紙の本
完結ですかね・・・
2021/07/27 10:40
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある日、陽子の前に弟の達哉が現れる。達哉は陽子が母の恵子が非常に似ていることから親戚ではないかと考える。そして陽子と接するうちに姉弟ではないかと考え、陽子を母の恵子に合わせようと思い切った行動に出る。そんな行動に出た達哉を北原が体を張って止めるが、逆に北原が足を切断する怪我を負ってしまう。北原を犠牲にしてしまったことの罪悪感を感じ、陽子は北原と結婚することを決心する・・・。
このシリーズでは原罪や赦しというテーマで進んでいたと思うが、陽子が北原と結婚するという結末には違和感を感じた。不倫の子として生まれ、苦しんだ陽子が仮面夫婦になるのは少し変でした。逆に実母の恵子に電話をして何を話したかったのか、今後どうしたかったのかが妙に知りたくなりましたね。続編を期待したいところでしたが、完結なんですね。結婚後の陽子が子を生んで全て赦すという展開を期待したのですが。
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原罪とは、「生きるうちに知らず知らず背負ってしまう罪」、「罪をそれと自覚できない罪」なのだろう。
そして罪とは、たとえ相手が赦すと言ったとしても、消えることのないものなのだとしたら。
それを「ゆるす」ことのできる存在とはなんなのか。
陽子がその存在に気づいた終幕は、静かでいて劇的。
網走の流氷が燃えるところを、私もぜひ見てみたい。
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弥吉の話や北原のことも含めて、全体的にすごく重い話でした。
四冊目ともなると、さすがに陽子と啓造の心の葛藤というか哲学が重すぎて途中から疲れる。徹も陽子しか眼中になくて怖いし、夏枝も相変わらず救いようのないほど大人げなくて、読んでいて痛々しい。けど、辻口家で一番人間らしく(悪い意味で)生きているのは夏枝じゃないかと思った。
弥吉の戦争の話も、不意打ちだったので辛い。戦争で亡くなった方の命を無駄にしない為にも、どんな手段を使ってでも侵略は防いでほしいなと思っていたけど、それは戦争を見ていないから言えることなのかもしれない。実際に戦争には行っていなくても、戦争の時代を見てきた人だからこそ書ける話なのかなと思った。
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上巻から一転、下巻は展開が早くなる。氷点で感じたあのスリルをもう一度味わうことができる。
運命は確実に、ある時の1つの決断に左右され、1つの罪は必ず自分に返って来る。氷点を読んで、その想いは私の中でより一層強くなった。
キリスト教でいう罪が頭で理解できている今、この歳だからこそ、原罪だとか物語の意味がよくわかる。それぞれの年代で、それぞれの理解で読むことのできる本だと思った。
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好きとは感情であり、愛とは意志である
自分が人の命を奪っている間に命を生んでくれて感謝している
あなたたちの中で、罪のないものだけがこの女に石を投げなさい
氷点の中でも一番感動した。
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とても読みやすく、日本語の扱いも美しい。本筋ではないが「戦争の本当の恐ろしさは、人を人で無くしてしまうところ」という表現が深く刺さった。
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久しぶりに登場人物に近づいて一緒に煩悶するような読書をした気がする。
素晴らしい。何と細やかで行き届いた描写で、息を飲むような展開があるのだろう。しばらくしてから立ち戻らざるをえない。2013年ベスト。
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先が気になって一気に読んだ。
罪を赦すのは簡単なことではないが、囚われて生きるよりは楽な気がする。
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それが罪であると意識出来ない罪、原罪について考えさせられた。
自分が正しいと思う時、相手を見下す心がそこにはある。...のように、幾度と自分はどうかと問いたくなる言葉がでてきた。
自分の思想の一つとして聖書に目を通してみたいと思った。
