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本作は、「人間と『物語』」を通して、激流の中からひとつの滴を追いかけたような姿をしていると思う。梨木さんはおそらく、≪大いなるなにか≫の風を、ぼくなどよりずっと近く、生々しく感じておられるに違いない。2017.8.21.
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とても神秘的な、世界と命と再生と循環の物語でした。
物語は誰かに必要とされていて、紡ぎ出すのも受け取るのも必然。
全ては還るところに還り、成るように成るのだけど、邪魔がたくさんあるから、本来の姿になれない。
それを正常なとこに戻さなければならないから、物語が必要なのだ。
けれど、全てを見抜きコントロールする事を担うのは尊く強く哀しく辛いことなのでしょう。
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決して緑を描かなかったターナー。
赤茶けた草原に、唐突に、ピスタチオ・グリーンが。
この色彩のコントラストを提出してくれただけでも、めっけもん。
それだけでなく怒涛のように、日本――ウガンダ――棚の創作、と響きあう要素要素。
そして《死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ》という発見。
神秘主義に堕しかねない話を、開かれた小説に仕立てた、作者の手腕に諸手を挙げたい。
中島らもの裏側、という読み方をしても面白そう。
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美しい自然描写が印象的な文章の梨木さんの作品です。
まずはタイトルに注目。ピスタチオ・・・豆?
ウィキでは、「ピスタチオグリーンと呼ばれる緑色が残り、
味は他のナッツ類と異なる独特の風味があり、
「ナッツの女王」とも呼ばれる。」となっています。
作品の主人公の本名は「翠」。
ライターの彼女はペンネームの「棚」を普段使っています。
本名は誰にも明かさなかったのですが・・・。
名前が不思議な因縁をもたらしていきました。
美しい武蔵野台地に犬とひっそりと暮らしていた棚に
ある日アフリカ取材の話が舞い込みます。
犬の病、カモの渡り、前線の通過、友人の死の知らせ...。
不思議な符合が起こりはじめ、
何者かに導かれるようにアフリカへいくことに。
内戦の記憶も新しいアフリカの地で、
反政府軍にさらわれた双子の片割れを探すナカトと知り合います。
そして2人はナカトの姉妹を捜す旅に出ました。
ナカトが語る、反政府軍に襲われた話しは衝撃的です。
平和そのもに見えるアフリカの地でも
残虐な争いが絶えまなくあるということは、
信じがたいことでした。
前半は犬の病気。後半はアフリカの旅。
まるでII部構成のようになっていたのが、ちょっと残念です。
どちらかに絞ればもっとまとまった作品になったと思います。
なんだかピスタチオが食べたくなりました。(笑)
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主人公の犬の病気から始まり、アフリカに終わるはなし。
初めは内容の繋がりがわからず、淡々と進んでいくから、のめり込むという感じではなかった。
全部読み終わって、そうゆうことかという感じ。
とくにすごいおもしろかったわけでもなく、つまらなかったわけでもないけれど、人には勧めないかな。
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梨木香歩さんの作品は、いつも読み終わった後、物語の続きが私の中で育っていくような感じがする。続編ないのかなぁって思うこともしばしば。
ピスタチオは、なぜか、そうは感じなかった。
棚のもっとザラザラした内面を感じたかったのかもしれない。
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梨木香歩の本は全て★5なんだけど中でもより良いのが分からなくなるから★4。
本の中に散りばめられた言葉が本当に好き。吹く風に言葉をつけていて、文章で風を読むことが出来る。
そしてどんな物語も、自分が感じたことのある独特な感情が書いてある。私と同じだ、と思わせる。
「もう動いているのだ、物語は」
わかる。こう思ったことある。
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前半の日本のパートの物語が動き出そうとする空気感がすごい。棚が日常に違和感を感じ、当然のような成り行きでアフリカに向かう話流れに引き込まれた。
アフリカでのパートは、外国で過ごす上のあるあると、ダイナミックな展開の両方があり、リアリティとファンタジーが混ざっている独特な雰囲気だった。
最後のピスタチオの話は、棚が体感した全体の話を総括したものなのだろうけど、まだ何が何を暗喩してるのか完全には理解しきれず、消化不良な感じ。もう一度ゆっくり読み直したい。
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この作者さんは個人的に中盤まで読むのがしんどいけれど、伏線回収が好きなスロースターター…読後感は良い。
これは特に壮大なテーマで、導かれると聞こえは良いけど関係無いことが一つに収束し始める、嘘か真か分からない感じが気持ち悪くも神秘的。
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「ガダラの豚」を少し前に読んでいます。
まったく違うお二人の小説から、科学ではけっして説明できない、同じお話が展開されたことに、驚きを隠さずにはいられません。偶然ではなくこうした事実があるのでしょう。
確かにまやかしも多いけれど、100人に一人くらいは、恐ろしいくらいの力を秘めた本物が紛れている。そしてその力は計り知れなく、私たちの科学では全く説明できない。遠く離れたアフリカの地では、それは恐れるものでもあるけれども、それ以上に、生活になくてはならない存在になっている、と私は受け止めました。
この本から逸れてしまいました。
命のつながり、大地と、そして大事な存在となる渡り鳥。呪術師と予言。
難しくてわからなかったけれど、つながっているのでしょうか?
