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やはり小説を書くようなインテリにとっては、日本における朝鮮、ドイツにおけるナチス、米国におけるベトナム、なんだなぁ、と思ったり。そしていじめた子がいじめられた子に謝る事ができても、友達になるのは難しいよなぁ、と思ったり。しかし炭鉱の労働環境問題というのは、日本からなくなっても、今も同じような状況が途上国では行われている、というのが、なんとも。
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歴史について改めて考えさせられた。
著者はもしかして在日韓国人であったり、
韓国に縁のある人なのかな、と読みながら何度も思ったくらい。
最後ちょっとはしょって読んでしまったけれど、
読んでみて良かった、勉強になった本です。
20080223
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戦争が犯した罪の一つ。強者が弱者を対等な人として、認めてこなかった事。
帚木氏は戦争の罪を書きとどめてきている作家の一人だと思う。
この作品の凄さは、人さらいの様に連れて来られ、強制労働を強いられた韓国人を軸となっていること。あまり知ることのない、韓国人の習慣などを描き、民族の違いを浮き出さしている。でも本来だったら、もっと朝鮮民族の”恨”の感情が強いのではないのだろうか。
日本に残した子、そして孫までもが日本と韓国の橋となろうとしている展開。現実より、さらに一般に受け入れ易い様に、すこし柔らかいニュアンスにしているところ、そのもどかしさが、作品そのものを弱めてしまったのでは・・・
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帚木さん、「全部同じような話でどれがどれかわからなくなってくる」なんて言ってごめんなさい。
全然違うお話も書かれるんですね。
しかし、重い。重すぎる。
そして、これが史実に近いかと思うと・・・。
日本に強制的に連れてこられ、強制労働を強いられた朝鮮の人々のお話。
人間でいることが嫌になる。
強制労働を強いる日本人のひどさ。
その手先となり、同胞を苦しめまくる人々のひどさ。
こういう時、一番残虐なことができるのは実は、敵より味方なのかもしれない。
鞭打たれる仲間たちと同等になるのであれば、忌み嫌っていたはずの日本人の手先となっても、鞭打つ立場でありたいと思うその気持ちを責めることはできないけれど。
戦後70周年の夏に読むにはふさわしいかも。
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読了。日本人によって描かれた朝鮮半島側から見た反日小説。重すぎる。。。
炭鉱の街に住むということは、こういう事なのだ。星5つの引き込まれ感。
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20代前半の頃に読み「よい本だ、また読もう」と思い十数年。本棚の整理がてら再読。
内容を殆ど覚えておらず、こんな内容だったかと驚きながら、少しずつ思い出していった。
二次大戦中、日本の炭坑に無理矢理つれてこられ、労働を強いられた韓国人の主人公。時代は現代になり終戦後韓国に戻り経営者として成功した主人公が、三度海峡を渡り日本に来る、過去と現在を織り交ぜて話は進む。
戦争、終戦、六・二五動乱、済州島四・三事件など時代に翻弄される主人公を思うと大変な時代であったと思う。 未来に事実を残そうという意志はもっともだと思うが、成功してもなお、強烈な過去の怨みが消えない事の恐ろしさ、残念さを思う。
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朝鮮人の目からみた大戦中の強制労働を軸に、二十数年前に書かれた小説。
当時の雰囲気を反映してか、戦時中の日本国家による行為に対する目は厳しい。
昨今のかの国での言説についての理解が進む状況において、本書に書かれたような半世紀前の残虐行為に対する怨恨に対する復讐や、強制労働にも一定の重きを置いた記念館の設立がどれほどの説得力を持つのだろうか。
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「一度目」は戦時下の強制連行だった。朝鮮から九州の炭鉱に送られた私は、口では言えぬ暴力と辱めを受け続けた。「二度目」は愛する日本女性との祖国への旅。地獄を後にした二人はささやかな幸福を噛みしめたのだが…。戦後半世紀を経た今、私は「三度目の海峡」を越えねばならなかった。“海峡”を渡り、強く成長する男の姿と、日韓史の深部を誠実に重ねて描く山本賞作家の本格長編。吉川英治文学新人賞受賞作品。
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日本の暗い歴史を考えさせられる作品。自分の故郷近くが舞台ということもあり身近に感じられる部分もあった。中盤までは過去と現在が入れ替わりが多いので、やや読み辛かったが終盤の展開は一気に読まされ、作者の力を感じた。
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良い本を読んだ。久しぶりに電車の中で熱中の余り、降り損ねかけた。
帚木さんのミステリーっぽくない本を探していて見つけたのがこの本。あらすじを見て、テーマが戦時中の朝鮮人強制労働という政治・民族的なものなのでちょっと悩んだが、帚木さんなら冷静に扱うだろうと考え購入した。
