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日本の木造建築の「粋」を、藤森輝信先生の明快で軽快な文章と、写真家藤塚光政さんのこだわり抜いた力強い写真とこれも読ませる撮影日記とで堪能できる。横の写真を見るのに本を横向きにしなくてはいけないのがちょっと面倒で、見開きにしたほうが大きく取れるのにとも思ったけど、折れ目が嫌だったのかしら。以下、特に印象に残ったのは、18.菅の船頭小屋。障子を開けると家からはみ出てしまうのを石でちょこっと支えるとか、川が増水したときは輪に丸太を指して移動するとか、両先生の文章もノリノリでこれぞ理想の住まいと絶賛。川崎の日本民家園にあるとのこと。要チェック。17.会津さざえ堂。木造建築の到達点とのこと。藤塚先生が想像した考案者の郁道と棟梁の山岸の会話がイキイキして、この建物気に入ってるんだな。12.屋根付き橋。少しアーチがかってもう1枚載っている平らな橋より趣がある。屋根があることで何となく人が集う場所になるというのもわかるなぁ、しばらくたたずみたくなる。愛媛県内子町弓削神社にかかる橋。13.三十三間堂。日本に縦長ではなく横長の建物ができたわけを藤森先生が推理。平清盛によるという考え抜かれた造型を藤塚先生が絶賛。平清盛は厳島神社も手がけ、稀代のセンスと賞賛されている。結構行ったことのある場所も多くて興味深く読めたし、技術的なこともわかりやすく教えてくれる。
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8割方知らない建築ばかりだけれど、ガツンとくるような驚きの伝統建築をたくさん堪能できます。特に船頭小屋には感動しました。最初に藤森さんの文字による解説があって、ある程度想像を膨らませたあとに写真がでてくるという流れも面白い。
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日本ほど、木造建築が多様でかつ細密に作られた国はないと思う。木も多様だし、構造も多様だ。
そういう、日本の歴史的木造建築を訪ねる本。
日本木造遺産、という名がついているが、あくまで遺産であり、遺跡ではない。みな現役の建築物だ。
藤森さんの文章は期待通りの、ライトでありながら魅力を抑えたもの。そして藤塚さんの写真も圧巻である。木から何か出てきそうな感じ。
巻末にはそれぞれの建築を、構造学の目で見たお話も載っていて、これがまた素晴らしく面白い。プロでなくても十分楽しめるはず。
300年後の法隆寺の修繕用の木材がピンチらしい。
住宅の材は植樹から数十年で賄えるが、法隆寺クラスになると数百年という材が必要だ。世界は、特に日本は、もう孫どころか子世代のことも十分に想いが及ばないありさまだから、300年後のことなんて気にする人は殆どいないだろう。けど、そういう仕事をしているって素敵じゃないか。