紙の本
レンアイ句集
2016/09/04 01:56
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投稿者:コピーマスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
「レンアイ句集」と銘打ってあったので、もっと現代的な感じのものを予想していたが、選ばれている言葉といい、意外に多い旧仮名遣いといい、そこはかとなく漂う気品といい、本格派。特に大胆な破調のものが実によい。直截的に恋愛を想起させるものばかりではないのだけれど、美しい瞬間のドキドキ感とか、多幸感に充たされたときの光、温度、空気とかを封じ込めたような一句一句が続く。だからこれは人にとって広義の意味でのレンアイなのかもしれないと思った。ところで、自分の植物についての知識の足りなさにはちょっと反省。立葵と詠まれた瞬間にこちらに立葵のイメージというのがないと真に味読できているとは言えない。装丁はさすが港の人。この軽さ、手触り、活字の質感。紙書籍ならではの所有する歓びがある。
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新宿紀伊国屋書店にてサイン本。
ボクのところにきたのは
冬晴れて君宛の手紙はすべて君に
これすき。
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新しい才能の活躍によって表現の世界が拡大され革新されていくのは、どの芸術のジャンルも同じ。和歌や俳句の世界も、若い歌人、俳人たちの頑張りによって、さまざまな波や渦が日々つくられています。
これは、いま、もっとも注目を集めている若手俳人のひとり、佐藤文香さんの句集。発売以来、恋愛を題材にした俳句の数々に新鮮な驚きを味わってくださる声が届いています。俳句なんて老人の趣味、という固定観念のお持ちのかたにこそ、このみずみずしい世界を味わってほしいです。
デザインは、セプテンバーカウボーイの吉岡秀典さん。コズフィッシュで長年、祖父江慎さんの右腕を務め、今は独立して活躍されています。黄色いカバー、やわらかな手触りの本文用紙などなど、句集らしからぬ本のつくりには、佐藤さんの俳句の世界へのいろんな気持ちや意図がこめられています。ぜひご注目ください。
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読了。持ち歩きたい一冊。
はっとする一句や、情景が言葉から溢れ出て
目を閉じたら連れて行ってくれそうな一句。
俳句ってなかなか身近ではないけれど、
そっと寄り添うような存在として、提案された一冊なように感じた
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「君に目があり見開かれ」(佐藤文香)を読んだ。人を愛することの歓びだとか生きている楽しさだとかそういうものをハンカチに包んでそっと差し出してくれる感じがとてもうれしい句集です。魂をわしづかみにされた句をひとつだけ引用。
『菊日和昨日買つた靴下で駆け寄る』
ね、たまらないでしょ。
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素敵でした。初めて読んだ句集がこれでよかったです
恋愛の句がすごく良い
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夜を水のように君とは遊ぶ仲
→これすごい惹かれた。いくつか解釈ありそうだけど、あくまで自分的に読むと、
「夜に」じゃなく「夜を」なのが良い。「夜に何かをして遊ぶ」んじゃなく、夜を、「夜そのものとして」味わっている感じがして。
で、「君と」じゃなくて、「君とは」と言ってる。他の誰でもなく、君。
ふつうこんなに、夜や君や遊ぶ仲なんて言葉が出てくると、性的に受け取ってもいいのかもしれないけど、「夜を水のように」で、夜のプールのようなシーンとしたイメージが生まれる気がするのと、「遊ぶ仲」っていうのが妙に子供っぽい感じがするのとで、空間としてはかなり大人っぽいんだけど、2人はまだ幼い、みたいなアンバランス感がでてくる。君との、特別なんだけど、夜のシーンとした空間で2人で手遊びしてるみたいな、それ以上お互いに踏み込まない淡白さみたいのが滲んでて、なんか悲しくなってくるんです。
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噴水や思はるる身の筋繊維
→これびっくりした。噴水にまさかの「筋繊維」をぶつけるワードセンス。腕とか曲げ伸ばしすると、見えるわけないんですけど、筋繊維がこう、ふわっと曲線を描いてはまっすぐになる。それが噴水に似てる気もする。
(君に)思われている(わたしの)身だとすると、君を噴水のそばで待っていたりするのかな、と想像できる。そういう君からの受け身としての、わたしの体の中に一気に視点が向いていて、予感というか、生々しさみたいなものを感じる。
自然に受け身で解釈したけど、これ調べたら、たぶん自発(自然に思ってしまう、自然と想起される)とも読めて、自分の身の筋繊維を、(わたしが)噴水を見て自然に思っている、とも読めるかも、どちらの意味もとれるように狙ってやったんだと思うんだけど、どうだろう。
長くなるのであと数句あげておわります笑
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また嘘を君が笑って蛾が傷む
夕凪にすこしむかしの怪獣は
焼林檎ゆつくりと落ち込んでゆく
歯ぶらしや雀の視野にわが暮らし