投稿元:
レビューを見る
狂気。一言で表すならまさに狂気的で狂喜な物語。
毎日がモノクロで日々淡々と過ごし生きてきた理系女子の直子が、大手企業を退社してのんびりとした会社に入社し同僚にインディーズバンドのライブに誘われ、そのボーカル伶也に恋に落ちるところから始まる。それからの直子は化粧を覚えおしゃれにも目覚め女らしく成長し、伶也だけのためにお金を叩く。叩く、まさにそれで、伶也行きつけとされている年会費30万入会費10万の会員制クラブで伶也に近寄り、まんまと携帯番号、アドレスをゲットする。精神的にバランスが取れてない甘えたな伶也の良き相談相手、身体の交わりの一切ない精神的都合のいい相手として直子は一生を添い遂げる。
伶也の典型的な芸能界の一生が、どこかで聞いたことある波乱万丈さなのに面白いのだ。若くして出来婚、相手は将来有望の女優、別居、覚醒剤、逮捕、離婚、破滅、再生、復活、そして洗脳、廃人、死。
それらの一生をただのファンとして見守り添い遂げた直子のまっすぐさが泣ける。純愛。そして狂気。怖いほどにまっすぐな愛情。死ぬ間際まで伶也を愛し続けた直子。シミーズをまといながらも伶也に肌を見せるのを恥じらい拒み恋い焦がれた直子の想いに、ものすごく泣けた。
芸能人をかっこいいと思うことはあっても私は恋い焦がれたことはなく、ライブやそういう場に出向いたことはなかったのですが、そういう経験があるひとにはより痛いほど直子の気持ちがわかるかもしれませんね。
投稿元:
レビューを見る
大切な人との出会いと関わり、日々と残りの人生、幾度と栄光と挫折という明滅する人物をずっと見守り続けた女性と彼の物語。最後の方は冒頭に結末が示されているだけにジリジリと訴えてくる。いろんな人物が伶也の輝きと落ちていく様から想像させられるが、そこにも彼女のような人がいたらいいなと思った。あとはバンギャルというかバンドとかなにか芸能的なものを追いかけている女性が読んだ時にすごく共感されるのかなあ、読んだ反応を知ってみたいと思ったり。そういう人たちに届くといい。
投稿元:
レビューを見る
結末から始まる、物語。
冒頭の、二人に起こった何かを想像する。なぜ?どうして?
その疑問と、多分その日まで二人がたどってきた日々への想像を照らし合わせながらページをめくる。
芸能人と呼ばれるたちが昔より身近になっている、と思う。かつての手の届かない異世界的存在から、会いに行ける、気軽に言葉を交わせる、そんな存在になってきている。
それでも、やはり彼らは特別な存在で、そうだからこそいろんなものを彼らのために削り、彼らのために注ぎ、そして応援していきたいと思うのだろう。
直子が、31歳でそういう存在に出会った、というのは多分、遅い方だろう。その年で夢中になれる「人」と出会えたのはある意味うらやましくもあるけれど、遅かった分、免疫もなかったのかもしれない、それが不幸だったな、とも。
不幸?いや、違う。不幸だなんてどこにも描かれていない。40年にも及ぶ伶也との日々は、どこをどう切ってもそこに「不幸」の文字はないはず。
肉体的つながりはなく、精神的なつながりさえあったかどうかはわからない二人の40年は、それでも「幸せ」な最後だったのだ、としか思えない。
直子の思いを母性、だの、無償の愛、だのと言い換えることはしたくない。
ただ、そう、ただ単に「好き」だった、それだけなのだろう。
直子は「伶也と」ともに生きた、ただそれだけなのだ。
投稿元:
レビューを見る
【生まれ変わっても、もう一度あなたと】同僚に誘われ、初めてライブに参加したその日から「伶也」が彼女の全てだった。人気バンドのボーカルを愛し、支え続けた女性の半生。
投稿元:
レビューを見る
「芸能人との恋愛を描いた小説で、最初から別れが提示されてます」という前情報から、どんな小説なんだろうと思っていましたが、想像を超えるものでした。
真面目一筋に生きてきた直子が、ある日突然、心を奪われる人が現れる。心から愛してしまったボーカリストを、何があっても誠心誠意、応援し、裏方の仕事をこなすようになる直子。日頃ワイドショーで報道されるようなスクープをすべてしてしまうようなこの男を、何の恩賞や欲を求めずに支えていく姿はマネできないと思う。むしろ欲望を抱えることを悪とするぐらい、ずっと純粋に思い続けていく。芸能人への思慕という裏には、様々な女性の生涯とその家族との関係、別離が描かれている。
私は、不覚にも冒頭の新聞記事を読み飛ばすというミスをしてしまったので受けた印象は異なるかもしれません。新聞記事を読んだうえで読めば、結末へのハラハラ感やなぜという疑問がもっと色濃く伝わるのではないかと思いますが、未読でも色々なことを考えさせられる小説でした。
投稿元:
レビューを見る
これ程までに1人の人を永く愛するって凄いと思う。 確かに好きなミュージシャン、芸能人などに没頭する事は必ずあると思う。でもここまでは出来ない。それを貫いた人の人生ってその間どんなに辛いことがあったとしてもサイコーにパッピーな人生だったんだろうなと思う。この小説の凄いところはありそうでなかなかあり得ない1人の一途な気持ちが綴られているところだと思う。これも一つの恋愛小説のあり方なのだろう。
