投稿元:
レビューを見る
「古典は、まず原文に当たるべし」などという原理主義的な考えにとらわれていた自分を恥じた。どんな作品なのかを知ろうと思ったら、「まずは口語訳から当たる」べきである。そうして、興味を惹かれた文章があれば、そのとき初めて原文に当たればよいのだ。もっと早くこのことに気づけばよかった。
投稿元:
レビューを見る
枕草子、酒井順子、読了、2022年7月3日。
方丈記、読了、7月5日。
徒然草、読了、8月7日。
どれも面白かった。古典好きになりました。
投稿元:
レビューを見る
「方丈記」を「モバイル・ハウス・ダイアリーズ」と名付けた高橋源一郎。期待して読んでみたが、方丈記原文の完成度が高すぎる。そして、やはり方丈記、という名前の完成度も高いのだ。
古典翻訳は新しい文学でもあるので僕は好きだし、だからこそこのシリーズは楽しませてもらっている。以前のシリーズで町田康の圧倒的な宇治拾遺物語を見てしまっていると、もう横ずれでは気持ちよくなれなくて、正攻法が一番と思うわけだ。
内田樹の徒然草は、まあ正攻法かなあ。徒然草自体が、何をいっているわけでもないような、そんな内容なので、やっぱりそんななのだ。酒井順子の枕草子は、なにかそこに女性がいる、という感じに匂い立つ。今回の3つの中ではこれが珠玉だなあ、なんて思ってしまった(一番期待していなかったんだけど)。
投稿元:
レビューを見る
11月16日【清少納言は機知にとんだ才女で、周囲を観察しながら辛辣な筆を使い、イケメンとファッションが好きな女性..そんな清少納言に同一化できる書き手といえば酒井順子さんです。酒井順子さんは千年前にも気があうひとがいるという喜びを感じながら枕草子を訳したそう。本文との違和感を感じず流れるように読めます。】
タイトル: 枕草子[清少納言著] ; 酒井順子訳 . 方丈記 / [鴨長明著] ; 高橋源一郎訳 . 徒然草 / [兼好著] ; 内田樹訳
請求記号 910.26 : Ni : 7
https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28174187
投稿元:
レビューを見る
230627*読了
元来エッセイが好きなので、「枕草子」や「徒然草」ってこうして読んでみて、好きな部類の古典だなぁと思う。
特に女性ならではの「分かるー」が多い「枕草子」はとても好み。
山といえば、原といえばと名前をずらずらと並べる段あれば、見苦しいものなどテーマを決めて、あげていくものもあって、特に後者は「分かる分かる」と頷いてしまった。
定子に仕えた華々しい時代を振り返って書いているのだけれど、当時の日記のようにいきいきとした文章。才女として生きた彼女の人生を思う。
ちょっぴり自慢もあったりして可愛らしい。
好きな古典は?と聞かれたら、「枕草子」と答えたい。
「方丈記」は、これも確かに現代語訳といえばそうなのだけど、とたじろいでしまった。
なんせ、モバイルハウスダイアリーズ。確かにそうなんだけれど。
各章もすべてカタカナ。
今っぽさ全開の方丈記。昔の出来事が今に類するところもあって、違和感はあるようでない。
これはこれでおもしろい。
「徒然草」ってどことなく「枕草子」に似てるよなぁと思っていたら、意識されていたってマジか。そんな気はしていた。
より、おじいさんの人生訓の感じが出ていて、長く生きた人の言葉は勉強になります、という気持ち。
人生は短いのだから、あれもこれもやろうとせずにやりたいことをやりなさいであったり、欲を持ちすぎないように、であったり、こんなに古くからこの考えはあって、今と少しも変わらない。
これだけ古くから言われていることなのに、つい、あれもこれも手を出してしまい、何もなさぬまま命が絶えてしまうのが常。
自己啓発本よりも啓発されました。ありがとうございます、兼好法師。
投稿元:
レビューを見る
「【毎日出版文化賞企画部門(第74回)】池澤夏樹個人編集による日本文学全集。07は、自然や人間の本然を鋭い感性で綴った、現代に通じる三大随筆「枕草子」「方丈記」「徒然草」を、酒井順子、高橋源一郎、内田樹による斬新な新訳で全訳収録。解説つき。」
枕草子 清少納言 作 5−328
方丈記 鴨長明 作 329−363
