
特に、夢の言語化に関する考察などは秀逸で、言語と視覚の関係を、夢を通して思考実験を行うことにより、夢だけではなく現実の中であっても言語と視覚の関係は濃密であるという結論に達している。
夢の幻想性と超現実性を厳格な筆致で描き出した作品であると感じた。
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安部公房の短編集。表題作は大阪大の英作文問題や学校のテストでも扱われていたので、個人的には馴染み深い。夢の内容をテープレコーダーで保存して叙述したもの等々、なかなかおもしろい。「空飛ぶ男」や「密会」といった後に長編となる小説の土台となる短編も含まれていて、なんとなく安部公房の小説の「膨らませ方」が垣間見えた気がした。(たぶんいくつかの小説をまとめているのだと思う)安部文学の長編とは違う切り口が見られて良かった。
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・しばらく歩きつづけていると、さすがに肩にこたえはじめた。それでもまだ、我慢できないほどではなかった。ところが、急に腰骨の間に背骨がめり込む音がして、そうなるともう一歩も進めない。気がつくと、何時の間にやら私は事務所を出て、急な上り坂にさしかかっているのだった。方向転換すると、また歩けはじめた。そのまま事務所に引返すつもりだったが、どうもうまくいかない。いくら道順を思い浮かべてみても、ふだんはまるで意識しなかった、坂や石段にさえぎられ、ずたずたに寸断されて使いものにならないのだ。やむを得ず、とにかく歩ける方向に歩いてみるしかなかった。そのうち、何処を歩いているのか、よく分らなくなってしまった。
べつに不安は感じなかった。ちゃんと鞄が私を導いてくれている。私は、ためらうことなく、何処までもただ歩きつづけていればよかった。選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった。
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合間本にと思っていたのに全く合間本にならず。
面白すぎて辛抱たまらず一気に読み通してしまいました。
発想の種子とか脳内での広がり方とか、
小説とはまた違う言葉の使い回しの巧妙さに触れる事ができて、心底感動。
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燃え尽きた地図や壁なんかの裏側が覗ける。安部公房って作品だけじゃなくて、本人もだいぶ頭ヤバイ人なんだなーと。安部公房好きなら、面白い一冊。