紙の本
先鋭化するジャコバン党
2019/10/26 19:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
遂にルイ16世が断頭台に。罪名は国家反逆罪。すでに共和制に移行している中、なんで処刑されなければいけないのか。ルイが気の毒でした。ジャコバンクラブが、ますます先鋭化してくる気配がプンプンします。サン・ジュストという新たなキャラも登場し、次巻も楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
2014年9月から毎月一冊の文庫版の刊行が再開された、小説フランス革命。
今回の『共和政の樹立』は第2部の第3巻で、通算12巻となる。
フランス革命の一側面である、処刑の色が強くなる。
ルイ16世の幽閉から処刑までを描いた一冊。
----------------
【内容(「BOOK」データベースより)
1792年8月の蜂起で王権が停止され、国王一家はタンプル塔に幽閉された。パリの民衆は反革命の容疑者たちを次々に虐殺。街に暴力の嵐が吹き荒れ、立法議会に代わって国民公会が開幕すると、新人議員サン・ジュストの演説をきっかけに国王裁判が開かれることに。議員たちのさまざまな思惑が交錯する中、ついにルイ16世の死刑が確定し―。フランス王政の最期を描く、血塗られた第12巻。
———————
【著者略歴「BOOK著者紹介情報」より】
佐藤/賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。99年『王妃の離婚』で第121回直木賞を、2014年『小説フランス革命』で第68回毎日出版文化賞特別賞を受賞
———————
投稿元:
レビューを見る
ついにルイ16世が断頭台に。ギロチンは最新式の処刑道具で平等で人権的なものらしい。苦しまないで王も庶民も平等の処刑の仕方で執行される。しかし王の死刑を遅らせようとするジロンド派と即時の死刑を求めるジャコバン派。サン・ジュストの歴史的な演説で、流れは一気にジャコバン派へ。両派をまとめることで存在感を高めたダントンは、金銭スキャンダルとジロンド派の裏切りで影響力を落とす。ロラン夫人の斡旋の甲斐なくダントンはジャコバン派を支持。ジロンド派は敗北し、王は即時の死刑となる。開明派の王として即位。国民から愛された王ルイは何故死刑されなければならなかったのか。立憲君主制で何が悪いのか?サン・ジュストの演説は意味不明の理屈だし、そもそも憲法や法を守る気がない。どんな無茶でも死刑にしなければならないという論理しかない。革命の行き着く先は理性でなく、恐怖と暴力に支配される。それは支配したことのない無学な庶民が初の普通選挙で選び選ばれた国民公会だからこそだし、また殺さなければ安心できないほど王の影響力があったということ。ミラボーの程の良い革命は遠くなり、王から一庶民になったルイ・カペーを法を無視し理屈抜きにギロチンにかけた事実だけが残った。そして君主制を持つ多くの国、中でもオーストリアとプロイセンを敵にして戦争をしなければならないという現実も。にしてもルイ16世は悲劇としか言いようがない。結果やり過ぎた革命は多くの血を流し支持を失い、戦争は続きフランスは不幸になった。挙句がナポレオンによる王政の復活とは遣り切れない。
投稿元:
レビューを見る
ついにルイ16世は断頭台の露と消えてしまった。革命の嫌な面であり、これから多くの人々が粛清の嵐に巻き込まれていく。
死を前に淡々と客観的に自らを振り返るルイ16世の描き方が印象的。
投稿元:
レビューを見る
ルイ16世の幽閉から処刑までが描かれる
いつも自意識過剰ながら、状況に流されやすいルイ16世のモノローグが聞けなくなるのか。。。
長年続いてきた王政の心理的障壁を論理で越え、国王の処刑にまで漕ぎ着けた。
長く議論を戦わせる中、一人の出した意見が状況を一変させ、歴史を動かしてしまう。
折しも国政選挙のさなか、今日本の議員の中のどれだけの人が、これだけの熱い議論を戦わせているのかと思うと、やるせない。
投稿元:
レビューを見る
第68回毎日出版文化賞特別賞
著者:佐藤賢一(1968-、鶴岡市、小説家)
解説:安達正勝(1944-、盛岡市、フランス文学者)
投稿元:
レビューを見る
ルイ16世の処刑が描かれる。ベルばらのせいか、ボーっとした王様のイメージが強かったけれど、本作では政治的感覚に長けたしたたかな国王として描かれていて新鮮。
投稿元:
レビューを見る
以前の巻から思っていたことだが、ルイ16世の描き方が非常に好ましく感じられた。そのルイ16世の最後、作者のイメージであるとはいえ、それが小説の醍醐味だと思う。
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパ近代史の中でいくつかの王政が倒れ、共和政に移行したが、両大戦に起因しない内発的なものとしてはフランス革命が唯一の例と言って良い。というより、フランス革命において国王を断罪し首をはねたことが、19世紀に各国の旧体制の動揺を招き、第一次大戦の原因の一つになったと見ることができる。
本書の物語は1792年8月政変の後から始まる。既にルイ16世は自ら身を処す力を失っていて、彼をどう裁くかがジロンド派とジャコバン派の政争の具になる。国民公会の最大勢力は平原派であり、左右両派が中間派を取り込もうと演説を繰り広げる。革命が過激に突き進むことを警戒するジロンド派と、進まないことに苛立つロベスピエール。ジロンド派はバランスある政治を担おうとするが、リーダーシップを欠き国王裁判ではジャコバン派に敗北する。その後革命はどう進むのか、それは次巻以降の楽しみということになるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
人民裁判で多くの血が流され、革命は暴走し、そしてルイ16世改め、ルイ・カペーの首が落ち、時代が変わる。
サン・ジェスト、デビュー戦でいきなり鮮やかな勝利。(原理原則を重んじる『支持者』の存在が、純粋化・過激化を生むのだろうか?とか<ロベスピエールとサン・ジェストの関係から
投稿元:
レビューを見る
ルイ16世が処刑された。その直前まで王だった者としての威厳を保ち続けた。ところがその効能もはやない。ランバル大公妃の首が小タンプル塔の窓から晒され、挙句にはルイカペーと呼び捨てにされる始末。最終的に死刑に追いやったのは国民公会の、サンジュストの演説がきっかけだった。ルイが呼び出され、罪状を読まれた中には頓珍漢なものまであった。それはもはや形式的な裁判であり、旧来のガニカニスムを潰すための決定事項だった。運命というものは恐ろしい。歴史の潮流においてはいかなる争いも虚しく終わる。その一部始終を見て恐ろしい思いをした。