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2014.10.11
続氷点上巻から続く、辻石家と三井家の複雑な人間関係。そして陽子と順子、徹、北原の関係にもドキドキハラハラとしながら読み進めました。
順子の衝撃的な手紙での告白、そして見本林での夏枝の言動、北原の事故…全ての出来事が当人たちに動いて欲しくない方に動いてゆきます。でもそれが人生の辛さであり、また生きる希望にもなり得るのだと思います。
人間とは何か、罪と赦しとは…。
とても重く壮大なストーリーで、最後は希望を感じられる終わり方でした。陽子、徹、北原、順子には幸せになれるはずです。
読後には不思議と爽快な気持ちと、なんとはなしにもやもやとした思いが残りました。でもそれはこの本に対しての思いではなく、自分に対しての思いです。
久々に心が揺さぶられる小説を読みました。とにかくこの本に出会えたことに感謝。こういう出会いがあるから読書はやめられないですね。
何年か後に読み返したとしたら、その時自分はどんな感想を持つか楽しみです。
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■ストーリーについて
不義によって生まれたことにより、生まれながらにして罪を背負った陽子。父親の殺人によって、子どもながら二罪を背負った順子。それぞれ親に対する憎しみを抱きながらも、様々な人と関わり、最後には「赦し」を選択する。そこまでの起伏に富んだストーリーを「嫉妬」や「復讐」に苦しむ啓造の存在が引き立てていて、ぐいぐい引き込まれていた。
■テーマについて
「復讐するは我にあり」
聖書にあるこの言葉が求める姿をきちんと描ききった作品だと思った。
人は皆、大小を問わずに罪を負っている。ならば、罪を負っている人間が他人を罰する(他人へ復讐する)権利はあるのだろうか?そのような根源的な疑問に対する聖書としての回答が「復讐するは我にあり」なのだと思った。
ならば、私たちにできることは何か。それが「赦し」なのだろうな。世の中全てがこのような考え方をできれば、現存する問題の多くが解決されそうだが、決してそんなことは起こりえない。だからこそどうすれば「赦し」をできるのか、考えさせられてしまった。
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達哉の自分勝手さにびっくり。そろそろ物語として終結を迎えてよかったと思う。でも、三浦綾子さんの物語の終わり方って、何か、すっきりしない感じがする。
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罪をゆるす。
自分に対しては逃げ、人に対しては気にするのがめんどくさい。私はそんな考えしか持っていなかった。
陽子や啓造はもちろん、その他心情の中まで詳細に描かれない人物たち全てがそれぞれに悩み、模索し、変われない自分を嘆く。
陽子はなぜ結末のような心持ちになったのだろう。啓造のカラスと蛇しかり、陽子の流氷しかり。何事からも学び感じることなのか。
聖書からのヒント(命令?)も一因か。
とにかく色々なことを考え、考えさせられた本書に感謝しています。
解説にもあった、人間の分析のみならず、分析の結果からどう生きていけばいいのかまで、踏み込んだ内容に、負けてられない、自分もそんなものを創り出したい、と感じた。
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学生であった10年以上前に読んだときにも影響を受けた本だったが、今回はさらに心が揺さぶらた。
自分を正しいと思いたい思いが、人を見下げたり、人を責めたりする。
愛のない正義ー
まさに、今の自分だと思った。
自分の罪に目を向けずに、自分を正当化しようとしてきた自分。
そのことにきちんと向き合って生きていこうと、心から思った。
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なぜなのだろうと疑問を持ち、自分なりの答えを導き出せる人と、その場の感情でのみ動いてしまう人とでは、長い人生を終える時に大きな差になっていくのだろう。常に相手に過失を見出してしまう習性の人は、その思いに囚われ、冷静に自分を見ることができなくなってしまう。
宗教観が随所に光るが、それがなければ深みのない作品になってしまっただろうし、キリスト教の事はよく知らないが、それでもその哲学が味わい深い。
この本を通して、心に残るは啓造・夏枝夫妻。この二人は実に人間らしく、愚かであり、また純粋でもある。