もう一度読ませていただきます。
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緑溢れる武蔵野にパートナーと老いた犬と暮らす棚(たな)。ライターを生業とする彼女に、ある日アフリカ取材の話が舞い込む。犬の病、カモの渡り、前線の通過、友人の死の知らせ…。不思議な符合が起こりはじめ、何者かに導かれるようにアフリカへ。内戦の記憶の残る彼の地で、失った片割れを探すナカトと棚が出会ったものは。生命と死、水と風が循環する、原初の物語。
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梨木香歩 著
この作家さんは、やはり凄い!何でも描ける作家さんだなぁと改めて感慨深く、この凄まじいまでの力量に心を持っていかれる。
私が大好きな、心の書だと感じている
「家守綺譚」や「冬虫夏草」の作品とは、
また次元を超えたような世界観の中にあって不可思議な物語を綴っている。
しかし、いつも自然の理がご自身の中に常に生息している作家さんだと思う。
私は、速読は出来ないが、結構、本を読むのは速い方だと思っていたが、梨木香歩さんの本はいつも、その世界に浸ることに大きな期待と楽しみで、ゆっくり読んでいるものの、この作品について、最初読み始めた時は、その時の自分の体調か?倦怠感に苛まれていて、面白く、続きをどんどん読み進めたい気持ちと裏腹にすぐに眠気が襲ってきて、頁をめくる毎に勝手に、手が止まって、本を片手に眠りこけてしまい夢の中で続きを読んでる感覚に何度も陥ってしまった(-_-)zzz
呪術医が現れた瞬間などは興味津々なのに、いやはや、取り憑かれたように眠っているか起きているか分からない世界を彷徨ってしまった(・_・;
実際、取り憑かれていたのかな?
途中からは目覚めたように、冴えた頭で読み切ってはしまったが…。
作品の中の一文が妙に気になって…患者が、というより、患者のジンナジュが、本当に欲しがっているのは、ストーリーなんだって、、中略
死者には、それを抱いて眠るための物語が必要
ー死者は、物語を抱いて眠るー
水と風が循環するように、生命と死の命も循環してゆく。
物語の主人公、棚が書いた ピスタチオの話良かったなぁ…。
ふと、自分に置かれている
今の状況を考えたりしていた。
前にも本の感想の時に、ブログみたいに自分の闘病中の癌に対する延命治療について触れた、
自分のたった一例の臨床体験だとしても、誰かの…同じように病気と闘ってる人に役立つかもしれない 今はまだ認可がおりたばかりの治療薬にチャレンジ中なのだが…
結構、道は厳しく(・_・;次々起こる予測してなかった副作用に負けそうになる事も度々。
同じような病気に黙々と耐え、向き合ってる同士の心に少しでも、寄り添って生きようなんて、格好いい事を真剣に考えていたのだが、実は、同じような病気を経験してない人には、吐けないような弱音も、同じ体験をしている人には、ついつい吐露して、逆に、心に寄り添ってもらい元気をもらってる事に気付かされた、救ってもらってるのは実は自分の方なのかもしれないって…。
いや、自分の方なんだ!って(^◇^;)
今は、死に向かっての準備期間中だ、
作中、今の自分に特に、いいなぁって思う箇所があった( ´∀`)
「ーねぇ。人って不思議なものね。生きてる間は、ほとんど忘れていたのに、死んでから始まる人間関係っていうものがあるのね。
その人が死んでくれて初めて、その人を
トータルな人間として、全人的にかかわれ
るようになる気がする 生きているときよ
り、死んでから本当に始まる「何か」ー
あなたふうに言えば「咀嚼」で���るってい
うか。
ーやっぱり獰猛なやつだな。俺が死んでも、
そういうふうに「咀嚼」してくれる?
