紙の本
凄惨な場面がなぜ、描かれるようになったのかを、神話や聖書のエピソードをもとに解き明かしていきます!
2020/04/19 09:09
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、西洋絵画における凄惨な場面が描かれた名画が、なぜ、描かれるようになったのか、ということを考察した画期的な書です。西洋美術には、見ただけで美しく、うっとりとさせられるような名画もあれば、一瞬目を覆いたくなるような場面を描いた名画も少なからずあります。こうした凄惨な場面が、なぜ、描かれるのか、そこには人間のどのような欲望や残虐性を見ることができるのか。そうしたことを神話や聖書のエピソードを読み込むことで、その謎を解き明かしていきます。同書には、読者の皆さんもご存じの、「魔女狩り」、「子殺し」、「ペスト」、「拷問」、「処刑」といったものをモチーフにした絵画200点以上が収録されており、人間の隠された内面を炙り出す一冊となっています。内容構成は、 「第1章 残酷なる神話の世界」、「第2章 聖書の裏面」、「第3章 暗黒の中世―血ぬられたキリスト教世界」、「第4章 拷問と処刑―魔女裁判を中心に」、「第5章 殺人と戦争―なぜひとびとは殺しあうのか」、「第6章 さまざまな残酷芸術―病・貧困・ヴァニタス」となっており、知られざる真実に、多くの読者は驚かれることでしょう。
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直近読んだマンガの影響などもあって、「残酷」「残虐」の概念、あるいはもっと個別に「死」や病い、拷問、刑罰、それらに起因する身体の損壊、変形、腐敗のイメージを(あえて)描くことの意味、それを(あえて)観たり想ったりすることの意味について何となくの関心を覚えていて、本書を手にとった。
副題は「西洋世界の裏面をよみとく」。多くの絵画や図像を取り上げて短いコメントを付すものだから、学術的な分析を示すものではなく、したがって「裏面」という表現に端的に表されるようなアナクロニズムを非難しても仕方ないとは思う。
残念なのは「残酷」ということばの意味の曖昧性にもよるのだろうけれど、今日私たちが嫌悪感や恐怖心とともに観ることとなるグロテスクなもの(「Histroy of Grotesque Art」というもう一つの副題が指すもの)と、人間の生の儚さなどを思われる悲劇的な光景とが本作の中で区別立てされていないことか。
ともあれそうした「残酷」表現もその題材となった処刑や拷問といった現実のできごとも、同時代を生きた人びとにとっては、私たち(という範疇で括られるのが具体的にどのような人びとなのかも問題だけど)が感じる嫌悪や恐怖とはことなる感情とともに受け取られていたのではないかと思う。
ややマクロな視点で見れば、不思議なくらい興奮状態に陥りやすい、他人の痛みに底知れぬ鈍感さを示す群衆がおり、よりミクロな個人レベルで見れば、死や身体の腐敗・分解に対して今日ほどの忌避感を感じていないし実際仮に感じようとしてもそれが許されない状況下にある精神が示す死生観がある。──そういったことをあれこれ考えながら読むにはページ数も手頃なよい本である。
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キリスト教世界の裏側が見えて面白い。載せられている絵画一つ一つに説明がついているのが良い。ファンタジー系の作品やゲームが好きな人には特におすすめ。
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図版が多くて楽しい美術本(絵の内容は楽しくはない)。
タイトル通り残酷な絵が多いので気は滅入るかもしれないですが、ライトな歴史・宗教本としても良いと思います。神話や宗教史の話が多い前半が特に面白い。
解剖図とかならともかく、絵としてみる分には美しいものの方が絶対いいのに、人はなぜ醜いもの、残酷なものまでわざわざ絵画として残そうとするんでしょうね。
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美術 とは 美 だけではないと痛感
美術家たちが未だ自分では体験しない死をどのように見つめたのか? どのような死の歴史が西洋にあったのか?を通観できる本
一貫してるのは歴史の残酷さはもちろんだが、画家の壮絶さ(なくなった妻を見て色彩を見出すモネなど)である。
ただ、かなりグロテスクな文、絵画が多いので覚悟して読むこと
自分は中西ヨーロッパの魔女狩りの部分はシンドくて流し読み…