前半は戦時下を中心に現代をフラッシュバックで扱いながら進行する。あまりに屈辱的な日本の朝鮮統治、その中で強制労働に徴集される17歳の主人公。連れて来られた日本の炭鉱での過酷な労働。そして搾取・拷問・・・。帚木さんの端正な文章で綴られるその悲惨さは、扇情的でないために却って胸に響いてくる。
一方で日本人炭鉱労働者が差し出す強制労働者への小さな救い。炭鉱を脱走後、逃げる主人公を救う同胞の友情。そして知り合った日本人女性との深い愛。これらが悲惨さの中に適度に入り混じる事により、この物語は救済されている。そして、その為に”決して繰り返してはならない歴史”を素直に認識し、受け止める事が出来るのだと思う。
唯一の不満は最終章の手記。過去の清算ではなく、未来に向けた希望という方向で物語を閉じる方法もあったように思うのだが。
いずれにせよ素晴らしい作品だと思います。
〔5/26追記〕試験が終わったばかりで退屈そうな娘に「読んでみたら」とこの本を渡した。すでに夕方だったが、一晩で読み終え、翌朝「面白かった」と言っていた。私が気になったエンディングも彼女には良かったみたいです。
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職場の先輩からお借りした作品。とても苦しく、重厚な作品でした。
人は自分がされたことはいつまでも覚えているけど、自分がしたことはあまり覚えていないのかもしれません。でもだからといって、それを軽く考えたり、文中にもありましたが、加害者側が「水に流す」としてしまうのは間違いだということがわかりました。
戦時中に日本が朝鮮人にしてきたこと、この作品の舞台は北九州なのに福岡住みのわたしは知ろうともせずに、「韓国はいつまでも日本を許さないな」と浅く考えていたのを反省しました。
読んで良かったです。戦争加害者としての日本からも目を逸らしてはならないと思いました。
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目を背けたい歴史がある。個人レベルなら自身で消化する事も可能だが、国となると難しい。この作品は右でも左でも無く、ナショナリズムの押し付けでも無く、日本人が朝鮮半島側の目線で日本に真っ直ぐ向き合い描かれている。歴史の隅に置き去りにされた多くの事柄に、再度目を向ける必要性を感じさせられた。昨今情勢が激しく動いているが、手を取り合いたいものだ。
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水に流せるのは被害者で、もちろん加害者は水に流せない。
許せるのは被害者で、それまで加害者は許しを求めてはいけない。
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何故、今、帚木蓬生の本書『三たびの海峡 』を手に取ったのか?くっきりとした理由はないが、結びつく理由はいくつかある。迷ったが一番の理由は帚木が好きな作家だからだ。久しぶりに作家別に図書館の書棚を眺め、そうだそうだと手に取ったわけだ。もう一つはやっぱりここもとの日韓関係であろうか。いろいろな偏りもあると思うが、やはり国と国の約束は守らなきゃね的な風潮にながされていても、でもなぜこんな状態になるのか?もやもやしていたことも事実だ。
帚木蓬生は事実ベースの積み上げに独創的なストーリーを被せ、しかも淡々と精緻に静かに熱意を積み上げていくのが得意な作家だと思っている。今回も熱い想いを秘めながら酷い醜い状況を淡々と連ねていく。そして現在と過去を組み合わせどこかが細かすぎたり、何かを端折ったようなところもなく物語を進めていくのは流石だ。
朝鮮から日本、そして朝鮮へ、最後は日本へと3たび超える海峡は単なる陸と陸が海で隔てられているのではない。血の繋がりを断つもの、隔てるもの。昔はあり得なかったが今なら簡単に超えられるもの。そういった一切合切を表現している。隔てている大きな要因のひとつが日本の植民地支配と徴用なのである。
朝鮮の身分制度はよくわからないがそれでも小作中心の農民と、都会にすむ人間は別物だろう。人間をこき使う時代はどこの国地域にもあったものということだけで割り切ることにできない繋がりや怨念は本人にしてみれば決して消えないだろう。そこにあるそれぞれの家族や封建的な考え、あるいはその超越、そして回帰。それは本書の訴えたいことなのか?やはりそれは当事者ではないと新年をもっては語れない。
しかし、そこに真っ向から挑戦した今、帚木はやはり凄い。ある意味歴史検証、それにつらなる現在の世相を小説という形で鋭く切りつけるその姿勢はむしろジャーナリズム的なものを感じる。いやあえて小説という形でこそ切り込んでいけるのかもしれない。
現在をもう一度見つめなおし、真実とはいったい何なのか、改めて考えさせる一冊である。
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28年前に初版の小説。
ドキュメンタリータッチの反日小説という感じ。
炭鉱に関する資料の入手先で如何で主題が変わってくる。
物語としては面白いのかもしれない。
復讐劇だけど都合のいいことが起こりすぎるような気もした。
炭鉱での過酷な生き様は日本人も外国人も変わりなかったという資料が多い。差別する余裕もなかったはず。
この作者の本は二冊読んだだけだが感動してきたのに。
今、同じテーマで書かれるとしても同じ設定になるのだろうか。もっとも、書き切ったのでありましょうが。
ちょっと、問いたい気持ちもする。