投稿元:
レビューを見る
読んでいて歯がゆくて辛かったけど、主人公は何の迷いも無く幸せだと感じてる。その違和感…。無償の愛のようで、すごく欲深い。何事も心から強く願えば叶うものなのだな。
投稿元:
レビューを見る
理系で自立したオトナの女性がロックバンドのボーカルに入れ込む純愛ストーリー。読んでいてかなり苦しかったです。
冒頭で結末がわかっているのですが、自分の人生は二の次にして全てを捧げた女性が老いていく様も恐ろしかったです。幸せとはなんだろうと考えさせられました。
投稿元:
レビューを見る
ロックバンドのボーカルを好きになり一生を捧げた女性の物語。人の愛し方は色々あるのだと思えた作品。ただ、主人公の一途さはすごくわかるのだが、その相手である男性の魅力がイマイチわからなくて(どこかありがちなタイプだったので)共感しづらかったのが残念だった。もっと魅力的な男性だったらなぁ・・・。
投稿元:
レビューを見る
椰月さんはどんな作品だろうと読みたい、
と思っている作家さんの一人です。
今回は力作でした。
女性が深みにはまっていくこと、
その自覚の仕方に
リアリティがあって。
共感はしなかったのですが
ついつい引きずりこまれる一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
+++
生まれて初めてのライブで、ロックバンド「ゴライアス」と衝撃的な出会いをした直子。今までこれといった趣味もなかった彼女は、自分の持てる時間と金のすべてを使い、ボーカルの伶也を支えることを決心する。狂おしいほどの愛と献身が行きつく先はどこなのか。二人が迎えた結末は、1ページめで明かされる。恋愛を超えた、究極の感情を描く問題作。
+++
冒頭に配された新聞記事。本作は、この記事に至るまでの長い長い物語である。結末を知ってしまっているので、なにを読んでも切なく、胸に迫る。にもかかわらず、その場その場では、直子に少しでも幸せになってほしいと願わずにはいられなくもなるのである。伶也が果たして、大学院を出て、恵まれた職場でやりがいのある仕事をしていた直子が入れあげるほどの男かといえば、客観的に見ると、否としか言いようがない。それでも、どうしようもなく抑えられない気持ちはよくわかる。どこかで歯車がひとつでも違っていたら、まったく違う現在があるのだろうとも思うが、そうはならない運命だったのだろう。傍から見れば哀れむべき状況でも、直子にとっては至福の最期だったのだろう。切なくやるせなく愛にあふれた一冊である。
投稿元:
レビューを見る
直子の一途な思いが痛々しかった。
ことさら辛く描くことはせず、淡々とした描写によって、直子の悲哀がより伝わってくる作品でした。
直子が伶也に夢中でも、ちゃんと仕事をして、それなりにそこに楽しさも見出していてよかった。
生活が苦しくなってきたとき、親戚や生活保護を頼らなかったのはなぜなのだろう?
賢い直子のわりには、そこは疑問が残った。
最後に、直子は幸せだったと思う。
投稿元:
レビューを見る
バンドの追っかけの女性とバンドマンを描いた作品。自分自身もバンドの追っかけをしている時期(現在は休止中)があったので、他人事には思えず…。直子のように繋がりやガチ恋といったものには一切、興味はないのだがステージ上で輝くバンドマンにときめくというのはとても共感ができる。帯に書かれているとおり、最初の1ページで結末がわかってしまう作品なのだが、どうしてこうなってしまったのかというのが気になってページをめくる手が止まらないくらい素敵な作品だった。
投稿元:
レビューを見る
生まれて初めてのライブで、ロックバンド「ゴライアス」と衝撃的な出会いをした直子。今までこれといった趣味もなかった彼女は、技術系会社員として勤めながら、持てる時間とお金のすべてを、ボーカルの伶也を支えていく。
一時的じゃなく、生涯にわたってのファン・サポーターとなると、それを成り立たせる堅実な人生があるわけだ。山あり谷あり。単身者の脆弱性。本人にとっては、幸せな人生。
投稿元:
レビューを見る
ゴライアスというバンドのボーカル、伶也に熱を上げファンでいつづけた女性、直子の半生。
32歳の誕生日プレゼントでライブチケットをもらい、それから死ぬまで伶也に人生を捧げた直子。
誰とも結婚もせず、伶也に近づきマネージャーの補佐的なポジションを手に入れたりもするけど、特に恋愛に発展することはなく、伶也は女優と出来婚したり覚せい剤に溺れたり…レポーターという新たな道で再起したかと思いきや、自称霊能師に洗脳されたり…。
伶也はちょっと弱いところがあるけど、天真爛漫できっと母性本能をくすぐられるのかな。
それでも、こんなに道を踏み外して
さらに直子には見返りもないのに
伶也を見守り好きでいつづける直子にも少し狂気を感じたな。
ラストはなんだか切なすぎたけど
直子にとっては、あの形が幸せだったのかもしれない。