…あなたが私に、本気で依頼するのであれば
ー死ぬ楽しみができたな、
ーそれはよかった。
ーまだ依頼してないけどね。
ーそれもよかった。」
私も、そんなふうに咀嚼してほしい
なんてね(笑)
目の前にある逆境を乗り越えていこうと言うより…頑張り過ぎないように頑張ろう!
自分の心身ともに限界を感じたら、踏ん張り過ぎないように潔くケリをつけることも大切だと思う。
簡単にはいかない、心と体のバランス
やる気になっても出来ないこともあるし、
やりたくなくても、やってみなければ分からないことや、成し遂げなければいけないこともある 弱い、意気地のない人間なんだから、すんなりいかないことも多く、投げ出したくなったり、歯を食いしばって、己を奮い立たせたり、人はその時々で、色んな事情の中で揺れ動いて生きている。
でも、梨木香歩さんの作品を読んでいると
自然であることが一番って そっと風に乗って囁かれた気分になる。
本当に素晴らしく、大好きな作家さんだ!
そして、どの本もとても、大切な作品だ。
PS. この本の表紙の絵画 何ともシュールな雰囲気
持ちながら、懐かしく惹きつけられるような
感覚を持って、
何だかぼぉーと見入ってしまった
安野光雅さんの装丁だそうだ、どおりで
優しく懐かしいような、慎ましく
すぅーと、心の中に溶け込んできた。
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ライターの仕事をしている翠こと棚。
愛犬のマースが子宮の病気になり、パートナーのツテも借りて手術を経て命は取り留めた。
仕事関係の片山海里がアフリカ取材で呪医のことを調べていることを知り、棚も興味を持っていた矢先に
舞い込んできたアフリカのウガンダへの取材。
ウガンダに旅立つ前に知った片山海里の死。
伝統医の元を訪れた棚が出会ったナカトという女性。
呪医になる修行をすることでジンナジュの存在を得て
ダバと呼ばれるものを患者から取り除くこと。
片山海里が生前、ナカトの生き別れた双子の妹の行方を探していたこと。
それを彼に代わって教えてくれるのは、棚自身であるとすでに決められていたこと。
ピスタチオの木で、じっと待っていたナカトの双子の妹の命。
遠く離れた土地で、会ったこともない人との繋がっている様子。
目に見えない何かに導かれていく感じ、
これが吉本ばななさんだとなんか好きじゃないんだけど
それはそれで失礼で申し訳ないんだけど、
梨木さんのは、好きだわあ。
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優しく、味わい深い言葉が多い。
生き物の死について作者の様々な哲学が散りばめられていて、生きている人が死んだ人に対してどのように物語を付け加えるかで繋がり方も変わってくるのではないだろうか。
地球は繋がっているが、その土地に行った者にしか感じられない風もある。主人公の棚は感性がとても敏感なだけに考えすぎたり、悩みすぎたりするのだが、その心の透明性がピスタチオにうまく繋がっていく展開に感銘を受ける。
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とてもスケールの大きな物語だった。
主人公が巻き込まれていく感覚を共にする、と言ったら良いのか。序盤から散りばめられた符号がアフリカで収斂していく。意識的にも無意識的にも、流れに身を任せて仕事をこなすうちに彼女自身の役割を果たしていた…という展開。
自然や呪術、人との繋がり、直感…いろんな要素が響き合う、不思議な読書体験。