徒然草 兼好 著 365−496
投稿元:
レビューを見る
池澤夏樹編集のもと、気鋭の文学者を集めて現代ならではの「日本文学全集」を新たに編纂したシリーズの一冊。この全集から発刊された角田光代さん訳の『源氏物語』を先日読み終わり、次は『枕草子』でも読んでみるかー、と思っていたので手に取ってみました。
収録されているタイトルからもわかるように、この巻は日本文学における「随筆」を中心にしており、時代をまたぎながら古典作品の良さを知ることができるようになっています。
随筆の「随」には、「なりゆきに任せる」という意味合いがあるらしく、その意味で言えば最初に来る『枕草子』にもそんな気の向くまま、誰に気兼ねすることもなく、書きたいことを書いたという雰囲気が感じられました。四季の美しさや、行事の面白さをとらえ、想いを的確に文章とする感性の鋭さもさることながら、ちょっと腹立たしく感じたことや、個人的にいいなとおもってることについてもあれこれ書かれているので読んでて普通に面白い。1000年前の人だって「ドアをちゃんと閉めない人」に対してムカついたりするんだなあ、そりゃそうか。妙に親近感を覚えてしまう箇所も多数あり、そういう”繋がる”感覚が読んでいてうれしくなります。清少納言の視点には一種の「客観性」が常にあり、物事の風情をしっかりと感じ取り楽しみつつも、そんな自分の姿をひとつ上の位置から眺めているようでもあり、それらを的確に表現する冷静な筆致にこそ、独自性と先見性と文学性が宿っているように思いました。
続いて『方丈記』についてですが、こちらは訳者が高橋源一郎さんでして、かなりトリッキー、というかクセつよな訳に仕上がっています。なんせタイトルのルビが「モバイル・ハウス・ダイアリーズ」なので。訳文にしてもタイトルにしてもカタカナを多用しているため、「翻訳」というよりも「吹き替え」と言った方がしっくりくる読み心地となっており、愉快な印象や異世界感が強まっているなあと思いながら読みました。私は『方丈記』を読むのが初めてなのですが、人によっては「ふざけんな!」と怒りを覚えそうな気がします。うーん、どうなんだろうなこの訳は。個人的に悪ふざけとかブラックジョークは嫌いじゃないですし、「日本文学全集」という場所でそれをやるという反骨精神も嫌いじゃありません。ただ、なんというか単純におもしろくない。いや、おもしろくないというよりも「スベってる」気がして、それが読む気持ちを阻害しちゃってる気がします。あー、でも内容がそもそも厨二病の人の叫びみたいなところがあるので、その意味では正しい翻訳なのかも。
そんで最後は『徒然草』。訳者は内田樹。有名な冒頭文「徒然なるままに~」をそのまま流用することなく、現代の言葉に置き換えており、その時点で訳者の「清新な訳を心がけよう」という意気込みが伝わってきます。その後の文章も格式がありつつ読みにくさは無いのでリーダビリティは高い。文章に宿る「息づかい」は、現代の小説を読んでいる感覚と大差なく、おもしろい人のおもしろい文章を読むという、まさに随筆本来の良さを味わうことができた気がします。なんか夢で見たようなしょうもない話もいくつかあり、個人��にはこれが三作の中では一番好きでした。
感情のおもむくままに書く。
本を読んだら感想を書き、映画をみたら感想を書き、何か伝えたいことがあったら文章を書く。そんなことをWEB上でやっている身からすれば、共感するところはあるものの、それ以上に、こうまでなめらかに、先の時代まで残るような文章で、想いをぶつけながら書くのはそう簡単なことじゃないよな、と改めて感じます。こうやって頭に浮かんだ言葉をつらつら書いていても読み返せば言い回しを変えたくなったり、誤字脱字があったり、言い足りないことがあるのに気づいたり、文章を書くのは難しいなとしみじみ思います。ライターの武田砂鉄さんが巻末の書評で書いているように、「日本三大随筆」であるこの三作品は、いずれも作者が"粘着質"であり、細かいとこまで執拗に食い下がる傾向があり、そこが読んでて面白い。そんな感じで、ここまで何かに執着したり、念入りに書き綴ったり、細かいところまで気にしてこそ、後世まで残るような名エッセイができるのかなと思いながら、古典となるほどの超人気ライターによる日記帳を堪能しました。